覚醒する力 目覚める魔眼
あれ?
俺は……というかここどこ?
辺りが真っ暗で何も見えない。
何も聞こえない、体の感覚すらない。
あれ?俺死んだ?
…………嘘だと言ってよ、誰かぁァァァァァァァァァ!!
目を閉じても真っ暗、見開いても真っ暗、手も足も見えなければ存在を感じない。
おーい誰かいませんかぁ、誰でもいいので返事してくださーい。
「……誰だ?」
うおっ!なんかいる!
目では見えないけどなんかいる!
誰!?声からしたらめっさ怖い人っぽいけど!
「……今の我に名乗る名はない。だが別世界の者よ、ここに来た以上、お前に授けるものがある。」
え?何?
なんか凄いやつ?
こう戦ったら相手が死ぬ的な?
「お前……適応能力高いな。普通は驚くだろ、まあいいこれをやるからあの女を守ってくれ。」
差し出されたのは丸い玉……というか目玉のような気がする。
しかし、これは受け取って置くとして…あの女?一体誰のことだ?
まあでもありがとう、名前も分からぬおっさん。
「おっさんではない。そうだな……救世主と呼べ。」
*
「いっ!!」
「じっとして今、治してるから!」
目を覚ました先には赤い目が更に赤くなった会長の姿、視線をずらしてみると先には槌を肩に抱えたままパートナーとイチャつくイワンの姿が見えた。
「どうして……決闘は終わったんじゃ…」
「Aランクがフリーランク通称Fランクに余裕を見せておいて、不意打ちで勝ったなんてみっともないって観客から野次を飛ばしてくれたの。それで一時休戦。」
彼女が指差した先にいたのは群衆に紛れた茶と桃の見覚えのある2人組。
「おい立てるか!まだやれるか!?」
「身の程知らずが……飛び入り参加で負けないで欲しいですわ!!」
エルデとガルディの2人組が俺に向けて檄を飛ばしていた。
付き合いなんてほとんどないくせにここまで心配してくれるなんて……あいつらいい奴らだな。
「ごめんなさい……私のせいでこんなに痛い目に合わせてしまって……」
おでこに冷たい雫が落ちてくる。
目を動かせばそこには泣いている会長の姿があった。
「いやいや泣かないでください……悪いのは攻撃を避けられなかった自分なんですから。」
かけられていた魔法は治癒魔法なのだろう、徐々に引いていく痛みを感じながらゆっくり体を起こす。
「泣くなら勝って借金が無くなった嬉し涙を流してください。それまでは泣いちゃダメですよ。」
肋骨辺りがまだ痛むが動くことに問題はない。で、だここからどうする?どうすれば勝てる?
力?速さ?技?手数?運?
ダメだ何も足りない。
相手の能力もわからない。ちらっと見えたのは曲がるはずのない槌が曲がったように見えたこと。
「甘く見すぎてた……流石Aランク本当に強え……」
異世界きてからの洗礼としてこれは甘んじて受けよう。
正直なところ平和すぎる世界を見て舐めてたってこともある。
この一撃はそんな自分への戒めだ。
「心躍る戦いとかいらなかったな……」
実のところ1番欲しかったのは何一つ不自由なく暮らすことのできる環境。
平和な学園生活を送りたかっただけだ。
それが異世界という響に酔ったせいか平和とは程遠い事をしている。
「…勝っても負けても平穏な日々なんて無くなっちまうな。」
けれどーーここは負けられない。
首を突っ込んでしまった責任があるから。
背負ってしまったものがあるから。
「おや起きた……なんだその目は?」
「後悔しろよ?こっからが本番だ。」
イワンの表情が不思議そうなものを見るかのような顔になった。
それもそうか、あんな怪我をして立ち上がれる奴なんてよっぽどの馬鹿かあるいは怪物だ。
*
「あの眼!六芒星!……間違いない『天眼』!」
魔法陣に囲まれた範囲より離れた場所で戦況を伺っていた彼女に動揺が走る。しかし、周りの人達には立ち上がったマコトにしか目が向いていない。
「軟弱かと思ったけど……そうではなさそう。」
彼女の螺旋の瞳が見開かれたと同時にマコトの体から光が迸った。
*
武器がいる。
そう思った。ただそれだけだ。
剣、槍、拳、盾、弓、杖、何でも良かった。
ただこの勝負を勝つ為の武器が必要だった。
だがその思いが伝わったのか……
俺の右手と左手から金の魔法陣が中空に描かれた。
「マコト君!その魔法陣に手を突っ込んで!今、1番貴方が欲しい武器を!心の中で描いて!」
武器?何でもいい……けどワガママが許されるなら
「俺にはーーこいつが1番良さそうだっ!!」
光る魔法陣に手を突っ込み、その指先が触れたものを握りしめて一気に引き抜く。
それは黒と白に分かれていた。
握る部分には十字架の紋章が彩られ、片手に一つずつ持たされた。
「馬鹿な!2つの武器だと!?」
「凄い……マコト君、貴方は…一体?」
その武器はこの世界では見たことがない。
だが俺にはこれが分かる。
まさかここまで厨二っぽくなるとは思わなかったが。
「種類なんてあんま分からねえけど間違いない……拳銃か。」
多分、黒のトカレフと白のベレッタ、俺がよく行っていたシューティングゲームの拳銃だ。
もっともゲーム機は黒と白に分かれてなんかいなかったが。
「なんだ……なんなんだ君は!?」
「なんだって失礼だな……ただの留学生だよ。」
別世界から来た英雄の隠し子のな。
「ロゼさん。」
「へっ!?な、何?」
俺の後ろでしゃがんでいた彼女はまさかこの状況で声をかけられているとは思っていなかったらしく、若干声が上ずっている。
けど今から言う言葉の方がより驚くと思うのだが……
「俺と契約してパートナーになって下さい。」
「はい……はいぃぃぃぃぃぃ!?」
彼女の顔が赤くなったり、青くなったりしている。終いにはふらっと気を失いかけたので慌てて支える。
何故、こんな事を言ったかというと実はさっき、目を覚ました時から目に映る景色がおかしいのだ。
イワンを睨みつけた際には
名前 イワン
武器 槌→大槌
ランク A
アルルは
名前 アルル
能力 引力→斥力
ランク A
と彼らの頭上に見えたのだ。
そしてロゼさんには
名前 ロゼ
能力 無視
ランク F
こう見えた。
この目がなんなのかは知らないがこれは好都合とばかりに相手の情報を読み取ったのだ。
イワン・アルル
心武器 グラヴィタハンマー
効果 槌の周囲に引力を発生させ、対象を引き寄せる。
これを見た時、先程の直角に曲がった槌の謎が解けた。
そしてロゼさんの能力の効果を見た時、俺は度肝を抜かれた。
?・ロゼ
心武器 イグノーア???
効果 ありとあらゆるものを無視し、無視される。
それが例え世界の法則だろうとこの能力の保持者はそれにとらわれることはない。
何だこれ?えっ!?まじかよ……!?
ロゼ会長、無能なんて騒ぎじゃねえ!むしろ最強候補の力だろ!これ!
ってな訳で逆転の目が見えたから俺は急いで彼女の力を借りようとしたのだ。他意はない。
「ちょっ……まっ!えっ!?」
「落ち着いて下さい。今、この場を勝つには貴方の力が必要なんです。」
落ち着けて宥めようとするも完全に混乱しているようで言葉がおかしくなっている。
「本当に……私の力が必要なの?」
「貴方じゃなきゃダメなんです。」
彼らを倒す力を持っているからね。
なのになぜか彼女は怒っているのか顔が真っ赤だ。
「……わかった。私も覚悟を決めるわ……じゃあ、その……け、契約を」
「…………あああっ!?忘れてたぁァァァァァ!!」
りんごのように真っ赤にしたロゼさんは俺の意見に賛同してくれた。ここまではいい。
けど肝心の契約時のある儀式の存在を忘れてたァァァァァァァァァァァァ!!
「……皆が見てる中で恥ずかしいけど………んっ」
彼女は顎を少し、あげて目を瞑る。
所轄キス待ち態勢である。
つまり俺から行かないといけないということらしい。
無理ゲーすぎるわァァァァァァァァ!!
見なさい、周りの人達もなんかニヤニヤしてるし!馬鹿2人組に至っては俺を勇者か何かのように讃えてるし!そもそも公衆の面前でキスなんてどんな羞恥プレイだよっ!?
しないからなっ!俺はこんな観客の前では絶対にやらないからなっ!
今思えばこれはフラグでしかなかった。
そしてその時のフラグは直ぐに回収された。
「……しないのか?」
先程と同じく、彼女は女座りで目を開いて上目遣いでそう聞く。
陽の光を吸収するような美しい白髪にとろんとした緋眼、目を奪われるような桃色の唇にーー
「します。」
気がつけば無意識に唇を重ねていた。
刹那、彼女の体から自身の体を通じて拳銃に膨大な力の奔流を感じた。
「……契約はここに完了した。私のセカンド奪っといて負けたら承知しないから。」
「セカンドキスって初めて聞きました……けど負けるつもりはないです。」
手にした銃を見てみると装飾の部分に翼がつけられていた。
それを見ながら契約を交わした後の心武器の能力を確認する。
マコト・ロゼ
心武器 イグノアゲヴェーア
能力 この弾丸、また使い手はありとあらゆるものを無視出来る。それが世界の法則だろうとも。
強い(確信)
分かりやすいように言えばオームの法則を無視すれば電流が体に流れても感電死することはないし、作用反作用の法則を無視すれば高いところから落ちても死ぬことはない。
「ロゼさん……貴方最高ですよ。」
「えっ!?……そ、そんなに良かったの!?」
違います、会長、キスの感想じゃないです。
顔を赤らめないでください。唇をなぞらないで下さい。
「準備は出来たようだね?じゃあーー行くとしようか!」
「ちょっと待て!弁明の時間をくれ!」
なんかこのままだと色々まずい気がする!
「今更になって怖気づいても遅い!」
肉薄するイワン、迫る槌を前にして俺は無意識に銃口をイワンに向けて引き金を引いていた。
*
全く、いきなり武器魔法……しかもレア中のレアである銃の具現化に成功させた事については驚いたがただそれだけだ。
無能会長の能力が乗った弾など何も怖くない。
せいぜいが銃弾の存在が無視されて見失う程度だろう。
俺の心武器の能力は引力と斥力。
ありとあらゆるものを引き寄せ、拒絶するる力。
これさえあれば見えない弾が飛んでこようと槌に引き寄せ弾くことが出来る。
俺は槌の周囲に引力を発生させ、身体強化の魔法を唱えて一気に踏み込む。
あのマコトとやらが何か叫んだが無視して下から天高くかちあげようと腕に力を込めたところでーー
*
俺は目を疑った。
真っ正面から迫るイワンの動きを追えずにただ闇雲に銃の引き金を引いただけなのだがまるで事前に計算でもしていたように彼の右肩を貫いた
痛みに僅かに動きを止めたイワンの格好は地面すれすれから一気に俺の顎を狙った一撃だったために反射てきに蹴りを整った彼の顔にくれてやった。
イワンは面白いように吹き飛び、鼻から鮮血を噴射しながら地面を転がっていく。
正直に言えば今のキックはそこまで強いものじゃない。おそらく会長の能力である無視の力が働いているのだろう。
例えば慣性の法則を無視した力とかな。
おっとイワンがふらふらと立ち上がった。
鼻から出た血を見ては不思議そうな顔をしていたが急に顔色を変えるとこちらに槌を剥けた。
「くそっ!なぜ引き寄せられない!?なんなんだ、お前!一体なんなんだよ!?」
パニックを起こしている彼に向けて銃を向ける。
イワンはそれを見て鼻の血を拭うと加速、俺の懐に潜り込み、渾身の力がかかった槌が上から襲ってくる。
「こんな単調な攻撃、カウンター合わせやすいわ!」
俺は振り下ろした一撃に合わせるように右手の銃を持ちかえ、取っ手の部分で彼の鼻っ柱を狙う。
鈍い音ともに出た鼻血を垂らしながら闇雲に武器を振り回すがマコトには全て見えている。
(筋肉の動き、呼吸の深さ、目の向き、これらから相手の攻撃、防御が見抜ける。なんなんだよ、この目は……)
*
(本当になんなんだ!!こいつは一体!)
先程の攻撃が体に当たった時からすでにイワンは冷静ではなかった。
圧倒的な力を持ってマコトを倒そうとしたイワン。
だが攻撃を食らったのはイワンの方であった。
引力によって攻撃を別の方向に向けられる彼は攻撃を受けたという『ありえない事実』に驚愕する。
(違う……あいつが強いんじゃない。俺が間違えただけだ。倒す事に意識がありすぎて槌への能力がおろそかだっただけだ!)
すぐさま格下に地面を転がされた汚点を消そうと引力を使って引き寄せようとするがそれすらも効かない。
徐々に膨れ上がるマコトへの得体の知れなさに歯ぎしりをしながら、強化魔法で体を強化し、更には引力を体全体に付与して向けられた銃口から逃れるように槌を振るう。
「こんな単調な攻撃、カウンター合わせやすいわ!」
が!たしかに身にまとったはずの引力を''無視''して顔面への一撃を食らうのだった。
その後も目の前の脅威を1秒でも早く、倒そうと武器を振るうが全てが紙一重で回避される。
(引力が効かないなら!)
槌への能力を変換、全てを弾き飛ばす斥力を槌纏わせてアルルに視線を向ける。
彼女はすぐにやりたいことを察したようで短く詠唱を始めた。
「ストーンスクエア!」
それと同時に地面が盛り上がり、幅2メートル、長さ5メートル、高さ3メートルほどの土の塊が出来ていく。
「喰らえっ!」
槌を土の塊に向けて振るうとふわりと浮かび上がった岩の塊はマコトへと飛んでいく。
だが空気を弾くように進む岩の弾丸を前にしても彼はまるで岩の砲弾が来る場所を見抜いているようにこちらに迫る。
「アルル!もっとだ!もっと岩を!アルル!」
向かって来る男から目を逸らすように返事がないアルルへと向く。
「んーっ!んーっ!」
「悪いけどイワン。貴方の彼女の口は封じさせて貰ったわ。これなら、詠唱なんて出来ないでしょ?」
そこには口に魔法によって生まれた泥の塊をつけて悶えるアルルと勝ち誇るようにアルルの肩に手をかけていたロゼの姿であった。
「貴様ぁ!!」
「私に怒鳴ってる暇なんてないんじゃない?よそ見してると危ないわよ?」
彼女の指差す先をとっさに向いた先には白に輝く銃で殴りかかる留学生の姿。
既に余裕など消え去り、焦燥に駆られたまま触れさえすれば体の臓器や骨を弾き飛ばし、直ぐに決着をつけられる槌を横薙ぎに振るうが……当たらない。
目の前の男はこちらが振り回す槌の合間を縫いながらこちらへと的確にダメージを重ねていく。
「うおりゃぁぁぁァァァ!!」
もうヤケクソじみた声を上げながら上から振り下ろした槌を横にかわされ、その場で回転した勢いの裏拳がイワンのこめかみにヒットする。
「俺からすれば貴族なんざどうでもいいんだよ……ただお前は俺の恩人を馬鹿にした報いだけは受けてもらうぞ!!」
今までのダメージに先程の一撃で無様に体を晒したイワンへマコトは両手にある銃を向ける。
「ゲームオーバーだ、約束は守れよ?」
そしてマコトはイワンの体にありったけの弾丸を打ち込んだのだった。
*
「体の動きは未熟ねぇ。けどお姉さんのパートナーにしては及第点かしら?」
クレアは遠巻きに戦いを眺めながらそんな言葉を漏らした。
(しかし、校長に指示されていたから黙って見ていたけれど、最近この手の輩が増えて来たわねぇ)
クレアは胸元に挟んであった手紙を色気たっぷりに取り出す。周りの男子たちは女子にしばかれた。
「でも最初から強すぎるのを鍛えるなんてお姉さん飽きちゃうし、なるべく長く出来るように弱い方がいいからねえ。」
妖艶に笑うクレアの色気に何人かの男がやられ、パートナーの方に制裁を受けている。
「容姿は私好みだし、性格も優しい。ふふふ、俄然興味が湧いてきたわぁ。」
舌舐めずりする姿はまるで獰猛な肉食獣のようであった。
*
「森羅万象全てを見抜き、情報を手に取る魔眼それが天眼。戦闘時にしか発動しないところから日常では負担を避けるために無意識に押さえこんでいるのね。」
マコトの目に描かれた星の証を確認して、眼鏡……魔眼封じをかけ直した彼女はその場を移動して彼を迎えに行く。
「なんとしても契約をさせないと……」
だが彼女の歩みは観客から上がった悲鳴によって止められる。
*
「なんでですの!?傷口が塞がらない!?治癒魔法陣はちゃんと起動したのに!?」
勝利の美酒に酔いしれていた俺に劈くような悲鳴が聞こえた。見れば銃弾をぶち込んだイワンの体から傷が消えていない。
「どきなさい、アルル!」
会長がすぐに治癒魔法を施すが……まるで雲を掴むみたいに手応えがないことに顔が恐怖の色に染まる。
「まさか……オイッ!マコト!今すぐ武器をしまえ!」
怪訝な顔をしていた俺にエルデが叫ぶ。
その鬼気迫る表情に俺はあたふたしながら開いた魔法陣の中に武器をしまい込んだ。
「やった!ようやく治癒魔法がかかり始めた!」
するとほぼ同時に治癒魔法が作動し始めたようでみるみるうちに体から傷が消えて行く。
「誰か!教師を呼んできてください!血を流しすぎています!このままだと彼の命が危ない!」
傷は消えたが顔色は青を超えて真っ白だ。
周りが悲鳴をあげたり、戸惑う姿からこれが決闘に関して当たり前に起きる事態じゃないらしい。
「……随分とやらかしたわね。まーくん?」
「まーくんって俺のこと!?っていうか、クレアさん!一体何が!?」
慌てて連れてこられた教師達がイワンの悲惨な状況に息を呑み、すぐにどこかに運ばれていった。
「貴方が1番悪いって訳じゃない。むしろ1番の理由は彼女よ」
クレアさんが指差した先には先生に事情聴取されている会長の姿。
「貴方の放った鉄の玉がイワンの体に残り、そこを媒介にして彼女の無視が発動した。そのせいで治癒魔法を無視し続け、傷が回復しないという事態を起こしたのよ。」
「それじゃあ……俺は危うく人殺しを?」
「現場だけ見ればね。多分……来たみたいね。校長からよ。」
ふと上をみるとよく見た黒い穴から1枚の手紙が落ちて来た。
俺はその手紙を開けると中にはこう書かれていた。
「今回の事態について説明せよ。偽証などがあった場合は元の世界に送り返してもらう。」
「あらかなりご立腹のようね。それなら早めに行きましょう。校長室まで案内してあげる。」
俺はその手紙を読んでからの記憶があまりない。
自分がやらかしてしまったことやまたあんな世界に送り返されるかもしれない恐怖から無心になってしまっていたのだ。
そして気づいたら俺は校長室の扉の前で突っ立ていたのだった。