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作者: 山川俊則

ドタドタと走り回る音が響く。鈍いのたうち回るような音が響く。ふと頭をよぎる。

"炎は残酷だ。仮に人間が人間を殺める時、その今際の際には必ずある種一定の慈悲が生まれる。最後の引き金を引く瞬間、撃鉄が雷管を撃つまでの最後の人間が意思を持って行う動作。

その動作には重みが違う。ある一人の人間の意思を、思想を、努力を、人生を、無にしてしまう。大いなる責任感。だが炎なら、全てを燃やし尽くしてまう。炎に微塵の慈悲も無い。ただ燃えると言う動作を発生させるのだ。"ここまでが彼女が勧めたある本の一節だった。何故付き合い始めて一ヶ月もたたないうちにこの本を進めてきたのかはわからない。だけど僕にとってこの一説が重く何か意味ありげなことは明らかだった。たしか君に出会ったのは大学に入ってからはじめてのライブだった。新入生の歓迎ライブで先輩方の演奏を見ていた時、自分の好きなバンドのコピーが始まった。まだ青が残るような演奏が舞台を包む。そんな最中まだ演奏も鳴り止まない、そんな時君と何故か目があった。運命と言われればそうなのかもしれない。少なくとも君はそう信じていたよね。

ライブが終わってからの新入生同士の顔合わせの時、僕は君に声をかけた。目があってしまって何か声をかけないと言うのも少し変に気まずい、そんなことを考えてたっけ。

すると君は明るい笑顔で返してくれた。

そこからはひたすら楽しい時間が続いた。

そこには多分好きなバンドが一緒だったこともあるし多分僕が恋に飢えていたと言うのもあったと思う。そのあと何回かデートをして僕たちは付き合うことになった。当時はお金もなく家賃もギリギリだったので彼女の家に住まわせてもらうことになった。そこからさらに月日は流れる。僕と君はもう大学3年生、付き合ってからは2年と少しくらい(細かい日付は忘れたし当時も記念日すら覚えていなかった)、その時君は割と勉学に励んでいた、でも僕は勉強をしようとは思えない、この頃から僕と君には歪みができ始めた。ほんの出来心だった。今になって釈明する訳じゃ無いが、今でも君はあまりに僕を放置し過ぎたんだ。多少の反省はあるけど。

僕は浮気をした、それも君の一番の友達とね。

当然長くは続かない、もちろん君の耳にはすぐに入った、だけど君は待ってた、僕が元に戻ってくれることを。それでも僕は反省しなかった。

そしてまた日が流れ(細かい事は考える暇はないよな)ついに彼女は堪忍袋の尾が切れたらしい。

普段は温厚な彼女がヒステリックにどこかで狂気を感じるように僕に罵声を浴びせた。

僕は何かを言い返した気がする。その結果、

彼女が僕の頬を強く叩いた。

その素振りは人生で初めて人を叩いたかのようなどこかぎこちない悲壮感に溢れていた。

その後彼女はどこかへ消えていった、彼女の部屋に僕一人、いつしか二人で囲んだテーブルには彼女がさっき足をぶつけてひっくり返した、雪印のコーヒ牛乳が溢れていた。


どんどんと激しい物音。

ハッと我に帰るような感覚。

きみは狂気じみた笑顔をしている。

本能で、避けるべきだ、逃げなくてはと感じる。しかし頭のどこかでわかっているんだ、因果応報だって。君は笑顔でひややかな灰色を突き立てた。




君は人間、それとも炎?

眠いよね〜

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