父親として、英雄として
「クレアシオンです。失礼します。」
彼女は俺の手を引き、中へ入る。
校長室には多数の絵画に数多の宝物、さらに無数の本の山、その中で高価だと一目でわかる机と椅子に座る1人の男。
輝くような金髪に優しげな翠の目は今は厳しく見据えている。発するオーラも俺と出会った時のような腑抜けたものではない。
今、彼の前に立つだけで全身の毛が逆立つような感覚に襲われるくらいだ。
これこそが魔王を倒した英雄の本来の姿などであろう。
「訳を聞こう。」
「も、申し訳ありません。」
「謝罪は聞いていない。訳を話せといっている。」
一体どこから出しているのだというくらいの重低音に目だけで人を殺せるほどの迫力に思わず謝ってしまったが父はそれを一蹴し、無表情のまま問い詰める。
「実はーー」
俺は父の無言の重圧に耐えられず、全てを話した。父はそれにうんともすんとも言わず、表情も変えない。
ただこちらを見つめてくるだけだ。
「クレアシオン……?君はその間、何をしていた?」
「私は(貴方の指示通りに)観察をしていました。もしパートナーが危機に陥った場合だけ助けようとしていました。」
「……そうか。」
父は椅子を引き、立ち上がると後ろの大きい窓を少し開けた。
暖かな春風が部屋内に充満する暗い雰囲気を吹き飛ばしてくれることを祈ったがそうは問屋がおろさない。
父は窓の方を向きながら威厳のある声で話を続ける。
「真君、君が決闘をした事について咎めるつもりはない。本来決闘というのは何年もの歴史の中で行われて来た由緒あるものだ。それをこの学園内で緩く行うことで子供達の能力を自由に扱えない不満解消を狙っていたのだが……」
たしかに能力を手にしたら振りかざしたくなるのは分かる。現にさっきの俺がそうだったからだ。
「それを君は無視した。相手の者は一命を取り留めたとはいえ、かなりの恐怖を覚えたはずだ。それだけではない、彼は伯爵家の長男であり、この事態を彼の家が知れば実力行使で君を潰すかもしれない。」
父がゆっくりと近づいてくる。
俺は自分の足元を見ながら息が詰まりそうな圧迫感を耐えていた。
「今回の事で君の全ては悪い方向に向いた。明日からの学園生活もクラスメイトからも君は周りから壁をつくられるだろう。」
何も言えない。
ただ黙っている俺の顔を父は睨みつけた。
「どうする?針の筵となった学園で生きるか、または元の世界に返されるか、どちらが良い?」
「それは………まだこちらにいたいです」
「だろうな、とはいえ私も鬼ではない」
その時の俺はもう頭の中が真っ白で父の顔も見れなかった。
「なら条件がある。」
「……条件ですか?」
「金輪際、君の方から決闘を仕掛けるのは禁止だ。それを守らなかった場合、今度は退学してもらう。それとクレアシオンとのパートナーは解消だ。」
俺は黙って頷くと部屋から出された。
クレアさんは事実の詳細を客観的に聞きたいと言われて残された。
扉が閉まり、俺は気が抜けたせいで壁に寄りかかってそのまま座り込む。
怒られたことなど久しぶりだ。
母が死んで以来だろう。
「俺……この後どうなるのかな」
1人呟いた言葉は誰にも届かなかった。
*
「ふーっ、で?彼は正直に言っていたかい?」
緊張から解放された彼は深いため息を吐く。
「嘘偽りはないわよぉ?けど厳しすぎだと思うのだけれど?」
「彼はこの世界に来てから少し浮かれているようだったからね。多少気を引き締めてもらうためにちょっと本気出してみた。」
「処罰に関してもロゼやリリム、問題児2人組の訴えが入った割には重すぎないかしら?」
マコトが心身喪失状態である事を察した彼女はなるべく時間をかける事で彼の気持ちの転換とロゼなどが校長への直訴する時間を稼いでいたのだ。
「いや、彼にはちょうどいい。彼は翔子に似てお節介でお人好しのようだから勝手に首を突っ込ませないようにするにはあれくらいがいいんだ。」
「ちゃんと考えているのね、意外だわ。」
「君は所々失礼だな。だが君が俺に優しくしたらそれはそれで問題だ。」
「ええ、だって私は英雄嫌いですもの。」
彼女はその言葉に薄く笑うと部屋から出ていくためにドアノブに手をかけた所で逆に外から開かれて鼻頭をぶつけた。
それに気にせずに中に入ってきたのはリリムであった。
「魔眼関連の報告に来た。」
「あらリリムちゃん元気かしら?相変わらず小さくて可愛いわねぇ。はあ癒される。」
入ってくるやすぐにリリムを人形のように抱きしめるクレア、ちなみに彼女2人の背の差だとリリムの顔がクレアの胸にあたる。
「………また贅肉が増えてる。」
「いやん!もうリリムちゃん、そんなに強く揉まないの。男達の夢と希望が潰れちゃうでしょ?」
校長は明後日の方向を向きながらリリムが憎悪に駆られた顔でクレアの胸の贅肉を揉みしだきが終わるのを待つ。
ようやく終わった頃には地面に蹲り、咽ぶリリムの姿であった。
閑話休題
「彼の目は魔眼だった。おそらく天眼。」
「そうか報告ご苦労。この際だからクレアシオンには言っておくが君とは変わる形でリリムにパートナーになって貰う。君にも伝えているとは思うが『編入生』の件だ。」
「あら、そんな裏話があったの?それじゃあ今回の決闘も仕組まれていたのかしら?」
クレアはリリムのサラサラの髪を梳きながら校長に目を向ける。
「あれは違う。が、せっかく事件が起きたのだからそれを利用させて貰っただけさ。そんな感じで悪いが君にはまたフリーに戻って貰う。」
校長の一方的な話を受けても文句を言わずに笑ったままのクレアだったがふとなにかを思い出したかのように胸の間から手帳を取り出した。
「そう言えばさっき生徒手帳のパートナー欄を見たけど少しおかしかったわよ?」
「変?どこがだ?異常などは届けられていないが?」
彼女は彼の机の上に自身の生徒手帳を広げる。
「さっきの決闘で彼はロゼと契約を結んだわ。なら契約は更新されて私がフリーに戻るはずよね?」
校長は手帳を手に取り、よく見てみるとその異変に気がついた。
「同時並列契約だと?」
そこにはこう描かれていた。
名前 クレアシオン
能力 作成
ランク 不明
ステータス 魔法 B 家事 D 体力 A 頭脳 B 特色 S
パートナー マコト・ロゼ
「何故こんな事になっているんだ?」
「多分だけどロゼの能力によるものだと思う。彼女の能力の真髄がありとあらゆるものを無視できるなら『契約は1人としかできない』という法則を無視して『多数の人と契約を同時に結ぶ事が出来る』も理論上は可能。」
校長の疑問にリリムが捕捉する。校長はふかふかの椅子にゆったりと沈むと天井を見上げた。
「…まさか無能と貶められていたイノセンティア家の長女がそのような能力持ちとはな…」
「そもそもイノセンティア家は『ディアブレリー国』の王家の血を受け継いでるわ。本来なら優秀な人材を輩出し、王家を支える公爵家の地位だったはずだけど……ねえ?」
責めるような視線に思わず目をそらす英雄。
しかし英雄嫌いのクレアは畳み掛ける。
「どっかの英雄さん達が無闇矢鱈に魔王を倒す際に支援を要請するから王家は困ってしまって国を助けるために借金の大半を押し付けて切り捨てた貴族の家が確か……」
「あれは勇猛と錬鉄の英雄が悪いだろ!?気づかなかった俺も悪いが!」
「じゃあ英雄達を説得し直してどうにかイノセンティア家を立て直しなさい。貴方達のせいで起きたことは他にもあるのよ?黙っているだけ、ありがたいと思いなさい。」
「もうやってる!!今回の件で借金は帳消しだ。流石に決闘を仕掛けておいて敗北時の条件を守らないほどシルベストリア家はおちてはいない!」
「そう?じゃあ宜しく頼むわね?」
話し合いと言う名の脅迫を終えた所で彼女は部屋を出て行く。
やっと肩の荷が下りたと思った彼が冷めてしまった紅茶を飲もうとした所でまたドアが開く。
「結局私と彼とのパートナーは切れてないからこのまま続行するわね?もちろん、ロゼの分の誓約書も作っておきなさいよ?」
「私のも宜しく。」
「………わかった、好きにしてくれ。」
ドアを閉められた所で彼は椅子に深く腰かけるのだった。
*
「………とりあえず帰って来ちゃったか。」
あの後、ふらふらと足取り不確かに自身の寮への道を歩いていた。
その間にも周りの生徒達がヒソヒソとこちらを遠巻きに眺め、噂をしている姿を見てさらに気が滅入り、逃げるように部屋に帰ってきたのだ。
道に迷ってしまった為にもう日は沈みかけている。
「クレアさんが帰って来るまで部屋にいよう…」
俺は部屋の鍵を開けて中に入る。
「えっ?」
「………え?」
そこに居たのは白の髪を腰まで伸ばし、黒のネグリジェを身につけただけの女性がいた。
穢れを知らないその白い肌に目を奪われ、相手の女性はこちらに気づき、顔を真っ赤にして叫んだ。
「ハリケーンブラストォ!!」
部屋に入って約5秒、体を引き裂かれるような暴風に部屋から追い出され、勢いそのまま後頭部を廊下の壁に強かに打ち付けた。
「いってぇ……何でこんなベタなラッキーが起こるんだよ。」
痛む頭をさすりながら今度は固く閉じられた部屋の扉をノックする。すると今度は聞き覚えのある声で「どうぞ?」と言う声がした。
「先程はいきなり御免なさい。怪我してない?凄い音がしたけど……」
始めてきた時にクレアさんが座っていた椅子には別の女性が座っていた。そしてその女性は先程一緒に戦ったーー
「ロゼ会長!?何故貴方がここに!?」
そう、生徒会長であるロゼ・イノセンティアさんだった。
気づけば先程とは違って部屋の中がやけに片付けられており、会長も服が制服から私服であろうワンピースに変わっている。
「理由はこれよ。」
手渡されたのは1枚の紙、そこに書かれていたのは校長の署名と……
「『ロゼ・イノセンティアをマコトのパートナーとして認める』えっ!?本気ですか!?」
「あっ……やっぱり嫌だった?そうだよね、私みたいな女の子がパートナーだと…嫌だよね。」
「えっ!?いやいや!全然!むしろこちらからお願いしますですよ!けど…ほら俺、危うく人殺しそうになっちゃたから、清廉潔白な会長には釣り合わない気がして」
会長は優秀だってことはこの間の戦いで分かったことだし、問題を起こした俺よりかはもっといい奴らがいるんじゃないかな……
「そんなことない!」
しかし、彼女はそんな俺の考えを否定した。
「マコト君は策に嵌められた私を助けてくれたじゃない!誰1人として動かなかったあの状況に救いの手を差し伸べてくれたじゃない!私はそんな貴方だからパートナーを組みたいと思ったの!」
言いきると少し、深呼吸をして穏やかな笑みを浮かべて俺のそばに歩み寄り、会長はゆっくりとだきしめてくれた。
「私は貴方に感謝してる。危うく自分の人生を滅茶苦茶にされかけたところを貴方に助けて貰った。だから今度は私が助ける番。生徒会長である私が問題を起こした留学生を更生するっていう程で貴方の力になる。だから……私とパートナーになってくれるかな?。」
会長の顔が近い。会長と同じくらいの背丈の俺はそのまま胸が顔に当たる地点で優しく抱きしめられた。
柔らかな感覚と温かな感触に気づけば俺は泣き出していた。
「俺ば……また問題を起こすかもしれません。」
「その時は私が叱ってあげるよ。」
「迷惑をかけるかもしれません!」
「そんなのお互い様だ。」
「そんな俺でよければ……これからよろしくお願いします。」
「ああ!よろしく!マコト君!」
俺は涙を流したまま顔をあげる。
彼女は白いハンカチで顔を拭ってくれた。
「ほら、男の子が泣くんじゃない!もっとシャキッとしろ!」
「は、はい!」
俺は姿勢を正して、彼女の前に立つ。
窓から差し込んだ夕日が彼女の頬を赤く染め、白の髪とのコントラストに感嘆する。
「ロゼ・イノセンティア。学園の生徒会長。能力は無視、魔法の腕は1番!けど代わりに体力は最下位。そんな私だけどこれからよろしくね!」
「カラスマ・マコト。留学生。武器は二丁拳銃。これからよろしくお願いします!」
そして俺たちは互いに硬い握手を交わした。
*
「あら?私の部屋がないわよ?」
「あっ、クレアさんお帰りなさい。」
「ごめんなさいクレアさん。今日から彼のパートナーになったからこの部屋に引っ越させてもらいました。」
握手を交わし、晩御飯でも食べようかと話していた所でクレアさんが帰ってきた。
後ろには中学生くらいの美少女が付いて来ている。
クレアさんは少し変わった部屋を隅から隅まで眺めると何のためらいもなく、俺のベッドに寝転がった。
「ちょっとクレアさん?いくら貴方でもそれは流石に失礼ですよ?自分の部屋で休みなさい。リリムも。疲れたとしても自分の研究室に帰って休みなさい。貴方研究室に仮眠用のベッドがあるでしょ?」
「お風呂、厨房も完備。」
「ならここにいる必要はないじゃない。」
「あるわよ。」
「ある」
するとクレアは俺の首に手を回し、しなだれかかる。
リリムさんと呼ばれた美少女は俺の膝に座る。
「彼はわたしと相性が1番いいのよぉ?それに生徒手帳にはわたしもパートナーとして入ってるもの。」
「嘘っ!?あっ!……本当だ」
何故だろう、先程まで慈愛の顔を浮かべていた彼女の顔が般若に見えるよ?後ろから、阿修羅像の覇気が見えるけどスタンドじゃないよね?オラオラのラッシュとか来ないよね?
「こ、この馬鹿ぁ!!私だけじゃ飽き足らず、彼女にも手を出していたの!?」
「ま、待って下さい!話し合いましょう!暴力の解決は何も生まない!復讐の連鎖を作るだけだ!」
「先に言っておくと私も彼とパートナーを交わさないといけない。」
「な、何ですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「違う!誤解だ!クレアさんはともかく!!リリムさんは俺知らない!!」
必死に弁明をし、くっついたままのクレアさんとリリムさんを無理やり離すとようやく彼女も落ち着いたらしく
「わかった、どの属性の混合魔術がいい?」
「あ、これダメなやつだ。」
右と左に光る魔力の塊を見せられて死期を悟る俺は眩い光の中で諦め、死を受け入れるために目を閉じた。
「煩い」
だが魔法を放とうとした彼女の体が急に留まる。
まるで体が石になったかのようでピクリとも動かない。
「えっ!?固まっている!?」
まさかの展開、俺の隠された力が開花したか!?と考えるくらいにはまだ余裕があるが。
「今から大事な話をする。だから彼女は邪魔。」
「リリム……さん?」
そこにいたのは眼鏡を外したリリムさんがいた。
だがまとう雰囲気はいつものものとは違う。
まるで全てが敵、世界を恨んでいるというのがひしひしと伝わってくる。
こちらを向いた彼女の目には螺旋状の模様が描かれていた。
「それ…は?」
「かつて『魔眼の王』と言われた魔王が持つ七の魔眼。そのうちの1つ、見たもの全てを石にする『地眼』」
「魔眼!?え?じゃあリリムさんは魔王!?」
「な訳ないじゃない。」
だよね〜びっくりした。
あの親父が倒したって言ってんだから倒したはずだよな〜
「以前も言った筈だけど、私は帝国を治める皇帝『魔眼の王』の娘、『魔女』リリム・ブラウ・ウィチェリー。170歳よ。」
「ダウトォォォォォォォォォ!!?!」
「声が大きい、貴方も石になりたい?」
「どうかご勘弁をリリム様。」
その場で土下座、流石にこの場で暴れたら些かまずいことになるのは俺でもわかる。
「顔をあげなさい。」
「はい。」
「誰も天井を見ろとは言ってない。私の目を見なさい。」
ちくしょう、上手く誤魔化そうと思ったが無理があった。やだよ、石化の魔眼とかゴルゴンとかと一緒じゃん。怪物やん。
「貴方、今私のこと怪物か何かだと思わなかった?」
「いいえ全く、綺麗な目ですね。」
「露骨なおだてはいらない、貴方も石にされたくないなら目を見開いて私を見なさい。」
くわっ!と擬音が周りに発生するレベルで目を見開くと彼女は俺の頬に手を添え、じっと見つめてくる。
彼女の端正な顔が視界全てを覆うまで近づくと気が済んだのか、唇に柔らかい感触を残してって……ええ!?
「キス、嫌だった?」
「突拍子がなさすぎなんですよ!今の流れでする必要ありました!?」
「大分緊張しているようだったから解そうと思って。それに契約に必要。」
「女の子がそんな気軽にしちゃいけません!」
「別に粘膜の接触じゃないの。私は貴方とするのは嫌いじゃないからしたかったらいつでも言ってね?」
「クレアさんはからかわないでくれますかね!!」
何だよこの年上の大人に翻弄される哀れな子供は…
「話に入る……ここからはしっかり聞いて。」
冷徹な螺旋の目をこちらに向けながら俺のベッドに腰掛けると彼女はある事を話し始めた。
「私が貴方のパートナーに選ばれたのは貴方も魔眼持ちだという事からきてる。」
「俺が……魔眼持ち?」
でも某忍者みたいな目はないし、某ギアスみたいな力もないよ、俺。
「貴方に宿るのは全てを見抜く真理の魔眼、天眼。相手の情報、弱点、正体、ありとあらゆるものをその目は見抜く。」
ああ……察した、つまり戦っていた時に急に相手の情報が分かったのは魔眼が目覚めたからか。
「心当たりがあるならよし。だけど今の貴方に魔眼の気配は感じられない。つまり、貴方は無意識のうちに魔眼使用を押さえている。危機的状況以外は脳への負担を減らすためにね。」
「で…魔女のリリム様は俺に宿る魔眼とやらをどうするつもりで?」
まさか目を繰り出して保存するとか言わねえだろうな……
「貴方に危害は加えない。私はそういう契約をシェンデーレ校長と結んでいる。」
「あいつが?」
って事はあの野郎、俺にそんな危ないものが宿っているのを知っててこっちの世界に呼びやがったのか。
「あの男との契約で私は貴方に魔眼の正しい使い方を教えるためと魔眼の暴走を抑えるためにパートナーに選ばれた。」
「実は魔眼持ち関連にはまた別の問題があるけれど今のあなたは気にしなくていいわぁ。」
「それに相性は悪くない。確か2番目に相性が良かった気がする。」
「2番?じゃあ1番は?」
「クレア、次が私で3番がロゼ。」
やっぱそういう感じなんだ。つまりクレアさんと別れたりしたら次はリリムさんを狙えばいいのか……
なんだろう……下手したら石にされる未来しか見えない。
「魔眼を持っている事は英雄達以外には誰にもバラしてはいけない。もしバレたりしたら…」
「たら…?」
「この国を含めた全ての国が全力で殺しにくる。」
「国からすれば魔眼持ちが生きているのは自分達が力を貸した英雄達が失態を犯したって公にしているものだからねぇ」
「バレないように死ぬ気で厳守します!」
思わず敬礼する俺の頭をポンと軽く叩くと少し笑った。
雪解けのような仄かな笑みに思わず綺麗だと思った自分がいた。
「心配いらない、初めて魔眼を持つ同士に出会った。その同士を無残に死なせないために私がいる。」
彼女はまた眼鏡をかけ直すとすっと手を前に差し出した。
「リリム・ブラウ・ウィチェリー。魔王の娘『魔女』能力は演算、世界の位相についての研究と魔眼の所在を調べてる。これから宜しく。」
「はい、これからよろしくお願いします。」
俺はまた手を差し出して硬い握手を交わす。
「じゃあお姉さんも自己紹介しておこうかしら?私は龍人 クレアシオンで年は323歳。能力は作成。年増とか言ったら問答無用で叩き潰すから宜しくね?」
「はい、お願いします。」
やっぱり、種族とかあるみたいだ。リリムさんは魔族かな?多分ロゼさんは人だよな?
水のような透き通る青い髪をした彼女は握手を交わした後、部屋から出て行った。
「……で?何を話していたの?」
「うおっ!会長さん!?復活したんですか!?」
「……復活?」
「あ、いえこちらの話です。」
あっぶねえ……危うくボロが出るとこだった。
しかし、いつかバレてしまうかもしれない。
そんな時、この人は俺の側にいてくれるだろうか。
「さて!それじゃあ生徒会長自ら、学園の規則を教えてあげるわ!付いてきなさい!」
「お願いします!」
いや、今はそんな事を気にする事はないか。
とりあえず、この生活を享受しようと俺は思うのだった。
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