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亜神  作者: ヒーズ
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第2話:東須狗乃宮月奈①

東須狗乃宮ひがしすくのみや様。・・・ん?東須狗乃宮様はお休みか?

はぁ。かの東須狗乃宮家のご令嬢だからって、特別扱いが過ぎるんじゃないか」


男教師は教壇に手を突きながら、大きな溜息をつく。


まあ、高校生にして並みの治安警軍よりも強いんだから、今更学校で習うことなんて・・・。

いやいや、一般教科があるでしょ!って、思ったら成績は常にトップ。

旧帝国大学、治安警軍学校、防衛軍士官学校、などの名だたる名門大学にも進学可能。

俺達教師が彼女に教えられることなんて、もう何もないんだろうが。

それでも、学校には来るべきだ。

人間ってのは、同年代の人間との関わりを通じて、多世代とのコミュ力を養っていく。

まっ、これは持論だが。だが、学校がコミュ力を養う場になってるってのは事実だ。

彼女はただでさえ閉鎖的な家庭環境にいるんだから、

学校でぐらい他人とコミュニケーションを取るべきだ。


教師は色々と考えた末に、大きな溜息をついて点呼を再開した。



~ 一方、第三〇七区にて ~


人々が、悲鳴を上げながら逃げ惑う。逃げてくる方向を見れば、その理由は一瞬で理解できた。


「「「ニ!ニ!ニ!ニゲゲゲゲゲゲ・・・ン!!!オオオゴゴゴウウウアアアア!!!!!」」」


力士のような形をした肉塊に、無数の人間の口が付いている化け物が、全速力で走ってきている。

足の遅い人間に追いついては、巨大な腕で掴み頭頂部にあるひと際大きな口で喰らう。

腰を抜かして動けない人間、老人、子供、化け物は的確に弱い存在から狙っていく。


「こちら村井亜警長、現場に到着。

力士のような見た目をした異形が、人々を食べながら××通りを南下しているのを確認。

第三種武装及び第三級超能の使用許可を求む」


村井の言葉を聞いたオペレーターは、「少し待て」と返す。

暫くの沈黙の後「許可する。ただし、民間人に被害を出さないように気をつけろ」

と淡々とした口調の言葉が返ってくる。

村井は「了解」と短く答えると、無線から手を放し深呼吸を行う。


「片山一級亜警、藤井二級亜警。援護してくれ」


村井の後ろにいた、二名の亜警は返事をすると同時に、左右に展開した。

藤井二級亜警は「皆さん、足を止めないで!」と叫び。逃げ惑う民間人を避けながら、異形の前に出る。

そして、素早く回転式拳銃を構えると異形に二発撃ち込んだ。


「「「ニニ!ゲゲゲガゲガガガ!!オエエ、コ、オコオオココオロオオオス!!!!」」


攻撃を受けた異業は、怒りの籠った声を上げ、藤井亜警に向かって一直線に走り出す。

一瞬にして、ヤバい!と言う顔になった藤井は民間人のいない方へ向かって全力で逃げる。

そんな藤井から少し離れたところで、片山亜警は半自動小銃を構えていた。

片山はゆくりと深呼吸をし、カッと目を見開いた。片山の瞳が僅か光ったと思ったその刹那。

片山は引き金を三度引き、見事異形の無数にある口の中に銃弾を撃ち込んだ。


「「「アアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」」」


異形は明らかに痛がっていたが、藤井を追うのをやめない。どうやら、致命傷には至っていないようだ。

藤井は「せんぱぁ~い!ヤバいっすよ!!」と息を切らせながら叫ぶ。

そんな藤井を見た片山は、大きな溜息をつきながら

「頭痛止めと目薬、持ってくればよかったぜ」とぼやく。

そして、もう一度銃を構えると。目を見開き、引き金を三度引く。

続けて熟練の早業で、装弾を行うと。もう一度目を見開き、次は六度引き金を引いた。

弾は全て、異形の足に命中し。足の肉が千切れ、飛んで行った。


「「「アアガガアアガガアアアアガガガガガアアア!!!!!!!」」」


異形は、悍ましい悲鳴を上げると同時に地面に倒れ込む。

だが、異形は地面を這いながら藤井のことを追いかけ続ける。

藤井は「ああもう!やってやるっす!!」と叫ぶと、足を止め振り返る。

這い寄ってくる異形をしっかりと見据え、残りの銃弾を全て、頭頂部の大きな口に打ち込む。


「「「グガガアアアア!!!」」」


それでも這い寄ってくる異形に、死を覚悟した瞬間。「よくやった!」と聞きなれた声が聞こえてきた。

そして、藤井の後ろから現れた村井が薙刀で異業を一刀両断。

異業は悲鳴を上げる間もなく、動かなくなった。

村井は薙刀に付着した黒色の血を、手拭いで丁寧に拭き取った。


「片山一級亜警、藤井二級亜警、よくやってくれた」


そう言いながら振り返った村井は、二人の顔をしっかりと見て、ホッとしたような顔をした。

二人もそんな村井を見て、安心したような笑みを浮かべた。

が、藤井は次の瞬間には顔を下に向け溜息をついた。


「片山一級亜警も村井亜警長も、有用な超能を持ってるのに。

なんで俺には、こんな超能しかないんでしょうね・・・」


藤井はそう言うと、指を突き出した。すると、指先から少しずつ水が出てくる。

が、コップ一杯分の水が出た辺りで、水が止まってしまった。

もっと大きな溜息をつく藤井を見た二人は、苦笑いをする。

が、村井は真面目な顔をしながら藤井の肩に手を置く。


「確かに、片山の『加速眼』も私の『対亜滅殺闘気』も、強いとされる超能だ。

だが。超能だけが全てじゃない。強い超能を持っていても戦えない者はいるし。

長年の訓練だけで、亜神を殺す力を得た者もいる。お前は筋がいいし、勇敢さもある。

現場で訓練を積んで行けば、優秀な亜警になれるさ」


村井の言葉を聞いた藤井は目に涙を浮かべ「亜警長。俺、一生付いて行きます!」と敬礼を行う。

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