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また決闘かよ!!

ブックマークありがとうございます!

今日は前、中、後、の中編となります。

良かったら見ていって下さい!

 挨拶を終えた俺に拍手が起きる。

 拍手が一通り終わると自由な場所に座れと言われたので3人並んで座れる場所を見つけて席に座る。


 テレビで見た大学の教室のようで後ろに下がるほど席の位置が高くなっている。階段教室というやつだ。


 落ち着かないので辺りをキョロキョロしているとロゼ会長に脇腹を摘まれた。先生が話すから集中しろとの事らしい。


「俺はジャックだ。えーと今日はなんだったけなぁ…よしじゃあ自習って事で。解散。」


「先生!今日は説明です!しっかりしてください!」


「無理……先生は昨日ちょっと竿の神様が降りて来て玉が止まらなくて疲れてるんだ……代わりに生徒会長やってくれよ。お前なら出来る。」


「先生はそれが仕事でしょうが!!」


 なんだこのぐだぐだ感は……

 教卓に顔を伏せてうだうだする先生をなんとか動かそうとする会長、これどっちが先生かわかりゃあしないな。


「わかったわかった、やるやる。けど軽い説明だけだぞ?最近魔力欠乏が多いから気をつけるようによし解散!お疲れっしたぁ!!」


 時刻はまだ昼過ぎなのに教師は窓から飛び降りた。

 なおこの教室は4階にある。


「飛び降りたけど大丈夫なんだろうか?」


「心配いらねえよ。明日にはまた普通に死んだ目で教室に来るからな。」


「あの殿方は逃げるのだけはとても優秀ですの。」


「あ、エルデ……様にガルディさん。貴方達も一緒だったのか」


「様なんざ要らねえよ。さっきみたいに呼んでくれ。そうだこれから飯行くけど一緒に行くか?」


「マジで!行く行く!さすがエルデ様男前!」


「おっ!もっと言っていいんだぜ?最も俺が男前なのは周知の事実だけどな!」


「だけど中身が残念なために今のパートナー以外は全員離れていったって噂聞いたわよ?」


「言うんじゃねえよ!ぶち転がすぞビッチが!この間なんて新入生の鼻の穴膨らまして下半身肥大化させた男に告白されてた癖によぉ!!」


「あらあら、貴方の頭には言っていい事と悪いことの区別がつかないのかしら?お姉さん心配だわ。」


 辞めろぉ!この流れだと俺が喧嘩を止める流れじゃないか!勘弁してくれ!


「君達、マコト君が困ってるだろ。このまま喧嘩するならトイレ掃除も追加するが?」


「おやめください、生徒会長様。」


「俺たちが悪うござんした。」


「……なんて綺麗な謝罪なんだ。」


 まさに鶴の一声。

 王子にすら頭を下げさせる会長に戦慄すべきなのか、はたまた情けない彼等に憐れみを浮かべるのかどちらが正解なのだろう?


 俺はそんなことを考えながら歩き出した彼等の後ろをついて行くのだった。




 *


 学園の食堂は教室とは別の棟にあるようであるきながら見た景色によると火の方角にある建物は全部で4つ。


 1つは座学を行う教室がある6階建の建物。

 1つは式典などを行う講堂。

 1つは魔法や武器の扱い方を学ぶ訓練場

 そして最後は学園内の生徒が決まった時間に食事を取りに来る食堂だ。


 食堂内はやけに長い机が3つほど置かれており、まばらに座って食べているものや食べ終わって談笑しているものもいる。


 所で話が変わるがこの学園の教育施設の規則として上の地位の者が下の地位を馬鹿にしてはいけないと言うルールがある。


 校長曰く、平民たちの働きによって貴族は優雅に暮らすことができ、貴族が国を支える事で王家が活動出来、王家が平民を庇護する事で今の世の中は成り立っているのだ。


 そんな話を何故今するかって?

 答えは簡単!


「席を譲りたまえ、俺たちは貴族だぞ!?」


 貴族に絡まれているからです!

 ネクタイの色は赤、つまり新入生ですね。

 周りの席には温かな紅茶を飲むリリムさんとクレアさんだけ。


 エルデとガルディは先程の件で席を外している。会長はお花を摘みに行った。


「いや俺は他の貴族様に席を取っておいてくれと頼まれた者でして……すいません。」


 とりあえず下手に出ておこう。

 俺が目指すのは平穏な学園生活。

 争うのは最初の時だけで充分だ。


「おいまさか知らないのか?こちらにいるのはあのブロンズラメア家の跡取りだぞ!貴様の首が飛びたくなければさっさと席を退け!」


 うん、ごめんなさい!

 家名言われても全く分かりません!

 助けてクレアさん!リリムさん!


「頑張って〜」


「……………」


 くそおっ!応援だけかいクレアさん!

 黙々と論文読まないでリリムさん!

 私達は関係ないみたいな雰囲気出さないで!助けて!


「そういえばお前見た顔だな……ああ、あの無能の家系イノセンティア家のパートナーか。」


 取り巻きの1人が俺の顔を見て、入学式での事に気付いたらしい。それを後ろに控えていたブロンズなんたらの跡取りに耳打ちする。


「……つまり君はあの愚かな彼女のために席を取っているということか?」


「……今、何て言った?」


「愚かだと言ったのさ!何せ、彼女の家系は無能の家系さ!公爵の地位を持ちながら英雄を名乗る平民たちにむしり取られた哀れな家系だとな!貴方もそう思いませんか?」


「喧嘩売ってんのか!?」


 跡取りは前に出て来るとよくもまあつらつらと人を罵倒する言葉を使ってくる。


 何が目的だ?挑発か?それとも権力を使いたいだけか?


「大方ファルスチャン家に頼まれて決闘を起こし、力を把握しろとでも言われたんでしょ?ブロンズラメア家はファルスチャン家の子分みたいなもんだからね。」


「確かに戦略的には割と正しい。捨て駒を使って主力の情報を得る。極めて合理的。」


 クレアさんとリリムさんの淡々とした言葉が図星だったのか顔を真っ赤に染める跡取り君。


 おかげでちょっと冷静になれた。


「マコトは絡まれすぎ。それが貴方の能力?」


「んなわけないでしょう!?面倒なんだよ!助けてくれ!クレアさん!リリムさん!」


「何で?普通に返り討ちにしてあげればいいじゃない、まーくん?この子達の狙いは間違い無く、貴方との決闘なんだもの。」


「戦いを前にして逃げるのは弱虫のやる事。話を聞く限り、貴方は愚者ではあるけど弱者では無い。」


 この2人のパートナー間違い無く脳筋だ。

 恨めしそうに2人を見ると彼女らは笑いを堪えていた。


 この人達、この状況楽しんでやがる。


「クレア?もしかしてクレアシオン!?」


「あら、お姉さんの事知ってるの?ふふっ嬉しいわ。」


「リリムという名前も聞いたことがあるが……」


「何をしているんだ、君たち。今、そこの2人は関係ないだろ?僕たちは彼に用があるんだ。」


 取り巻きたちは2人に何やら思い当たることがあったらしいが跡取りだけは彼らを全く見ることなく、俺を睨む。


「争いは良くない。平和的に話をつけようじゃないか。」


「怖気付いたのかい?」


「ええ! 出来たら暴力はやめましょう!」


 しつこく決闘を持ちかけて来る跡取りの追求を嫌だ、だめだとバッサリ切り捨てていくと跡取りの機嫌が目に見えて悪くなった。


 だがなぁ!俺はNOと言える日本人なんだよ!

 髪は金髪で目が緑でもな!


「了承を得たかったが仕方ない。君が妥協しないからだよ?僕の名はスティーブ・ブロンズラメア、君に決闘を申し込む!」


「だから、俺は決闘何て…」


「いい、リリムの名においてその決闘を受ける。」


「リリムさん!?」


 どうやら論文を読み終えた彼女がスティーブにそう答えた。


 すぐに俺はリリムさんに詰め寄り、隅に行く。


「何で受けるんですか!校長に言われたじゃないですか!俺は決闘をしてはいけないって!」


「何言ってるの?校長は決闘を()()()()()としか言ってない。受けることに関しては何も誓約をつけていない。」


 そうだっけ?……詳しくは覚えてないけど一緒にいたリリムさんがそう言うなら間違いはないだろう。


 そう願いたい。


「それに能力の使い方を学ぶにもいい機会。私とクレア、ロゼ、3人と契約したなら3つの能力が使えるはず。」


「3つ?ロゼさんの無視とクレアさんの作成とリリムさんの演算ですか?」


 そういや作成と演算なんて使ってなかったな。

 けど名前からして造形能力と計算能力だよな。使えるのか?


「ともかく戦いから逃げていたら貴方はずっと能力の制御が出来ないまま生きていくことになる。それだとパートナーである私達も困る。」


「…別れるっていう手段は最初からないんですね?」


「……フリーに戻るのはいやだから。」


 彼女はぷいっと顔を背けてしまった。

 なにか気に触ることを言ってしまっただろうか?

 まあいいや、パートナーの許可は得た。


「相談は終わったかい?」


「ああ、その決闘受けるよ。」


「そうかい!なら場所を変えよう!食堂前がいい、すぐに来たまえ!」


 スティーブの周りにいた手下供がわくわくした顔で外へと出て行く彼を追いかける。


 1人はそばに残り、逃げないか見張るようだ。


「やっぱ貴方はお人好しねえ、まーくん。本当に決闘が嫌なら強くリリムちゃんに言えばよかったのに。」


 まあ決闘は嫌なことに違いはない。


「だけどそれ以上に恩人であるロゼさんを馬鹿にした分は返さないと気がすまないだけだ。クレアさんも力を貸してください。」


「私は賛成しただけだから、別にやるとは言ってませーん。」


「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


 そこで断る!?頭下げてるのに!?

 断らない雰囲気だったのに!?


「だってえ、お姉さんが本気出しちゃうと坊や達相手じゃあ直ぐに足腰立たなくなっちゃうわよ?」


 理性を溶かすような妖しげな笑みに惑わされかけたが彼女の言葉通りなら協力はしてくれないらしい。


 この調子だとリリムさんも協力してくれるか怪しくなって来たなぁ。


 俺は何とも言えない気持ちのまま食堂前広場に向かうのだった。



 *



「やあ奇遇だね、ロゼ。」


「女子トイレの前で出会うことは奇遇とは言えないわよ、アルフレッド。」


 手をハンカチで拭きながら出てきたロゼの前に立ちはだかるアルフレッド。


 彼はにこやかな表情で親しみを込めた声で語りかける。


「どうだい?また俺とパートナーを組みたくはないかい?君なら今のパートナーも愛人としてなら許してくれるようだ。悪くないだろう?」


「何を馬鹿な事を…お断りよ。」


 歯牙にもかけずにばっさり切り捨てたロゼであるがアルフレッドは諦めない。


「なぜだい?彼のような留学生よりも将来有望な内政の手腕を持つ俺の方がーー」


「アルフレッド……私は短い間でしたが貴方の側にいて思ったことがあるわ。」


 ロゼはハンカチをしまい、呆れたような口調と可哀想なものを見る目で彼の言葉を遮る。


「貴方の領地経営はーー()()()()()()()()()()()()()


「……どういうことかな?俺の実力が信じられないと?」


「ええ、貴方の内政は何処か他人事のようなのよ。まるで先人の知恵を自分の知恵のように見せているように私は思えるの?どうなの?」


 アルフレッドから笑顔が消えた。だがロゼは更に畳み掛ける。


「貴方は私といた時から何かおかしな事を呟いていましたね?『内政ちーと最高!!』とか『ツンデレかっ!』とか……あれの意味と貴方の知恵は何か関係があるのかしら?」


 アルフレッドの体が震え始めた。

 ロゼはそれに気づいてそそくさとその場から離れる。

 だがいきなり肩を掴まれ、ロゼは壁に押し付けられた。


「どうでもいいんだよ……俺とやり直す機会を与えてやるって言ってんだ!さっさと従えよ!」


「離してっ!!」


 ロゼも何とか逃れようとするも非力な女の腕では体格のいいアルフレッドを押しやる事など出来ず、声を上げた。


「契約にお前の意思は関係ない!俺がお前とキスするだけで事が済むからな!」


「させない!火と風よーー」


「無駄だ!」


 その瞬間、ロゼの体から力が抜けていく。

 まるで生気を吸い取られていくようで徐々に意識も遠のいていく。


(な…に?……どうして……?)


 眩む視界の隅で彼女が捉えたのは近づくアルフレッドの瞳。


 どうにかしようと震えている足に力を入れようとするが思うように動いてくれない。


 次第に意識があるにもかかわらず、アルフレッドに抱きしめられるかのように受け止められ、顎を上にあげられる。


 そしてそのまま唇をーー


「公開プレイとは公爵家の人間がいい身分だな。」


「大丈夫かしら!?この私、ガルディエーヌが来たからには安心ですわ!」


 その唇はロゼの僅か1センチ前で阻まれた。


「エルデ……!」


「さんをつけろよ、強姦野郎。」


「意識ありますか?起きれます?」


「ありがとう。エルデ君、ガルディさん。」


 生徒会長を救ったのは従兄弟であるエルデだった。その側には背丈は小さいが出ているところは出だ女性。


 制服を改造してドレス調に仕上げた服を身にまとい、明るく活発な感じを抱かせる桃の髪の上には小さなかんざしが飾られていた。


 目元はくりくりとまん丸できりりと結んだ少女がロゼの看病を始める。


「悪りぃ、先生たちの追求に時間がかかった。」


「だって……旦那様がおかしな誤魔化したをするからですわ。それ相応の言い分をしなくてどうしますの?」


「相変わらずね、2人とも。」


 ガルディに支えられて何とか立ち上がるロゼは稲妻のような目でアルフレッドを貫く。


「この事は先生に報告させていただきます。学園の重大な規則『無理に関係を結んではならない。』を違反したからね。」


「いいのか……後悔するぞ!?」


 詰め寄ろうとするアルフレッドの前に一振りの剣が突き刺さる。


「流石に身内に手を出された以上、俺はこっち側だ。今からテメェの馬鹿さ加減を後悔しとくんだな。いくぞ、2人とも。」


 歯噛みしながら忌々しく此方を睨むアルフレッドを置き、エルデは歩き出す。


「行くってどこへですの?」


「あ?馬鹿が馬鹿に決闘を吹っかけて戦う場所にだよ。」




 *




「よく逃げずにきたな。おぼぼぼぼぼぼぼ」


「きゃあ!しっかりしてください!イワン様!」


 うん、食堂前の空いたスペースに待ち構えるスティーブの隣には足元フラフラの病人ですか?レベルのイワンさんがいた。


「決闘を受けたら逃げる訳にはいかないでしょう。」


「ふっ、違うよ。今のは隣のスティーブ君に言ったんだおぼぼぼぼぼぼぼ!」


 ああ…きったねえ。

 しかし、原因は俺である事を考えるとやはり申し訳ない気持ちになる。

 後で謝りに行こう。そうしよう。


「イワンさん……僕は貴方みたいな吐瀉物まみれにはなりませんよ。さあ行くとしよう!無能の足掻きを見せてみろ!」


「無能、無能って失礼だな!お前は絶対謝らせる!必ずだ!」


 どいつもこいつも会長を馬鹿にしやがって!

 会長はこんな俺を助けてくれためちゃくちゃいい人なんだぞ!

 俺の恩人を馬鹿にすんのもここまでにして貰おうか!


「Cクラス スティーブ・ブロンズラメア。」


「Bクラス マコト・カラスマ。」


「「勝負!!」」


 いつのまにか囲まれた群衆の歓声に応えるように俺はあの時の感覚を思い出す。


 体の皮一枚挟んで流れるものを手元に集めて一気に引き抜く!!


「出来た!」


 よっし!会長との特訓が身を結んだ!


「ほう……やはり見たことない武器だな。エレノア、僕が男を引き受ける。君はあの女を頼む。」


「ふふっ任せてくださいダーリン。私の力を見せてあげます。」


 なんだあの髪ドリルはこちとら魔族の娘がパートナーだぞ!お前みたいな奴に負けるかよ!


 彼女が俺に力を貸してくれるかは別問題だけど!


「さあ賭けた!賭けた!倍率はまーくんが5倍、スティーブが2倍よ!さあ張った!!」


 クレアさんなんて俺たちの勝負をダシにして賭け事やってんもん。大丈夫かなあ。一応聞こう。


「…任せても?」


「仕置は必要。私がやる。」


 おお、めっちゃやる気だ。

 白衣をばさりと脱ぎ捨てた。


「さて相手も決まったようだし、行くとするか!」


 とりあえず様子見だ。

 相手が魔法陣から取り出したのは爪?

 予測できねーな。


 ひとまず足元を狙って牽制の一撃を撃つ。


「君……一体何処を狙っているんだね?」


 あれ?狙いは足元だったのに俺と相手の真ん中くらいに当たったぞ?え?どういうこと?




 *




「馬鹿……あの時は全てを見抜く目があったから見当てられた。遠距離武器がいきなり百発百中で当たる訳がない。」


 飛んでくる魔法、それを放つのは魔法少女とギリギリ言えるくらいの大人びた女の子。


 しかし、それらの魔法は本物の魔女からすればお遊びにしか見えない。


(やはり魔法の練度が100年前より落ちてる。私が見た限り、これが平均なら魔法に愛されたロゼが学園1位になれるに決まってる。)


 彼女とロゼの関係はそこそこ付き合いのある友達である。

 ロゼは生徒会長を務めると同時に学園内で遊戯活動部の部長もしているのだ。


 最も部長は生徒会の仕事で忙しいため、大体は副部長のエルデ(強引に入れられた)に任せているため、馬鹿2人組の溜まり場とかしている。


 ロゼとの出会いは彼女が愛してやまない卓上遊戯『トライアル』を通じて出会ったものだ。


 ロゼはトライアルの愛好者であるのだが好きすぎてやり過ぎた結果、遂に学園内で負ける相手などいなくなってしまった。


 それを見たエルデがそこらへんにいたリリムをロゼの前に引っ張り出し、対戦させたところロゼは初めて負けたのだ。


 そこから互いに話し相手となり、トライアルをしながら友達となった。


(学園の魔法のレベルがどれだけ落ちてるか考えたくもない。)


 飛んできた野球ボールほどの火の玉をなれない土魔法で作り上げた壁で防ぐ。


(本気の水魔法で倒すのも楽だけどあまり目立ちたくない。それにあっちの戦況も気になる。)


 足元に生まれた水溜りほどの流砂を同じ土属性の魔法で上書きし、汚れた足を払う。


(こんな相手なら適当にあしらえば勝手に魔力切れで自滅してくれるはず。)


 見た限り、相手は火と土の二重魔法使い(ダブル)。ロゼのような五重魔法使い(クインティプルル)ではない事から簡単に対処できると踏み、最低限の魔法で相手の魔力切れを狙う。


(さて、魔眼に頼らないで彼は勝てるかしら。)


 彼女の目は猛攻をなんとか凌ぐマコトに移る。




 *




「ほらほらどうした!君の実力はそんなものか!?」


 上下左右に迫る嵐のような爪の乱撃を銃で弾き、時には掠るほどギリギリの回避でなんとか凌いでいた。


 けど割と本気でヤバイ!!


 前世の先輩の友達の空手道場で教えられてた付け焼き刃の技術でなんとか凌いでるけど、一発でも当たったら不味いって!


 くそっ!能力の制御方法がわからない以上、無闇にぶっ放したらまた同じことを起こしちまう!


 次にそんなやったら学園にいられなくなる!


「胴がガラ空きだ!」


「げふっ!」


 考え事をしたせいで対処が疎かになっていたらしい。爪によって二丁拳銃ごと腕を上に弾かれ、無様に晒した腹へと回し蹴りがめり込む。


 直ぐには立ち上がれない。

 どうやら鳩尾に入ったらしく、彼は短いうめき声を上げる。


「なんだ、他愛ない。やはりただの平民だな。」


 そんな彼をスティーブは悠然と見下ろしながら呆れた声でそう言った。


「待ちなさい!!貴方何をやってるの!」


「おやこれは生徒会長様。ですが体調があまりよろしくない様子、いかがなさいましたか?」


 そんな中、人混みから現れたのはガルディとエルデに支えられて何とか立つ彼女の姿。


 一体何があったのだろう……と苦しい中でマコトは考えていた。


「私も彼のパートナーよ!私がいないのに何故、決闘を行なっているの!」


「いえ、私は貴方を邪魔するわけにはいかないと思っただけですよ?()()()()()()()()()()()()()()


「チッ……なるほど最初からロゼとマコトを引き離すのが狙いだったか。卑怯者が」


「卑怯とは失礼な。戦場でそんな事言ったら相手が謝りますか?そもそもアルフレッド様が2人きりで話したいと言われたので僕はその通りにしただけ。まあ決闘をして実力を見ろってのもアルフレッド様の命令だけどね。」


「なら私も今から参加するわよ!2人ともどいて……ッ!?」


 無理やり2人を押しやり、前に出た彼女だが足が動かずそのまま前のめりに倒れる。


「無茶だ!ロゼ!お前の体からほとんど魔力が消えてんのに動けるわけねえだろ!」


「でも!いかないと!マコト君が!」


「大丈夫……まだまだやれるから。」


「マコト君!!」


 立ち上がったマコトの姿を見て悲鳴に近い声を上げるロゼ。


「大丈夫大丈夫、ちょっと休憩してただけだから。仕切り直しだ。行くぜ!」


「無駄な足掻きを…」


 放たれた弾丸は彼の体にあたる事なく、懐に潜り込まれたマコトの心臓めがけて爪を突き立てる。


「これを待ってた!」


「なっ!」


 しかし読んでいたマコトは僅かに体を動かし、わき下を通す。脇腹の裂傷に呻くがそのまま腕を締めてスティーブの爪を固定、右手に持った拳銃をスティーブの額に置く。


「ここまで近づけば外しはしねえよ!」


 まさに肉を切らせて骨を断つ。


 周りの人達もマコトの勝ちを確信した。


 そして弾丸が今、銃口から放たれーー


「参ったな、君相手に能力を使うことになるとは。」


「えっ?」


 弾丸は何もいない空間を進んでいき、背後から貫かれた爪が赤く煌めいていた。


「全く……今のはだいぶ焦ったよ。」


 爪を抜き、吹き出る血を払ってパートナーの方を向く


「さて取引しないか?君が椅子にしている僕のパートナーと今ここで血を流して倒れたパートナーを交換しないか?」


「嫌。たかだか()()に逃げるだけの相手と取引なんてもってのほか。」


 相手を四つん這いにし、手足を氷で凍らせた人間椅子からそんなことを言ってのける彼女は細い足を組み替えた。


「そうか……なら、無理矢理!」


「死角に移動して奪う?……やってみなさい。」


 彼女が眼鏡から少し瞳を見せる。

 それだけ、だがその行為でスティーブの足は地面に縫い付けられたように一歩も動けない。


「まさかとは思うけどこれで終わり?」


「ふっ僕を見くびるなよ!こんなのすぐに!」


「誰も貴方に話してない。私が話しているのは貴方よ、マコト。」


 呼びかけられた彼はピクリともしない。

 けれどリリムは声をかけ続ける。


「ロゼを散々馬鹿にしたこいつに謝らせる?能力も制御出来ない貴方が?武器を2つ持っていても宝の持ち腐れね。」


 倒れた指先が土を握る。

 血が身体中を駆け巡る。


「それが違うというなら証明なさい。他ならぬ貴方の手で。」


 拳が握られる。


「立ちなさいーー英雄の血を引くものよ(マコト)




 *




 そうだ

 漸くわかった。


 俺の体だけで能力を使うんじゃない。


 武器と体で能力を使うんだ。


 右手の銃

 左手の銃


 そしてこの体。


 これら全てを使って戦え。


 誰かを守れるような自分になるために!!




 *



 観客がどよめく。

 リリムが薄く笑う。

 スティーブが苦い顔をする。


「……全然聞いてねえから。」


 それは子供みたいな負け惜しみ。

 だけどその言葉に咄嗟に反応したスティーブの爪が切り裂かんと肉薄する。


 体を左右に揺らしながら迫るスティーブにマコトは銃を構えた。


 右手で持ち、左手で添えた銃口から発射されたその弾はーー





「ぐあっ!!なぜだ!何故いきなり当たる!」





 ーー今度こそ相手に届いたのだ。




「くっ、まぐれだ!今度こそ当ててみろ!」


 スティーブの姿がまた消えた。背後を見てみるがそこにはいない。


 辺りを見回すとリリムの後ろに爪を振りかざすのが見えた。


「弾道誤差0.03 風速 0.02 調節……当たる確率 98パーセント。」


 マコトは椅子となったスティーブのパートナーへと弾丸を放つ。


 パートナーは迫る黒の弾に小さく悲鳴をあげるが少し外れたのか弾丸は彼女の凍った部分に直撃、そのまま跳ね返り、跳弾がスティーブの爪を弾く。


「まだまだぁ!!」


 スティーブの姿が消えたと同時に地面へと銃口を向け撃つ。


 弾丸は地面を跳ね返り、マコトの左耳を掠ると背後に迫っていた爪を抜けて彼の右耳を貫いた。


「なぜだ!何故いきなり当たるようになった!」


「演算しているんだ。何処に照準を合わせればいいか、どれだけ的からずれているか。弾道計算をその場ですぐに行なっている。」


 耳から滴り落ちる血を自身の治癒魔術で治すスティーブ。傷が塞がって行く様子を見てマコトは安心したように息を吐く。


「さてどうする?まだやるか?」


「やるに決まっているだろ!僕はイワンさんとは違うんだ!……これ以上無様な姿を晒してたまるか!」


 爪を前に構えてこちらを睨みつけるスティーブに演算能力が付加された右手の銃を構え、リリムの方を見る。


「何が望み?」


「そのパートナーに邪魔をさせないで下さい。」


「……了解」


 彼女は人間椅子から降りると手を前に出し、詠唱を始める。


「我が名において命じる。水よ、我が元に従い顕現せよーー108個の氷結堅牢(クリュスタロッス)


 詠唱終了と同時に広がる莫大な冷気、それらは地面も空気も凍らせ、自身の手足となる数多の氷の壁を生み出し、エレノアを包み巨大な棺をつくる。


 これこそ魔女と呼ばれた彼女の本気の一部、唱えようとするならロゼにも出来るがここ迄の規模は出せない。


「彼女は氷の棺桶に埋蔵してあげたわ。後は頑張って。」


「ああ」


 左手に持った銃を構える。

 型なんてなっちゃいない、シューティングゲームで学んだ我流の型から無造作に銃を構えて撃つ。


「だが外れだ!ここに来て集中力が切れたか!」


 しかし銃弾はあらぬ方向へと飛んでいき、地面にバラバラに着弾していく。


 スティーブはそれを好機と見て爪を胸の前でクロスしながら射線から外れる変則的な動きでマコトへと迫る。


 だが避けない。退かない。


「諦めたか!!」


「んなわけあるか。''作成"」


 その言葉を引き金として作られるのは岩の壁、それら全てが弾丸が着弾した場所から生まれている。


 呆気に取られるスティーブであったがそこに短い発砲音と共に小さく響く反射音。


 目で追おうとしたスティーブだが岩壁を跳ね返る弾丸の速さに目が追いつかず、後ろから右足を貫かれた。


「ぐっ……跳弾か!」


「ご名答、弾丸の着弾地点すら分かって仕舞えばあとは反射角と弾道を計算すれば猿でも当てられる。」


 その言葉を聞いてスティーブは考えた。

 これだけの土の壁があればそれだけ死角が生まれる。

 つまりは調子に乗っているこの男の首をとれると。


 すぐさま次に撃たれた2発の弾丸を土壁の死角に移動することでやり過ごしながら未だこちらに銃口を向けないマコトへと突っ込んでいく。


「あんまり動かない方がいいのに。」


 それと同時に感じた左足の鋭い痛み、気づけば足からは血が流れ、余りの痛さに膝をつく。


「2発弾丸を撃ったのは弾丸に別の弾丸を当てて位置を急に変えるため。跳弾が弾丸同士じゃ出来ないとは言ってないぞ?」


 スティーブは驚愕する。

 まさかそこまで読み切っていたのかと。


「全て貴様の手の上だったとでも言うのか……!!最初の振る舞いも全てが俺を油断させるための!」


 だがその言葉に怪訝そうな顔を浮かべるマコトは右手の演算の銃と左手の作成の銃を挙げる。


「いや?たまたまだ。だがいい能力の練習相手にはなった。」


 銃口が膝をついて懺悔の状態のスティーブを狙う。

 銃口を操作するのは魔弾の射手。


「ゲームオーバーだ。会長に謝って貰うぞ。」


 絶対零度の如く冷えた声がスティーブの耳を通り、脳にたどり着いた時、反射的に彼は白旗をあげたのだった。

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