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64. 教会内で



 頭が痛い……

 身体を起こすと多少のぎこちなさを感じるが、問題なく動く……?


「……?」


 あれ?ここは何処だったか?


 見上げれば高い天井には精緻なフラスコ画。

 見渡せば等間隔に並ぶランセット窓と、その奥には薔薇窓のステンドグラスが七色に弾く光を講壇に落とし、神聖さを醸し出している。

 見覚えのあるような造りにリヴィアは首を傾げた。


「……教会?」


 聖堂のようだ。


「気がついたようだな」


 その声にはっと視線を向ければ、数メール先でゼフラーダ辺境伯が床に座り込んでいた。


「辺境伯?」


 辺境伯は胡座をかいて座り込んだまま、視線だけをこちらに向けていた。床には何かの本が広げられ置かれている。見れば辺境伯の周りには古書が何冊も積み上げられ、中には禁書もあるようだ。


「この教会の防御壁を突破してくるとは思わなかった」


 しかし辺境伯のその言葉にリヴィアの背中に戦慄が走る。

 なす術もなく重力の望むまま、落下していた自分の身体を思い出し、身震いする。


 ◇ ◇ ◇


 あの時リヴィアは教会に張られた魔術の陣を確認した。誰も入れないようにと術者の思考を凝らした作品。


 リヴィアは咄嗟に思いついた事を実行した。


 国を守るためにと張られた結界。いたずらに入れ込めないように組まれた陣の根本は────人を守る事!


「わたくしを助けて!」


 リヴィアは必死に結界陣へ、自身の持つ魔術の素養で問いかけ、頭の中で陣を描き続けた。


 ◇ ◇ ◇


 ぎゅっときつく目を瞑る。上手く行ったようだ。


「よ、良かった」


 詳しい調査結果は後で書く事にして、今は自身の無事を喜ぶべきだ。

 ひとしきり幸運を感謝しつつも、今度はこの状況に混乱し出す。


 ……なんか縛られている……


 見れば、リヴィアの上には辺境伯の上着が掛けられているが、その下で転がる身体は後ろ手できつく縛られている。


「な、なんで?」


「……教会の中は完全禁踏区域だ。特に魔術の素養のある君にあちこち触られ、中に仕込まれた陣に下手に干渉されでもしたら困る」


 つまりここは教会の中だと言う事だ。


「何故辺境伯がここに……?」


「それは私の台詞だし、私はここの管理者なのだから何もおかしい事は無い」


 辺境伯は首を一つ振って続ける。


「……でも、辺境伯は魔術の素養を持っていないから、夫人が管理しているのでしょう?」


「そうだ。けれど、魔術は血脈で受け継がれるもの。私にも出来る事はある」


 妙な返事にリヴィアは眉を顰めた。


「それは……何です?」


 辺境伯は重くため息をついた。


「壊れてしまったこの陣を復旧させる事は、今の魔術院には出来ないだろう。……だが、記録は消させて貰う」


「なっ?」


 確かに今の魔術院ではこの古代魔術陣の復旧は叶わないだろう。けれどこの状態を維持出来れば、歴史を繋ぎいつか叶うと思うのだ。この陣の完全な復興が。


「所詮壊れるべくして壊れた物」


 ふっと自嘲するように伯は笑った。



「だから壊すという暴挙に出たと?愚かですわ」


 聖堂内に響き渡る声に、リヴィアははっと後ろを振り返った。


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