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派手なネオン競争 - 九龍城砦電光夜曲リプレイ

# 派手なネオン競争 - 九龍城砦電光夜曲


## 第一章:雨夜の始まり


1979年秋の夜、九龍城砦に冷たい雨が降り始めた。狭い路地の舗装されていない地面は、たちまち小さな水たまりを作り出す。そこに映り込むのは、無数のネオンサインの光だった。


赤、青、緑、ピンク—色とりどりの光が水面で揺れ、まるで地面に虹の川が流れているようだった。


「今夜は『派手なネオン』競争だ」


GM役の老王が宣言すると、参加者たちの目が輝いた。美観の評価基準は今夜だけ特別仕様—光の鮮やかさ、色の組み合わせ、そして雨に濡れた地面への映り込みの美しさで勝負が決まる。


陳老大は自分の2×2区画を見渡した。既に足元には薄っすらと水が溜まり始めている。その水面には、隣の麻雀荘の「雀王」という赤いネオンがぼんやりと映っていた。


「面白くなりそうだ」


隣では電気工事に詳しい住民組合の黄師傅がニヤリと笑い、反対側では三合会の林仔が「今度こそ派手にやってやる」と息巻いている。そして今回は新しい参加者—夜総会ナイトクラブ経営の美人ママ、李小姐も加わっていた。


「あら、男性ばかりね。女性の美的センスを見せてあげるわ」李小姐の声には自信が満ちていた。


## 第二章:特殊資材の争奪


テーブルに並べられた今夜の特殊資材は、どれも光り物ばかりだった。


- 大型赤ネオン管(コスト80HK$、美観+3、映り込み効果大)

- 青色LED装置(コスト60HK$、美観+2、省電力)

- 点滅制御装置(コスト50HK$、動的効果+2)

- 反射鏡セット(コスト40HK$、光の拡散+1)

- カラーフィルター(コスト30HK$、色調変化可能)


「俺は赤だ!」林仔が真っ先に大型赤ネオン管に手を伸ばした。


「待って、私の方が早かった」李小姐が異議を唱える。


GM老王がダイスを振ると、李小姐の勝利。林仔は悔しそうに青色LED装置を選んだ。


黄師傅は冷静に点滅制御装置を選択。「動きのある光こそが人の目を引く」と呟いた。


陳老大は反射鏡セットを手に取った。単体では地味だが、他の光を増幅させる効果がある。戦略的な選択だった。


## 第三章:第一ターンの光と影


雨脚が強くなり、路地の水たまりも深くなってきた。各参加者の建築が始まると、次第に九龍城砦の夜が色鮮やかに染まっていく。


李小姐の大型赤ネオンが点灯した瞬間、周囲がパッと明るくなった。赤い光が水たまりに映り、まるで血の池のような妖艶な美しさを放つ。


「さすがね」隣の住民がため息をついた。


林仔の青色LED装置も負けていない。青白い光が雨に濡れた壁面を照らし、SF映画のような近未来的な雰囲気を醸し出している。


黄師傅の点滅装置は、まだ本格的な光源に接続されていないが、テスト点灯の際の規則的な明滅が、既に不気味な美しさを感じさせた。


陳老大は慎重に反射鏡を配置している。単独では目立たないが、他の参加者の光を受けて複雑な光の模様を水面に描き出していた。


## 第四章:電気の匂いと虹色の夜


第三ターン、各建物から立ち上る匂いも特殊だった。


李小姐の区画からは、高温になったネオン管の独特な匂い—焼けたガラスと金属の匂いが漂ってくる。それに混じって、彼女の香水の甘い匂いも感じられる。


林仔の区画では、LED装置の電子回路が発する微かなオゾン臭。新しい電子機器特有の、少し鼻にツンとくる匂いだ。


黄師傅の作業場からは、電線を扱う熟練工の匂い—絶縁テープの粘着剤と、銅線の金属臭が混じり合っている。


陳老大の区画は比較的無臭だが、反射鏡が作り出す光の屈折が水たまりに複雑な模様を描いており、見る者を魅了していた。


雨は止む気配がない。路地の水たまりはさらに深くなり、ネオンの映り込みもより鮮明になってきた。


## 第五章:中盤の攻防戦


第四ターン、李小姐が追加の装飾を施した。大型赤ネオンの周りに小さなピンクの装飾灯を配置し、まるで薔薇の花が咲いたような華やかさを演出している。


「これぞ夜総会の美学よ」彼女は満足そうに微笑んだ。


林仔も負けじと、青色LED装置に緑のカラーフィルターを重ねた。青と緑が混じり合い、幻想的な青緑色の光が生まれる。水たまりに映ったその光は、まるで海の底を覗き込んでいるような神秘的な美しさだった。


黄師傅は点滅制御装置を本格稼働させた。様々な光源を接続し、複雑なリズムで明滅するライトショーを始めた。単調になりがちなネオンに、時間の要素を加えた巧妙な戦略だ。


陳老大の反射鏡システムも本領を発揮し始めた。他の参加者の光を受けて、建物の壁面や水たまりに万華鏡のような光の模様を描き出している。


## 第六章:ランダムイベント - 停電の恐怖


第五ターン終了後、GM老王がダイスを振った。


「2...停電だ。全エリアで1ターンの間、電力供給が不安定になる」


参加者たちの顔が青ざめた。ネオン競争で停電は致命的だ。


しかし、ここで各参加者の準備の差が現れた。


李小姐の大型赤ネオンは電力消費が大きく、不安定な電力では満足に点灯しない。普段の3分の1程度の明るさしか出ない。


林仔の青色LED装置は省電力設計のため、停電の影響を最小限に抑えた。この危機を逆にチャンスに変えた。


黄師傅の点滅装置は、もともと間欠的な動作のため、停電による影響をうまく演出効果として利用した。「これも計算のうちだ」と余裕を見せる。


陳老大の反射鏡システムは電力を使わないため、まったく影響を受けない。他の光源が弱くなった分、相対的に存在感を増した。


## 第七章:最終ターンの大逆転


停電が復旧した第六ターン、各参加者は最後の勝負に出た。


李小姐は停電で失った時間を取り戻すべく、追加の装飾灯を一気に設置した。赤とピンクの光の洪水が水たまりに映り、まるで九龍城砦に薔薇園が出現したような幻想的な美しさを生み出した。


林仔は青緑の光に加えて、白いスポットライトを追加。青緑と白のコントラストが水面で踊り、まるで北極のオーロラのような神秘的な光景を作り出した。


黄師傅は最終兵器を投入した。音響連動システムだ。近くの茶餐廳から流れてくる粤語ポップスに合わせて、光が音楽のリズムでダンスする。技術力の高さを見せつけた。


そして陳老大—彼は最後に勝負をかけた。反射鏡システムの角度を微調整し、他の3人の光をすべて統合して、一つの巨大な光のアートワークを水面に描き出したのだ。


## 第八章:雨夜の審判


7ターンが終了し、雨も小降りになった。水たまりに映るネオンの光は、より鮮明に、より美しく輝いている。


相互評価の時間。今夜の評価基準は特別仕様だ。


**李小姐の建物**:

- 光の鮮やかさ:5点(圧倒的な赤とピンクの華やかさ)

- 色の組み合わせ:4点(統一感のある暖色系)

- 映り込みの美しさ:4点(薔薇園のような幻想性)

- 合計:13点


**林仔の建物**:

- 光の鮮やかさ:4点(青緑と白の美しいコントラスト)

- 色の組み合わせ:5点(オーロラのような神秘性)

- 映り込みの美しさ:4点(海底のような深み)

- 合計:13点


**黄師傅の建物**:

- 光の鮮やかさ:3点(技術優先で派手さに欠ける)

- 色の組み合わせ:4点(音楽連動の革新性)

- 映り込みの美しさ:3点(動きはあるが映り込みが複雑すぎる)

- 合計:10点


**陳老大の建物**:

- 光の鮮やかさ:3点(自身の光源は控えめ)

- 色の組み合わせ:5点(全体を統合した調和美)

- 映り込みの美しさ:5点(水面の万華鏡効果が絶妙)

- 合計:13点


## 第九章:三つ巴の決着


3人が同点トップに並んだ。GM老王は困惑したが、最終的に「観客投票」を提案した。周りで見守っていた住民たちに、どの光景が最も印象的だったかを聞くことにした。


「李小姐の薔薇園は確かに美しかった」

「でも林仔のオーロラも捨てがたい」

「陳老大の統合芸術も見事だった」


議論は白熱したが、最終的に僅差で陳老大の勝利となった。他者の光を借りながらも、それを昇華させて新しい美を創造した点が評価された。


## エピローグ:虹色の夜明け


競争が終わった深夜、雨も上がっていた。しかし、水たまりはまだ残っており、4つの建物のネオンが美しく映り込んでいる。


参加者たちは近くの深夜食堂に集まった。店内は蒸気でもやもやしており、外の幻想的な光景とは対照的な庶民的な温かさに満ちていた。


「今夜は美しい夜だった」李小姐がラーメンをすすりながら言った。「負けたけど、満足よ」


「俺のオーロラも悪くなかっただろう?」林仔が自慢げに言う。


「君たちの光があったからこそ、俺の反射が活きた。感謝している」陳老大が謙虚に答える。


黄師傅は悔しそうに、「次は音と光の融合をもっと極めてやる」と呟いた。


窓の外では、相変わらず九龍城砦の夜が続いている。今夜は特別に美しい—路地の水たまりに映る虹色のネオンが、この無法地帯を一夜だけの光の楽園に変えていた。


老王GMは満足そうに、「これぞ九龍城砦の夜だ。美しくも怪しく、夢のような現実がここにある」と総括した。


明日になれば、また日常の雑踏と生活臭に戻るだろう。しかし今夜だけは、九龍城砦が光の芸術作品になった。参加者たちは、湯気の立つ麺を啜りながら、水面に映る虹色の光を眺め続けていた。


---


*雨に濡れた九龍城砦の路地で、今夜もネオンの光が水たまりに踊っている。派手なネオン競争は終わったが、この美しい光景は人々の記憶に永遠に刻まれるだろう。電光に彩られた夜の砦で、また新しい伝説が生まれた。*

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