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想像は妄想へ

「………何かが可笑しいな。そなた何を企んでおるのだ?」


ルナールは吹き飛ばされたマコトを追うよりも目の前の障害を片付けることにしていた。

それを知っていたのか、魔導騎士を身につけたターユは城の座敷へルナールを追い込んだ。


彼女の魔導騎士は黄色の装甲にパイルバンカー、ロケットパンチに鉄球やドリルなど男のロマンを抽出した物になっている。


『パイルバンカーとドリルは男のロマンだ』


作った本人はこんな事を言っていたそうな。


更にターユは人の身でありながらクレアと同じ龍闘流法の免許皆伝者であり、彼女本人の格闘技術と相まって


「………ゴホッ!な、なんなのよ………獣風情が!!」


7人の中でも上位の強さに入る!


「妾を誰だと思っておるのだ?ざっと800年、生きてきた年季が違うのだ。」


だがルナールはそれすら上回る!


半壊した魔導騎士を囲うのは無数の星。

正確には星型のアーティファクトだ。


対象者を設定すれば自動的に攻撃するビットのようなものであり、デカイ図体の魔導騎士をつけたターユはいい的であった。


路傍の石ころを眺める様な彼女の目に憤りを感じ、ターユは壊れかけの魔導騎士を無理に動かし、突貫する。


捨て身の一撃とばかりにビットから放たれる魔力弾を受けても怯むことはない。

だがルナールの目からは既に興味は失せていた。


「実力の差がわからぬとは、そなたそこまでして死にたいのか?」


ルナールは9本の尾を挑発する様に揺らしながら、無造作に手を開いた。

そこには小さな銀の鍵が握られており、それを空中に突き刺し、回す。


「妾は義賊王と名乗ってはいるがその本質はただの盗賊だ。ありとあらゆるところから奪ったアーティファクトを妾は持つ。」


小さな音を立てて空間が割れた。

そこから取り出されたのは2メートルを超える一本の大太刀。

ただ峰も柄も純白で出来ていた。


「妾が使うアーティファクトは妾と同時期に生まれた男の作品。彼奴は愉快な酒呑み仲間であった。最近めっきり会わなくなったが元気であろうか。」


彼女は700年程前、自分がコンジュレイの前身の国の守り神だった時代を思い返しながら刀についた埃を払うかのように動かす。


だがそれだけで畳は切れ、浅い斬撃がターユの突進を押しとどめる。


「この刀はアーティファクト、効用は『斬りたいものを斬る』それに尽きる。」


先程の鍵はその酒呑み仲間から飲み勝負で勝ってから得たもの。

今の時代に作られているちゃちなものではない。

遥か昔から現存する歴史ある物。


彼女は飲み仲間が酔った拍子に世界中に隠した下らないアーティファクトの半分以上を盗み自分のものとしたのだ。


「そして妾は盗賊であるがゆえに戦いはあまり好まぬ。まぁ、だからといって弱いわけでもないぞ?」


生き続けて800年、退屈は人を殺す。

生まれた時から九尾の狐で怪物だった彼女も例外なく。


暇だった。それに尽きた。

守り神として持て囃されるのも一年で飽きた。

盗みを働き、国中をまわるのも十年で飽きた。

砂漠の大監獄で罪を償うのにも百年で飽きた。


故に彼女は自分の能力を磨く事にした。

人が短い中で武術の真髄にたどり着くなら自分は何処までいけるのか気になったのだ。


ありとあらゆる武術を目で盗み、動きを模倣し、そこから自身にあったやり方に変えていく。


そしておよそ800年、彼女は能力の限界にたどり着いた。

また暇になったがその時にはマコトを婿にする約束があったので頑張って生きてきた。


「暇を持て余した妾の力、とくと受けてみよ。」


構えもへったくれもない無防備な状態にターユは牽制のロケットパンチを射出する。


「白面金毛九尾の構え」


彼女の鍛え上げた先には1つの武技が残った。

無数に上る武術をまとめ、無理矢理に作り上げた。

そんな彼女に龍闘流法のような数多の型はない。


だがこの武技は例えどんな武器、いや武器でなくともどんなものでも放てるという利点にある。


そこらに転がった石ころでも

朽ちた木の枝でも


彼女が握り、振るえばそれは人を殺すモノとなる。


義賊王ルナール

星々の如き無数のアーティファクトを扱うアーティファクト使い、かつ自分の才能を最後まで開花させた女狐。


その彼女が目前に迫る腕を避け、


振り上げられるパイルバンカーを前にして


踏み込まれる右足へ左足で領域に踏み込み、


狙うは九点、全弾急所狙い。


「殲滅九重一狐に非ず」


空間を穿つ一撃を空間を裂く九撃で迎えうつ!


斬りたいものを斬るだけの刀は装甲を無視し、彼女の生身の肉体へと潜行し、ルナールが残心する頃には魔導騎士は膝をつき、動きを止めた機体からは赤い液体が流れ出していた。


「ふふん、久々に振るってみたが衰えてはおらぬようだな。」


無駄な破壊をせずに確実に対象だけを破壊した彼女はその場を後にし、屋根伝いに上に上がろうとする。


「ルナールさん!逃げろ!」


「どうしたのだ?」


だが慌てふためく彼の顔が見え、刹那、火山の方から旋風を伴った神の槍が迫って来ていた。







全く割に合わないな。

あっちは健全な状態でこっちは手負い。


「だけど負けてはやらない。」


「やってみなさいよ。」


痛みを無視し、動きに支障が出ないようにして俺は彼女の眼前から消えた。


ルナールさんの移動で背後から仕掛けるが流石はクレアさんの妹、容易く避けられカウンターを受けた。


「………アーティファクトを身につけているのね?」


「魔法が使えない落ちこぼれなもんでね!」


燃え移った拳を彼女自身の炎魔法で塗りつぶすと瞬時に攻撃を重ねてくる。


だがこっちも負けていられない。

足元に弾丸1発撃ち込んで彼女の顎へヒットするように柱を建造する。


無論、それだけじゃ頑強な龍の鱗には微量なダメージしか入らないから更に彼女の軸足を払うように無視の力を使う。


「ぐっ………」


少しくぐもった声から無視の力なら通じることがわかったのでまた移動に切り替え、距離を取り、作成に切り替え、足元に弾丸を撃つ。


「作成」


作り出したのは鎖、だが彼女は木製だと分かると片手間に破壊しながらそのまま真っ直ぐに向かって来る。


だがそれでいい。

鎖を作り出したのは彼女の進路を限定する為、それを1つに絞って仕舞えばあとはこの目で読み切れる。


俺の顔面へと差し出された雷の右ストレートに被せるように右腕が交差し、彼女の顎を炎の拳が的確に貫いた。


「しまっ………!」


「悪いが時間は掛けてられないんだ。」


たたらを踏んだ彼女へ狙いを手足に定めて撃ち抜いていく。

糸の切れたマリオネットのように揺れ、そのまま業火の上段蹴りで彼女を地面に薙ぎ倒した、


「答えろ、フィリア。何を知ってるんだ。」


「答えたくないわ。」


「じゃあ何でイグニスに協力したんだ。」


「アルフレッドを助けてもらうために決まってるじゃない。彼らの想像の力ならアルフレッドを助けられるからよ。」


銃を頭に向けて聞き出そうとするが中々に口が固い。

流石は龍人といったところか、血溜まりが出来るほどの怪我を負っているのに精神は屈しないとは。


だがそうも言ってられない、時間稼ぎと言うことは何かが水面下で進行しているということなのだから。


「隠していることを答えろ、殺されたいのか?」


「貴方が、殺し?あはははっ!笑える話だね!」


見抜かれてんな、なら仕方ない。

さっき撃ち込んだ弾丸はまだ彼女の中に1発残ってる。

ちょっと俺に都合よく動いてもらうか。


「マーフィーの法則無視発動。」


俺の体から魔力がごっそり持って行かれる。

やっぱりきついな、魔眼もあるし、これで最後か。


「お前はアルフレッドに会いたいだけだろ?なら取引だ。」


「なによ、私と取引したところで………」


「義賊王ルナールの力を使えばきっと会いに行ける。」


嘘です。

ルナールさんが砂漠の大監獄の場所を知っているのは聞いたがいくら彼女でもフィリアを連れてのこのこ行ったら捕まるに決まってる。


「それ………本当?」


だが今のフィリアは俺に都合よく動いて貰っている。

こんなアラだらけの交渉で普通は動かないだろう。


「約束するよ。」


「本当っ!やった!」


「その代わり、話してくれ。」


フィリアはアルフレッドに会えるのがよほど嬉しいのか、素直に話し始めてくれたが、話を途中まで聞いた俺は背筋に走る悪寒を感じ、魔眼でその正体を見抜いた。


「なんだよ………アレ!」


砕けた壁の外から見えたのはおそらく魔導騎士。


全身に水晶の装甲をまとい、透明なその部分にいくつかの金色のラインが走る。

大きさはゴジラくらいと言ってくれれば理解できるだろうか。


背中には折り畳まれた翼のようなものがあるが、あれは装備であって翼ではなさそうだ。

 

左右の腰に幅広の刀を装備し、盾はない。

頭部の角は二本後ろへと伸びていて、肩も突き出すような鋭角さを持っていた。


そしてその手に持つのは巨大な槍。

神々の武器を表すかのような力強さを感じるとともに裸眼で見えるほど濃密な魔力が集まっていく。


俺はフィリアの首根っこをつかみ、砕けた壁の外から下を覗くとちょうどルナールさんが見上げていた。


「ルナールさん!逃げろ!」


「どうしたのだ?」


だが時すでに遅し、槍投げ選手の如く綺麗な放射状の軌跡を描き、こちらへ向けて迫ってきていた。








「イグニス………」


「わかってる、ターユが死んだんだね。」


マイアは泣きそうな顔でそう告げてくれた。

僕は黙って彼女を抱きしめる。


「やっぱり彼らは悪だ。僕たちは間違っていない。この国を壊さなきゃ。」


僕たちは最初からあの宣告通りにするつもりなんてなかった。


僕が考えた作戦はこうだ。

まず国を滅ぼす。

こう聞くと僕が悪いやつみたいだけどやられたからやり返しているだけだ。

僕は悪くない。


次に王族継承権を譲り受ける。

そこはマイアの古代魔法でブラッドを洗脳し、受け継ぐつもりだった。


最後に新たな国を作り上げる。

ガルディを嫁にすれば幾ら何でも周りの国も認めざるを得ないだろう。


そして邪魔な王族を始末した後、僕は新たな国を作り、間違いを正すために動くつもりだ。


だが全ては消え、残されたのは自分たちだけ。


「皆んなを呼んでくれ。行こう、最終決戦だ。」


「はい!イグニス!」


僕は魔導騎士に乗り込む。

そして次々に皆がこの巨大な魔導騎士に乗り込んでいく。


そこにターユの姿はない。

胸が張り裂けそうな悲しみに必死に耐えているとメロが声を上げた。


「例えどれだけ不条理に満ちていようと!」


続いてステロペが叫ぶ。


「私たちは前に進む!」


ここまで来たら誰だって分かる。


皆が同じ気持ちなのだ。

僕と同じ奴らを許せないのだ。


「どれだけ悪が阻もうと!」


ケライノも喉を鳴らす。


「遺した思いがボクらを守る!」


アルキュも泣きながら言う。


「拙者達は一心同体!」


エレクトの声は震えていた。


「同じ方向に進む仲間達!」


マイアは覚悟を決めていた。


「俺をーーいや」


そうだ、今までのことを思い返せ。

いつだって辛すぎて笑っていた。

楽しすぎて泣いていた。

僕らの旅路は輝いていた。


いつのまにか僕にはこんなに信頼できる仲間達がいたようだ。

友哉に見せてやりたい。今の僕を。


今の僕たちならーー


「「「「「「「俺たちを舐めんじゃねえ!!」」」」」」」


ーーどこへだって飛んでいける!


火山の麓に転移、そして魔導騎士を発進をさせる。

手には神槍グングニルを持ち、里へ向ける。


「「「「「「魔力増大!空間領域固定!全承認オールクリア!!」」」」」」


「行くぞ!皆!聖槍シャイニングジャベリン!!」


この槍は僕たちの翼だ!


空間が圧縮するような妙な音がした。

地面が不気味に陥没し、魔導騎士の足を飲み込んでいく。


ブーストに火がついた瞬間の戦闘機を爆音を至近距離で聞いたような、 鼓膜を容赦なく突き破らんとする音が炸裂する。


全ての光景を置き去りにして僕らの思いを、亡きターユの想いを全て乗せたその光は里へ着弾した。


そしてそこから魔力放出が始まり………始まらない?


「イグニス!アレを見て!」


マイアの焦った声に僕もその先を見つめる。


そこには槍から放たれる光を反射したかのように太陽の輝きを見せる1匹の龍。


全長は10メートルを超えるだろう。

聖なる白金の鱗に縦に割かれた龍の目からは心臓を握りつぶさんばかりの獰猛さを感じ取れる。


そんな龍が止めているのだ。

僕たち全員の魔力が込められた槍を。


唖然とするしかない。

愕然とするしかない。

呆然とするしかない。


「ようやく俺様の血が滾る奴が出て来たな!」


「あの声はドラゴーラ!?」


ドラゴーラ、確かこの国の英雄だった筈だ。

国の防衛に非協力的な態度から僕たちはあまり注意を払っていなかったのだ。


(実を言えばドラゴーラがやる気を出したのはイグニス達の魔導騎士の強さに興味が湧いたからであり、この作戦でなかったらドラゴーラは国を見捨てるつもりだった。)


「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」


大気を震わし、地面を捲りあげる咆哮で自分を鼓舞しているのか、徐々に槍の勢いが小さくなっていく。


意味がわからない。

受け止められるというのか、僕たちの全てを………君たちは台無しにするのか!!


「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


僕の悲鳴に答えてしまったかのように槍が粉砕された。

全てが消えた、泡のように。


「中々楽しめた、お礼に加減なく殺してやろう!」


ドラゴーラは特大の咆哮を上げた。


ただの雄叫び。

それだけで空間そのものが震え、音の衝撃波が発生した。


「規格外すぎる!」


並みのものであれば、それだけで肉体を粉砕されるか、耐え切ったとしても根源的な恐怖が湧き上がって発狂するかもしれない激烈な咆哮。


これが勇猛の英雄ドラゴーラか!!


あまりの衝撃波に僕たちは一瞬の硬直、そして放たれるのは世界を白く染めるような極光。


威力など計り知れない。

わかっているのは食らったら死ぬという事だけ。


「迎撃だァァァァァァァァ!!」


避けるには遅すぎる!迎え撃つしかない!

僕らの魔導騎士の胸から放たれる光線をぶつけ、相殺しようとする。


だが僕たちの切り札も徐々に霧散し、散っていく。

まるで神の裁きのようだと眼前まで迫って来たブレスに僕たちの精神は決壊した。


「ーーここまでか。」


けれどただ1人、自分の魔導騎士を呼び出すものがいた。


「メロ………何をする気だ?」


「何、借りを返すだけだ。」


魔導騎士を身につけた彼女は僕らのブレスの間に入り込むと背中から取り出した大剣にブレスをぶつける。


彼女の魔導騎士は騎士鎧を更に分厚くし、幅広の剣を持たせたものだ。

その大剣には魔力吸収できるようになっているのだが……


「諦めるなマスタァァァァ!!」


まさか僕たちを助けようとしてくれているのか?


「イグニス!マイア!脱出しろ!ステロペ!脱出用意だ!」


「任せて!」


「みんな!何を!」


すぐに止めようと操作するが強引に操作権を乗っ取られたようだ。


「ボクらは君に救われなければここにはいない。」


「だから今度は私たちが助ける番です!」


「アルキュ、ステロペ………」


だけど皆んなを捨てられる訳が………


「イグニス殿、行くでござる。イグニス殿たちが死んだらターユに怒られるでござるからな。」


「エレクトまで………」


「恨むならうちらを恨み?」


「ケライノ。」


皆が涙を流しているのがモニター越しに伝わる。

そして僕の頬を涙が伝うのも分かっていた。


「イグニス、脱出した後、私が龍となって囮で空を飛ぶわ。その間に貴方はあの場所に避難して、態勢を整えてちょうだい。」


「マイア………わかった、ありがとう。必ず後で助けに行く。」


僕は魔導騎士に備え付けられていた転移魔法により、火山地帯の秘密基地まで転送された。


僕は直ぐに敵影確認のための窓から純白のブレスに貫かれ、派手に爆発した魔導騎士を目に焼き付ける。


そして爆炎の中から龍となったマイアが飛び出したのを確認して僕は急いであの工場へ向かった。


世界を超えてたどり着いた工場には今だにこちらを睨みつけるディアンの姿。

僕はそれを見て無性に怒りが湧いて来た。


どうして僕たちがこんな目に会わなきゃいけないんだ。

僕たちは人を助けるために力を振るっていただけだ!

それが国の都合で殺されてたまるか!


僕は涙を流しながら銃をディアンに向けて構える。

あの鎖には魔力阻害が想像されているから奴は抵抗することもできない。


「これがお前たちが与えた僕たちの痛みだ!」


怒りを悲しみを乗せた僕の弾丸は音すら切り裂いて真っ直ぐに飛んで行く。





「じゃあお前たちが与えた痛みはどれくらいなんだ?」




だが空中を進んでいた弾丸は別の方向から飛んで来た弾丸に弾かれる。


飛んで来た先にいたのはひとりの青年だった。


薄暗い工場を太陽の光のように輝かせる金髪にエメラルド色の優しげな瞳。

細身の肉体は鍛えられているようで確かめるように左腕を触っている。


「どうしてここが、なんて在り来たりな言葉は言うんじゃねえぞ?」


「………僕のオールレンジか!」


「千里眼な。」


彼は心武器を現出させる。


「俺は別に正義がどうとか言うつもりはないし、自分を正義だとは思わない。だけど今回はどう見たってアンタが悪い。」


彼の瞳の形が変わる。

あれが彼の魔眼か!


「だから俺と彼女達の周りを守るために止めさせてもらうぞ。行くぞ、傭兵団長。お前の妄想はここまでだ。」










私は逃げていた。

きっと皆が私を追いかけて来るだろう。

だが古代魔法でスピードを上げた私について来られるものなど誰1人としていないはずだ。


だからーー後ろから感じられるこの圧は気のせいの筈だ!


しかし、現実は甘くはない。

私の尻尾を力強く掴まれたかと思うとそのまま地面に向けて投擲され、追撃に黄金の光が私の鱗を焼く。


私はその勢いを殺せず、地面に着弾、大きな穴を開けながら巻き上がった粉塵を尻尾で払う。


そして内蔵まで震えるような地響きを立てて黄金の龍が降り立った。


「悪いけど逃しはしないわ。」


追いかけて来ていたのはクレアシオンだった………だがクレアシオンで本当に良かった。


「馬鹿ね、貴方1人だけ?恋をして弱くなった貴方なら愛を知って強くなった私だけでどうとでもなるわ!」


互いに人型となり、ゆっくりと近づくクレアシオンに心臓が止まるほど戦慄するが私は自分に言い聞かせるようにそう答える。


だって彼女は戦いから離れ、ここ最近は平穏を享受している。

そんな牙がぬけ、爪も鈍い龍相手にイグニスの隣で戦う事が多かった私は負けるはずがない。


「ええ、そうよ。私は現役より遥かに弱くなった。」


私はそう指摘すると彼女は呆れるように頭をかき、私の指摘に同意した。


「確かに私は戦いから離れた。肉体だって全盛期には及ばないし、戦闘におけるカンも戻ってない。そして恋をして甘くなったのもまた事実。」


だがそこから彼女の雰囲気が変わった。

全てを破壊するような強者の圧が私を押しつぶす。


「だけどね、私が弱くなって、貴方が強くなったところで絶対的な差があることに変わりはないわ。」


ただの踏み込みで私を襲う弾幕の雷撃、目に見える範囲全てを襲われ、逃げ場全てを潰された私の腹に接近したクレアの拳が突き刺さった。


「来なさい、本ばっかり読んでる貧弱娘。私と貴方の格の違いを教えてあげるわ。」


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