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16.

 王との面会が許されたのは、ギギ・モンスターの引き取り先が決まった三日後だった。前回もマリカと使った会議室に呼び出された。


「さて、俺に直接教えたいという、ウスワ国のこれからはどうなっていくのかな」


 王の背後にはマリカが立っている。


「ケララニ陛下に今日お話したいのはむしろウスワ国の終わり方について、です」


「ふむ。詳しく聞こうか」


 ケララニは平静を保っていたが、そばにいるマリカの眉間の縦じわは増えていた。


「わたしの留学で、まだウスワ国に希望があるのかどうか、メスカ国から学ぶことはできないか見極めてこいと送り出されました」


 学ぶとは真似ること、それに縋った。カリスティは動ける範囲内で目を皿にして努力した。


「結果、なにもかもが違いすぎて、とても参考にさせていただくことは不可能と判断しました。もちろん学んだことは無数にありましたけれど、ウスワにはもう力が、国家として続けていく土台がないのです」


 ここメスカ国は資源がある、土地も余裕がある、災害も少ない大国。反対に、資源も出なければ技術者を育てる基礎もない、二十年前の台風で土地も人員もごっそり減り、毎年なにかと小さな災害に見舞われ続ける小国。国力の差を見せつけられるばかりだった。

 それらから導き出した結論は悲しいものだ。


「ウスワ国の解体を……考えてます」


 カリスティは、一つの国のーーしかも自国の終焉を口にした。冗談では許されない。


「父は、……ウスワ国国王陛下は自力でベッドから起きれず、ベッドに座ったまま執務を行っている状況です」


 本来ならば軽食や飲み物を置くための簡易テーブルで決裁を行う。それでもペンを握りながらカリスティに命じた。留学に行って、生き残る道を探してこいと愛娘を追い立てた。


「なんと……」


 言葉もない、とケララニは衝撃を静かに受け止めている。元気な頃のカレオ王を見知っているからこその反応だった。落胆をありがたく思う。親しく感じてくれていたからこそ、するものだから。


「現在、臣下たちはよく傾きを食い止めてくれています」


「我こそは王になると目論む者はいないのですか」


 国を運営する者として、マリカは当たり前の懸念を示した。

 あり得るのは叛逆、乗っ取り。されど汚い野心があろうとも、あんな旨味のない国を誰が欲しがるものか。国土も狭く、大した産業もない。新しく興す力にも欠けている。郷土愛はあるけれども、客観的な評価は厳しい。


「貧しすぎてそんな考えを起こす余裕もないのです。民は飢えないことで毎日が精一杯です」


 ウスワ国を出る前に、城から港まで歩いてつぶさに見てきた、光のない民の瞳よ。


「メスカ国のような素晴らしい国と交友を持てたことはとても光栄です。これまでありがとうございました。存続の道を探したかったのですが、わたしには……」


 維持できず縮小した軍。武官の目が届かず荒れていく治安。減るのは観光客ばかりではない。馴染みの下町が(すさ)んでいく景色がまぶたの裏に浮かぶ。


「なにはともあれ、落ち着いた場で事前にお話しできてよかったです」


 急に崩れ落ちるよりかはましだ。

 父であるカレオ国王がせめて姫は国外に逃そうと婚約を打診しても、誰からも名乗りを挙げられなかったカリスティのようにーー世界中から要らない、と言われているのだ。


 この場で国を貰い受けるなどと答えられても軽率すぎる。


「予定より早くはありますが、留学を終えてウスワに帰りたく存じます」


「俺としては滞在が長引くのでも構わない。もう少しゆっくりしていきなさい」


「……お気持ちだけ、ありがとうございます」


 深く一礼をして、自室へ下がりますと言った。



 聞かせるつもりはなかったのだろうけれど、扉を閉めてしばし立ち尽くしたときに聞こえた。


「そこまで(きわ)まっていたか」


 哀れみに満ちた声が脳内に留まる。カリスティは唇を噛んだ。


16話が短いので17話も同時に投稿してます。

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