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スワンレイク・アゲイン

今日は2話投稿なのでよろしければ前話もご覧下さい。

「や、やったぞ。」


 ゆっくりと体を起こし、真に支えられながらも立ち上がった彼女は光の奔流を受けて木々を倒しながら森の奥に吹き飛んだのを見て安堵する。


 彼女がそれを仕掛けたのは砂鉄の壁で両者の視界が途切れた時だ。


 彼女の最後の踊りは精霊達から魔力を借りる事で古代魔法を使うためであり、森の魔物を倒すために巻き込まれた木々達からの報復ととってもいい。


 更にあからさまな罠を仕掛ける事で魔法に疎いクレアにはそれが灰になり、空に拡散する事で発動する魔法と気づかせなかった。


 ロゼならば怪しい木々を燃やすこともなく、単に凍りつけるだけで済ませたがクレアにそんな魔法は使える訳がなく、罠を破壊するために木を燃やしてしまったのだ。


 結果、空から降り注ぐ制裁の光は初撃は避けられるものの斜め上からの追撃がクリーンヒットし、横からの参撃目である光に飲み込まれて吹き飛ばされた。


 並大抵の相手なら消し飛ぶ魔法、つまり


「この勝負、私の………」


「ーー貴方の、負けよ。」


 木々の間から顔をのぞかせたクレアの体は衣服が敗れ、半裸状態になりながらいくつもの擦過傷が見られるも頭などを守ったのか、意識ははっきりしているようだ。


「どうして………!」


「理由はこれよ。」


 驚愕に目を見開いたジゼルの目には星の輝きに並ぶほど黄金に輝く龍の鱗。

 彼女は首を鳴らしながら、足取り軽く近づいてくる。


「私の鱗はそれなりに耐久性があるの。雷、火くらいならほぼ無傷よ。光はダメだったから割と傷を負ったけど」


 ジゼルの敗因はクレアの実力を予想の中でしか知らなかったこと。

 実物の彼女は予想を超えて遥かに強く、純粋な力量など遠く及ばなかったのだ。


「正直驚いたわ。人喰を倒したってのも頷ける罠。許してちょうだい、貴方の実力を上方修正しましょう。」


 神妙な顔でそう漏らしながらも受けたダメージを雷に変換して構えるクレアに真がジゼルを庇うように立ち塞がる。


「どいて、まーくん。そいつ倒せないわ。」


「どかない」


「聞きなさい、まーくん。貴方は操られているのよ。大切な婚約者の事、忘れちゃったんでしょう?」


「大切なのは霞だけだ。」


「………ならちょっと意識失ってなさい。」


「断る」


「聞き分けないわねぇ、お姉さんはそんな子に育てた覚えはないわよ?」


 呆れながらも一足で距離を詰め、固めた拳が真の腹にめり込んでいた。

 骨を避け、内臓を抉るように打ち込まれた拳に真の体が浮き、涎をこぼす体を地面へと放り投げる。


「この距離なら私の方が早いわ、銃を撃つより早く、その腕を折るから。」


「この一撃………訓練、クレア………くっ、頭が!」


 頭痛に苛まれながらもこちらを睨みつける真を雷の檻に閉じ込め、原因であるジゼルの胸ぐらをつかみ、宙に釣り上げる。


「私は貴方に選択肢を与えているの。貴方を殺してリリムちゃんに魔眼を渡して解除しても一向に構わないのよ?でも、今、魔眼を解除して大人しく降参するなら命までは奪わない。貴方が死んだら色々困りそうだからね。」


 意外かもしれないがジゼルには単体における戦闘力はほぼ皆無だ。

 彼女の強みは精霊との高い親和性であり、精霊の力を借りる事が出来ない限りはただのバレエが得意なシスターである。


 それが単体でも世界有数の実力者に捕まえられては勝てるわけもないため、諦めて真の幻覚を解くしかないのだが………


「ーーるさい」


 蚊が泣くような声に耳をすませれば


「五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い」


 膨大な愛を悪意の味付けで煮込まれたそれの不気味さに僅かにクレアの顔が引きつった。


「どうしてどいつもこいつも私の恋路の邪魔をするんだ。顔がいい?性格がいい?体がいい?私の邪魔をするのはいつもそんな奴ばかりだ!そんな奴らに限って、顔がいいけど性格はクソ。性格は優しいけどデブ。体はいいけど顔がムリ。お前たちは何様だ!好きになった相手ならばどれだけの月日が経とうと想いは変わらないものだ!お前らの1ヶ月に比べたら私のこの180年は積み重ねた思いの結晶だ!そんな短い間しか思ってなかったやつに私の真先輩を取られるわけにはいかないんだ!」


「貴方、まさか………」


「私が1番だ!バレエの時とは違う!真先輩が大好きだから!愛の深さは私が間違いなく1番だ!私がーー1番なんだよ。」


 涙と鼻水でぐじゃぐじゃになりながらもクレアの体を足で蹴る。

 しかし、ステータスに差がありすぎるために彼女の体を傷つけることなどできない。


「まーくんの知り合い…いや好きな人だったのね。新歓旅行の時にまーくんの話を聞いたロゼちゃんから聞いたわ。名前はそう、カスミだったかしら?」


「真先輩以外が私をその名前で呼ぶな!それは真先輩だけが呼んでいい名前だ!貴様に呼ばれる筋合いはない!」


 激昂し、腕を振るうもクレアに弾かれてまた泣き出す。

 その姿は何かを欲しがっている小さな子供にしか見えなかった。


「大人しくなさい、貴方は負けたのよ」


 暴れる彼女の力ではクレアの体に傷はつかないがそれでも面倒である事に変わりはない。

 クレアは意識を奪う程度の力を込めて彼女の顎を揺らす一撃をたたみこむ。


「………どういうつもり?」


 だがその腕が振り切られることはなく、横目で見た先には雷撃の檻を無傷で抜け出したマコトの姿だった。


「…………そこまでにして下さい。」


「言ったわよね?貴方が次ーー」


「霞を放してやって下さい。クレアさん。」


「まーくん、まさか記憶が戻ったの!?」


 背中越しに頭を押さえながらそう述べた彼の言葉にクレアもジゼルも驚きを隠せない。


「リリムさん的に言わせて貰うなら魔眼所持者だから耐性があったみたいです。何とか自力で解除させて貰いました。」


 しかし、頭痛がするのか、こめかみを押さえながらクレアが離した霞の前にしゃがむ。


「クレアさん、暫く2人にしてください。」


「また幻覚で操られたらどうするの?」


「そしたら力尽くで魔眼を奪い取って俺の幻覚を解除して下さい」


「………もう、わかったわ。リリムちゃんの方を見てくるから彼女はまーくんに任せるわ」


 強情な事に折れたクレアは雷を地に走らせるとリリムがいる方を探知してそちらへ足を運ぶ。


 残されたマコトに霞は早口で言いたいことを全部まとめてぶちまける。


「真先輩、記憶が戻った上で聞かせてくれ。私を選ぶ気はないか?私なら先輩の好きなものを作ってやれるし、嫌なことなんて一切やらせない。だから、だから!私と一緒にこの森の奥で暮らさないか!?」


 霞は涙を何とか止めて無理に作った笑顔でそう言うがマコトは黙って首を横に振る。

 それを見て、霞の目からまた大粒の涙が流れ出す。


「どうしてだ!真先輩も私の事が好きだったと昨夜に告げてくれたじゃないか!なのに何故彼女達を選ぶ!何で私だけを選んでくれないんだ!」


 心の中に隠していた自身の感情を苛烈にぶつける。

 マコトはそれに黙って耳を傾け、彼女に言い聞かせるように優しく告げた。


「お前が死んだ後も俺を思ってくれていたことは嬉しいし、あの日お前を助けられなかった負い目もある。だからお前には優しくしてやりたいし、助けてもやりたい。だけど、お前だけを選ぶわけにはいかないんだ。」


 あの日伸ばされた手をつかめなかった。

 あの日の笑顔を忘れたことはなかった。

 あの日の記憶が色褪せる事などなかった。


「だけど俺はお前が執着するほど優れた奴じゃない。愛人の子のくせに一丁前にハーレムなんて築き上げて思いを1つに絞りきれない情けない男だよ。」


 霞の思いは180年の不変の証だがそれに答えられるほどの気持ちをマコトは持ってはいない。

 だから彼女の純粋な気持ちに応えられる訳がない。


「私の事を忘れたことはなかったなら私たちは互いに思い合っていたんじゃないのか!?両思いだったじゃないのか!?」


「両思いだったかもしれない、だけど俺がお前に告白出来なかった時点でそれはもう、もしも、の世界の話だ。」


「もし、で良いじゃないか。まだ私は真先輩が好きなんだ。私を1番にしてくれ。私だけを愛してくれよ………」


 目の前で子供のように泣きじゃくる彼女だけを選ぶことはもうマコトには出来ないのだ。


「だからここから先は情け無く、みっともないクズで卑劣な下衆の言葉だ。」


 涙をはらはらと流す彼女にマコトは自分でも情け無く、人としてあるまじき言葉を口にする。


「俺はお前だけを選べない、だけどお前が今でも俺を愛してるならお前の手を取ることは出来る。2人の女を手篭めにしたこの手だが」


 それは全世界の男と女を敵に回す最低最悪の発言で少女漫画の主人公なら即、叩かれても当たり前の言葉だ。


「………ふざけているのか?」


「軽口の類なんかじゃなくて真剣に考えて言ってる。ごめん、うそ、罪悪感が増えるワカメ並みに膨張してる。」


 涙を止めて唇を固く縛り、この状況下で大好きな先輩からの馬鹿の言葉に僅かに怒りを抱く。


「だけどお前が夢中だった先輩像は崩れただろう?」


「………」


「沈黙は肯定とみなすぞ?」


「違う、私の先輩はそんな事は言わない。私の先輩は私の先輩は私の先輩は私の先輩は私の先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩」


 ぶつぶつと壊れたレコードのように繰り返す彼女の両頬を両手で軽くはたく。

 乾いた音がして彼女の目がこちらを向いた時に真っ直ぐ見つめなおす。


「霧崎霞、目を覚ませ。お前の目の前にいるのはただの鴉間真だ。英雄の子でもないし、憧れの先輩でもない。お前が大事にしてたバレエ並みに執着するほどの価値なんてないんだよ」


 実を言えば霧崎霞はバレエを失った喪失感から完全に立ち直ったわけではない。

 胸に空いた大きな空洞をマコトというもので埋めていただけなのだ。


 もう失いたくない為に彼女はマコトを自分だけの物だと思い込み、執着して来たのだから。


「でも、この思いは本当なんだ………執着から始まる恋はいけないのか!?」


「俺は構わない、だから側にいたいなら側にいろ。だけどお前だけを俺は見てやれない」


「だから1番になれない辛さを噛み締めながら不幸に溺れろというのか!?私は納得出来ない!」


 憤怒に身を焼き、頑なに言葉をぶつける。

 マコトはそれを受けて、整然と言葉を紡ぐ。


「ならお前が決めろ、霧崎霞として届かぬ想いを馳せたままここで別れるか、ジゼルとして側にいて俺の1番に成りかわるか。お前がしたい方を選べ、霞。これはお前の第2の人生なんだから」


「でも………でも………」


 選べない、迷う。

 永遠の偶像として執着していた先輩を思い出に刻むか、それともただのマコトとして愛人で終わるかもしれない人生を歩むか。


「人生はいつだって選択の連続だ、霞。あの時みたいに足を止めている時間はない。」


 それも事実、すでに周りから演奏、歌が聞こえなくなっており、鎮圧されてしまったのだろう。

 そうなれば霞は自動的に選択をしてしまう。


 目の前にいる光から手を伸ばす事を諦めるという事を。


「だけど…お前がそれを選んでくれるなら俺はお前の側にいてやりたいよ」


「ーーーー!」


「あの日受け取れなかった思いを受け止めてやりたいよ」


 それは何も背負うことがなかったマコトの本心であった。

 異世界に来てから身の丈に合わない栄誉が積み重なる前のただの貧乏なフリーターの告白だ。


「真っ………先っ輩!」


 涙を堪えるような怒りを堪えるような表情で彼女はマコトの名を呼ぶ。




 *




 ジゼルとは公爵であるアルブレヒドと仲良くなるが死によって別れ、森の奥の墓場にて幽霊となり、迷い込んだ人間や裏切った人間を踊り狂わせ、死に至らしめる話だ。


 私はこちらの世界の名前を聞いた時、あまりの現状を表した名前に変な笑い声が出たのを覚えている。


 真先輩とは死によって別れ、森の奥にて生者を救い、死者を弔いながら幽霊のように生きていた。


 そして真先輩が森に来ると私はすぐに彼の記憶を奪い、心を死なせて私のものにした。


 だけど足りなかった。

 虚しさが余計に漂うだけだった。


 私は気づいてはいたんだ。

 私はあの人がしっかりと自分の足で立って進んでいく姿に執着していたんだと。


 私が持っていなかったものを持っていたから。

 私はそこが好きだったんだと。


 操り人形になった彼など意味はなかったのだと。


 けれど人形ではなく、人間になってしまった真先輩の隣には見た目麗しい女性達が多数を占める。

 私はそれに勝てるのか?勝てない勝負なら降りた方がいいんじゃないか?


「嫌だ………私は真先輩と一緒にいたいんだ。」


 そんな事出来る訳がない。


 だって諦めるのは簡単じゃないんだから。

 可能性があるなら何度だって挑戦するんだ。



 もう一度、優しい先輩の隣にいる為に!



「真先輩、私を愛してくれ。貴方がいなくちゃ情けない私を愛して欲しい」


「俺はお前だけを選べない。でもお前を寂しくさせるつもりもない。こんな情けない俺でいいのか?」


「情けないなら私が貴方を理想に近づけるだけだ、先輩が私だけを愛してくれるように、私の記憶が先輩を占めるように刻み込むさ。」


 やらずに夢を諦めるくらいならやってから諦めた方が何倍だってマシだ。

 それがあの日の病室で学んだ事なのだから。


「私を選ばせてやる、鴉間真。貴方の方から頭を下げさせて一緒に居たいと懇願させる為に」


 私は涙を拭い、今はもう何ともない二本の足で立ち上がる。


 大事な人に大事にされる為に白鳥は再び湖から飛びだったのだ。



 *



「終わった?」


「………リリムさん」


「何?情けない顔して、全部解決したなら魔眼回収して戻る。」


 森の奥から歩く部分に霜を走らせて優雅な歩きでこちらへとくるリリム、どうやら後ろにちらほらと凍傷気味の教会の子達がいる事から戦っていたのだろう。


 リリムさんは霞を無理やり立たせて魔眼を回収し、全ての幻覚を解除した。


「戻ろう、もう日が傾きかけてる。移動を使ってタイフネのロゼの記憶を確かめたら学園に帰る。」


「………はい」


 一瞬、霞を見つめたマコトだったが直ぐに銃を取り出して移動の力を発動


「キィヤャャァァァァァァァァァァーー!!」


 した瞬間に森を揺るがす金切り声がその効果を遮断した。




 *




「何っ?この声!?」


「声………叫び?否、歌かこれは!」


 宿屋に帰ってきたロゼとルナールにさえその声は届いた。

 全身の肌が粟立つような嫌悪感の塊の声を前にしてロゼは魔力障壁をはるも防ぐことは出来ない。


「何が起きているのだ!ロゼ!背中に乗るのだ!外の様子を見に行くぞ!」


「うん!」


 ルナールにおぶられて外へ出た2人が見たのは道端に倒れたタイフネの民達。

 まだ息はあるようだがひどく衰弱しており、このままだと死んでしまうだろう。


「ルナール!」


「ベオではないか!何があった!」


 耳を抑えても鼓膜を貫くその悲鳴合唱に精神をガリガリ削られていたところに魔導王たるベオが空から降って来た。


「分からない!分からないが!これに似た現象を私は味わった事がある。」


「何なのだ!それは!」


「人喰の歌だ、人喰が餌を見つけた時に歌う滅びの歌。君からの伝言をアクセルから聞いた時、最初は魔獣かとは思ったが………」


「人喰、あの御伽噺のか!?倒したんじゃなかったのか!」


「私も倒したと思っていた、だがもしかしたらゆっくり時間をかけて再生したのかもしれない。ともかく!タイフネの民の避難が優先だ!協力をーー」


「なりませんよ、ベオ。彼らは神に選ばれなかったタイフネの民、私たちヘクセレイに入れるわけにはいきません。」


 そこに現れたのは礼服を身につけたヘクセレイの住人、中心にいるのはセルドであった。


「何を言うんだ!人命を優先しなくて神の教えに刃向かうつもりか!」


「失礼な、神の教えは弱者を助けることですが愚者は関係ない。タイフネの民は愚者でしかない以上、救いはありません。むしろ、高潔な私達を救うための人柱になる事を光栄と思って欲しいくらいですよ」


「ふざけないで下さい!人柱なんてっ!貴方達は自分達が助かることしか考えていないんですか!」


 ベオの言い分にセルドは呆れたように鼻で笑うがそれはおかしいとロゼですら反論する。


「全く、やはり君はあの魔族に洗脳されていたようだね。仕方ない、この場で君をーー」


「させると妾が思うのか?」


 裁こう、と言葉を最後まで述べる事はなく、ルナールの鋭い一撃がセルドの意識を奪い、横に抱え直す。


「貴様!何を!」


「妾は義賊王であるぞ?欲しいものは全て奪わせてもらうに決まっているだろう?妾が欲しいのはこの男、こやつは教皇の息子なら脅迫にはもってこいであろう?」


「何が望みだ?金か?男か?」


「そんな欲にまみれたものなどいらぬ、妾の望みはタイフネの民をヘクセレイまで上げる事だ。無事に全員を回収し終えれば無傷で返してやろう」


 取り巻きの男の提案を直ぐに切り捨て、代わりに提案したルナールの要求に苦い顔をするが自分達が甘い汁を吸えなくなるのは困るのか、直ぐに動き出した。


「ベオ、こやつは任せた。ついでにロゼをも頼む。」


「構わないが………お前は何をするつもりなんだ?」


 ベオは適当に投げ渡されたセルドをキャッチし、俵のように肩で担ぎ直すと準備運動をし始めたルナールに怪訝そうな表情を浮かべる。


 それに自信溢れる笑みとともに銀の鍵を使って開いた倉庫から白く艶やかな狐面を取り出した。


「何を馬鹿なことを。決まっておるだろう?人喰から時間を稼いでくる。所詮は化物、怪物である妾の本気を見せてやろう」

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