やってきたるは札幌ドーム!(後編)
野球場に来て、初めて知ったこと。
テレビで流れている実況中継の音声は、球場内には流れていない。あれ、球場内にも聞こえているものだと思ってたのに……。
まあ、野球は実況がなくても、誰が打席に立っているかは電光掲示板に出ているし、ランナーがどの塁にいるかもグラウンドを見ればわかるから、最低限のルールさえわかっていれば、状況がわからなくなることは少なそうだ。
実況が流れない代わりに(?)、選手が出てくるたびにいろんな曲が流れている。登場曲といって打席に入るたびに好きな曲を流してもらえるらしい。応援団が演奏する応援歌とは特に関係ないみたいだった。変なの。
ともかく、1回の表、日本ハムの佐藤というピッチャーは、ソフトバンクの攻撃をピッチャーゴロふたつと三振であっさり抑えた。外野の片隅に陣取ったソフトバンクの応援席の歓声がため息に変わる。1回裏、攻守が交代してソフトバンクの選手がグラウンドに散っていき、日本ハムの選手が打席に向かう。1番、センター、北川。
「……あれ? あのピッチャー、投げ方なんだか変じゃない?」
「おおー、アンダースローだー。珍しいねー」
ソフトバンクの片橋というピッチャーは、右腕をぐわっと後ろに大きく振って、身体を沈めるようにして下から投げている。へえ、野球でもソフトボールみたいに下から投げていいんだ。中学のときに体育の授業でやった、ソフトボールのピッチャーの投げ方とはちょっと違うように見えるけど……。
そんなことを考えていると、1番打者の北川がレフトの方へヒットを放った。歓声があがり、ひなちゃんも嬉しそうに選手の名前が染め抜かれたタオルを振る。
続いて、2番の杉野というバッターが打席に向かう。電光掲示板には、大きく選手の顔と、いろんな成績の数字が映し出されている。野球って数字が多いなあ。好きな人にとってはそこが面白いんだろうけど……。それにしても、やっぱりこの杉野って選手、どこかで……。
「……ねえみつねちゃん、この杉野って、もしかして『左で打てや』の人?」
「そうだよー。やってやろうじゃねえかって返した方」
「あ、あの人プロ野球選手だったんだ……」
目をしばたたかせたわたしに、みつねちゃんが手を叩いて爆笑する。いやだって、あのバラエティはその場面を動画で見ただけだけど、知らずにあれを見てプロ野球選手だと思う人はいないと思う。
ともかく、芸人じゃなくプロ野球選手だった杉野もレフトへヒット。さらに3番の金藤が何球もファールで粘ってフォアボールを選び、1回裏からいきなりノーアウト満塁の大チャンス。打席に入るのは4番打者、永田昇。
「永田ー、ホームゲッツー以外なら何でもいいよー」
「みつねちゃん、応援してるんだからそこはホームラン期待しようよ……」
そんなことを言っていると、応援団がいきなりハッピーバースデートゥーユーを演奏し始めた。電光掲示板にも「Happy Birthday」の文字。あ、誕生日なんだ。
「あ、永田誕生日か! よーしバースデー満塁ホームラン打て打てー」
なぜかころっと態度を変えたみつねちゃんの声は別に聞こえてないと思うけど、永田は外野に大きなフライを打ち上げた。打った瞬間はホントにホームランに見えて大歓声が上がったけれど、外野フェンスまでは届かず外野手に捕球される。とはいえノーアウト満塁なので犠牲フライだ。三塁ランナーの北川がホームに帰ってきて日本ハムが1点先制。
「やったー! 永田ナイス最低限!」
「……やったやった」
「よーしよし。お、杉野もしっかり三塁に進んでるね」
応援ガチ勢らしき三塁側や外野は言うまでなく、まったり観戦サイドのこちらもみんな大歓声。みつねちゃんが「いぇーい!」とわたしの方にツインバットを突き出したので、わたしもハイタッチする感じで自分のツインバットをそれと打ち合った。ひなちゃんの方を振り向いて、ひなちゃんともツインバットでハイタッチ。さらに手前の席に座っていた日本ハムユニフォームの見知らぬおじさんとおばさんまで、こちらを振り向いてツインバットを合わせ合う。おお、なんかすごい一体感。みつねちゃんは後ろの席の女性客とも喜びを分かち合っていた。さらには観客席全体で万歳三唱まで始まる。え、得点入るたびにこれやるの? いや、みんな楽しそうでいいと思うけど。
先制点に球場全体が沸いたのもつかの間、続く5番のガルシアがセンター前にヒットを打って2点目が入った。また大歓声があがり、みんなでツインバットでハイタッチして万歳三唱。
球場の盛り上がりに、なんだか目が回りそうだった。でも、周りみんなが楽しそうに喜んでいると、わたしまで楽しくなってくる。見よう見まねでみつねちゃんやひなちゃんとツインバットを打ち鳴らしているうちに、なんだか本当に嬉しくなってきてしまった。
野球場に来て、初めて知ったこと、そのに。
この前テレビで見たときにはCMタイムだった攻守交代の間、球場内では観客を飽きさせないようにか、電光掲示板を使ったりマスコットが出てきたりして、いろいろ変な演出をしている。キツネのフレップが客席に向けてバズーカを打ちこんだり、電光掲示板で太鼓の達人みたいなリズムゲームが始まったり。その合間に、普通に電光掲示板にもCMが流れるのが不思議な感じだった。
で、それを見物しているわたしたちはというと。
「ひなちゃん、まだ食べるの?」
「ん、なんかお腹減る……」
「ははは。球場にいると何故だかお腹が空くんだよね」
「守備のイニングとか、わりと手持ちぶさただからじゃないですかー? ひなっちー、あたしにもちょっとちょうだい」
「……ん」
もぐもぐ。ひなちゃんはイニングの合間にまた食べ物をいろいろ買い込んできて、応援の合間に食べ続けている。みつねちゃんが欲しがるので、ふたりの間に座ったわたしの前をたこ焼きやポテトフライが行き交う。わたし場所変わった方がよかった?
「ひなっち、普段からカロリーとか全然気にしないで食べたいだけ食べてるよねー。女子としてはどうなのさー」
「……私、体質的に太りにくいみたいだから……」
「ぐあー! くそー、これでひなっちが巨乳だったら『栄養は全部ここにいっとるんかー』と揉みしだいてやるところなのにー、身長に行ってるんじゃ弄りにくいじゃないかー。ひなっち、そういうのって30過ぎると急に太りだすらしいぞー」
「……そんな遠い未来のことはわからない……」
「みつねちゃんだって結構食べたいだけ食べてると思うけど……」
「ええー、あたしだって人並みにカロリーぐらい気にしてるよー。気にしないことにする日があるだけさー。あとありすはもっと食べないと大きくなれないぞー」
「それ、真に受けたら横にだけ大きくなっちゃうオチが怖いよ……」
「……ありすは、そのままでいい……」
「ええー」
そんなことを言い合っているうちに試合が進んでいく。日本ハムは3回に4番の永田がタイムリーを打って3点目。けれど4回にソフトバンクに2点を返されて、1点差となり、試合は5回の裏。ソフトバンクはピッチャーが変わって、飯原という左投げのピッチャーが出てきたけれど、フォアボール、送りバント、デッドボールでピンチを作り、またピッチャーが変わった。結構コロコロ交替するんだなあ。次に出てきた投手の名前に、大家さんが反応する。
「おや、ジャスティスじゃないか」
「おととしだっけ? ドラフトの目玉でしたよねー?」
「……そういえばあまり名前聞かないね……」
「じゃすてぃす?」
「名前が『正義』だからさー」
「ああ、なるほど……」
ともかくピッチャーが変わったところで、打席は4番、永田。今日は最初に犠牲フライ、次はタイムリーと得点を挙げている。誕生日でハッスルしているのだろうか。
「昇さん決めたれー!」
ツインバットを叩きながらみつねちゃんが声をあげる。それに応えたのかどうかはともかく。
バット一閃、打球がレフトの方に大きく上がった。「あっ」と誰ともなく声をあげる。小さく見える白いボールを一生懸命視線で追いかけると――そのまま、外野手が諦めたみたいに足を止め、ボールは外野席へと消えていく。一拍遅れて大歓声。大家さんとみつねちゃん、ひなちゃんも一斉に立ち上がり、わたしだけ座ったまま状況を掴みそこねている。
「いったー! 昇さん神!」みつねちゃんが万歳。
「えっ、あ、今のホームラン?」わたしは周囲を見回す。
「ホームランだよ! 永田よくやった!」大家さんもガッツポーズ。
「…………」ひなちゃんは無言でツインバットを叩きまくっている。嬉しそう。
電光掲示板にもホームランの文字が出て、バッターとランナーがゆっくりベースを一周してホームに帰っていく。球場は大盛り上がりで、また見知らぬ観客同士で喜び合う。
球場で見るホームランは遠くてちょっとわかりにくかったけど、このみんなが大喜びしている一体感にはお祭りみたいな高揚感があって、ああ、みんなこれが楽しくて球場に足を運ぶのかな、とちょっと思った。
野球場に来て、初めて知ったこと、そのさん。
札幌ドームでは、踊って目立つと牛乳が貰える。
どういうことかというと……5回が終わると、グラウンド整備が始まる。その間、チアとマスコットが出てきてYMCAが流れ始めた。DJが『一緒に踊りましょう!』と声をあげる。え、わたしたちも踊るの?
グラウンドでチアとマスコットが踊っているのを見ていると、観客席の一番グラウンドに近いところで、球場スタッフの人や警備員まで一緒に踊り始めた。電光掲示板ではカメラが観客席に向けられて、踊っている人たちが映し出されていく。
「わーいえむしえー♪」
わたしの隣ではみつねちゃんがノリノリで踊っている。わたしとひなちゃんは恥ずかしさが先に立ってしまって、ツインバットを振るだけにしていたのだけど……。
「あれ? あ、みつねちゃん映ってる映ってる!」
「……あ、ホントだ、みんな映ってる……」
ノリノリで踊るみつねちゃんが、電光掲示板に映し出されていた。隣にいるわたしや大家さん、ひなちゃんまで一緒に映っている。わ、余計恥ずかしい……。
「おー、あたし映ってる! いえー!」
みつねちゃんが踊りながら電光掲示板のカメラに向かってツインバットを振った。ああ、この物怖じのなさ、みつねちゃんには敵わないなあと思う瞬間だ。
ともかく、その後も電光掲示板はいろんな観客の姿を映していき、グラウンドではトンボ掛けをしていた整備員の人たちまで踊り出して、ノリノリのままYMCAダンスは終了。それだけなら良かったんだけど……。
『本日のYMCAベストダンサーは……この方です!』
DJのそんな声とともに、電光掲示板に映し出されたのは、なんとみつねちゃんだった。
電光掲示板に大写しになったみつねちゃんとわたしたちの姿に、わたしたちは顔を見合わせる。え、嘘、どういうこと?
「え? み、みつねちゃん? みつねちゃん!?」
「おおお、わーお、当たっちゃった」
「……みつね、すごい」
「あっはっは、これはすごい。初観戦でYMCAベストダンサーを引き当てるとはね。私はドーム通って10年以上になるけど、一度も当たったことないよ。あとで牛乳券もらっておいで」
――というわけで、6回裏が終わったあと、みつねちゃんとひなちゃんと3人で、スタッフの人に場所を聞いて賞品を受け取りにいった。貰えたのは、牛乳券10リットルぶんと、みつねちゃんの踊っているところを捉えた記念写真。
「牛乳10リットルぶんかー。ありすー、身長伸ばすならあげよっかー?」
「い、いいよ、みつねちゃんが貰ったものだから」
――内緒だけど、牛乳で身長を伸ばすのは、中学のときにチャレンジして文字通り1ミリも効果がなくて諦めたのである。悲しい。
「……ありすはそのままでいい」
「ひなちゃん、だからなんでわたしの身長このままでいさせようとするのー!?」
「…………」
わたしが両手を振り上げて口を尖らせると、ひなちゃんは困ったように視線を逸らし、みつねちゃんは「あっはっはー」と笑っていた。
ところで、試合の方はというと。
ちょっと時間を戻して6回裏。フォアボール、送りバントのあと、一塁への内野ゴロがセーフになってランナーがふたり。打席には1番、北川。
ひなちゃんが今日買った選手タオルを掲げて見守る中、2ストライク3ボールから、北川のバットがボールを捉えた。ひなちゃんが大きく目を見開く。わたしたちの眼前を、ボールは高く舞いあがって、ライトの外野スタンド目がけて飛んでいく。
「あ、いった!」
みつねちゃんが叫んだ。ボールはそのまま、ソフトバンクの応援席のあたりへと消えていき、歓声が爆発した。とどめのスリーランホームラン。
「わ、ひなちゃん、やったやった!」
わたしが飛び跳ねながらひなちゃんを見上げると、ひなちゃんは喜ぶことも忘れて呆然と、ダイヤモンドを一周する北川の姿を見つめていた。
「おーいひなっちー、戻ってこーい」
北川がホームインしてスコアボードに3点が追加されたところで、みつねちゃんが声をかけると、ひなちゃんはゆっくりわたしたちの方を振り向いて、選手タオルを持ったまま、興奮して言葉がでてこないみたいに口をぱくぱくさせて。
「……来て良かった」
ようやく、感極まったみたいに、そう口にした。
その表情がなんだか眩しくて、わたしは目を細める。――ああ、まただ。本屋さんで『ぶたぶた』を買ってきて目を輝かせていたときと、同じ顔。ひなちゃんが、好きなものに対してキラキラしているその表情。普段はいつもなんだか眠そうで、みつねちゃんと比べても表情があまり変わらないひなちゃんが、別人みたいに目を輝かせる、その瞬間。
わたしが好きな、ひなちゃんの顔だ。
そうだ。この表情が見たくて、わたしはひなちゃんと一緒にここに来たんだ。
わたしと違って、ちゃんと好きなものを持っているひなちゃんが、すごく眩しくて。
それが羨ましくて、でもそれは悔しいとかそういうんじゃなくて――わたしはただ、ひなちゃんのそんな顔を見ていると、どうしてか自分まで嬉しくなってしまう。
……どうしてなんだろう?
7回には、プロ野球のイメージとはだいぶ離れた印象のおしゃれな歌が球場に流れ、みんなで青いジェット風船を膨らませて飛ばした。その7回裏にはまた北川のヒットなどで日本ハムが2点を取って、なんと最終的に11得点。日本ハムは7回以降は1回につき1人ずつピッチャーをつぎこんで、ソフトバンクの得点は2点だけに抑えたまま、9回を抑えて試合終了。
「やったー、勝った勝ったー」
「いやー、快勝だったね。今日見に来て正解だった」
「ひなちゃん、北川って選手いっぱい活躍して良かったね」
「……ん」
ひなちゃんは嬉しそうに選手タオルを振る。試合を見に来て好きな選手が活躍するって、たぶんわたしが想像している以上に嬉しいんだろうなあ。
周囲のお客さんたちは帰り始める人も多い。大家さんが「どうする?」と聞いたけれど、みつねちゃんがひなちゃんを見て「せっかくだからお立ち台見ていきましょうよー」と言った。
「北川呼ばれるんじゃないですかー。たぶん」
「確かに、3安打4打点だからね」
「お立ち台?」
「……ヒーローインタビューのこと」
グラウンドを見ていると、一塁側のベンチの方にそれらしきものが設置されていた。場内にDJのアナウンスが響き、今日のヒーローがお立ち台に呼ばれる。
――ところが。
「あれ、北川はー? ええー、北川も呼ぼうよー。ホームラン打ったのにー」
「…………」
お立ち台に呼ばれたのは、先発した投手の佐藤と、誕生日でホームランも打った4番の永田のふたりだけ。ひなちゃんお気に入りの北川は呼ばれなかったのである。みつねちゃんが不満そうに唸り、ひなちゃんが残念そうに俯く。大家さんが「残念」と苦笑した。
まあ、それはそれとしてヒーローインタビューはちゃんと聞いて(佐藤投手はいかにも喋り慣れていなさそうで、テレビでも見たことがある4番の永田はさすがに場慣れした様子だった)、日本ハムの勝利を称えてからわたしたちも帰路に就く。2万人以上の観客が一斉に帰り始めるので、ドームの外の通路はすごい混雑だ。
「ありすー、はぐれないように手繋ごう」
「あ、うん」
「……じゃ、じゃあ、私も……」
右手をみつねちゃんと、左手をひなちゃんと繋ぐ。ふたりの手を握って、ふたりに挟まれる格好のわたし。……あれ、これってなんだか……。
「はっ、これはあれだ、捕獲された宇宙人の構図!」
「ええー、そっち!?」
みつねちゃんが言うのは、あの有名なぶら下げられたエイリアンの写真のことだろう。いや、わたしもちょっと思ったけど、それだとわたしがエイリアンなのでやだ。
「ははは、どっちかというと両親と娘かな」
大家さんが笑って言い、ひなちゃんとみつねちゃんが顔を見合わせる。
「ひなっちがお父さんであたしがお母さん?」
「……私とみつねが夫婦なの……?」
「なにさひなっちー、あたしじゃ不満ー?」
「…………」
ニヤニヤ笑うみつねちゃんに、ひなちゃんがまた困ったみたいに顔を背ける。というか、いくらわたしでもそこまで幼くは見えないと思いたいんですけど。
「あははー、ありすー、あたしのことママって呼んでいいよー」
「ええー!?」
両親のことをパパ・ママって呼んだことないよ。って、そういう話じゃないってば!
帰りの地下鉄はものすごく混むというので、混雑回避に、途中のファミリーレストランで一休みしていくことにした。でも、球場内でけっこういろいろ食べたので、まだお腹がすいていないし、夕飯にも早い。なのでみんなでデザートだけ注文する。
「やー、大家さん、今日は何から何までごちそうさまでしたー」
「……ありがとうございました」
「あ、ありがとうございました」
「いやいや、楽しんでくれたなら何よりだよ。また球場に行きたいと思ったらいつでも声をかけてくれたまえ」
「いよっ、大家さんの太っ腹ー。ブルジョワー、人生勝ち組!」
「言うほど勝ち組じゃないけどね。まあ、わりと気ままな生活をさせてもらえているという意味では人より贅沢な生き方かもしれないな」
パフェを食べながら大家さんはそう答える。そういえば、結局大家さんが何者なのかは相変わらず謎のままだ。やっぱり不動産収入で若くして悠々自適ってことなのかな……。
わたしはソフトクリームを舐め、ひなちゃんはパンケーキを頬張り、みつねちゃんがあんみつを食べながら、しばらく今日の試合の話題で盛りあがる。
「添島君はどうだった? 楽しんでもらえたかな」
「あ、はい。楽しかったです。中学校で運動会の応援してたときみたいに、みんなで盛りあがるのっていいなあって思いました」
「ふふ、そうだね。今日は盛りあがれる試合で良かった良かった」
「……最高でした」
11点も取っての快勝なんだから、日本ハムのファンにとっては最高の試合だっただろう。まして好きな選手が活躍したひなちゃんは尚更だ。
大家さんは満足そうにわたしたちを見回して――そうして、みんながデザートを食べ終える頃、おもむろに話を切り替える。
「ところで、君たち。ゴールデンウィークの予定はあるかい?」
「おー? またドーム観戦のお誘いですかー?」
「いや、それとは別なんだが。君たちは実家に帰るかな?」
「あたしは別に帰る予定ないですけどー」
「……私も、特には」
「わたしも、お父さんは友達と予定があるならそっち優先でいいって……」
そういえば、次の週末からはもうゴールデンウィークなのである。うちの場合、お父さんはまだ会社の残務処理に追われているらしくて、私が青森に帰ってきてもろくに構えないからむしろ帰って来ない方がありがたいというニュアンスで話していた。
「そういえば、ゴールデンウィークの予定なんも決めてなかったねー」
みつねちゃんが言い、わたしたちは頷く。大家さんは「おっ、そうか」と笑った。
「じゃあ、3人とも――ちょっと私の手伝いをしてくれないかな?」
思わぬことを言われ、わたしたちは顔を見合わせた。
「お仕事ですか?」
「ファーリーハイツの掃除とかですかー?」
「いや、管理業務の方じゃない。私の、そう――君たちの知りたがっていた本業の方だ」
「……大家さんの本業って……?」
首を傾げたひなちゃんに、大家さんはいたずらっぽく笑う。
「それはまあ、当日のお楽しみとして、だ。――手伝ってくれるなら、3人とも東京に連れて行ってあげよう」
「――東京!?」
わたしたちは、思わず揃って素っ頓狂な声をあげていた。




