先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩
ヤンデレって怖いけど裏を返せば純粋すぎるほど一途だよね。
体験したいとは思いませんが。
「いやぁ、美味しかった!」
「お粗末様です!」
相変わらず霞の料理は美味い。
道場にいた頃もたまに夕飯を作りに来てくれたり、お弁当を作ってくれたりと甲斐甲斐しかったからな。
「さてと真先輩、私は彼女達にご飯を差し入れて来るからそれまでごゆるりと寛いでくれ。」
俺が思い出に浸っているあいだに霞は女の子から御膳を2つ受け取ると器用に持ちながらその場を後にした。
「しかし、霞までこっちに来てたとはな。」
最後に会ったのはあの日以来か。
今思えば何故告白しなかったんだろうな。
「なんか変な感じがしたんだよな。」
「何がだい?マコトさん。」
「いや何でもない。にしても見事に美形揃いだな、この教会兼喫茶店は。」
やはり精霊族、地球風にいえばエルフだけあってあたりを見回すだけで顔立ちが整った子が多いこと多いこと。
そして極め付けには霞を心酔している3人の男たち。
「ここだけの話、3人とも霞………ジゼルと仲が良さそうだけどやっぱりそういう関係だったりするのか?」
「いやいや、僕たちみたいなのが彼女にそういった気持ちを抱くのがそもそも間違いだよ。どちらかといえば僕たちは聖女様に返しきれない恩返しのために働いているのさ。」
エリオスが代表として答えるが、何とまあ爽やかすぎる上に甘い声でそう言われるとこちらもなんか恥ずかしくなって来るのは何故だ。
何だよ、この少女漫画みたいな空気を作り出すこのイケメンは。
「それにーー」
「それに?」
しかし、いきなり顔を伏せた。
もしかしたらエリオスは彼女に思いを打ち明けられない理由でもあるのかもしれない。
「僕は貧乳好きなんだ!」
「俺の純情な気持ちを返せ!」
「君は馬鹿か!女性とは完成された美しさを持つべきだ。だからあの無駄な脂肪などいらない!しなやかかつ彫刻のような女性こそ至高とは思わないのか!」
「やだ、このイケメン!思考はただの男子校の高校生だった!」
明かされる衝撃の真実。
エリオスは貧乳好きだった!
どうでもええわ!
霞に思いを寄せない理由が単に性癖に合わないからかよ!
深刻そうな顔で言うんじゃねえ!
「因みに………そちらのお二人は?」
「俺は小さい子が好きだ。」
「いきなり問題発言が出たんだが!?世界が変われば刑務所行きだぞ!?」
「何言ってるんだ。小さい子は可愛いだろ。いや間違えた、小さい女の子は可愛いだろ?」
「はいアウト!語弊があったままにして欲しかったかな!」
成り行きで伺えば爆弾を掘り出してしまったようだ。
仏頂面の青年が興奮を隠さずにそんなことを言えば地球ではお巡りさん案件である。
シャルがここにいる無垢な子供たちに手を出さないか心配だ。
「最後はまともであってくれよ………同性愛とか飛び出て来たら泣くぞ。」
「うーん、おれっちはあんまり美人に食指が湧かないんだよね〜」
「ああ、なるほど。」
美人に食指がわかない。
これならまだ分かる。というか以外と普通でよかった。
もはや突っ込み疲れが起きそうだった。
「やっぱり綺麗な人よりも野性味あふれる獣がいいよね!獣人も可!」
「普通でよかったのに!そんなケモナー要素出さなくてよかったのに!!」
ウィルスはすでに好みが人ではなかった。
そこは何とか霞に矯正してもらって獣人を好きになって貰うようにしてもらおう。
だめだこのイケメン達。
性癖こじれすぎだろ、せめて俺みたいに歳上で胸が大きい………いや何でもない。
真面目で几帳面な性格の女の子が好きです!
よし話を変えるぞ!
「なあこの教会って自分たちで建てたのか?それとも誰かから譲り受けた?」
「いやどちらかといえば、奪い取ったが正しい。聞いたことはないかな?人喰を。」
*
「人喰?」
「ヘクセレイの森に住む魔獣だと言われているお伽話ねぇ。」
タイフネまで戻って来たクレアとルナールであったが彼女達は現在、WSにて遅めの朝食をとっていた。
本来ならすぐにでもマコト達を迎えに行きたかったが………
「しかしもう少し、監視はどうにかならなかったのかしらぁ?一般市民に見張らせるなんてやめてほしいわぁ。」
どうやらセルドの言葉によってタイフネの人達が彼女達が可笑しな真似をしないか見張っているらしい。
少なくとも暫くは大人しくしていないといけないようだ。
「妾的には注目されているのは嬉しいぞ!」
それでいいのか、義賊王。
そんな言葉をなんとか呑み込み、話を続ける。
「話はありきたりなものよ。人喰が子供を欲しがるけど人喰はそれを食ってしまう。味をしめた人喰はヘクセレイに住む人達を喰らおうとするが、教皇に退治される。そんなお話。」
「あの教皇がか?妾は信じられぬぞ?」
「だからお伽話だと言っているでしょう?だけどそれがお伽話じゃなさそうなのよ。」
クレアは騒ぎを駆けつけて来たアクセルやエリス達から話を聞いていたのだ。
「人喰は実際にいたらしいわ。捨てられた子供達を食らっていたとベオさんは調べ上げたらしいわね。」
アクセルの父に当たるベオはタイフネの民からも信頼されており、森に入った大人達が帰って来ない、探してくださいと頼まれて探しに入ると。
「彼は見たらしいわ。存在なんてしてはいけない悪意の塊を。」
それが拾った子供達を喰らうのを見たベオが魔法を唱えて助けようとするが
「六属性魔法が弾かれたらしいの。」
「現存する魔法を防ぐとは、魔法耐性が高いのか?」
「多分ね。」
ベオはそれをすぐに見極めると心武器を取り出して応戦するもしたが………
「だけど心武器も一種の魔法。それには通用しなかったらしいわ。更にそれの声とは呼べない悲鳴で体から自由が奪われたようね。」
「だけどベオは生きておるぞ?」
「そこからが信じられない話。悲鳴の歌唱を相殺するように美しく舞う女性を見たのよ。」
ベオの意識が奪われる寸前、見たことない、だが酷く心をうつその踊りにただ安心した。
自分は助かるのだと。
「精霊使いか?だが妾が知っているのは1人しか知らぬぞ?」
この世界に住む種族にはそれぞれに固有の力がある。
獣人なら獣の力を使えるように
龍人なら龍の力を使えるように。
魔族なら魔の力を使えるように。
精霊族なら精霊の力を使えるのだ。
精霊は豊かな自然があるならどこにだって存在する。だがそれを目視し、触れられるのは精霊族だけだ。
更に精霊達から力を借りるためには精霊達に語りかけなくてはいけない
甘美な歌で
優雅な踊りで
心震わす演奏で
言葉の交渉など不要、精霊達を楽しませるための手段を用いて代わりに力を借りるのだ。
精霊使いとはその中でも精霊達を魅了する手段を持つもの達の名だ。
「だけどその1人は現在は………ね?」
「む、あやつのせいでな。妾、嫌い。アレとは相容れん。その被害に遭った使い手は………無惨だったな。」
「ともかくその踊りに惹かれて人喰はベオさんの前から姿を消した。直ぐにヘクセレイに戻った彼は捜索隊にしては過剰、シェンデーレにお父さんを連れて森に入ったけど何も見つからなかったらしいわ。」
無事に逃げ帰ったベオはすぐにシェンデーレとドラゴーラに興味を抱かせ、連れてくると隈なく森を捜索した。
結果、大樹の下から見つかった人喰と思われる血痕から人喰が死んだ事が判明し、ひとまず安全を確保することは出来たのだ。
「それをヘクセレイには報告したのだろう?なら何故タイフネの者たちはヘクセレイに上がっておらぬのだ?教皇はこれを踏まえて危険からタイフネの民を守ろうはしなかったのか?」
「それを現教皇は習慣を破るわけにはいかないとして、しょぼい門をつけただけだから。それにそれ以来、人喰は出て来ていないから何もしていないのよ。」
「タイフネの民があんまりではないか………」
見るからにしょぼんとしているのか、へたった狐耳を見ながら朝食の残りを口に入れて、会計をすませる。
「今の話を踏まえると森に住む歌姫か舞姫がその人喰を倒したんだと思うわ。じゃなきゃ、森中死体か骨だらけだものぉ。」
「その女が編入生とやらとでも言うのか?」
「編入生は事件に巻き込まれやすい。まーくんだってそうだし、イグニスもそうだったはずよ?そこから考えればその女が聖女と呼ばれた編入生のはず。まぁ推測にしかならないけどねぇ。」
店を出た2人は周りからの隠そうともしない目線にため息を吐きながらも宿屋へと向かう。
「確かめるためにも私たちは動くわ。ルナール、力を貸しなさい。貴方の力がいるわ。」
「ここで花婿を迎えに行けば信頼度はあがるのか?」
「あがる、あがる。すっごくあがると思うわぁ。」
「なら妾に任せよ!」
「そうね、期待してるわぁ。」
見るからにやる気を出したルナールに内心ちょろいと思うクレアであった。
*
「その人喰とやらを倒したのがジゼルだって言うのか?」
「そうさ、聖女様もかつてはこの森で幼少期を過ごしたらしい。聖女様が成長した頃、森に潜む人喰の住む教会に迷い込んだんだ。」
簡略化して説明すると
人喰の住む教会にはおびただしい死体の山。
何かないかとむせ返るような血の匂いの中を捜索すると本が二冊置いてあった。
それが光魔法、風魔法の古代魔法だった。
彼女はそれを持って教会から逃げ出すと必死になってそれを覚えた。
そして完璧に使えるようになった日に人喰が英雄を襲う姿を見つけてしまったようだ。
直ぐに持ち前の舞踏で人喰の意識を集中させると以前から仕掛けていた罠にはめた。
魔法攻撃が効かないなら物理で殺せばいいじゃない。
そんな考えの元、拾って育て上げた子供達を使って用意した大樹によって押しつぶした。
死んだことを確認したジゼルだったが遺体を残しておけばまた変なことが起きると考えて、灰にして光魔法で封印を施した。
「聖女様は僕たちにもその脅威を伝え、忘れないようにしたんだ。今でも聖堂の祭壇にはそれが祀られてる。」
「それは聖女様と呼ばれて当たり前だよな。」
森に捨てられた子供達を拾い、育て上げて、更には森に住む脅威を撃破する。
まごう事なき救世主、聖女様だな。
「聖女様はそれを守る為にずっとここにいるんだ。でもおれっちはそろそろ彼女に幸せになって欲しいんだよ。」
「右に同じ。俺たちに任せてここから出ていい。いつまでもこの狭い世界にいる必要はない。」
シャルとウィルスは純粋に彼女の行く先を心配していた。やっぱりこの子達、すっごく良い子だ。
「良い奴だな、お前ら。」
「当たり前ですよ、先輩!彼らは私の自慢の子たちですから!」
話をしていたら霞が帰って来ていた。
霞はこちらに近づくと耳打ちをした。
「魔眼………ですね、あの子に渡して来ましたが良いんですよね?」
「そうか。ありがとう。俺たちの目的はこれで達成できた。」
食事を運ぶにしては長いと思ったがなるほどリリムさんから魔眼の説明を受けて、譲渡したのか。
やっぱり、今回は争わずに済んだらしい。
良かった、良かった。
「じゃあそろそろお暇するよ。ご飯、ありがとうな。」
「え!?先輩帰ってしまうのか!?まだ話し足りないことがいっぱいあるんだ!1日だけ!後、1日だけ!」
目をうるうるさせてそんなことを懇願されては断りづらい。
「お兄ちゃん帰るの!?」
「やだやだ!まだお兄ちゃんの話を聞いてない!」
「お兄ちゃんと遊ぶの!」
周りの子供達も今にも泣きそうにそう言うので俺は頭をかきながら仕方ないと笑った。
「じゃあ、1日だけお世話になるよ。」
「本当か!!なら今日は寝かせないからな!いっぱい話したい事があるんだ!」
彼女は笑った。
その笑顔は思い出よりも美しいものだった。
*
「さてと、ルナールの分身と変身を使った偽物を宿において来たわけだけど………まさか夜までなるとはねぇ。」
「仕方ないであろう?人目を盗むのは闇夜と相場が決まっておる。」
宿に到着した2人は準備を整えて、部屋に2人の偽物を放置して闇に乗じる形で森に足を踏み入れた。
「私たちなら問題はないからいいけどぉ。」
「先に言っておくが今の妾は四尾だからな?実力の半分以下であるぞ?」
「問題はないからいいわ。」
「無視か!ロゼの能力か貴様は!」
遠回しに守ってくれと言われたが遠回しに嫌だと返す2人は常闇の森を散策していく。
人の気配などは皆無、唸る魔獣の声と削るような殺気を2人はそよ風のように流していく。
魔獣達も自ら率先して近づこうとは思わないらしい。
本能で彼女達の強さを理解しているのだろう。
だから獣達は別の相手を狙った。
それに遅れながらも2人はその先の相手に気づく。
「ルナール!」
「わかっておる!」
視線の先、囲まれていたのは見覚えのある白と青の女性。
即ち、ロゼとリリムである。
互いに背中合わせとなり、魔法で魔獣達を迎撃してはいるが一向に数が減らない。
「2人とも!」
だが闇夜を切り裂く雷撃が獣達を灰燼に帰し、九の斬撃が獣達から命を刈り取る。
「クレアさん!助かりました!」
「怪我はなさそうね。まーくんは?」
合流し、無事を確かめ合う彼女達だったが肝心の相手がいない事に気づく。
その言葉にロゼは困惑を表した目で
「まーくんって誰のこと?」
*
夜飯まで休んでていいとは言われたが落ち着かないため、出歩いているのだが、
「意外とこの教会広いよな。」
子供達は雑魚寝だが大人達分には個人部屋があることを考えると中々の広さを持っているに違いない。
「霞にはロゼさん達を起こさないようにしろとは言われたけど流石に情報の共有はしておかないといけないよな。」
寝ているから起こさないようにと部屋を教えてくれなかった霞には黙って教会内を歩いていたのだが魔眼が奥の部屋から何かを感じ取った。
「魔力反応?ロゼさん達かな。」
とりあえずノックをしてみるが返事はない。
寝ているところ申し訳ないが鍵はかかってなさそうなのでゆっくり扉を開ける。
「暗いな………魔眼で周りを見とくか。」
夜だけあってろうそくなどが必要だが俺にはリリムさんから貸して貰った魔眼がある!
というわけで暗闇でも全てを見抜く魔眼発動!
今、思えば俺は迂闊だった。
彼女が俺の知り合いだったとして彼女が俺に酷い真似をしないと心の何処かで信じていた。
真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩真先輩ーー
暗闇には床、壁にびっしりと血文字で描かれた俺の名前が張り巡らされていた。
「ひっ………!」
悲鳴が声にならない。
アルフレッドやイグニスと対峙した時とは違う別の恐怖が俺の体を蝕んでいく。
「人の部屋に勝手に入るなんて先輩は悪い子だな。」
後ろからかけられた声に咄嗟に心武器の銃を突きつける。
突きつけた相手は思い出よりも美しい笑顔で俺に近づいてくる。
今はその笑顔が何より怖かった。
その目には狂気を孕んでいたから。
「駄目だろ、先輩。人にそんな危ないものを向けては。」
「やめろ!来るな!撃つぞ!」
「撃てないよ、先輩には。だって優しいですから。」
気づけば彼女は俺の内側に入り込み、優しく俺の両頬をおさえる。
口元を緩め、微笑みを浮かべてはいるがあからさまに正気ではない目力に押されてしまった。
「先輩は酷いな。長い間先輩に会わないだけで、先輩は私以外の子とパートナーになっていたんだから。真先輩には私が1番ふさわしいんだ。だって真先輩の全てを知り尽くしているのは私だけだし、あんな出会って1ヶ月そこらで惚れるような発情期の雌犬どもに比べたら私がいかに純粋で素直な思いを抱いてきたと思ってるんだ。すでに未来予想図はできてるんだぞ?先輩は私と25歳で結婚して、30までには子供を2人産むんだ。もちろん、名前もとっくに決まっているぞ?真と霞から一文字とってマカとかミコトとか。あれ?もしかして先輩が名前をつけたかったか?でしたら真先輩にも名前をつけてあげて下さい。それで大きな家を買ったら一緒に老後までそこで暮らすんだ。誰にも邪魔されずにずっとずぅーっと2人で。」
熱っぽい吐息をこぼしながら、彼女の舌が俺の頬を妖しく舐めた。
ざらつく舌先の感触を肌に味わい、俺の全身の産毛が総毛立つ。
「その為にも先輩の中から雌豚を消さないといけないな。因みに先輩は優しいから、あのブスどもの心配をすると思うので先に言っておく。彼女達は私の魔眼で洗脳を済ませた後、夜の森を帰らせた。運が良ければ生き残れるよ。さて、では先輩、もう体が動かないよな?邪眼に囚われていますから。だけど心配はいらない。痛いことは何一つありませんから、目を覚ましても私はそばに居るから。ずっとずぅーっと2人でこの世界を生きていこう?せーんぱい、愛してる。」
彼女の目から意識が離れない。
目の奥が真っ黒に染まっていく。
何とかして抜け出さないと、助けに行かないとロ………ロ、ろ?
あれ?俺は誰を助けに行くんだっけ?
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