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萌彩と舞彩

「信じていいのか」

 いったんホッとした八雲だったが、しかし、今度は不安が沸き起こってきた。八雲は萌彩を見る。やはり、まだ幼い顔をしている。ただ童顔なだけでは絶対にない。

 バ~ン

 すると、また奥の扉が勢いよく開いた。八雲はビクッとして、背筋が伸びた。

「さっ、行こうぜ」

 さっき出てきた少女が再び出てきて、そのまま二人の方へ颯爽とやって来た。そして、八雲の前に立つ。

「えっ?」

 八雲は少女を見上げた。

「えっ?じゃなくて、早く行くぞ」

「行くぞって、ど、どこへ?」

 八雲は、少女に対しておずおずと聞く。

「どこってお前んちだろ」

 八雲は、目をしばたいた後、萌彩を見た。萌彩は相変わらず落ち着いている。

「・・・」

 八雲はもう一度、出てきた少女を見上げた。やはり出てきた少女は萌彩にそっくりだった。八雲はさらに混乱した。

「こちらは専務の舞彩です」

 萌彩が落ち着いた口調で、手の平を上にして少女の方に向けた。

「専務?」

「はい」

 それにしても似ている。滅茶苦茶そっくりだ。というかクローン人間のようにまったく同じだった。

「あの・・」

 普段経験したことのないことを目の前にすると、頭が混乱してうまく言葉が出てこない。

「私たち双子なんです」

 萌彩が言った。

「えっ」

 八雲はあらためて、二人の少女を見比べた。二人は、やはりうり二つだった。

「なるほど・・、それで・・、そうだったんですか・・、どおりで・・」

 双子と聞いて八雲はやっと得心がいった。

「いいから、さっさと行くぞ」

 舞彩が苛立たし気に言った。

「い、今から?」

 再び八雲は舞彩を見上げる。

「そうだよ。当たり前だろ」

「あの・・、あなたが?」

「そうだよ。実際見てみなきゃ分かんないだろ」

「あの、他にスタッフは?というか大人の人は?」

 八雲は、事務所内を見回した。

「この事務所は私たち二人だけですよ」

 萌彩が落ち着いた口調で言った。

「えっ!二人だけ?」

 改めて八雲は萌彩と舞彩を見た。どう見ても高校生くらいだ。下手をすると中学生にすら見えなくもない。

「君たちいくつ?」

「十六」

 二人は全く同時にハモルように言った。

「・・・、こ、高校生・・?」

「違うわ」

 舞彩が言った。

「えっ」 

「だって高校行ってないもん」

「・・・」

 八雲は、しばしその場で茫然と萌彩と舞彩を交互に見つめた。そして、おもむろに立ち上がった。

「じゃあ、今回はなかったことに・・」 

 八雲は、軽く頭を下げると、そのまま出口に向かった。

「あたしたちが、子供だから?それとも、高校に行っていないから?」

 舞彩が険しい顔で、事務所を去ろうとする八雲の背中に言った。

「・・・」

 八雲が立ち止まり振り返る。

「能力に年なんか関係ない。出来る奴は出来る。出来ない奴は出来ない。違う?」

「・・・」

 八雲はしばらく黙って舞彩を見つめていた。

「でも・・」

 しかし、八雲は再び舞彩たちに背を向け歩き出した。

「他に行く当てもないんだろ」

「うっ」

 八雲は再び立ち止まった。その通りだった。

「他に助けを求めた。でも、笑われるか、バカにされるか、頭がおかしいと思われたか、それで散々、彷徨った挙句ここに辿り着いた」

「ううっ、なぜそれが・・」

「ここに来る奴はみんなそうなんだよ。でも、私たちは、全て解決してきた。どんな、厄介で怪異な案件でも」

 舞彩が胸を張るように八雲を見る。なんか年下のわりに妙に貫禄がある。

「・・・」

 八雲は考えた。

「試してみてからでも遅くはないんじゃないか」

 舞彩がそんな八雲にたたみかけるように言った。

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