ニルフと黒蹴の探偵(?)物語
バレンタインがことっしーもやーってっくる
○って固まるとチョコみたいだよね!
+黒+
ぴかぁー
光に包まれ、目を開けるとそこは・・・
ドラマの撮影現場でした。
忙しく歩き回る人々の中で、僕はいつも通りのクローク姿で立っています。
え? ここどこです?
とりあえず皆と相談したいと思います。
・・・っていうかドラマ!? ドラマの撮影!? まさか僕・・・。
帰ってきました!?
いやいやいやいやここは焦りは禁物ですしっかり周りを観察してその前にまず深呼吸をフッフッフーへほっげほっげほ!
よし落ち着きました!
どうやらここは日本の様です!!!
*
+ニ+
ぺかぁー
いつもの通りに転移して光に包まれ目を開けると、そこは・・・
異世界でした。
見た事ないレベルの。
とんでもないデカい風船みたいな鉄の塊から一個師団程度の老若男女がせわしなく入っては出てを繰り返してる。
風船から運び出してるのはこれまた鉄で出来た箱やガラスのはめ込まれた重そうな箱。
人を乗せたまますごい音たてて動く箱。箱には鉄や木で出来た箱を乗せている。
動く箱に人と箱が乗っている。なにしてるんだろうあれ。
小さい羽虫みたいなものを操って飛ばす人。
箱を押すだけで飲み物を出してる人。
とりあえずあれだ。
ここどこだ。
っていうかこれ、あれだよね。
前回あったよねこういうの。またかよ。
でも今回はなんか隣が生暖かい。絶対隣に誰かいる。見てないけど気配がする。
良かった、今回は1人じゃなかった。
俺はちょっとホッとした気持ちで横を見ると、黒蹴が噛み殺すような血走った眼で前の連中を凝視していた。
怖い。
*
+鉄+
「ん?」
私は飛行船からドラマに必要な道具を運び出すスタッフに喝を飛ばす大道具担当の男を見つつ、ドラマの撮影スタッフ達と本日の撮影工程の最終確認にいそしんでいた。
なんだ? 何か今、光ったか?
目の端に違和感を感じ振り返った先には青年が2人、撮影道具の魔法陣を模した敷物の上に土足で立ち尽くしていた。
・・・どこの馬鹿だ。日雇いのバイトか?
私は会議をそのまま続けるように指示し、椅子からゆっくりと立ち上がる。
こういうのは一番上の立場の奴が、ビシっと言ってやるのが一番なんだ。
そのままゆっくりと彼らの元に向かうと、2人が妙な恰好をしていることに気づいた。
この真夏の現代日本で、1人は薄茶のクロークのようなものを着てバンダナを巻いているし、もう1人は長い茶色のマントの上からさらに、とんでもなく長いマフラーを口元までがっつりと覆って巻いている。
十中八九、ドラマの撮影に参加できると聞いて舞い上がってコスプレしてきたんだろうがな。マフラーの方なんてカラコンまで入れてやがる。
誰だよ、あんな奴ら雇ったのは。
私が近寄る前に、道具を運んでいた日雇いスタッフに見つかって怒鳴られているのが目に入る。
お? 意外と素直に引き下がったようだ。自撮り棒でも取り出した日にゃぁ、この島から追い出すつもりだったんだがな。
「おいお前ら」
項垂れる2人が、私に気づく。
何故かバンダナをかぶった黒髪の方の目が、一瞬嬉しそうに輝いた。
*
+ニ+
異世界に飛ばされて立ち尽くしてたら、いきなりマッチョの怖いお兄さんに怒鳴られてすごすごと移動した先に、今度は50歳くらいの厳つい白髪のおじさんに声を掛けられた。
声が地を這うような低さ。
っていうかこのおじさんすげー怖い顔してるんだけど。
どれくらい怖いかっていうと、盗賊のお頭レベルっていえば分かるかな?
確実に何人か殺ってる顔してる。
すげー怖い。なのに一緒に来た黒蹴は臆することなく普通にしゃべってる。しかもちょっと嬉しそうに。
・・・暇なので今のうちに自己紹介を済ましてしまうか。
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俺はニルフ。
金色のくせっ毛のショートカットに緑色の目、身長170cmの18歳!(たぶん)
ある日突然、≪世界樹が生えた異世界(名前は無い)≫に召喚された者だ。
直前まで俺は、一緒に召喚されたピンキー、黒蹴、銀の3人と旅をしていた。
俺には召喚されるまでの記憶が無い。
あと喉の傷のせいで、シルフ(シー君とフーちゃん+シルフ石)が居ないと喋れない。
それでも仲間の優しさと持ち前のスピードと反射神経でなんとか旅を続けてきた。
得意技はハープ。
武器は、世界樹から授かった木刀だ!
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前回の話と同じでスマン。言う事がほかに無いんだ。
そして今回俺の隣に居るのが黒蹴。
黒髪を長めのスポーツ刈りにした160cmの16歳!
ぱっちりした黒目が特徴だ。
こいつも俺と同じ召喚された4人の中の1人。
俺と違って召喚前の世界の記憶はあるそうだが、何故か名前が思い出せなかった。というか4人共思い出せなかった。
得意なのはサッカー、武器は世界樹から授かった双銃だ。
4人のうち、ピンキーと黒蹴はチキュウのニホンという場所から来たって言っていた。
さて、そんな黒蹴。目の前の怖いおじさんとずっと話している。
しかめっ面だったおじさんの顔が段々笑顔になってきてるな。周りを歩く荷物運びの兵士達も、2度見3度見してこちらの様子をうかがっているっぽい。
周りに一目置かれているのを見るに、この人は隊長、もしくは大臣か王が変装して近づいてきているのか、だな。
おじさんの事は黒蹴に任せて、俺はサッと装備を確認する。
よし、今回は武器もシルフ石も装備もハープも全部持ってる。
シルフ石を見ると、中から2人のシルフがポーンと飛び出してきた。
小さな妖精さんって感じの2人だ。
見た目は、ほころびかけた蕾を二つくっつけて頭と胴体にして、そこに緑色の透明な鉱石のかけらで作った感じの腕がくっついている。
胴の蕾の真ん中あたりからスカートのように風魔法でつくられた渦巻きが広がってるって感じ。
黒蹴のクロークの両足腿部分を見るに、あいつも双銃を持っているな。
一応、一安心。
前回はこの後すぐに無能扱いされて放り出されたが、今回はどうなるかな。
ぼんやりと2人と周りの様子を見ていると、急におじさんの顔が俺に向いた。
ひぃ、こっち見た。
「おい、あの坊主もか」
「はい! ニルフさんっていうんですけど、ハープがとっても上手いんですよ!
あと剣の素振りも様になってます!」
そりゃ実践で使ってるからね、剣。(木刀だけど)
「なるほど、ニルフってぇと外人か? 日本語は分かるのか?」
「!!! ・・・はい、分からなくとも僕が通訳できると思います」
「ふむ、なら大丈夫か・・・。
よしニルフ、黒蹴! 2人共私に付いてこい」
俺は話をよく呑み込めないまま、黒蹴に腕を引かれておじさんの後を付いていった。