6
寒風が並んで歩く、ぼくとイヴの首筋を舐めた。
「おー……さすがにこれは堪えるねぇ。ねぇ、イヴ――冷たいっ!」
自分でもレアな世間話を交わそうとしたら、急にイヴが冷えた手のひらをぼくの頬に当ててきた。
と、
「心一。これ、やるわ」
ぶっきら棒に、バッグからぼくの髪の毛と同じ色をしたマフラーを取りだしてきた。
「くれるの? どうして?」
「なんでもいいでしょ。ほら」
ただただ疑問に感じていたぼくの胸元にマフラーを押しこんでくる。ぼくは仕方なしに受け取ることにする。
よくできているこのマフラーは、先ほどまでイヴが部室でせっせと編んでいたマフラーだ。しかし、ぼくの記憶が正しければ、イヴはマフラーを完成させてなかったはずなんだけど。まあ、いいか。
そんな些細なことよりも、
「待望のデレ期キター」
「ち、違うわよ。受験生なんだから、喉を痛めでもしたら大変だとおもって」
視線を逃がしつつ、必死に弁明しようとするイヴ。
ぼくにしてみたら、大好物なわけでそれをにまにました顔で見ていると、
「要は風邪でも引かれたら、こっちが調子狂っちゃうのよ。気をつけなさいよね」
参考書でも熟読したかのようなツンツン発言をし終えるや、イヴは先を行く。
とりあえずせっかくの女の子からのプレゼントだし、好意に甘えるとしてマフラーを首に巻いた。うん、ほのかにわかるイヴの匂いと、ぬくもりが。
「ちょっと待ってよ。イヴってば、あ、やば」
追いかけようと踏みこんだところが、水たまりかなにかが凍っていたらしく、ぼくは足を滑らせた。
咄嗟にコケるのを免れようと、最寄りのものに両手を伸ばし掴んだ。
「え、え、心一、あんたどこを引っ張って、ひゃっ!」
しかし、重力に逆らえず結果的に二人とも道路に倒れてしまった。
「いてて……ごめんね、イヴ。どうやら氷張ってたみたいで」
前を見るとイヴが、仰向けで倒れこんでいた。膝を立てて、なんともまぬけなポーズを取らされている。パンツに突っこむとは、ぼくもずいぶんと成長したもんだね。
それよりも、両手で掴んだものが異様にホクホクと生温かい。ぼくは視界を下に落とし、現物を確認した。
「おやおや。イヴ、今日はピンクの縞パンだったんだね。それでやけに、デレ気味だったのかな、納得。女性は、パンツでその日の気分が決まると言っても過言じゃないからね」
本能とはときに怖いものだ。ぼくはこともあろうことか。無意識とはいえ、突っこむだけじゃなく、足首までパンツをもぎかけていた。
イヴのパンツが見れて、悦に浸っているぼくに、おもむろに上半身を起こしたイヴが、
「言い残したことはあるかしら?」
「え? えっと……」
死のカウントダウン数秒前。ぼくはあることを思いだして、視線を奥に進める。
少したくしあがっていた開放感満載なスカートの中身が顔を覗かせていたので、つい感想を述べたくなってしまって、
「へぇー、こういうふうになってるんだ。それとやっぱり、生えてな――むげっ!」
四つん這いのぼくに、イヴが容赦なくギロチンチョップを繰りだした。
的確に訓練をこなした兵士のごとく、ぼくを確実に落とす。さすがイヴだね……。
沈み、消えゆく聴覚に最後に入ってきたのは、
「心一の記憶を、抹殺する――」
ぼくの意識は遮断され、気づいたときは全裸で雪だるまに埋められていたとさ。
最後は露骨でしたでしょうか。
次回は5月13日、夜中になります。
友城にい