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「ようこそピーク城へ。さあ、みなさんくつろいで頂戴。おい!この方たちにコーヒーを出して差し上げて」女王は椅子に腰かけて言った。
ヨシキ達はソファーに腰かけた。
コーヒーとクッキーがテーブルに置かれ、3人は一口飲んだ。
「うまい!さすがお城で出てくるものは違うわね」ゼロはクッキーをつまみながら言った。
「契約農場で栽培したコーヒーなのよ。世界でも私が販売してるわ」
女王は立ち上がり、クローゼットを開けた。
「そんなことより、そこの大きな男の方、お名前はなんていうのかしら?」
「ん、俺のことか?ジャックだ。スベンソンでは一番喧嘩が強い」
「あら、それは頼もしいわ。初めて見た時から思ってたんだけど、その服ちょっとお古いのかしら。袖がボロボロね。ここにある服で合うものがあれば着てみないかしら」
クローゼットの中には兵士たち用の服がずらっと掛かっている。女王の服はまた別の部屋にあるらしい。
「ただでくれるのか?それはありがたい」ジャックはクローゼットの中からいかにも生地が丈夫そうなジャケットを一つ手に取った。
着てみるとピッタリとサイズが合った。
ゼロは立ち上がり、ジャックに近寄り言った。「いいじゃない、なんだかとても強そうだし、高貴な感じがするわ。あんな小さな田舎町スベンソンの出身とは一見わからないわよ」
「小さな田舎町は余計だ。でもいいなこれ。こんな服は着たことはないが戦闘に向いてそうだ」
ジャックは気に入ったようだ。
「それは良かったわ」女王は満足気だ。
「こんなことまでしてもらって悪いな」ヨシキはコーヒーカップを置いて言った。
「だってあなた達は世界を変えてくれるかもしれないのだからこれくらいさせてよ。噂には聞いてるわ。なんでも、アンドロイドを倒して世界を人間の手に取り戻す旅に出たって」
「ああ、聞いていたか。一応あんたにも挨拶しとかなければと思ってな」
「うれしいわ。ペス!」女王が呼ぶと、奥から大型犬が出てきた。ワンワン。女王の手をペロっとなめて頬ずりした。
「この子を連れてくといいわ。何かと助けてくれる賢い子なのよ」
「いいのか?この旅は何があるかわからない。その子に万が一のことがあれば・・・」
「いいのよ。こういう時のための子だもの。ここにいたら活躍する機会がないでしょ」
「ありがとう」
ペスはゼロの足元へ行った。クウン。
「キャーかわいいわね。犬大好き」ゼロは頭をなでなでした。
「裏の爺さんの孫が行方不明らしい。まずはその子供を探すことから始めたい。何か心当たりはないか?」
「そうね、この城を出て西へ行った先に洞窟があるわ。あそこはアンドロイド達の棲み処になってるのよ。怪しいって言ったらそこかしらね」
「わかった。行ってみる」
3人はコーヒーを飲み終わり立ち上がった。
「それじゃ、俺たちはそこへ向かう」
「わかったわ。無事を祈ってるわ」
ヨシキ達は部屋を出て城を後にした。




