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「今日は又一段と使い物にならない感じだな。」
グレーの言葉に、隣に立っていた双子の弟グランはウンザリとした顔をした。
「どうせあれだろ。『可愛い可愛いオレの妹』絡みだろ。というか、俺はたまにはそれ以外の理由が聞いてみたいよ。」
グランの言葉が聞こえたのか、目の前の上官はピクリと肩を揺らし、泣き出した。
「……ウザイ。」
「言うな、グラン。僕だって、どうせなら野郎じゃなく女の子の泣き顔のが良い。」
「うう、妹よ。何故兄ちゃんを避けるんだぁ!!」
うわあああと豪快に男泣きを始める上官に、グレーもグランも溜息を吐く。
「まぁ、これだけウザかったら、そりゃ嫌われるよな。」
「姫様も大変だな。」
「つーか、その姫様だけど。俺、一回も見たことない。」
「僕もだ。というか、姫様が公の場で姿を現した事は一度もないはずだぞ。」
言って、グレーとグランはもう一度目の前の上官を見た。
「妹はそれはもう可愛いんだ!この世のものとは思えないほど可愛いんだ!!他の野郎なんかに見せてたまるか!!みんながみんな妹に惚れてしまうだろ!!!!」
「………………絶対欲目だろ。」
そう決め付けるグランに、「でも。」とグレーは待ったをかける。
「とても残念な事に、目の前にいる僕達の上官であり、この国の第一王子ラグ王子は、妹姫の事さえなければ、文武両道の美男子の部類に入る。まぁ、僕達程ではないが、少なくとも女性受けする顔だろ。それに、この国はラグ王子の政治手腕があるからこそ持っていると言っても過言ではない程、頭も切れる。同じ血の流れているフラン姫も同じく聡明で美しくてもおかしくはないだろう。」
「…………こんなのが、この国を支えているかと思うと泣けてくる。」
「まぁ、そう言うな。だから、僕達がこうして騎士としてこの国を自分の力で支えようと思ったんだろ。」
グレーはそう言うと、泣き崩れるラグ王子に定期報告をした後、グランと一緒に街の見回りへと行くのであった。