漫才:二重人格
2人「はいどうも、よろしくお願いします」
A太「ツッコミのA太です」
B助「二重人格のB助です」
A太「よろしくお願いします……って、おい!」
B助「どうしたんだよ、寝起きすぐから張り切ってるな」
A太「いや寝起きじゃないし、オマエ、ボケって言う場面をボケにするな」
B助「何かややこしいな、どういうことか一旦紙芝居にして教えてくれ」
A太「大人なんだから口頭で分かってくれ」
B助「善処します」
A太「しないヤツの言いっぷり、いやまあいいや、説明するぞ」
B助「感動巨編になることを祈る」
A太「ただの説明! あのな、ボケって言う場面で二重人格って言うな、何だそのボケ」
B助「いやそれはボケじゃないよ、マジなんだよ」
A太「マジなのっ? マジならマジで漫才の最初で言うの問題だろ!」
B助「でもお客さんも知っていたほうが安心して観られるじゃん」
A太「そうかもしれないけども、俺も今初めて知ったから」
B助「言ってなかったっけ? あっ、でも確かに最近できたからなぁ」
A太「そんな彼女みたいに言われても、いつ頃そうなったんだ?」
B助「昨日の午前4時にパンの仕込みをしていたら」
A太「えっ? オマエ、パン屋さんも経営しているの?」
B助「言ってなかったっけ? いやパン屋さんは経営していないけども」
A太「じゃあ”言ってなかったっけ?”って言わなくていい!」
B助「いや何かややこしいな、どういうことか一旦カニ芝居にして教えてくれ」
A太「そんなややこしくないし、カニ芝居って何だよ! 紙芝居みたいに言われても!」
B助「カニ芝居はあれだよ、猿が柿をカニにぶつけるやつ」
A太「じゃあただの猿カニ合戦じゃん! 一旦猿カニ合戦にして教えるってなんだよ!」
B助「一旦、猿カニ合戦に落とし込んでくれると分かりやすいから」
A太「いや絶対そっちのほうが分かりづらいわ! というか二重人格ってマジでっ?」
B助「それはマジ、マジ中のマジ」
A太「何か人格入れ替わった時とか見分け付けることできるのか?」
B助「まあ声が変わるね、ちょっと高くて、そして陽気になるんだ」
A太「オマエもそこそこ陽気なほうだけども、さらに陽気になるんだ……」
B助「あと入れ替わっている時の記憶はあるよ、何も手出しできなくなるだけで」
A太「そういう感じなんだぁ」
B助「あっ、何か人格入れ替わりそう、入れ替わる、入れ替わる、あっ、あっ……」
A太「おい、どうしたんだよ、ちょっと、急に人格入れ替わられても困るぞ」
B助「えっ、こんなところで、ですか、こんなところで入れ替わるんですか? あっ、ちょっ」
A太「何だよその会話。何で別人格には敬語なんだよ、オマエ」
B助「こんなところで、あっ、やめて下さいっ、あっ、イヤ……あっ……」
A太「何でちょっといやらしい感じになっているんだよ!」
B助「んんーーーーーーーっ!」
A太「何か絶頂迎えたけども……おい、どうなってんだ、おい」
B助「……」
A太「どうなったんだ? 結局どうなったんだ?」
B助「パンパン、パンパン、パンパン、パンパン」
A太「いや何をしているんだ? パンパンって何をしているんだよ?」
B助「パン最高! パンパンパン!」
A太「いや陽気なパン好き! パン仕込んでいる時にできた人格はパン好き!」
B助「果物の入ったパン、最近考えているんですけども、何かアイディア無いですか?」
A太「うわっ! 唐突にパンのレシピ聞かれた!」
B助「何でもいいんで、答えて下さい!」
A太「かなりグイグイくる……えっとじゃあ、ドライフルーツとか……」
B助「いや総称じゃん! 品で言ってよ! というか紙芝居で伝えて!」
A太「紙芝居を求めることは元の人格と一緒なんだ……」
B助「というか柿芝居でもいいし!」
A太「柿芝居って何だよ! そっちで勝手にフルーツ確定してる!」
B助「いや柿芝居はあれだよ? 猿が柿をカニにぶつけるやつのことだよ?」
A太「じゃあ猿カニ合戦だ! だから一旦猿カニ合戦に落とし込んだら分かりづらいだろ!」
B助「パンパンと良いツッコミするねぇ!」
A太「いやとにかく陽気! 相方のこの人格! とにかく陽気だ!」
B助「……えっ? 交代したい? パン作りの時はずっと交代するから、漫才は交代してほしい?」
A太「あっ、何か俺の相方、交渉してる……」
B助「じゃあ今日はこんな感じでいいかな! パンパン! パァン!」
A太「うるさっ」
B助「……戻った……というわけで、あの、漫才の続きを、えっと、漫才、やろう、か……」
A太「何でちょっと口下手になってんだよ! 別人格の陽気さを見習えよ!」
B助「いや……最初の挨拶、から、あの、始めないと、乗っていけない、かも……」
A太「じゃあもうおしまいだよ!」
2人「どうもありがとうございました」