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ただいま、おかえりなさい

……………………


 ──ただいま、おかえりなさい



 それからしばらく後のこと。


「ただいま」


「マスター。今お帰りですか? 遅かったですね」


「久しぶりにアランと会ってきた。彼はもう納得しているようだった」


 アランはあれから裁判にかけられ懲役640年を言い渡されていた。


 彼が生きて牢獄を出ることはないだろうが、エリックはときどき面会に向かっていた。アランはあれから自分の行いが間違っていたことを認め、自分たちに関係する純潔の聖女派と神の智慧派の関係者の名前を告げていた。


 セレファイスでは粛清の嵐が吹き荒れ。預言者の使徒派はその地位を確かなものとした。まあ、彼らは彼らで問題があるのだが。


「今日は帰ってきますから支度が大変です」


「アルファ、ベータ、ラムダ、オメガ、そしてフィーネ」


 フィーネはあれから心霊捜査官の試験をダイラス=リーンで受け、無事にダイラス=リーン都市警察の心霊捜査官として採用されていた。


 オメガも基礎学習が終わると後を追うようにダイラス=リーン都市警察で心霊捜査官になった。今はフィーネとともに新しい捜査手法を考案中らしい。


「ただいま、父さん」


「だだいま、パパ!」


 そうこうしている間にアルファとベータがやってきた。


「お帰り。君たちの方は安定したかい?」


「ええ。もう文句を言ってくる純潔の聖女派もいませんしね」


 純潔の聖女派はあれから自己規律を極める派閥に変わった。他者にはそれを強要せず、自分たちで酒を断ち、女を断ち、俗世から切り離された存在となった。そのため純潔の聖女派を離れたものも少なくなかったが、かつてのように科学や魔術の進歩にとやかくいうような派閥ではなくなった。


 ルアーナも今では預言者の使徒派だ。


「父さん。こんばんは」


「ラムダ。今は休暇なのだね?」


「ええ。次の任務まで時間がありますから」


 ラムダの連邦海軍水陸両用コマンドは次は中東地域に派遣されることになっていた。メリダ・イニシアティブの失敗における連邦政府内の責任の擦り付け合いから連邦海軍は離脱し、メリダ・イニシアティブで本来阻止すべきだった東方から違法薬物の流入に対処する予定だった。


 連邦は今でも違法薬物の流入を阻止しようとしている。そのことは連邦で最高の連邦海軍水陸両用コマンドが派遣されることからも明白だ。


「父さんには戦友全員が感謝していますよ。父さんのおかげで生き残れた」


「フィーネとエリザベートのおかげだ。彼女たちが人工の神を終わらせた」


「それからひとりだけ純潔の聖女派で魂が呼び出せない人間がいるのですが、父さんは何か知っていますか?」


「……それについては知らない方がいい」


 ラルヴァンダードの正体はいくら神の存在を証明するものであったとしても伏せておいた方がいい。そうしなければ次の犠牲者が出る。


「ただいまでーす!」


「ただいまです、お父様」


 そして、玄関から賑やかな声がした。


「やっとデスクワークから解放されましたよー。辛かったー」


「お母様はデスクワークを溜め込みすぎです」


 そして、いつものジャケット姿のフィーネとおそろいのジャケット姿のオメガが姿を見せる。フィーネの方は肩を叩いている。


「おかえり、フィーネ」


「ただいまです、あなた」


 少し頬を赤らめてフィーネがそう告げる。


「えっとですね。エリックさん。産休の許可がおりましたので、暫くは家にいます」


「そうか。それはよかった」


 エリックが愛おしそうにフィーネの腹部を撫でる。


「私たちの新しい兄弟ね」


「姉妹かもよ?」


 アルファたちが賑やかになる。


「さて、フィーネさんの無事の出産を祈って今日は御馳走ですよ。フィーネさんはふたり分食べてくださいね」


「やったー!」



 こうして死霊術師と弟子の話はハッピーエンドで終わる。



 世界は回り続け、発展を続ける。



 それが世界にとっての幸せにつながると信じながら。



……………………

本作品はこれにて完結です。お付き合いいただきありがとうございました!


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― 新着の感想 ―
[一言] 最後まで残るなぞは結局、エリックとエリザベートをテロった黒幕は何者なのか?ですかね。
[良い点] 読み終わりました! 面白かったです。 ルアーナも良くなって良かった。
[良い点] 前向きで明るくかわいい死霊術師は新鮮でした。 また最初あんなにイライラするようなキャラだったルアーナが酒に溺れたりしつつもまともになってくれたのはよかった。 [一言] 完結お疲れさまでした…
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