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わたしとかのじょとそのほかと。  作者: アイカ
何も知らない少女の話
4/9

なごみ先輩。

あたまが、いたい。



どうして、どうして。



どうして、いまなの。



うごかなきゃ。うごかなきゃいけない。



うごかなきゃまもれない。





うごかなきゃ、ころさなきゃ、おねえちゃんをまもれない。




学校を取り巻いていた不穏な空気は夜が更けるのが大分早くなった頃にはすっかり鳴りを潜め生徒たちは普段の明るさを取り戻しつつあった。

もちろん、わたしもその一人だ。最近はホムンクルスの噂なんて聞かないし、ようやく平和な生活が送れる。今日も今日とて幼馴染を引きずりながら、この暖かい時間が永遠に続けばいいと、空で光る太陽に祈ってみる。


けど、やっぱりねむちゃんは何かを隠している。ホムンクルスの行動の異常性、かのじょが気づかないわけがない。そしてかのじょは「なんでもない」

と言っていた。嘘をついていた。


それをもう一度理解すると、自分の周りだけ体温が著しく下がった気がする。


「…つむぎ、ちゃん。もう、校門だよ…?」


あくび混じりのその声に促され、校庭に足を踏み入れる。今、わたしはかのじょに向かってうまく笑えているだろうか。




それは、わたしのかのじょに対する違和感が膨らみ続ける中、起こった。


なごみ先輩の様子が、少しずつ、少しずつおかしくなっていったのだ。

元から人見知りで無口なところもあったなごみ先輩は口数がどんどん少なくなっていった。そして毎日頭痛に悩まされているらしい。

ホムンクルスの事件は起こっていないのに。いろは先輩だってニコニコしているかと思えば不意に眉を寄せている瞬間を見たのは一度や二度ではない。

なにか、わたしの知らないところで何かが起こっている。そんな気がするのだ。


「なごみ、体調は大丈夫なん?」

心配そうにいろは先輩がなごみ先輩に聞いている。手にしたブランケットはなごみ先輩のために用意したのだろう。その瞳は妹に対する気遣いにあふれていた。


「うん…ありがとう、お姉ちゃん。」


なごみ先輩はかすかに赤くなった瞳で力ない笑顔を浮かべる。最近なごみ先輩はずっと魔眼が反応しているらしく、いろは先輩がずっとつきっきりでいる。先輩の魔眼は悪意ある力を察知するから、先生方も秘密裏に動いているとねむちゃんが眠たそうにいっていた。かのじょもまた先生方に協力を要請されたらしい。大の大人にも頼られるなんて流石かのじょだ、とその場には関係ないことを思ってしまった。


「ん?…はいはい、どうしたん?」


いきなりいろは先輩の携帯が鳴り、先輩は電話に出た。その顔は初めは笑顔だったが顔はどんどん暗くなっていき、まるで百面相のようだった。


「なごみぃ…ごめんな!うち、生徒会の仕事ができたん!…一人で帰って欲しくないなぁ」


先輩が悲しそうにいった。ブランケットを肩にかけたなごみ先輩もどこか悲しそうな顔で頷いている。


「つむぎちゃん、一緒に、先輩と帰ったら?」


そう言ったのはこちらもまた携帯を手にしたねむちゃんだった。


「わたしも先生方に収集、かかっちゃった…」


そう言ってから大きなあくびをしてねむちゃんは机に突っ伏してしまう。

そうか、今日はねむちゃんと帰れないのか……ちらり、となごみ先輩を見ればなごみ先輩も複雑そうな顔を浮かべている。きっといろは先輩と帰りたかったのだろう。


「あ、なごみ先輩、一緒に帰りますか?」


時計を見ればもう下校時刻。今帰らなければ日が暮れてしまってとても危ないのだ。


「は、はい…帰りましょうか」


そう言ってからなごみ先輩は少し笑顔を浮かべた。その顔は何かを決意したような、強い輝きを持っていて、どこか悲しそうな感じにも思えた。


いろは先輩とねむちゃんに手を振って教室を出る。隣のなごみ先輩も静かに手を振ってドアを閉めた。


「つむぎちゃんは、私と家の方向、同じですよね…?」


女性らしくカバンを腕を揃えて持ったなごみ先輩は気まずそうに話を振ってくる。やはりいろは先輩がいた方が話をしやすいのだろう。


「はい。こっち側、人がなかなかいなくて結構怖いですよね」


こちらも笑顔で話題をつなげる。こんな時に部活の仲間たちの重要性に気づく。

仲睦まじく過ごしているようでも誰かがいなくなればこんな風に歯車は噛み合わなくなるのだろう。


「はい、人、こない、ですよね…」


そう言って、なごみ先輩は立ち止まる。俯いていてその顔はよく見えない。


「あの、なごみ先輩、早く帰らないと日が暮れちゃいますよ?」


また、頭が痛くなったのだろうか。なごみ先輩の方に足を一歩踏み出して、











頰が切れた。



何もわからない。頭が真っ白になる。



先輩は目を真っ赤にして何かを叫んでいる。



目が真っ赤、だったら、きっとホムンクルスの暴走した?何か、魔法生物?





薄れてゆく意識、先輩の叫びだけが焦げ付いていた。

















「お姉ちゃん!!お姉ちゃんを、いろはお姉ちゃんを!守らなきゃ!!!」















そこで意識は途絶えた。



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