人型PC
あのしなやかな動きはなんだろう。それもCGの、滑らか過ぎる不自然なしなやかさではなく、人間的。
あの動きを作り上げるために入力されたヒトの体の動きパターンのデータは、想像を絶する膨大なものなのではないかと、開発者たちの日々の小さな仕事の積み重ねの終結の結果を見て感心する。
おい、走ってるよ走ってるよ!それも。ちょっとひざをかがめた姿勢で、かっこよくなく。
こいつは、キャシャーンでもなくR2-D2でもなく、アシモ君。他の誰でもない。
隣を歩くヒトを時々振り向きながら歩く姿も、まるでおとなと一緒に歩く子どものようで。
ロボットと呼ぶのがはばかれるような、これはもうもはや「動物」である。
「ちぃ」のような人型パソコンが、将来きっと本当に登場する。
ロボットを愛するヒトが本当に出てくる。
私はそう思いながらTVの映像を見ていた。
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ショッピングセンターのイベント広場で、ロボットが走ったり、人間とキャッチボールしたりしている。
取り囲むおとなは、その一挙一動にほおぉとため息を漏らし、子どもは目を輝かせ、その広場は夢と希望でいっぱい。
その動きは見れば見るほど人間的で、まるで宇宙服に身を包んだ人間のようである。
機械を忘れてしまいそうな軽やかで柔らかい動き。こんなものを作れるものなのかと、その技術力にも驚く。
-ロケットは失敗続きなのになあ・・・。
-ロケットもH@NDAが作ったら成功するんじゃないの?
-ロケットがむずいなら、アトム作って飛ばそうよ。
ロケットを飛ばしまくってるアメリカ人でも作れないようなものを、日本は作っているのか。
何でアメリカ人はスターウォーズのロボットを実際作らないんだ?
歩きながらこちらに近づいてきた「まるでヒト」のそのロボットを見ながらわたしは急に思った。
ヒトが入っているに違いない!
ロボットは私の前まで来ると、握手しようと手を差し出してきた。
私の手はその太い手のそばを通り過ぎ、彼のわきの下に到達した。今だ!
こちょこちょ!
ドゴッ!
わきの下をくすぐったわたしのアゴを、彼の拳が掬い上げた。
効いた・・・。
私はマットならぬショッピングセンターの床の上に倒れた。
悲鳴やざわめきや怒号をかすかに感じながら私の気は遠くなっていった。
薄れる意識の中でわたしの頭は力を振り絞って人間的思考を繰り返していた。
フフ、こいつやっぱり着ぐるみだぜ・・・。
笑うとばれるから殴ってやんの。
その証拠に、拳に弾力があったぜ。
いやまてよ、ヒトの拳は硬いんだっけか?・・・
気を失いながらわたしは笑っていた。