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小さなメイドさん  作者: Ichiko
4/5

永久就職?

料理が出揃い、静かに食事が始まった。


(こんなお料理、いつ以来かしら?)


康子は結婚してから働きづめでゆっくりレストランなどで食事をする事は皆無であった。


特に離婚後は一人息子(→娘)を育て、生活に追われている。


『お味は如何でしょうか?』


『は、はい。とても美味しいです。』


このみは仕事の後に夕食を出されると言うが、こんなものをいつも食べていたのか?


『このみくんが来てからうちの麗も以前より明るくなって感謝しています。』


源一郎が笑顔で言った。


『半分は知香さんのお陰です。ここで働く事になったのも知香さんの紹介ですし。』


『こら、こうちゃん!』


康子が小声でこのみを嗜める。


『ふふふ、それは確かにそうですわ。このみさんもそうですが、ここに居るリカルドも元はこのみさんの田舎にスティされていたのですから。』


『それは私も感じております。知香さんのお陰で康太……このみが自分の道を切り開いたのですから。』


『でも、このみさんの努力もあっての事ですわ。これからはご自身で歩いて行かなければなりません。』


知香だって手術をして自分の道を切り開いていかなければならないのだ。


このみはある程度までは知香の道をトレースすれば良いのだが、いつまでも一緒には居られない。


『私もこのみくんには出来ればずっと居て欲しいと思っています。とはいえこのみくんもまだ中学生ですし、戸籍を変更したら将来やりたい事もあるでしょう。ここは相談なのですが、このみくんのこれから治療や手術に掛かる費用を私に出させてもらえませんか?』


康子もこのみも目が点になった。


『そ……それって一生今井さんのお家で働けって事でしょうか?』


今はみんな優しくしてくれているしこのみも楽しく働いている様だが一生束縛されるというのはあまりにも夢がない。


『いえいえ、学校を卒業するまでで大丈夫です。その頃には戸籍の変更も終わって素敵な女性になっているでしょうから。』


『そこまでして戴けるなんて、働いた対価にしては大き過ぎませんか?』


康子は話が美味すぎて信じられない。


『相談というのはここからです。康子さん、良かったら親子でこの家に住んでみませんか?』


『は?』


『もちろんただでとは言いません。康子さんにも住み込みで働いて戴ければ私たちにとって非常に助かるのです。』


『私が……ですか?』


康子にとっては晴天の霹靂であった。


『毎回、このみくんのお仕事が終わる時間が遅く、上西が送っていますがやはり心配なのです。また、麗も高校やバスケットボールの練習や試合でこのみくんに残業してもらって大変申し訳なく思っています。娘によると、うちで働いたお陰で勉強の時間が取れずに学校の成績が少し下がっているとも聞いております。』


(働いているせいじゃないんだけど……。)


もともと勉強が苦手なだけだ。


『うちで働いて戴いてこの様な成績では申し訳が立ちませんわ。このみさんにはお仕事の時間を少し減らして家庭教師を付けようと思いますの。このみさんは今や今井家に無くてはならない家族の様な存在ですわ。そのこのみさんのお仕事の一部をお母さまにお願いしたいのですが。』


『私になんか出来る仕事でしょうか?』


『大丈夫です。このみくんがうちの家族なら、このみさんのお母さまである康子さんも私たちの家族の様なものです。慌てずにゆっくり覚えていけば問題はありません。麗は小さい時に母親を亡くし、淋しい想いをしてきました。頼子さんが母親代わりにずっと居てくれてますが、このみくんの母親である康子さんにお手伝い戴ければ麗も喜ぶでしょう。』


今井父娘に交代で説得されては断る訳にいかない。


『今の仕事も収入が多いとは言えませんが会社には大変世話になっております。簡単に辞めるにはいきません。』


『さすがはこのみくんのお母さまです。その責任感はとても大事な事です。今すぐとは言いませんから是非お願い致します。』


康子がこのみの顔を見ると、このみは頷いた。


『分かりました。今の仕事は例年夏前に暇になるので7月くらいでも宜しいでしょうか?その時期ならこの子も夏休みになりますので。』


源一郎も麗も喜んだ。


『何から何までありがとうございます。宜しくお願い致します。』



話が終わり、上西の運転する車で二人は帰宅した。


『思った通り、康子さん、このみさんそっくりですね。』


上西が康子に話し掛ける。


『顔ですか?』


『顔もですけど、性格もです。初めて今井の家に来た時のこのみちゃんもそんな感じでしたよ。』


康子とこのみはお互いの顔を見る。


『旦那さま、このみちゃんの事を凄く気に入っていてね、養子にしたいなんて言う事もあるくらいなんだ。』


『上西さん、本当ですか?』


源一郎が帰宅するのはほとんどこのみが帰った後で顔を合わせる事は少ない。


このみのいない時にそんな話が出たのだろうがこのみには寝耳に水だ。


『いや、もしかすると康子さんを後妻に考えているのかもしれない。そうなればこのみちゃんも今井の娘って事になる。』


上西の推理はあまりにも飛躍し過ぎている。


『考えてみて下さい。ほとんど無条件でこのみちゃんの治療費から手術代まで出してくれるって言ってるんですよ。さらに家庭教師を付けるとか。今日の食事をお見合いと考えたら辻褄が合いますよ。』


『そんな、止めて下さい。働かせて戴くだけで充分です。』


そうは言ったが、康子はまだ35歳だし、再婚しても全然不思議ではない。


(このみの事を考えたら最高だけど。)


上西のまさかの推理に康子は久し振りに胸が踊った。


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