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77. 祈りを胸に


 私が居眠りをしている間、リヴィアさんは一週間ぶりに一度目を覚ましたようですが、また意識を失ってしまいました。


 そしてそのまま三ヶ月。彼女は皇都へ運ばれ、今はエルトナ家の屋敷にいます。


 一度セド院長とお見舞いに行きました。

 本来ならウィリス室長と行くべきなのでしょうが、今皇都の貴族は妙にざわついているのです。


 誰かが何かやらかしたとかで、その皺寄せが室長にまで来てしまい、忙しくてとても時間が取れませんでした。


 リヴィアさんの事が心配な私は必死で室長に頼み、どういう知り合いなのかは知りませんが、都合をつけて来た同行者がセド院長だったのです。


 院長は相変わらず得体のしれない人で、貴族のお屋敷でも平然と卒無く振る舞うものですから、ひょっとして貴族相手の詐欺でも働いているのではないかと疑ってしまいました。

 

 屋敷内では、平民の私たちでも丁寧にもてなされ、とても驚き緊張しましたが、眠り続けるリヴィアさんを見て、それら全てを忘れて泣き出してしまいました。


 ◇ ◇ ◇


 リヴィアさんの父親であるエルトナ伯爵は、白亜の塔の権威でもある高名なお医者様を手配し、眠るリヴィアさんに張り付くように自ら看病していました。


 お屋敷の使用人の方々も、お二人をとても心配していらして、その様子を見ているだけで、心が締めつけられるようでした。


 一つだけ疑問に思ったのは、リヴィアさんは父であるエルトナ伯爵様から、悪感情を持たれていると思っていたようですが、そんな人がわざわざ娘の看病を買って出るものでしょうか?


 私も後見人になって頂いておりますし、悪い人ではなさそうです。ただあまり聞いて良い話では無さそうだったので、掘り下げた事はありませんが。


 眠るリヴィアさんに研究室で待ってますね。子どもたちも会いたがっていますよと告げ、後ろ髪を引かれる思いでエルトナ家を後にしました。


 ◇ ◇ ◇


 そして一週間後、リヴィアさんの目が覚めたと連絡があり、私は飛び上がらんばかりに喜びました。


 けれどそれを告げる室長の顔はどことなく曇っていて……


 どうしてそんな顔をするのか、何を言い淀んでいるのか。言葉にする事が(はばか)られ、必死に目で訴えていると、室長は悲しそうな顔をして口を開きました。


「リヴィアちゃんね、記憶を無くしちゃったみたいなの。ここ半年の記憶を……」


 半年?


 それなら孤児院の皆や研究室、お屋敷の方々の事だって覚えています。ほっと胸を撫で下ろす私は、とある事に思い至ります。


 まさか……でもそんな筈……


 半年……


 私は再び室長に目で訴えてしまいました。

 自分が口にするのが怖いからって、人に言わせるのはどうなんでしょう。それでも認めたく無いのです。


 だからどうか────


 けれど、私のお願いなんか神さまは聞いてくれた事はありませんでした。


 今度もまた、それまでと同じように……


「残念ながらアーサー殿下の事は覚えていなかったそうよ」


 そう言って首を横に振る室長を、私は呆然と見つめてしまいました。



3章終了です。このお話は全4章ですので、あと少しお付き合い頂けると嬉しいです(╹◡╹)


※ 明日から1日1回更新になりますm(_ _)m


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