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亜神  作者: ヒーズ
3/3

第3話:東須狗乃宮月奈②

藤井は振り返り、片山にも敬礼を行おうとしたが・・・。

どこにも姿が見当たらなかった。

その時、グシャ、メキメキ、ボキボキ。と言う肉や骨が拉げる音が聞こえてきた。

村井と藤井は音のする方へ急いで目を向ける。

そこには、片山を飲み込む異形の姿があった。

村井は一瞬で全てを察し、薙刀を構える。


対亜滅殺闘気を練るには時間が足りない。

・・・否、ここは体に負担を掛けたとしても。

闘気を即座に練り上げ、奴を殺す必要がある!


村井は、即座に闘気を練り上げた。

すると、体に一気に負荷がかかり。皺が増え、髪が白く変化していく。

が、村井は歯を食いしばり、一気に異形の間合いへと踏み込んだ。

行ける!そう確信した村井は、異形の胴体と下半身を切り離そうと薙刀を振るった。

しかし、刃は奴の腹部に少し食い込んだ所で止まる。

村井はとあることを直感し、一気に冷や汗をかく。


「藤井、コイツは弩級以上の脅威・・・」


村井が全てを言い終わる前に、異形はいつの間にか腹部に出来ていた

大きな口で上半身を食いちぎった。

藤井は、恐怖から腰を抜かし、後ろに倒れ込んでしまう。

恐怖の感情を感じ取った異形は、ニヤリ。と笑い、ゆっくりと藤井に近づいて行く。

がその時、藤井の後ろから学生服を来た女性が音もなく現れた。

彼女は背中の腰辺りに、大太刀を横向きに提げていた。

大太刀に触れると、鞘の下側が開き、簡単に取り出せる構造となっていた。


「「「ウー!」」」


先ほど、藤井を小ばかにするかのような笑みとは一転して。

恐怖の混ざった警戒の表情を見せた。

制服からして、国立特殊新人類専門高等学校の生徒であることは

一瞬にして分かった。

が、目の前の敵は学生がどうこう出来るものではない。

「お前には、勇敢さもある」先ほどの村井の言葉が藤井の頭を過った。

彼は銃を手に取ると、ゆっくりと立ち上がる。

そして、彼女の前に出ようとした瞬間。


「「「ッ!」」」


目にも止まらぬ速さで、彼女は異形の体を細切れにしていた。

それに、制服にも、異形を斬ったはずの大太刀にも、血が一切付着していない。

神速の一刀に加え、相手が斬られたことにすら気づかない技量。

藤井は自らの手と銃に目をやり。

悔しさから強く歯を食いしばった。血が、滲み出る程に。

そして警軍帽を取り、地面へ投げ捨てた。

その時、大きなサイレン音と共に何両かの装甲車両がやって来た。

そして、重武装の兵士達が下りてきて一帯に散開し、警戒を強める。

内、数名の護衛に囲まれた男が、彼女に気が付くと。

兵士達を押しのけて、急ぎ彼女の下へと向かう。

彼は警軍帽を取り、深々と頭を下げる。

それこそ、亜帥に対峙した時よりも丁寧な作法かもしれない。


あの人は・・・。階級章は、準亜佐。と言うことは、中枢拠点の指揮官補佐クラス!

所属章は第三〇七区。本部属じゃないけど、凄い人であることに間違いはない。

そんな人が何故、国立特殊新人類専門高等学校の生徒に

深々と頭なんて下げてるんだ?


藤井の疑問は、次の瞬間に解消されることとなる。


「お初にお目にかかります、東須狗乃宮様。して、何故このような場所に?」


東須狗乃宮家と言えば、武芸の神とされている

『神じんこ上皇』に仕えてきた一族!

代々有能な超人を輩出してきた名家の一つで、亜神殺しのエキスパート。

ただ、下界との関わりを殆ど断っているせいか、

東須狗乃宮家に関する情報は出回っていない。

俺も、神じんこ上皇に仕える超人の名家である。と言う情報以外は知らない。


圧倒的な才能の前に、自信も、プライドも、何もかを叩き潰された藤井を他所に。

東須狗乃宮ひがしすくのみや月奈つきなは面倒くさそうに、異形の骸に視線を向ける。

彼女の動作から、全てを察した準亜佐はもう一度深々と頭を下げた。

「我ら警軍の失態のせいで、北須狗乃宮様には大変なご迷惑をお掛け致しました。

つきましては、いずれ正式・・・」

彼が全てを言い終わる前に、東須狗乃宮は首を左右に振った。


「我が東須狗乃宮家は神じんこ上皇様に仕え、亜神を滅するのが役目。

何者からも、謝礼を受け取りません。それに、家の方針もありますので・・・。

では、私は登校途中でしたので、失礼します」


彼女はそう言うと、大太刀を仕舞った。すると、鞘の下の部分が閉じる。

妖刀の類か、それとも何らかの唐栗なのか。

準亜佐は「左様ですか。では、お気を付けて」とだけ言うと、自らの仕事に戻った。


「現場で生き残った者は貴様だけか。報告書を作る、ついてこい。

他の者は、亜神研究局の者が来るまで現場の保存作業及び民間人の救助を行え。

ただし、治安警察が到着し次第、救出作業は引き継ぐように」


準亜佐はそうとだけ言い残すと、藤井と共に装甲車両へ乗り込み、現場を後にした。

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