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13. 孤児院との関わり



 シェリルとリヴィアの付き合いは長い。

 エルトナ家も貴族のそれに倣い、爵位持ちとして孤児院に寄付をしている。シェリルはその院の出身者だ。


 面倒見がよくしっかりした子どもで、金勘定を軸に計算が早く正確だった。13歳の時に仕事を探す為の面談に付き合ったところ、こだわりは無いが、手先があまり器用で無いので、頭を使った仕事がいいと漠然と考えているようだったから、魔術院勤めを勧めた。

 平民にも広く門戸を広げている魔術院は人気がある。魔術に通じる事が出来なくても、仕事が沢山あるからだ。


 ただ試験は一般常識の筆記と面接があり、孤児院で習う勉学だけでは無理があった。

 流石にシェリルも話を持ちかけた時は気後れしていたが、努力する気があるなら協力すると、シェリルのやる気を引き出した。


 孤児院にリヴィアの家庭教師を通わせ、リヴィアもそこで一緒に学び教えた。父には奉仕活動の一環だと無理やり話を通し納得させた。

 一年程それを続け、合格通知が届いた時には自分の事のように嬉しく、目頭も熱くなったものだ。


 それが二年前。あの頃14歳の可愛かったシェリルは、研究室を裏から回す、敏腕秘書へと華麗な変貌を遂げた。

 リヴィアに恩を感じてはいるものの、納期と品質管理には容赦がない。ついでにお金に目がない。


 室長であるウィリスは一般社会に使用できる魔道具を発案・開発している尊敬する師だ。

 貴族であるリヴィアは、皇族を守る為の魔道具やら、軍部が使用する魔術書の研究に進んだ方が、家の体面は保てただろうが。こちらの方が楽しいと思っている。


「それは何です?」


 リヴィアが造形した魔道具を手に取りながら、執務机の上の魔道具にも興味を示している。


「息抜きよ。オルゴール時計。孤児院に持って行こうと思って」


 そう言うとシェリルは渋い顔をした。


「またお金に変えられたりしませんよね」


 鼻に皺をよせて、唸るように吐き捨てる。

 リヴィアが通う孤児院の院長は悪い人物ではない。

 だが不良行為しかしない。


 当たり前のように子どもたちの前で煙草は吸うし、賭博場に入り浸るし、酒に弱いくせに潰れるまで飲むし、女性を口説くのも忘れない。断じて悪人ではない。クズなだけだ。


「育てて貰った恩は感じてますけどね。どうにも私とは感覚が違うんですよね。あそこの院長」


 どうやら今日も反面教師としての立派に役目を果たしているようだ。リヴィアはうんうんと頷きながら、オルゴールを指で突いた。


 孤児院の院長は確かに大変な仕事だ。だが教会から派遣された修道士やシスターが運営をしているのだから、慈悲深いものかと思っていた。

 しかしながら、足を運ぶにつれ、どうやらここの院長はその限りでは無いのだと思い至った。

 最初は子どもが嫌いなのかと思っていたが、どうにもそういう訳では無いらしい。


 本当かどうは定かではないが、昔実家から勘当された貴族か富豪だかの息子で、行く宛もなく、教会に放り込まれた口らしい。

 大して興味もないくせに頭の出来は良いらしく、神の家で上辺だけ聖書を学び、好き勝手しているようだ。


 正直子どもたちへの扱いも雑で、リヴィアも用が無い限り近づきたくない。なのに不思議な事に子どもに好かれやすい体質らしく、院の子どもたちは彼によく懐いている。


 絶対やる気ないくせに……たまに悔しくなる。

 普通に理解できない。



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