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嘆きの森から  作者: 空色
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15

 ──フォーサイス歴431年


 春の麗らかな日差しの中、盛大な催しが開かれていた。

 そのパーティーに参加していたナタリー・ランドルフは机の影に蹲る10歳くらいの少年を見つけた。


 ──何処か具合いでも悪いのかしら?


 ナタリーは少年を驚かせないように、少年と同じ目線になるように屈んで、少年の銀色の瞳を覗き込む。


「坊や、どうしたの?」

「…………」


 少年はムスッとした表情でナタリーと目を合わせようとしない。


「何処か具合でも悪いの?」


 ナタリーがもう一度尋ねる。


「何処も、悪くありません」


 小さく呟くように言った。ナタリーが少年の顔を覗き込むと目の辺りが赤い。


 ──この子どこかで見たような?


 ナタリーは妙な既視感を覚えた。


「グレアム! どこだ、グレアム!」


 遠くで誰が呼ぶ声がした。少年がピクリと反応する。


 ──グレアム?


「ねぇ、貴方お名前は?」

「グレアム・モンティス……です」


 少年は罰が悪そうな顔で言った。


「見つけた! グレアムこんな所に居たのか? また、訛りを馬鹿にされたんだろ」

「兄上」


 少年によく似た15歳くらいの少年が駆け寄って来た。少年はナタリーに気付いて礼をすると、少年を引っ張り起こし連れて行こうとした。ナタリーは慌てて「坊や!」と声をかけてしまった。

 少年達が驚いて振り向いた。


「坊や、貴方きっといい騎士様になるわ」


 ナタリーは少年の向かってそう声をかけると、少年は目を丸くした。それから、ナタリーに一礼して少年達は去って行った。


 ──グレアム・モンティス。確かに面影がある。他の皆も何処かで出会えるかしら……?


 ナタリーは温かな気持ちで少年達の背中を見送った。




 ◇◇◇




 ウンディーネは遺跡に触れようとして、寸での所で手を止める。ゆっくりと後ろを振り返ると黒髪に赤い瞳の妖艶な美女が立っていた。


「久方ぶりよの《不死の魔女》」

「お久しぶりね」


 ウンディーネは忌々しそうに美しい顔を歪める。対する魔女は妖艶な笑みを浮かべた。


「御主何をしに来た?」

「遺跡を壊さないでもらえるかしら」


 ウンディーネは眉間に皺を寄せた。


「これは妾の森の物、つまり妾のものだ。どうしようと、妾の勝手じゃ。此れのせいで妾は時間を無駄にした」

「まだ使いようがあるのよ」

「使いようじゃと?」


 ウンディーネが眉を顰めるが、魔女の表情は変わらない。


「何を企んでおるのじゃ」

「そろそろ次の準備を始めようかと思っていたの」 


 ウンディーネは眉間の皺を深くした。


「全く貴様ら魔女は気に食わぬ。何時も勝手にばかりじゃ」

「あら、ごめんなさい」


 魔女の言葉にため息を吐く。


「御主も飽きぬな」

「貴女だって同じでしょ?」


「じゃあ、この魔法遺跡はこのままにしといてね」そう言うと魔女は消えていた。ウンディーネは先程まで魔女のいた場所一瞥するとウンディーネ自身も姿を消した。


 森は静寂に包まれた。魔法遺跡を残して──





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