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パンツマン~境心一は今日も、パンツを信仰しています~  作者: 友城にい
第三話 すぐにパンツを見せちゃう。お嬢さまだもん
18/22

「大和さん! きみなら学校中――ううん、世界一のセックスシンボルになれるよ!」


 夕暮れの放課後の昇降口。

 わたくし――大和緩は本日から、ここ公立中学に卒業までの半年間を過ごすことになりました。

 転校初日とありまして、ご担任の先生にいろいろと質問を伺っていましたら時間を忘れてしまってしまいました。わたくしには、宿題は多そうです。

 職員室をあとにし、帰路につこうとした最中に、こうしてお声をかけられた次第なのですが、


「どうしたの、心配? 大丈夫だよ。大和さんは、ほかの誰にも負けない最強の『武器』を持っている」


 その方はわたくしもご存じの方でした。

 ――境心一さん。クラスメイトで、殿方の中で頭一つ抜けて目立っていましたので覚えていました。

 紅葉のような赤毛が特徴的で、柔らかく人懐こそうな表情を浮かべている。

 前の学校にはいなかった髪の毛色。これがいわゆる「フリョウ」っていう人なのでしょうか。思っていた印象とは違う気もしますけど。


 いいえ、人を見た目で判断しては大和家の名が廃ります。せっかくお声をかけていただいているのです。しかも異性の方です。不躾な真似はできません。


「あの、セックスシンボルとは、いったいなんなのでしょうか?」

「うん? そうだね。一言で表すのなら、『男性の虜』かな」

「そうなのですか。勉強になりますわ。わたくし、世間に疎いもので。境さんですよね。もしよろしければ、先生の代わりにいろいろとご教授いただけませんか?」

「心一でいいよ。名字で呼ばれるの好きじゃないんだよね」

「なるほど、心一さんですね」

「そうだ。部活まだ決めてないでしょ? ぜひともぼくの部活動に参加しない? きっと大和さんの世界が広がる気がするんだ」


 心一さんは、瞳を煌めかせてわたくしのほうに詰め寄ってきました。

 そして、わたくしの手を取ったのです。

 殿方の手とは、やはり大きくて、お顔を窺いますに興奮していらっしゃるご様子。それでか、わかりませんが、すごく熱い。


「コミュニティー、ですか?」

「そう。ぼくともう一人女の子がいるだけの小さな部だけど、無限大の可能性を求めているんだ。どう、大和さん」


 まるで将来の夢でも語っているような、心一さんがわたくしには眩しく見えました。


「心一さん、わたくしも姓でなく、名前で結構ですよ。どうぞ仲睦まじく、『緩』とお呼びください」


 手を握り続けている心一さんは、一瞬固まってしまいました。

わたくしなにか変なことを言ってしまったのでしょうか、と心配になっていますと、心一さんは我に返ったように、


「大和さんにそう言われると、いくらぼくでもかしこまってしまうなぁ。でも女性のお願いを断るのはぼくのポリシーに反するし、遠慮なく、緩ちゃん、と呼ばせてもらうね。緩ちゃん」


 ――――っ。


 なんでしょうか。今、胸の奥に感じたことのない鼓動と、ゆっくりと身体中に広がってくる、温かい気持ち――。


「ふふ、異性の方に名前で呼んでもらいましたのは、心一さんが初めてです」


 片方の手を頬に当てて初めて気づきました。

 わたくしったら、はしたない。頬が緩んでしまっていました。でも、この気持ちがはしたないとは、到底思えませんし、こんなに嬉しいものなのですね。同性とはまた違って、なんなのでしょうか。


「やっぱり、緩ちゃんはセックスシンボルになるべき人材だあああああああああ!」


 お父さま。


 わたくし、立派なセックスシンボルになれますよう、誠心誠意がんばります。



     ▽


女性の一人称は、書きやすいようで自分には不向きかもしれません。

次回は5月15日、1日早いです。


友城にい

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