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臆病

作者: ヒラキリュウタ

こういうこと考えてた過去ね。

 小さい頃は何に対しても臆病だった。怖いものが多過ぎて一人で出歩くことがなかなかできなかった。

 例えば車が怖かった。ものすごい速さで目の前を通過していくと僕はしばしの間固まってしまった。固まって、想像する。今この目の前を通過する瞬間に、突然運転が荒れて僕の方に飛んでくるんじゃないか。そんな妄想のせいで歩道で立ち止まってしまい、大きな大きなクラクションに包まれた記憶がある。ブー。ブー。ブー。僕は頭を抱えてしゃがみこんだ。そのとき近くに知り合いのおばさんがいたから助けてもらえたけど、どうにも一人では無理だった。なんでそんな怒るんですか。

 例えば遅刻が怖かった。始業の20分前には必ず席についている。たとえ周りの友達が何をしていようと頑として椅子から離れない子供だった。一度遅刻しかけたとき、異様に萎縮したまま着席のチャイムと共に教室に入ったときある。先生が「めずらしいなあ」なんて言ってみんながこっちを向く。涙を必死でこらえながら自分の席へと向かった。その後絶対に遅刻はしなかった。

 例えばおばけが怖かった。たまに怪談を話す人がいたが信じられない。なぜ自分から怖いことをするのだろう。たまにそうやって聞かされたせいで、夜一人で道を歩くことや、トイレに一人で行くことができなかった。何かが出るんじゃないかっていつも思っていた。明るい時ですら、一人だと感じた瞬間に恐怖が体を支配する。

 例えば嫌われることが怖かった。自分が認められないのも不安だったし、人が離れて行くのは寂しかった。一度親友と呼べる子と喧嘩した。「もう口を聞かない。ゼッコーだ」と言われ僕は額をコンクリートの壁に思いっきり打ち付けようとした。できなかった。痛いのも怖い。血が出るのも怖い。人が僕に注目してるのも怖い。何かをやっている僕を誰も見ていないのが怖い。怖い。怖い。怖い怖い怖い。


 あれから15年経った。

 今は怖いものはほとんどない、はずだ。

 車は運転しているし、クラクションも鳴らす。遅刻もよくする。バイトに行くときに寝坊したり、ぼーっとしてて時間が過ぎていたり。かなり遅刻するが、毎回どうにか理由を考えて対処する。おばけはいない。出てこない。嫌われることもあるんだろうと思う。でもその時は仕方ない。僕のことを嫌う人にはわざわざ近づかない。できるだけ距離を取る。たぶんこの人、僕のこと嫌ってるな。そう考えるだけだ。そうしてきっと、離れて行く。


 僕は今、いつの間にかひとりぼっちだった。何も怖くないと、ひとりでいる時間が長くなる。

「でも僕は怖くないよ」

 誰とは言わないけど、僕を嫌う人がそんだけいるということだ。

 そうやって呟きながら、僕は一人震えていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 自分語り感が出ていた。 [気になる点] 妙に生々しいと思いつつも、どこまで自意識による誇張がふくまれているのかとも思った。 [一言] 後半部が主題の話なのでしょうが、前半部の方が読んでいて…
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