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小さなメイドさん  作者: Ichiko
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新米お嬢さま

康子とこのみが麗の家に来た翌日の朝を迎えた。


『おはようございます。』


このみがいつものメイド服を着て厨房に降りてくると、上西と康子が朝食の準備をしていた。


『おはよう。』


康子は普段から使っているエプロン姿である。


『写真では見たけど実物はより可愛いわね。』


康子がこのみのメイド服姿を見るのは初めてであった。


『このみちゃん……、いやこのみお嬢さま。その様な服を着てここに来てはなりません。』


上西が突然このみを拒んだが、今までは普通に厨房に入り料理や皿洗いの手伝いをしていた。


『このみさん、貴女はもうお仕事をしてはなりません。』


『このみさん?お母さん、どうしたの?』


『昨日貴女が寝てから旦那さまや麗さんとお話して取り決めたの。二人だけの時以外は呼び方を改めて、このみさんは家のお仕事はさせないという事になりましたの。』


このみは強いショックを受けた。


『これからどうすれば……。』


麗の家に来れば今まで以上に仕事が出来ると思っていたのに、その権利を剥奪されてしまったのだ。


『麗お嬢さまがお庭でトレーニングをしていますからご一緒されたら如何でしょうか?』


『そうします。』


このみはTシャツに短パン姿で庭に出ると、麗はドリブルの練習をしていた。


『おはようございます、麗さん。』


『おはようございます、このみさん。本日からワタクシの事をお姉さまとお呼び戴けませんでしょうか?』


『お姉さま……そうですよね。これからは姉妹なんですよね。』


『正式にはまだ先なのですが、特にこのみさんには慣れて戴く必要がありますから。本当はお客さまが来られた時のためですので普段は今まで通りで良いのですが。』


『承知致しました、お姉さま。』


ふたりは顔を合わせて笑った。


『今日、10時には広田先生が来られますから準備をして下さいませね。』


仕事の代わりにみっちり勉強である。


『おはようございます。』


先生ではなく遥の声だった。


遥も夏休みは週に3日今井家のメイド見習いをする事になっている。


『あ、こうちゃん。おはよう!』


私服に着替えたこのみを見付けて遥が声を掛ける。


『こうちゃんではありません、このみお嬢さまとお呼びするのです。』


さっそく頼子から雷が落ちた。


『遥さん、おはようございます。』


このみは麗の真似をする様に挨拶をした。


『このみさんは勘が良いのですね。』


[姉]の麗から誉められた。


メイド見習いの時も仕事を覚えるのは早かったし、実技の習得は得意なのだ。


『制服が出来るまで、エプロンを貸与致します。』


遥の体型は若干ふっくらなので、このみや知香たちに作ったメイド服は合わないので遥用のメイド服が出来上がるまでは私服にエプロンという普通の家政婦の様なスタイルである。


『遥ちゃん、頑張って。』


『このみさん、聞こえてますわよ。独り言ならちゃん付けも宜しいかと存じますが他の人に聞こえる独り言は慎んだ方が宜しくてよ。』


生まれついてのお嬢さまの麗とにわかお嬢さまのこのみでは月とスッポンほどの差がある。


『はい、申し訳ございません。お姉さま。』


麗を観察していると基本的には目上の人には様、同等或いは目下の人にはさん付けだと分かる。


相手が男性であっても清水くんではなく清水さんである。


という事は敬称はふたつだけで良いので今までより楽なのだ。


(目上だけど知香さんは知香さんで良いのかな?)


新米のお嬢さまには勉強すべき事がたくさんある。


勉強といえば家庭教師の広田だ。


このみは最初からつまづき、広田を困惑させた。



『ふぃ~っ。』


昼食は康子、麗、広田先生と4人で摂るがスパルタ教育で頭がパンクしそうだ。


『先生、このみさんは如何でしょうか?』


『少し時間は掛かると思いますが、まだ二年生ですから大丈夫です。』


大器晩成と言えば聞こえが良いがそれまで勉強をして来なかったツケが回ってきただけなのである。


『申し訳ございません。今まで自由にさせて来たものですから。』


『お母さまのせいではございませんわ。本人のやる気なのです。


康子は麗に謝ったが、このみは二人の会話も耳に入らない。


『このみお嬢さま、どうぞ。甘いものはストレス解消に役立ち、疲れを和らげます。』


頼子が食後のデザートをテーブルに置いた。


『頼子さん……。ありがとうございます。』


昨日までこのみの指導係であり先輩だった頼子が今日からは立場が逆転してお嬢さまと使用人という関係になった。


このみは今にも泣き出しそうになったが、懸命に堪えた。


ここで切れてしまえば今までの自分や康子の努力、麗たちの好意を全て裏切る事になる。


(頑張らなきゃ。)


デザートを食べながら、このみは決意を新たにした。



1週間後、遥のメイド服が出来上がった。


『遥さん可愛いです。似合いますよ。』


このみと同じデザインのメイド服はこのみも大好きだったが、もう着る事はない。


『このみお嬢さま、ありがとうございます。』


遥も気に入った様だ。


『お仕事は慣れました?』


『まだ全然慣れません。いつも頼子さんに怒られています。』


『このみお嬢さまより3倍の時間は必要かと思います。』


頼子は容赦ない。


『私もまだ新米です。一緒に頑張りましょう。』


『はい、このみお嬢さま。』


このみも遥も新しい生活のスタートを切ったばかりである。



このみがメイドではなくなったので[小さなメイドさん]はこれで終わります。


このみは最初の構想に全く無くてその場しのぎで作ったキャラクターでしたが、まさか麗の妹になるとは私自身驚いています。


知香が卒業すると接点が少なくなるので、新たに同時進行でこのみが性別適合手術を目指してお嬢さまとして成長していくストーリーを書いていきたいと思っています。


ありがとうございました。

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