少年にとってのあの場所とは。
ここは小さな国の集まる小さな世界。
そこに住まう者たちは何も知らない。
その世界はその中だけで完結されており、それぞれが様々な思惑のなかうごめく。
この中で一人の男は生まれ落ちた。
「じい!じい!」
叫ぶように声を上げる少年
「はいはい、若様いかがなされた」
その声に呼応するよう現れ、声をかける。
「わしは嫌じゃ!」
「はて、なんのことですやら」
「じいはいつもそうだ。わかってても教えてくれない!」
「若様、なぜそうなっているのかは、自分でもおわかりでしょう」
「うむぅ…わかっておる!だが!」
「だが、しかし、でも、だって。は使わない。じいとの約束でしたでしょう。」
「うううう」
「ですが、この度だけは何も責めません。よく我慢なさいました。」
少年はそのように声をかけられ、しょんぼりとしながらも、じいと呼ばれている初老の男性にすがりつき、顔を埋める。
「はてはて、こまりましたな。気分転換に町にでも行きますか。」
その言葉を聞き、嬉しそうな微笑みを返す。
「なんと現金な若様だ。まあ、しょぼくれているよりも「よろしい」ということで。参りましょうか。」
場面は代わり、少年が憤りを感じた場所。
そこには派手な衣装に包まれる数名と、その方たちを取り巻きお世話をする方々。
少年の父はそのお世話する方々の中に数えられた。