星覇祭の準備をしよう
年末最後の投稿になります。
年末は忙しいと思うので年始にでもゆっくりと呼んでください
星覇祭、簡単に言えばそれは体育祭だ。学園では3日を使って参加者は希望制、大体毎年100人がぶつかるトーナメント戦をやるのだ。
エルデが提案したのはそれを使った不満解消だ。心置きなく、心武器でぶちのめす事で互いのわだかまりをなくそうとする荒っぽい手段である。
そのためFクラスの大半には出てもらい、俺たち側からも精鋭たちを出し、言い方が悪いがFクラス改め地球側との実力差を見せつけることで溜まった不満を解消させて貰おう。
そして現在、俺はそのトーナメント内容を決める生徒会の仕事に付き合わされており、
「今年は絶対に星覇祭はやらないから!」
駄々をこねるロゼさんのご機嫌とりというなんとも言えない仕事を任されていた。
「すいません、マコトさん。この時期になると会長はどうやってもこの星覇祭を潰そうとするんですよ」
「だけどジャッジ、ロゼさんがここまで嫌がるってことは何か問題でもあるんじゃないのか?」
「いえ単に体を動かす祭が嫌いなだけです」
「それただのわがままじゃないか」
「絶対にいやぁぁぁぁ! 私はその為に生徒会長になったと言っても過言じゃないのよ!」
配られる資料をぺしりとはたき落すロゼさん。なんとも子どもじみてる反抗だが、体育祭みたいなものだと思えばやらないわけにはいかないだろう。
「ロゼさん、俺はこれやりたいんですけどなぁ」
「うっ………そ、そんな目で見てもダメなものはダメ! いくらマコト君の頼みでも絶対にこれはやらないから! やるにしても魔法だけにするわ!」
「それだとロゼさん一強じゃないですか」
そのうち、床に転がって腕をバタバタしたりしないよな。流石にそれをしたら俺はロゼさんをどんな目で見ればいいんだ。
「蔑めばいいと思う」
「ギル、仮にもお前の先輩にあたる人だからな? 」
「嘲笑えばいいと思うよ〜」
「シエルもか、お前らロゼさんのこと嫌いなの?」
辛辣な生徒会役員達に生徒会長のロゼさんは更にいじけ出す。このままだと本当に潰しかねない。
「ならロゼさんは俺のかっこいいところを見たくないんですか?」
「うっ!」
「誰が相手だろうと負けることなく、勝ち進む俺の姿を見たくはないんですか?」
「ダメよ! 絶対にーー」
「隣にロゼさんがいれば無敵なんだけどなぁ」
「ジャッジ、資料を持って来なさい。最高の星覇祭をやるわよ!」
「あー会長………ちょっと問題が」
ロゼさんちょろい。さてと俺の役目はこれで終わりだろう。そうやって退出しようとした俺の後ろで非常に申し訳なさ気に挙手をした。
「星覇祭中は自分達が司会進行をしなくてはいけないので……その…会長は試合には出られません」
「なんでよぉぉぉぉもぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
その後、魔法を使って拗ねだすロゼさんを懸命に宥めてトライアル一日中付き合う権利で了承を得た。
*
「はい、補習2日目です。みなさん今日も元気に黒こげですね、特にレオ。罠を仕掛けてたのに気づいてないのか?」
「申し開きは?」
「おまえって本当に馬鹿だよな」
「よし! 表出ろ! 僕の恐ろしさをとくと味混ぜてやる!」
「合わせるな、だからおまえは馬鹿なんだ」
レオをからかい終わり、相変わらず欠席の白銀と山本、後はもう1人を放置し、授業を開始する。今回は星覇祭についてだ。
「星覇祭には全クラスから、しかも精鋭たちが出る。それによって少しきつい目に会うかもしれない。悪いがFクラスも気に入らないと思うが参加してくれ」
いくら不満解消とはいえ、実力差がありすぎる戦いに顔を曇らせる者もいたが自分たちのせいで環境が悪くなったことを考えると文句を言う奴はいないようだ。
「質問だ」
「どうぞ白鳥」
「目論見は分かる。こちら側とそちら側で戦う事で互いの不満を解消することだろうとは思うがパートナー達は異世界側だ。何か問題があるんじゃないか?」
「いや特にはないな。元々Fクラスはパートナーを組めない奴、組みたくない奴、パートナー探しではなく、学園卒業したいという願望が集まったクラスだからな」
それにFクラスに集まっているのは基本的に平民や没落した貴族、貴族の三男、次女などだ。パートナーが組めるなら喜んで組む。
「一応、帰るときまでにこっちに残りたいってならそういうことも考えとくといい。さて、次だ。星覇祭では優勝すればある伝からえたアーティファクトが貰える」
ルナールから連絡を入れてラクーンに作ってもらったアーティファクトだ。まだ完成していないらしいが素晴らしいものらしい。
「因みに3位までは賞金が出るからな。お小遣い稼ぎに魔物を狩るなんてことしなくていいんだぞ」
学園の掲示板には簡単かつ手軽に狩れる魔物討伐が貼られている。とはいえ、舐めてかかった結果、スライムに服を溶かされたり、ゴブリンに道具にされかけたりもする。
「特にレオ、お前は一体、何に金を使ったらあそこまで掲示板から依頼書がなくなるんだ」
「だって! 学園内の裏流通『BJ』で聖書が出回っているから!」
「あの聖書にはお世話になりました」
「『えっちな後輩エルフは嫌いですか?』とかな」
「『孤独な悪魔っ子とイチャラブする!』はストーリーも良かった!」
「『龍人年上女騎士の筆おろし』とかな!」
「お前ら今すぐそれ出せ、後、今日限りでその流通は消すから。俺の全力を持ってして潰したる」
(め、目が笑っていません)
エルデくん、エルデくん、君はどうやら全力の俺に殺されたいらしいな。ストーリーもいいってことはライアも関わってやがるな。
「ああっ! 僕の生活費ぃぃぃぃぃ!」
「野郎ども聖戦だ! 武器を持て!」
「この弾圧を許すな!」
「総員、靴を脱いで奴にぶつけろ!」
目の前で凍らせ、砕かれた聖典もといエロ本を破壊しながら、同じような志を持った男子高校生たちの怒りの靴攻撃をかわす。
「やい! マコト! 今回ばかりは絶対に許さないからな! 僕の食料である砂糖を使った時より酷いぞ!」
「普通の人は砂糖を食料にしないからな? 調味料だからな、あれ」
「みんな! この怒りはトーナメントでぶつかった奴から怒りを果たすんだ!」
それに湧き上がる白鳥を除いた男子たち。女子達からの凍てつくような視線を物ともせず、男子たちは一致団結したのだった。
*
「おかえりんこ」
「ただいまん………おいこら、何を言わせるつもりだ」
クラスから出て食堂に行けばエルデが椅子に足を乗せて偉そうに踏ん反り返り、ガルムからスイーツを食べさせて貰っている。
ちなみに今日の3時のおやつはジュエ特製のエクレアになります。
「で? 呼び出した理由はなんだよ、エルデ」
「いやな、明日から星覇祭だが…なんとここで俺たち2人に重大なルールが設けられた」
「重大なルール?」
「多数パートナーがいる場合は誰か1人を選ぶこと。変えることは許されないだとよ」
うん、まぁなんとなくそんな気はしてた。いくらなんでも5人相手に1人じゃ不利すぎるからな。
「となるとクレアさんかリリムさんかな」
ロゼさんは生徒会のお仕事だし、霞は星覇祭の際に出る屋台にWSも出店するらしいから忙しいだろう。
この2人なら荒事にも強いし、頼りになる。
「まぁそうだよな。お前ならその2人のどっちかだと思ったわ。俺はジュエだがな」
「ガルディさんじゃないのか? 」
「去年、ジュエには体験させてやれなかったからな。今年は思う存分やらせてやりてぇんだ。それにジュエは強いぜ?」
「言っとけ、2人だって負けちゃいねえよ」
「あっ! お兄ちゃんっ!」
「あらここにいたの? まーくん」
「探した」
2人で笑いあっていれば本人達がやって来た。なぜかライアもいる。ちょうど良かった、2人に交渉しよう。
「クレアさん、リリムさん。どっちか、俺と星覇祭に出ませんか?」
俺がそう聞くと途端に2人は顔を曇らせた。
「あれ? もしかして俺と一緒に出るの嫌ですか?」
「!? いや違うわ! ただねぇ………ちょっとお姉さんは無理かなぁ」
「………ごめんなさい」
「じ、事情を! せめて事情を!」
「単にお前の無茶に付き合ってられないからじゃね?」
「もしくはお兄ちゃんの女たらしっぷりに嫌気がさしたとかっ!」
「ちょっと黙っててくれるぅ!? 今、大事な話だから!」
「いやまあ大した事情じゃないのよぉ。星覇祭は他の国からも観客がね、来るのよぉ」
話を聞けば星覇祭はいわば学生達の成長したところを見るための祭典でもあり、学園に通う親族限定で公開されているのだ。
数少ない一般開放の機会の為、 警備をある程度甘くせざるを得ず、期間中は外部からの工作を受けやすくなる。
「姫様の親族としてブラッド殿下がいらっしゃる以上、お姉さんはその護衛に着かなきゃいけないからねぇ。バカ親父は使えないからぁ」
「ああ………納得」
クレアさんの父親にあたるドラゴーラさんは自らが強いと認めた人物にしか興味を抱かない困った人だ。おそらく、ブラッド殿下は彼に断られたのだろう。
「私は他の親からの非難を受ける可能性があるから出られない」
リリムさんはついこの間まで偏見の目を向けられていたのだ。周りからもあまり芳しくはないだろうから仕方ない。
「それは残念だなぁ………クレアさんやリリムさんと一緒に出られたら良かったのに」
残念そうにそう言えばリリムさんはそっぽを向き、ぷくーっと頬を膨らませた。
「私だって………マコトと一緒に戦いたかったもん」
「リリムさん、可愛い」
「リリムちゃん、可愛い」
2人してぎゅっと抱きしめるとリリムさんは拗ねながらもどこか満更でもなさそうだ。なお、エルデはそんな空気を見て、苦いコーヒーを入れるようガルムに頼んでいる。
「で? マコトはどうすんだ? 」
「霞に頼むよ。きっと忙しいだろうけど俺の頼みなら喜んでついて来てくれるだろうから」
霞には悪いが協力して貰おう。忙しい彼女を誘うことに気は進まないが星覇祭を目一杯楽しむには仕方ない。
「ちょーっと待ったぁぁぁぁぁぁ!」
そんな感じで霞を探しに行こうとした瞬間、声とともに天井から影が舞い降りた。というか、どこに潜んでいたんだ。
「話は聞かせてもらったぞ! 花婿、妾をパートナーにすると良い!」
その影はもちろんルナールさんであった。俺はそれを見て小さく頷いた後、
「じゃあ霞を探しに行くんでまた後で」
「うん、また」
「部屋で2人で待ってるわぁ」
「妾を! 無視するな! 妾、泣くぞ! よいのか? よいのか!?」
「…………どうしたんですか、ルナールさん」
涙目のまま、俺の服の裾を掴んでくるルナールさんに抗えずそう聞けば彼女は6本の尾を機嫌良く揺らす。
「だから妾が花婿と一緒に戦ってやると言っているのだ! 妾ならそなたの実力に不足はないだろう!」
確かに若き英雄たちと張り合う程のアーティファクト使いで呪法も扱うオールラウンダーの彼女なら不足はないだろう。
だけどな………
「ルナールさんか………」
「何故だ!? 何故、そんな悩む顔をしている!」
「いやうん、様式美?」
「それはやだぞ! 花婿よ!」
「てか、花婿花婿ってなんか別の呼び方はないですかね? 他ならなんでもいいんで」
ロゼさんと婚約していた時からそうだが花婿花婿と呼ぶのはいささか可笑しい気がするのだ。
「じゃあ夫!」
「意味同じでしょうが」
再び悩み始めたルナールさんは夫、嫁、婿、オットーなどかなりの影響を受けているのでクレアさんが助け舟を出す。
「なら、マコトさんとかは? またはまーさんとか」
「ふーむ、ならまっくんにしよう! これなら良いだろう!」
「構いませんが、それでルナールさん。何の狙いがあるんですか?」
「あれ? 妾、もしかして疑われてないか?」
「疑われてるわねぇ。まごう事なく」
「日頃の行い」
ルナールさんの事だ。何かよからぬことを考えているのではないかと画策してしまう。後ろで我関せずとばかりのエルデに目を向けると彼は黙って頷いていた。
いや、お前も関係してるからな? 7月の件はお前が持ちかけたものだろうが。
「べ、別に妾は何も狙ってないぞ!? 例えば学園が生徒たちの成長率を纏めた『素質調査』とか!」
「待って、何それ? 素質調査?」
はっ! とばかりに口を覆うが時すでに遅し、後ろからクレアさんにがっちりホールドされ、リリムさんが眼鏡を外す。
「ほら吐きなさい、さもないと痛い目みるわよ?」
「いや大したものじゃないぞ? 身体能力が今、どのあたりか、武器、能力の種類は何か、伸びやすい人間か伸びにくい人間かを調べるものだぞ? 」
リリムさんを見ると彼女は頷いた。天眼で見た限り、ルナールさんが言っているのは本当の事なのだろう。
「というか、何でそんな話をルナールさんが知っているんですか?」
「噂だな!」
「途端に信憑性が消えたんですけど!?」
誰かが流した噂なだけで実物は存在しないって話じゃないだろうな、それ。
「だけど噂があるということは似たような資料があるはず。そうでもしないと噂が流れるはずがない」
しかし、リリムさんの考えは違うようだ。火のないところに煙は立たないと同じようなことだろう。
「今、考えても仕方ない。ひとまず星覇祭の準備をしましょうか。それじゃあルナールさん、よろしくお願いしますよ」
「うむ! 任された!」
そして俺は2人で談笑しているライアとエルデの前に立つ。そしてにっこり笑って
「なぁBJについて言い残すことはあるか?」
「「こいつが悪いっ!」」
「どっちも同罪に決まってんだろうが! 今すぐ、泣き入れろ。半殺しで済ませたる」
銃を向けると両者が互いに背中を押し合い、前に出そうとしながら説得に走る。
「落ち着け、マコト。分かるか? エロは世界を救うんだ。それは心に安定をもたらし、世界は平和になる」
「お兄ちゃん! 私はこの人に脅されたのっ!」
「なーに裏切ってんだ、このガキ!? あ、ちょっと待って。ごめんなさいマジで俺じゃないんでぇぇ!!」
「こいつがやりました。私は泣く泣く物語を書きました」
「わかった、ビンタで勘弁してやるから歯を食いしばれ」
「いやぁぁぁ!!」
乙女のような悲鳴にガルムはうつむきながら肩をふるわしている。ここで助けに入らないあたり、彼女もなかなかいい性格をしている。
「待って俺、実は身体弱いんです勘弁してください許してください」
「身体が弱いのか?」
「そうなんですだから無視 改造された筋力を更に倍にされたビンタなんて喰らったら最悪死んで……」
「関係ないな、俺は魔王だ」
「いやちょっと!?あります、ありますってねぇちょっと!!! 人を殺してはいけないって教わりませんでした!?」
「そもそも殺し屋に言われたくないわよぉ、エルデ」
「黙ってろやぁぁぁ!!!!」
何とか見を捩り、脱出を図ろうとするエルデだが
「……」
「……もうダメですか?」
「駄目」
「待ってごめんなさいホントごめんなさい手振り上げないでちょっと待ってやめてマジで違……」
「せいやぁ!」
エルデの首があらぬ方向に曲がる勢いで振られたビンタは彼の体から力を奪い、そのまま地に付す。ガルムはそれを半笑い状態で回収し、帰っていった。
「よし! じゃあお兄ちゃんも元気でっ!」
「待てこら、お前も同罪だって言ったろ」
「ちょ、やめてっ!肩掴まないでっ!!何でお兄ちゃん滅茶苦茶力強いのっ!」
「ふん!」
「ふぇぇ! お父さんに言いつけてやるー!!」
頭にげんこつを叩き込まれて、涙目になりながら捨て台詞を吐いて逃げていったライアを俺は見送り、物流を潰すために動き出す。
そして星覇祭が始まる前日には全てを焼却し終わり、俺は晴れ晴れとした気持ちで星覇祭に挑むのだった。
次回は来週の月曜18時です。




