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9. 第二皇子の元婚約者候補



 あんなところで何をしていたのかと叔父に問い詰められたあの夜、人目を忍ぶようにあの場にいたアーサーと彼の連人を思い出し、迷わず告げ口した。

 途端、従兄弟の周りの温度が急降下したのを感じ、リヴィアは自身の失態を悟った。

 後悔先に立たずとはこの事か。類は友を呼ぶというでは無いか。性悪の友人は根性悪という事だ。


 リヴィアは焦る思考で言いたい放題頭の中で叫んでしまい、失念していたレストルの特性に慌てて頭を抱えた。

 抱えたところでもう手遅れではあるのだが……。


 勝手に人の頭を読んでくるレストルにへえ、リヴィアは俺の事をそんな風に思っているんだねと言われ、その様子を横で見ていた叔父に憐憫の目を向けられた。


 レストルが言うには、詳しくは殿下の許可無く話せないが、頼まれて夜会の日に合わせて会場の外を貸したのだと、勝手を叔父に謝罪していた。

 リヴィアはせいぜい女性との清算話だろうにと、内心鼻を鳴らして聞いていたが、レストルがこちらを向くと同時にそっぽを向いて、目を合わせないように気をつけた。


 そしてその後、リヴィアが皇子殿下に不敬を働いたとレストルが笑顔で我が家でわざわざ父に報告し……出禁である。


 おかげでリヴィアはさっさと忘れたいのに忘れられない、

負のスパイラルに突入した。


 現状に憤りアーサーを思い出すと、あの夜触れられたあちこちが熱を持って羞恥に悶える。

 自分は違うと何が違うのか分からないまま叫びそうになるのを堪え、鏡に映る自分の顔が赤く染まっているのを見ては、クッションを投げつけていたので、侍女に無言で鏡に布を掛けられた。


 酷いときには髪を梳いているだけて、そこに口付けるアーサーを思い出した。体調を心配されるほど真っ赤になっては、それを見て改めて羞恥で心が死にそうになった。


 そうして最後にはあの捨て台詞を思い出し、我に返って怒るのだ。

 アーサーの演技力の高さに舌を巻くと同時に、それに未だに翻弄されている自分に腹が立って仕方ない。

 

「……リヴィアさん……さっきから凄いですね……。顔面福笑いですか?せめて笑うか怒るかどちらかにしては如何です?」


「そこまで酷く無いでしょう?!顔の配置は変わっていない筈だけれど?!そもそも笑って無いわ!怒っているのだもの!」


 へえそうなんですかふーん。と気のない返事が返ってくる。その声に平静さが蘇ってくる自分も自分だ。


「そう言えば、少し前にお見かけしたライラ様も珍しくお顔の色が悪かったですね」


 思わぬ名前にリヴィアの目に動揺が浮かんだが、思い出すように天井を見上げているシェリルは気づかないようだ。


 ライラ・フェルジェス。


 ────アーサー第二皇子殿下の長年の恋人だった方。


 フェルジェス家現当主は、魔術院トップの長を勤めている。そしてライラは、たまに父親の職場に顔を出す。

 自身も魔術の素養を持つらしく、父親の手伝いをするのだとか。


 同じように魔術院勤めでも、片や社交会の華。片や引きこもりで平民に混じり魔道具作りに没頭する変わり者。

 ライラが来れば院内が華やぎ志気が上がるのだと、その名前は魔術院内でもよく聞こえていたものだ。


 ライラ・フェルジェス……今はライラ・イスタヴェン子爵夫人。


 ────あの人(・・・)


 リヴィアは心の中で呟いた。





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