温泉旅館のゲームコーナーで起きた怪事
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」を使用させて頂きました。
廊下を歩みながらゲームコーナーを見た私は、思わず頬を緩ませちゃったの。
「おお…」
何故なら、そこはレトロゲームの宝庫だったんだ。
温泉旅館はこうでないとね。
「良いなぁ…『ゴリラーコング』と『アストロエイリアン』なんか往年のテーブル筐体じゃない!」
「まあ、京花ったら…嬉しいのは分かるけどお風呂が先よ。」
だけど、残念。
私はお母さんに利き手を取られ、そのまま大浴場へ連れ込まれちゃったの。
後ろ髪は引かれるけど、ここは上がるまでの我慢かな。
そうして身体から湯気を上げながらゲームコーナーへ進もうとした私は、あまり見たくない光景に遭遇しちゃったんだ。
「何だよ、絶対インチキだろ!」
「止せよ、たかがゲームにムキになって…」
悪態をつきながら筺体を叩く青年を、連れらしき青年が宥めている。
どうやらゲームの結果に不満があるみたいだね。
そして青年の片割れが殴ってたのは、往年の名機であるカイマンパニックだったの。
モグラ退治の要領で鰐を叩くんだけど、高難易度だと理不尽な程に速いんだよね。
だけど幾らイライラしても、台パンは良くないよ。
それから数分後。
宥め賺す連れ合いに毒気を抜かれたのか、台パン青年は渋々立ち去っていった。
これで心置きなくレトロゲームが楽しめるよ。
「さてと、まずはパズルゲーの定番の『ミノリス』で…」
「おのれ、思い上がった人間め…」
陰々滅々たる不気味な声に、私は思わず凍りついちゃったの。
このゲームコーナーに、今は私しかいないはずだよ?
「ハンマーで叩かれるのは良いが、素手で叩かれる謂れはない…しかも俺達は生産終了で、壊れたらそれまでなのに!」
「え、何これ?」
何と声の主は、カイマンパニックの筺体にセットされた五体の鰐の人形だったの。
ガチガチと口を開閉させながら音声パターンにない台詞を喋るだなんて、一体どうなってるの?
「この恨み、晴らさずにおくものか!」
「ぎゃあ〜!」
そして鰐達の恨み節から間髪を入れず、凄まじい絶叫が男湯から響いてきたんだ。
「大丈夫ですか?しっかりして下さい!」
「う…う…」
従業員達に担架で運び出されているのは、あの台パン青年だった。
力無く呻く彼の身体は血まみれで、鰐の歯型が至る所に残っていたんだ…
救急車で運ばれた青年の安否は、一介の旅行者の私には知る由もなかった。
だけど彼が重傷を負った理由だけは、私には分かっていた。
邪険にされたゲーム筐体の恨みが、何らかの形で影響を及ばしたのだと…