表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/26

5.解説

 さて、麻雀開始前にしていた圭二と榊原さんのやりとりの解説をしよう。

 先に述べた通り、麻雀のことはよく知っている人、もしくは麻雀について知る気がない人はこの解説を読み飛ばすことを推奨する。



「ウマオカ有りのアリアリ。ウマはゴットー、三万点がえし。ローカル役は無いが、三連刻と四連刻は認めているぜ」


 さて、圭二がしたこの腐れ発言からいこう。

 まず、麻雀は基本四人で行い、最初は全員が二万五千点という点数を持つ。それを奪い合って、ゲームの終了時に一番点があった奴が勝ちである。それを理解した上で次に進んでほしい。

 『ウマ』というのはゲーム終了後に三位と四位が一位と二位に払う点数で、ゴットーというのが点数の量を表している。三位が二位に五千点で、四位が一位に一万点という意味だ。『オカ』は一位に与えられるトップ賞のようなものである。三万点がえしというのがそのトップ賞に関わり、三万点をプラマイ0にするということだ。麻雀は最初の持ち点が二万五千点(つまり、初期の勝ち点は全員マイナス五千点とも言える)のため、四人で打てば合計差額の二万点がトップに与えられる『オカ』となる。

 次に理解してほしいのは、麻雀は先の点数を奪いあうのに、様々な絵柄が書かれた小さな直方体である『牌』を使うということだ。牌を特定条件で組み合わせたものを『やく』といい、役を含みつつ(基本的には)14枚の牌を特定の形に仕上げることを『和了あがる』という。和了ると点数を対戦相手から奪えるのだが、条件がきつければきついほど役の点数が高くなるのだ。それを踏まえた上で次に進む。

 『アリアリ』というのは食いタン有り、後付け有りを示している。食いタンは、『鳴いて』仕上げる『タンヤオ』。『タンヤオ』というのは最も簡単な役の一つである。このように『アリアリ』については『後付け』共々『鳴く』という概念を理解する必要がある。

 麻雀は参加者全員に最初13枚の牌が配られる。これを『手牌』という(当然手牌の中身は対戦相手から隠す。別にルール上は見せても特にお咎めなしだが、それはトランプのババ抜きで自分のカードを見せながら戦うようなものである)。それからは牌を重ねた列である『やま』から一枚引いて(この行為を『ツモ』と表現する。後に出てくる役の『ツモ』とは似ているが少し違う)、和了れる形に仕上がったなら牌を倒して対戦相手から点をむしり取り、出来なければ手牌か引いた牌かのいずれか一枚を、絵柄を表にして牌捨て場である『かわ』に置いて(この行為を『切る』と表現する)次の人に回す、を繰り返すのが麻雀の流れだ。ただ、その『河』に対戦相手が捨てた牌を条件が揃えば奪うことが可能となる。それを『鳴く(これを『食う』とも表現するため鳴いて仕上げるタンヤオを食いタンという)』といい、『ポン』『チー』『カン』の三種がある。三種の違いについての説明は省く。

 この鳴く行為で、はじめの鳴きでは役がないが、二回目以降の鳴き、もしくは和了った時に初めて役が確定する、といった状況を『後付け(もしくは『バック』)』という。後付け有り、というのはその状況でも役を認めるということだ。これを認めないルールは『完全先付け』という。ややこしかろう。

 さぁ、そろそろだれてきたか。次は『ローカル役』である。これは地方役とも呼ばれ、特定の地域でしか通じない役となる。『三連刻』『四連刻』というのがそのローカル役の一つであり、この二つだけは役として認めるということである。調べてみると、中々に興味深いものが多い。東北新幹線など、その最たる例であろう。



「ツモピンは?」「赤と季節牌は?」「焼き鳥と役満ご祝儀は?」「倍率は? テンピン?」


 ここからは榊原さんの秀麗なる発言にいこう。

 ツモピンというのは『ツモ』と『ピンフ』という役を同時に成立させるかということで、今回は有りなので両方とも同時に成り立つ。無しの場合は『ツモ』のみを役として計上するのだ。

 『赤』というのは麻雀にある特殊牌で、これの理解には牌の種類を把握する必要がある。牌には『トン』『ナン』『西シャ』『ペー』『ハク』『ハツ』『チュン』の『字牌じはい』と呼ばれるものと『萬子マンズ』『筒子ピンズ』『索子ソーズ』の三種の『数牌かずはい』と呼ばれるものがある。字牌はその名の通り、その字が牌に書いてあるためわかりやすい(『白』はなにも書いてない真っ白な牌)。数牌はそれぞれが一から九まで更に分かれている。『一萬イーマン』『三筒サンピン』『九索キューソー』などだ。つまり牌の種類は字牌7種と数牌3×9種の計34種から成っているのだ。そして、この34種をそれぞれ4枚ずつ、34×4の計136枚の牌を使って麻雀は行われる。

 さて、ここで『赤』である。赤と呼ばれる牌は持っているだけで『ドラ』という役になるもので、通常ルールでは存在しない。ただ、赤を入れるルールの場合には『赤五筒(ウーピン)』二枚と『赤五萬(ウーマン)』『赤五索(ウーソー)』を一枚ずつ入れて、元々の『五筒』二枚『五萬』『五索』を代わりに抜くのだ。

 『季節牌』は赤と似たような、持っているだけで『ドラ』となる牌で、これも通常ルールでは存在しない。入れる場合は『春』『夏』『秋』『冬』の四枚を入れる。ただ、赤と違うのは代わりに抜く牌は無い(季節牌を入れる場合は牌の総数は140枚となる)ということと、これらの牌と引いたら、とりあえず表を向けて脇に置き、もう一枚牌を引けるということだ。つまり、これらは自分の手牌の中には入らないものとなる。

 赤は引いても役づくりに活用しなければ邪魔になる場合もあるが、季節牌は引けば引くだけ得をするラッキー牌という感じだ。ただし、『ドラ』という役は少し特殊で、これだけでは和了ることができないという点は気をつけないといけない。必ず他の役と絡める必要がある。

 いよいよ終わりが近づいてきた。『焼き鳥』である。これは一回も和了れずに一度のゲーム(麻雀用語で『半荘ハンチャン』という)が終わってしまった人が払う罰金で、サイコロを一つ振って出た目の×千点を全員に払う等、サイコロを用いて罰金を決めることが多い。

 『役満ご祝儀』というのはその名の通り、『役満』を和了った人に払う祝い金だ。『役満』とは出た時点で試合が終了するほど点数が奪える、麻雀の中で最高の役となる。当然出すのは相当難しいため、それに対するご褒美というわけだ。和了られた方にとっては泣きっ面に蜂状態で笑えない。どれだけ払うかは種種様々で、あまり決まった形は無い。

 以上が二人のやり取りの解説となる。これを真面目に全て読んだ方は大変偉い。偉いが、誠に残念なことに、この物語においてはこれらの知識はあまり役立たないことを先に伝えておく。すまぬ。

 ……倍率? はて、なんのことやら。これは爽やか青春恋愛物語なのである。生臭いお金のやり取りなど発生するはずがないのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ