43.
結婚してからというもの、カリスティは夫に出ていけと言うことはなかった。移り住んだのがマリカの買い上げた私有地の小城だったこともあり、出ていくのなら転がり込んだだけの妻のほうだろう。それに夫はよく働き、よく愛を伝えた。言葉を守り、マリカはウスワの島を出ることがなかった。
カリスティが妊娠したらば、つわりが落ち着くまで待ち、メスカのケララニ陛下へ挨拶するまで実に十年近くが経っていた。
「ケララニ陛下、お久しゅうございます」
頭を下げる夫婦の挨拶を受けながら、歓迎して大きく笑う。
「カリスティまでよく来てくれた。体調は大丈夫か? 疲れただろう、座りなさい」
「陛下、ありがとうございます。お気遣いなく」
「いや、待ち侘びた子だぞ。大変だろう。アシリカがはじめて妊娠したときなどかわいそうでな」
献身的な夫の顔をしている陛下に、カリスティはくすくすと笑う。
「とはいっても、もう五人目ですから」
「ごっ……?」
泰然であるはずの王にあるまじき声の詰まり方をして、ケララニの笑顔が固まった。妊婦を支えながら座らせる男をじとりと睨む。
「マリカ、お前な……」
「ひとりふたりでは文句をつけられると思いまして」
と、しれっとしている。
「あのとき入国禁止にしたことを根に持っているんじゃないだろうな……?」
「いいえ、それについてはとくには」
痛い沈黙になる前に、お茶が運ばれて来た。
「リーニ!」
入って来た侍女にカリスティが手を振る。
「カリスティさま、兄さん、よくぞいらしてくださいました」
机にティーカップを置いていく。
「おめでとうございます。次はどちらですかしらねぇ?」
「いまのところちょうど男女二人ずつだから、この子で均衡が崩れるわね」
「……リーニも、知っていたのか? 五人目だそうだぞ」
「はい、陛下はご存知なかったんですのね。お聞きくださればお答えしましたわぁ」
ほほほほ、と隠蔽に加担して楽しそうだ。姫の留学後からリーニとカリスティは個人的な手紙での交流を続けていたから、報告のやりとりしかしてない男たちよりも、お互いの近況に詳しかった。
「マリカを信頼しすぎた……」
苦々しくため息をつく。きっとこの家臣から直接連絡されると思っていたのだろう。それ以外はこまめに報告していたはずだから。
「それでは嗣子を選定しておけ。その子が成人したら、ウスワの独立を許す」
「陛下……?!」
カリスティが目を見開く。
「自治区のままでも俺は構わんが。あと十年後にはメスカは手を離してもよかろう」
「……ありがとう、ございます。父にもすぐ伝えます」
「そうしてくれ」
窓を見下ろすと、六人の子どもたちが中庭に出てきた。もう成人近いメスカ国第一王子アディが一際背が高く、その弟エペリもそろそろ兄に追いつきそう。青と茶の髪の子どもたちが間を駆ける。海でよく遊び色が抜けたのだろうが、もとは暗青灰色と黒のはずだ。叫び声に近い楽しげな悲鳴がここまで届く。一番幼い子で二歳ほど、年長者がよく配慮して遊んでやっている。マリカとカリスティの子のことだ、顔立ちは父母のいいとこどりをしていることだろう。
夕餉のときにでもじっくりひとりずつ紹介してもらいたいものだ。
めでたしめでたし、かしら?
A Happy Ending, I suppose?
最後までお付き合いくださりありがとうございます。
作品傾向 : 脇キャラのほうが個性強くなりがち。
いつもは書いてる途中に終わり方が浮かんだり、エンディングがポンと先にあってそこに向かっていく感じなのですが、この作品は途中のシーンが強く意識にあって、終わり方が最後まで決まらなくて悩んだ珍しい作品です。
途中でいちゃいちゃ最高潮があったから……?
言わずもがな、エセベッドシーンのあそこです。
そこで満足しちゃったような。
キーワードは「監禁される姫」、「特技の多い(裏の顔ありそうな)宰相」で、一番に船上での救出シーンを思いついて書きたくて始めたお話でしたがあれよあれよと十万文字に近づいてたまじか。自分まじか。
後半やっぱりヘタレるヒーローですが。
あの一夜では不完全な神同士、人間と神では交われないので、神々がカリスティとマリカの体を借りたのは波長を合わせるようなもの。と考えていただければわかりやすいでしょうか。
なにはともあれまたひとつ書き上げられてよかったです。
いただける「いいね」も、この部分で面白いと思ってもらえるんですか!? と予想外で新鮮だったりしました。そしてとても嬉しい。
評価、ブックマークにもにやついております。
書きかけの作品はいくつかあるのですが、それらを完成させて次に投稿できるのがいつになるかわかりません。
またお会いできるときにお会いしましょう。
あとがきまで読んでくださりありがとうございました。
お気が向きましたら、
→読んだよー(*´◒`*)
→きばいやんせ(*゜▽゜)ノ
などコピペでも一言感想そいやっしていただければ喜びます。
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