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かみさまのしるし~めくるめく御朱印巡り旅~  作者: 灯色ひろ
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第11話 サクラのお願い

 凪が尋ねる。


「でも、どうして俺が持ってたお守りの中にサクラの御朱印があったんだろ」

「うーん、それがわからないの。ナギ、前にもこの神社に来てくれたことある?」


 今度はサクラからの疑問。

 凪は昔の記憶を探って、小さく首を横に振った。


「いや……ない、と思う。この山には小さな頃からちょくちょく来てたから、それならさすがに見覚えがあると思うしさ。ここに神社があったことも知らなかったよ」

「そっかぁ~。でもでも、それじゃあそのお守りは? それはね、サクラの神社のお守りなんだよ! ほら、桜の刺繍があるでしょっ」


 サクラが指し示す凪のお守り。その言葉に凪は大きく驚いた。


「そうなのかっ? 実はこれ、小さい頃にある人にもらったものなんだけど」

「贈り物! ステキ! それじゃあきっと、その人が凪のことを大切に想っててくれたんだねっ。サクラのお守りには、強い縁結びの力があるんだよ!」

「縁結びの……そうだったのか……」


 あの夏祭りの夜。お守りを渡してくれた少女の笑顔が蘇り、嬉しくなる凪。

 そんな凪の笑みを見て、サクラもまた嬉しそうに笑っていた。


「きっと、ナギにとってその人はとっても大切な人なんだね!」

「……ああ。必ず、もう一度会いたい人なんだ」


 そこで凪はハッと気付く。


「――ん? 六年前になくなって、消滅していた神社って……あ、そうか! それじゃあやっぱり、ここが俺の探してた最後の神社だったんだ!」


 凪はだいぶ汚れてしまった鞄から急いで御朱印帳を取り出し、それをサクラに見せる。サクラは途端に目を輝かせた。


「わぁ~すごい! いろんな神様()の朱印がいっぱいだね!」

「ああ。実は俺、このお守りをくれた子にもう一度会いたくて御朱印巡りを始めたんだよ。間違いない。ここが俺が探していた縁結びルート最後の神社で……はは、道理で見つからないはずだよ」

「えへへ。そっかぁ、だからナギはこんなにガンバってきたんだね!」


 小さい頃、凪は神様などいないと思っていた。その存在を否定していた。


 けれど今、目の前で神様が笑っている。


 見えない世界はある。縁の力もきっとある。だから、願いを持ち続けていればきっとあの女の子にも会える。想いを伝えるチャンスはある。凪はそんな思いを強くした。


「なぁサクラ。よかったら、俺に御朱印をいただけるかな」


 サクラは凪の御朱印を読み終えると、顔を上げて明るくうなずく。


「うん、もちろんです! サクラがナギのおねがいを叶えます! ナギとその会いたい人との縁を結ぶよっ!」

「結ぶって、サクラが?」

「うんっ! サクラはこーみえて縁結びの神様ですから! サクラの朱印には、縁結びのつよつよパワーがあるんだよ! まかせてまかせてっ!」

「あ、ああ。ありがとうサクラ!」


 小さな胸をポンと叩いてえへんと鼻を高くするサクラ。

 その可愛らしい姿に凪は少し笑いそうになってしまったが、彼女の優しい気持ちが素直に嬉しかった。つよつよパワーに感謝である。


「それじゃあサクラの『神朱印(しるし)』をあげる! これがあれば、きっとナギも――あ」


 元気よくそう言ったサクラだったが、突然、言葉を失って黙り込む。


 そして――ひどく青ざめた表情で震え始め、凪の御朱印帳をその場に落とした。


 まるで何かに怯えているような動揺ぶりに、凪は心配になる。


「サ、サクラ? 急にどうしたんだ? 大丈夫か?」


 呼びかけると、サクラはハッとして凪の方を見た。


「――え? あっ、ご、ごめんなさいナギ!」


 ぼうっとしていたサクラは慌てて凪の御朱印帳を拾い、申し訳なさそうに返す。


「あ、あのね、サクラ、神滅してたから力が使えなくなったみたい……。さっきので、神通力が空っぽで……。だ、だからね、サクラの力じゃナギの縁を結んであげられないの……ごめんなさい! ごめんねナギ! ホントにごめんなさいっ!」

「そ、そうなのか? いや、わかったよサクラ。そんな謝らないでくれ」

「うう……ごめんねぇ……」


 凪には何がなんだかよくわからない話であり、残念ではあったが、こんなにシュンとなるサクラにはもう何も言えない。何より彼女の方が心配である。


 それでもサクラはまたすぐに顔を上げ、両手を強く握って言う。


「でもでも! せっかくナギと出会えたんだから、サクラにも何かさせてください! ナギの役に立ちたいのっ! おねがいですっ!」

「うわっ。サ、サクラ、少し落ち着いて」


 鼻息も荒く凪に詰め寄ってくるサクラは、すぐに何かを思いついたように「あっ!」と短い声を上げた。



「そうだっ! ねぇナギ、よかったらサクラと御朱印巡りしませんかっ?」


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