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精霊喫茶へようこそ!

今日も二話なのでよろしくお願いします。

「ま、真先輩!?」


「………えっ?」


ルナールさんと別れた後、魔物達を退けながら森の奥を目指していた俺たちだったが、疲労に緊張が積み重なり、徐々に傷が増えていた。


ロゼさんも精神をすり減らしながら魔法を唱えてくれていたが緊迫した状況に少ない体力が底をつきたらしく、気を失ってしまい、リリムさんと2人でかばいながら森を駆け抜けていた。


そして朝日が昇る頃には森の中に1つの教会を発見した。白に塗られていた壁は所々がはげており、錆びている部分も見えるほど荒れた教会だった。


「あれが魔眼所持者がいる教会?」


「多分ね。後ろを見なさい。魔物達が追って来ないわ。」


先程まで背中を喰らう勢いで追いかけて来ていた魔物達はじりじりと後退しており、教会に近づけないようだ。


「魔眼で見たら分かりますけど結界が張られてますね、しかもかなり強めの。」


「そしてアレを見て。彼女が千里眼で見た人物。魔眼で見なさい。」


ぽっかり森に空いた太陽の光が注ぐ教会の側の井戸から水を汲み、洗濯物を洗っては干している美少女シスターを魔眼で見ると


名前 ジゼル(霧崎霞)

能力 俯瞰

所属 なし

ステータス 魔法 B 家事 S 体力 C 頭脳 C 特殊 D

パートナー なし

種族 精霊

魔眼 邪眼

追記 元バレエ経験者


「………やっぱりか。」


例え姿形が変わっても彼女の優しさは何も変わらなかったのだろう。

だから聖女と呼ばれた。


「どうしたのよ、信じてた味方が敵に寝返ったみたいな顔をして。」


「リリムさん………アレ、俺の知り合いです。」


「こちら側で?それともあちら側で?」


「あちら側です。」


「そう、関係は?」


「高校を辞めてから通っていた道場にいた後輩で、昔、好きだった女の子です。」


「貴方って面白い運命持ってるわね。」


彼女の事はよく知っている。

高校をすぐに退学した俺は友哉先輩と知り合い、彼のツテで働く場所を見つけられた。


そして体を鍛えるために友哉先輩の幼馴染が経営していた道場に通っていたのだが、そこで怪我をして病院に運び込まれた先に彼女はいた。


『……霧崎霞です。どうぞよろしくお願いします』


彼女は最初の出会いからは想像できないほど天然でドジであったがとても優しい子だった。

不慮の事故で………死んでしまったが。


「………ともかく、彼女なら俺の顔を見ればすぐに分かるはずです。ここは正面から会いに行きましょう。」


「なら、私が怪我人の振りをするわ。そこそこ怪我してるし、優しいなら喫茶店の中まで案内してくれるはず。」


「すまん、霞。騙すようで悪い。」







そして上記に至るわけだが、どうだろうか、俺の演技はいかにも『何故こいつは名前を知っているんだ!?』感が出ているだろう。


「何者だ、お前。何故俺の名前を知っている。」


「私だ!先輩!霞だ!道場の後輩だった霞だ!」


とりあえず知り合いに銃を向けるのは気が引けるが演技のためだと割り切って、彼女に銃を向ける。


「姿が全く違うじゃないか?嘘をつくな。」


「嘘ではない!霧崎霞!元バレエ国際大会優勝経験者の霞だ!」


涙目になりながらも必死に自分の情報を出していく彼女に募っていく罪悪感から胸の辺りがちょっと苦しくなってきた。


「俺たちが通っていた道場の師範代は?」


「剛田力さんだ!空手2段の!」


「……どうやら本物みたいだな。」


ごめんなさい、実は最初から本物だと思ってました。

だけど許せ、こちらにも都合というものがあるんだ。


「悪いな、霞。だがまた会えて嬉しいよ。」


「ああ、私もだ。………まあ色々あったんだが積もる話もあるから、良かったら中へ入らないか?一緒にご飯でも食べたいのだが………」


「ご厚意に感謝するよ。」


ガチで気を失っているロゼさんを背負い直し、演技中のリリムさんを肩で担ぎ直しながら俺たちは荒れた教会へと乗り込んでいく。







「おはようー聖女様!!」


「おはようなのだ!聖女様!」


「ああ、おはよう。顔を洗って来なさい。そしたら皆で朝ごはんを食べよう。」


聖堂内を抜けて普段は喫茶店として使っている食事場についた俺たちを待っていたのは5歳ぐらいの子供たち。


大人しく席についているものもいれば朝から元気に机の間を走り回っているものもいる。

そしてティフォン達と同年代の女の子達が料理を台所でつくり、男達は配膳していた。


「おはようございます。聖女様。本日はいい天気です。今日の喫茶店は僕達に任せて子供達と散歩はいかがですか?」


「たしかに今日はいい天気だ。だが気をぬくな。ヌディムバ・エアを倒した事で魔物どもが活気を増している。」


「ねえねえ!おれもついていっていい?護衛が必要だろ!!」


「ふふっ、おはよう、エリオス、シャル、ウィルス。」


赤茶色の髪に鳶色の瞳をしていて、体つきは割と筋肉質なエリオスと呼ばれた青年が爽やかな太陽のような輝く笑顔を見せる。


その隣にいるシャルと呼ばれた男は仏頂面に栗色の髪、見た目から悪人だと勘違いしてしまいそうだ。


そして、ウィルスはアッシュグレーの髪を振りながら霞にやけに懐くような振る舞いはでまるで大きい犬である。


そんな彼らに聖母のような笑顔で挨拶をすると霞は俺たちを紹介してくれた。

だがきっと彼らはイグニスの嫁に当たる部分だと考えていい、決して油断するな!


「よくぞここまで無事で。さあ早くレディ2人をベッドにまで運びましょう。」


「お前はこれを使うといい。温かなタオルだ。顔でも吹け。」


「おっ!おれは君の分の食事準備してくるね!」


油断は………禁物だ。


「貴方も無理をなさらずに椅子に座って下さい。ここは安全です。ゆっくりと力を抜いてはいかがですか?」


「温かなスープだ。焦らずにそれから胃に入れろ。」


「食事準備できたよ!さあ食べて食べて!」


「………ごめんなさい。心が汚くてごめんなさい。」


「真先輩?どこか痛いのか?泣くほどの痛みなら訴えてくれたらすぐに治すが?」


「心が痛いよう。」


めっちゃいい子だよ、この子達。

何だよ、アルフレッドやイグニスの取り巻きとは大違いじゃないか。

これも霞の教育のおかげか?


「ねえねえおじさん!」


「おじさんじゃない、お兄さんと呼んでくれ。で、どうした?」


「お兄さん、外の世界から来たんだよね!お話してよ!外には何があるの!」


「聖女様が大人になるまで外に出てはいけないっていうんだもん!私達知りたいの!」


曇なき眼でこちらを見つめる少年少女達。

まあ食事代の代わりに話してあげよう。


聖女様の一声で皆が椅子に座り、祈りを捧げる。

俺もとりあえず長いものに巻かれるように手を合わせて


「神に感謝をーー頂きます。」


随分と慣れ親しんだ挨拶を終えて食事を堪能するのだった。







「お呼びですか、教皇様。」


「うむ、ようやくだが決心がついてな。」


場所は変わり、ヘクセレイの宮殿内部の奥の間に髭を蓄えた老人とそれに跪く、壮年の男性。


(ようやくか………長かった、これでヘクセレイは変わる。もう二度と子供を捨てるような国にはならなくなる。)


彼はスミス、シルビアの父だ。

この国の枢機卿の立ち位置におり、この国の代々続いてきた悪習に心を痛めている男性である。


(枢機卿から選ばれるならセルド様はいい繕えば何とでもなる。一度承諾を取ればこちらのものだ。)


実はスミスは年老いたヘクセレイの教皇に後継者に譲ってはどうだと話していたのだ。

聞くたびに有耶無耶と誤魔化していた教皇ではあったがようやく決めてくれたらしい。


(私達の中から選ばれるなら、歴が長い私か、又はハンスになるだろう。)


たった1人授かった子供を捨てられ、絶望にひしがれた同僚との夢がもうすぐ叶う。

悲しみの中に死んでいった子供達もこれで漸く救われる。


「それではすぐに投票の準備を開始致します。教皇様、長い間ーー」


「待て待て、何を言っておる。後継者関連の話などではない。今日の会合にだす食事の話だ。」


何をトンチンカン事を言っているのだとばかりの困惑顔にいい加減、我慢も聞かなくなってきた。


この男が教皇についてからただでさえ少なかった国交がほぼ断絶しているのだ。


難民の受け入れすらせずに神の教えには背き、子供たちを下の森に捨てては泣き叫ぶ親たちへ厳しい言葉を掛ける。


「教皇様!お言葉ですが!」


「父上!すみませんが彼女らに聖罰の権利を与えて下さい!」


震源しようとした矢先に扉が音を立てて開かれ、セルドとその部下である漆黒法典達がゾロゾロと入り込んで来た。


だがおかしいのは漆黒法典達が半分以下になり、帰ってきた者達も全身が血や泥で汚れている。


「おおっ、セルドよ。どうかしたかの?」


「はい!こちらの2人が魔族に洗脳されていた為、彼女を救う為に聖罰の使用許可を!」


「セルド!何を言っている!聖罰に耐えられる人間などいない!そもそもあれは古い歴史が生み出した拷問だ!あれに救いなどない!」


「いえいえスミス、本にはアレで救われたものが何人もいました。やはり神は見ているのです。」


聖罰とは文字通りの拷問で丈夫な男なら聖なる魔力をぶつけ続け、女なら聖なる魔力を注ぎ込む事で中から浄化するのだ。


無論、現在では意味などかけらもなく、信じているものは愚者だとされているがセルドは神によって書かれたその本を未だに信じているのだ。


「神が書いたその本を最後まで読んだのか!?"ここに書かれている事は神が与えるものであり、人が与えるものではない"と!私達はそのような鬼畜の所業をしてはいけないのだ!」


「分かっていますとも。だから人にはやりません。ですが彼女達は龍と獣。純粋な人ではありません。」


とんでもない屁理屈で神の教えを曲解したセルドは2人の女を床に転がした。

その瞬間、スミスの顔から血の気が引いた。


「お会い出来て光栄です、教皇様。我が名は黄金の雷撃龍、クレア。以後お見知り置きを。」


「そして妾は義賊王ルナールであるぞ!献上するがよい!」


まだ罪なき下の国の罪人なら身内内のゴタゴタで済んだはずがよりにもよって各国に名声と悪名を知らしめた女性を呼んでくるとは誰が考えたか。


「ふむ、クレアにルナールであるか。よし、彼女達を救う為に聖罰の使用許可を………」


「お待ち下さい!教皇様!彼女達にそのような真似を、百歩譲ってルナールはともかく、クレア殿にそのような真似をすればグラマソーサリーから抗議が飛んできます!」


「妾の扱いが酷くはないか?」


「ない胸に手を当てて考えて見なさい。」


考えなしに国が傾く導火線に火を付けようとした教皇様を何とか止めに入る、スミス。


れっきとした犯罪者のルナールを裁くならともかく、英雄より英雄らしいクレアをそんな拷問にかけて仕舞えばグラマソーサリーなどが黙ってはいない。


(しかも彼女のパートナーはグラマソーサリーの救世主で英雄の息子!手を出すのは早急すぎる!まずは罪状を確認しなくては、冤罪などでは目も当てられない!)


1つ間違えただけで国が終わりそうな爆弾だらけの中でスミスだけはその危険さに気づいていた。

そして、わざわざ連れてこられた彼女達も自らの有用性を知っていたから無抵抗でここまで来たことも。


「何を言う!スミス卿よ!奴らは魔族の姫であるリリムに洗脳されているのだ!早くしなければ取り返しがつかなくなるぞ!」


「魔族の姫リリムだと………!どれだけ厄介ごとを抱え込めばいいんだ、貴方は!」


頭を抱えてうずくまりたい気持ちでもういっぱいいっぱいなスミスはストレスマッハなこの環境から逃げる為に彼女達に話を聞く事にした。


光魔法には対象者が嘘をついた場合、光の十字架が彼女を捉えるものがある為、2人相手にそれを使う。


「君たちは洗脳されているのかい?」


「そんな訳ないでしょう?彼女は私達の友達よ。」


「妾的には同じパートナーであるからな!」


「………嘘はついていないようだな。」


堂々とした言葉に魔法は反応しない。

即ちこれは彼女達の心からの言葉であり、疑う余地はないという事だ。


「だが!貴様らが嘘を真実だと思い込んでいる狂人の可能性もあるだろう!」


そしてセルドの言葉にも意味がある。

妄想を真実だと頑なに信じ込む人間にこの魔法は通用しない。


「やはり聖罰を行った方が良い!父上もそう思いますよね!」


「しかしなぁ、スミス卿が言うようにそのもの達は名が知れた者たちなのだろう?それが見当違いなら周りの国から怒りを買うことになる。」


どうしても聖罰を行った方がいいと考えるセルドに対し、聖罰を禁止するスミスの間で教皇は迷い始める。


(この男は昔から自分の意見を持たない。変化を、変わることを恐れているあまり、何もしない臆病者だ。しかし、今はそれが功を奏したか。)


スミスは教皇を忌々しく思いながらもそのおかげで間に合う、ある一手を待つ。

この場において最も信用ある言葉を持つ男を。


「随分とおかしな事をしていますね。」


そしてそれは来た。

コバルトグリーンの髪を後ろで纏めて、優しげな表情と相まって女性に見えるその男を。

ヘクセレイが誇る英雄を。


「魔導王ベオ。ここに推参しました。」





「助かりました、ベオさん。」


「うむ!感謝するぞ!」


「気にしなくていいよ。当然の事をしたまでだからね。洗脳なんて魔王の魔眼以外には出来ないからそれを信じてくれて助かったよ。」


定期報告の為に教皇の前に現れたベオは2人の言葉の正当性を主張し、教皇に彼女らは正常だと思わせる事に成功して、宮殿を出て下の街まで降りる道を歩く。


「しかし、ルナール。君が出て来ているとは僕には信じられないよ。実際、君たち2人が組んだなら漆黒法典は壊滅してたんじゃないか?」


「奴ら、タイフネの人達を人質に取ったから泣く泣く投降したんです。最悪、私たちの名前を聞けば何とかなるかなぁって思いまして。」


「妾はクレアが捕まったと聞いて作戦か何かかと思ったのだ!」


その作戦も実際はかなり危なかったので2人は最後の手段として暴れて英雄を呼ぼうと思った矢先にベオさんが来てくれたおかげで助かったわけだ。


「しかしルナール。君ならあの場に来ただけでセルドの首を刎ねていたんじゃないか?」


「妾は無駄な殺生はしないぞ!それに今の妾は花婿のパートナーだからな!」


「丸くなったね、君も。」


かつて敵対した筈の2人だが特に確執があるわけでもなさそうなのでクレアは安心する。


「そしてクレア。君も漸く身を落ち着けたようだね。かつての君は自分を安売りしすぎだった。」


「否定はしません。ですが今の私は彼だけの騎士です。迷いはない。私は彼に尽くすのみです。」


そして面識があるクレアもベオの目線の先、自分の指にはめられた指輪を掲げて笑って答える。


「さて、着いたが今度からは気をつけてくれるかい?次はきっと庇えない。そしてセルドはまだ君たちを疑っている。彼は思い込みが激しいからね。」


ヘクセレイの神殿から下に通じる大木の移動魔法陣を起動しながら彼女達に注意をする。


「それと魔眼集めのことはシェンデーレから聞いてる。気をつけなさい、彼女を一目見た私だから言える言葉だ。」


「しかしだな、リリムから聞いた話だと武闘派には見えないらしいぞ?そなた、何を心配しておる?」


やけに深刻な顔にルナールが笑い飛ばそうとしたが冗談で済む空気ではない事を察知したらしく、割と真面目に心配の種を暴こうとする。


不穏な空気に2人は眉を寄せて、真剣な表情をする。


「彼女はとても正しく、そして慈愛に溢れた子だ。だけど、僕にはそれが騙したい何かに勘付かれないための仮面にしか見えない。恐らく素顔は正反対、利己的な愛を向ける間違った子のはずだ。」

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