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「あなたとはずいぶんと他人行儀になったもんだねぇ、護流ちゃんは。昔みたいに『お兄ちゃん』って呼んでごらん。ほら、お兄ちゃんって。はい。サンハイ」

「お兄ちゃ……ってなに言わす気だ! あと話を逸らさないでください!」

「……ちぇ」

「タコ口をしないでください」

「わかった。まじめに答えるから。そうだね。ぼくは可愛い子のパンツが見れるのなら、手段は選ばない。どんなことだって、やるつもり。プライドとか持ってたら、パンツは信仰できないからね」


 真顔で語りながら、ぽかーん、と立ちつくす護流とその横のイスに座っていたイヴに手を伸ばした。

 もにゅ、むにゅ、

 ぺたぺた、すりすり、


「んな!?」

「わたしの効果音おかしくな!?」


 伸ばした手の先は、二人の片方ずつの胸に置かれた。


「うーん」と念じて、心一は物足らなさからか、追加で二揉みぐらいすると、悪びれることもなく、感想を述べる。


「何度さすっても癖になる、洗濯板の――あれ? イヴのおっぱいおっきくなった?」

「え!? ほ、ほんと? ついでに言うと、どれくらい?」

「あ、ごめん、間違えた。護流ちゃんのほうだった」

「あんたそれわざとわたしをぬか喜びさせたかっただけでしょ!」

「そう怒らないでよ。ぺったんこはステータスだ、ってよく言うじゃん」

「言わないわよ! あとフォローになってない!」

「それにしても護流ちゃんのおっぱいは、著しい成長を遂げているねぇ。揉むたびにインパクトが」

「無視しないでよ! ……でも、心一がいまのわたしを受けいれてくれるなら…………」

「え? イヴ最後なんて言った?」

「なにも言ってないわよ! それよりそろそろ手どけてくれない」


 ツンとした態度のイヴは、心一の手をようやく払いのけると、さっきと同じくそっぽを向いた。

 幾分、気にしていない心一は、心一でご満悦な表情を浮かべる。だが、彼には因果応報がまっていた。

 無論、悪い意味で。


「境心一、まさか女性の胸を揉んでおいて無傷でいられると思ってんじゃないだろうな?」


 虎視眈々と揉まれているあいだに蓄積しておいた、怒りのオーラが護流を覆っていた。まさにビームでも軽々、出せそうなレベルの範囲だ。

 それでいて、顔は笑っている。笑っていないのは、目ぐらいか。


「無傷でいられないということは、ぼくは今から護流ちゃんから、あんなことやそんなことをされるということ、かな。どきどきわくわく」

「あなたがどんな想像をしているかは、目をつぶることにするけど、無事に同じ想像ができないようにしてあげる」

「少々、日本語がおかしかった気がするんだけど、ぼくの気のせい? ……じゃないよね」


 鬼気迫るような顔をする護流に、身の危険を感じ、心一はやっと黙った。

 体裁を加えようと握りこぶしを作る護流だったが、こぶしを解いて手のひらを見つめる。繊細な五本の指。どれも気を抜けば、折れてしまいそうなほど、細くもどかしい様。

 思いつめるように五、六秒程度か凝視したあと、備えつけの本棚を見て、片隅に設置してある掃除ロッカーから箒を持ち出して、心一にかまえた。


「なにか言い残すことがあれば、聞いてあげる」

「今は小ぶりの護流ちゃんのおっぱいに、将来、乞うご期待くださいませ」

「ここでくたばってください」


 振りかざす護流――の、背後から円盤投げのようなフォームで、英和辞典を放りこもうとする金髪少女がいる。


「箒くらいじゃ、こいつの脳天は昇華しないわよぉぉぉぉぉ――――――――っ!」

「我が生涯に、一ミリの満足なあぁぁぁしぃぃぃ」


 英和辞典は見事に心一の脳天を一突きで、昇天させた。

 あまりの衝撃で、心一は目を回す。これは当分、意識は戻ってこないだろう。


「か、金色さん……これはいくらなんでもやりすぎじゃない?かな」


 箒を振りかざしたまま、刺激が強すぎておどおど、ぶっ倒れた心一とイヴとで目線を行き来する。


「いいのよ、これで。こんなおしおきがいやなら、心一のほうから不満を言うだろうしね。それにしても相変わらず、生徒会長さまは非力ね」

「非力ではない。私は暴力で物を言いたくはないだけだ。腕力など人の上に立つ人間には、もっとも遠くに置いておくべき存在だからな。私は言葉だけで正義を勝ち取ってみせる」


 護流は、後ろになにもないことを確認してから、そのまま箒を落とし、掃除ロッカーに戻した。

 振りかざした弾みで前に垂れていたポニーテールを背中に払い、語る護流を横目にイヴは、乱暴にイスに乗った。


「まあ、わたしには関係ない話ね。それより生徒会長さまはなんの御用があって? もしかして『レイ』の件?」

「あ、そうだった。でも部長がこうなっては話し合いもできそうにないけど」

「それはわるいことをしたわね。あと数分もすれば、意識がもどるとおもうし、わたしが言うのもなんだけど、まっててくれない?」

「そうしたいのは山々だけど、まだやらないといけないことがあるから。うーん」


 顎に手をやり、呻りをあげる護流。

 そんなタイミングに、またしても来客を知らせるノックが二回。

 イヴが「どうぞ。はいっていいわよー」と返事をする。

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