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わたしとかのじょとそのほかと。  作者: アイカ
何も知らない少女の話
5/9

つみとばつ。

目の前には懐かしいような覚えていないような景色。




あのころ、かのじょはなかなか笑わない子だった。




今でもあまり笑わないけれど、今よりもっともっと壁を作っているような少女だった。




かのじょは、真っ白な髪に真っ赤な目。とても綺麗だった。

あの、何もかもを諦めたような顔が、とても美しいと思った。






そこで、わたしは……









ふと目を開ける。

まず真っ白な髪があった。真っ白な手がわたしの手を固く、固く握り締めている。

すうすうと安らかに寝息を立てる少女。かのじょはすっかり疲れ切った顔でわたしの手を握って眠っているようだ。

そっと周りを見渡しつつ、状況を確かめる。

わたしの顔には包帯が巻かれていて、腕にもガーゼ。そこそこのけがを負っているようだった。

わたしは何故、こんなことになっているのだろう。

ゆっくりと昨日のことを思い出す。

様子のおかしかったなごみ先輩。わたしと先輩は一緒に帰って、それで、なごみ先輩は…





『お姉ちゃん!!お姉ちゃんを、いろはお姉ちゃんを!守らなきゃ!!!』









「なごみ先輩っ…!!」




どうして、忘れてしまっていたんだ。あの時、先輩の目は真っ赤、つまり魔眼が発動していた。つまり、わたし達は何かしらの魔法に起因するものに迫られていた。それをなごみ先輩が、察知して、きっと…



「つ、つむぎちゃん、起きた…の…?」


ねむちゃんが目覚めた気配がする。わたしは挨拶もせず幼馴染に掴みかかった。




「な、なごみ先輩はっ?!なごみ先輩、どうしたのっ?!」




時間が惜しい。だって、あの時なごみ先輩は、わたしを守ろうとして…!!



しばしの沈黙の後、ねむちゃんはとてもいいにくそうな顔をして、切り出した。



「なごみ、先輩は……














死んじゃった…」



あの日、なごみ先輩はわたしを庇って死んでしまったんだ。


どうしてあの時なごみ先輩の様子がおかしいことに気づけなかった?



どうして、あんな簡単に意識を失ってしまったの?



だってなごみ先輩はわたしの先輩で、いろは先輩の大切な妹で。




そんな人を、わたしは、奪ってしまったんだ。






「つむぎ、ちゃん…?!」



ねむちゃんがわたしの腕を掴んで、そこでわたしは手のひらに血が滲むほど拳を握りしめていたことに気づく。


きっと、そうしなければわたしは罪の意識に負けてしまいそうだったから。


わたしはあの日、なごみ先輩を見殺しにした。











新聞はひっきりなしにこの怪事件を報道するようになった。

一年の間に二人の生徒が魔法生物により殺害。きっと話題性もあるのだろう。その話がされない日なんて無かった。


なごみ先輩の遺体の状況はあまりの悲惨さでいろは先輩に遺体を見せることを警察が躊躇うほどだったらしい。


ひどく戦闘したのか黒髪は頭皮ごと引きちぎられた場所もあって。


…片目は抉られたのか、潰されたのか。眼球が見つかることはなくそこだけがからっぽ。


腕は肉を抉られ脂肪や骨が露出していて自己防衛に使ったらしいナイフを握りしめる手の爪はいくつか剥がれていた。


死亡後もいたぶられたらしく、いろは先輩は発狂して今は専門的な場所で治療を受けているらしい。



ねむちゃんは何も言わなかった。記者に囲まれかけている時だって一喝して追い払ってくれる。リポーターが来れば一緒に撒いてくれる。


ただ何も言わずにそばにいてくれた。



わたしは何でかのじょを疑ってしまったのだろう。ただ静かに寄り添ってくれる、親友のかのじょを。


どうしようもない自己嫌悪に陥る。わたしはなごみ先輩を見殺しにして、ねむちゃんを、この事件に関わっている怪しい人だって疑った。



今日もかのじょは先生の呼び出しに応じている。先生も、もうなりふり構っていられないのだろうか。




「つむぎちゃん、ちょっとだけいい?話したいことがあるんや」




俯いて歩いていると、鈴のなるような静かな声がわたしを呼び止める。



そこにいるのはあの不思議な色合いのロングヘアの女性。…すっかり痩せて生気のないいろは先輩だ。



「…いいやろ?」



そういった先輩の目が赤くなった気がした。

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