愛しの猫獣人な彼女
うちの彼女は猫系だ。
犬系ではなく猫系の彼女だ。
だが、性格や行動が猫っぽいから比喩で猫系彼女と呼ぶわけでもなければ、「ごめんねぇ」でおなじみの彼女の正反対をいくから猫系彼女と呼んでいるわけでもない。
俺の彼女は本当に姿からして猫……というか、要するに猫獣人なのだ。
しかも、人間の身体に猫の耳や尻尾が映えているというタイプの獣人ではなく、全身にもふもふ、モコモコの毛が生えているタイプの獣人であり、全体的に人間よりも獣に近い容姿をしている。
彼女は茶虎柄の猫がベースとなった獣人で、一見するとツルリとした、けれど触れればふわふわな光沢のある毛皮をまとっている。
また、肉球は気品のある黒で、怪しく揺らめき俺の心を惑わせてならない尻尾はサイベリアンのような長毛種のフサフサとした尻尾だ。
クアッと大口を開けて勇ましい欠伸をした時に見られる、ズラリと並んだ鋭い牙や丸い指先に隠されている鍵爪、マンションの廊下を歩く足音まで聞き取れ、かつ、それが俺の物か他人の物かを判断できるほど優れた聴覚。
魅力を細部まで書き尽くそうとすれば原稿用紙百枚分は書ける。
そして、そこまで語ってもなお魅力の全てを表現することはできない。
全身モコモコタイプの獣人に恋愛感情や性的な愛を抱くと、周囲からは気味悪がられ、動物でもいけるの? と聞かれたりすることがある。
だが、そんなわけはない。
獣人には、獣を思わせる荒々しい美しさと共に人間としての魅力もたっぷり詰め込まれている。
獣人好きを単なる可愛いもの好き、動物好きと勘違いしてはいけない。
ましてや、獣人を人間と全く異なる存在として認識し、動物と同列に扱うことなどあってはならない。
その考え方は獣人に対して著しく礼儀を欠く、不誠実なものだ。
確かに俺は動物好きだし、彼女のモフモコ獣な姿や感触、香りには常に癒されている。
だが同時に、彼女の温厚で優しい性格や照れ屋なところなどの内面にも惹かれているし、毛側に覆われた人間の女性とも共通する妖艶でしなやかな骨格にも惹かれており、スケベな感情を覚える。
獣人に対し、動物の側面と人間の側面のどちらかだけを追うことはできない。
獣であり人間。
そうして成立する美しさと生物的な魅力。
そこに惹きつけられるし、焦がれるほどの強い憧れを感じる。
笑顔の彼女を一目見た時から、俺はずっと彼女の虜だ。
告白された時は嬉しすぎて心臓が狂喜乱舞し、危うく人生最高の日が命日になるところだった。
そんな彼女とは同棲中で、たまに諍いを起こしつつも幸せな日々を送っている。
当初は猫への愛を語るエッセイもどきのフィクション短編を作ろうかと思っていたのですが、どうしても一度、獣人×人間のラブコメを書きたくて本作を作っちゃいました。
人間も男性にするか女性にするかで迷ったのですが、どうせ女性の方は別の長編作品の続編で書くことになるだろうし……と思い、今回は男性にしました。
ちなみに、世界観そのものは異なりますが、獣人の設定は、現在カクヨムだけで公開している、
「私はチート無しなのに、チーレム築いている親友とモフモフ獣人に囲まれている親友がムカつくので、天誅してきます。」
と、ほぼ同じです。
そちらにも全身モフモフタイプの獣人が出てくるので、よろしければ読んでみてください。