表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/182

動き出す者達

今日からしばらく連続で投稿しますのでどうぞよろしくお願いします。

「退屈だな………」


「馬鹿言うなよ、リリ副団長に言われるぞ。気が抜けてるって。」


グラマソーサリーの里の門番達は暖かな日差しに大欠伸をかましながらそんなことをぼやく。


何しろ、まともな危機などここ最近訪れた事はないし、英雄の中でも最強と噂されるドラゴーラがいる国を襲う馬鹿はいないだろう。


騎士団のニック団長は何も言わないだろうがリリ副団長の方が口煩いと2人は他愛ない会話をする。


「そういや今日、お前娘さんの誕生日じゃなかったか?こんだけ暇ならさっさと帰って娘さんと遊んでやれ。」


「良いのか!?」


「どうせもうすぐ夜勤の終了だ。たかだか後、1時間なら俺1人で何とかなる。こちとら独り身で帰りを待つ人なんていないしな。ほれ、上がった上がった。」


「ありがとよ!今度酒、奢るぜ!」


門番の1人が走り去って行くのを見送りながら独り身の門番は武器の素振りなどしながら敵影などない地平線をぼんやりと眺める。


「ご苦労、そろそろ上がりじゃないか?」


「あっ!メロさん!どうも、こんにちは!何故こんな所に?」


そんな彼に近づいてきたのは黒の鎧に身を包み、彼女の愛刀『桜吹雪』を腰に携えたメロの姿。


「うん?私の敵がいるからここに来たのだ。」


「何ですって!?なら直ぐにディアン様に御報告を!」


彼が駆け出したその時、彼の世界はひっくり返った。

そして彼は目撃する。自身の頭がない体が噴水のように血をまき散らし、地に伏した光景を。


自分が首を刎ねられたことを。


「報告はいらない。何故なら君が私の敵だったからだ。」


血に濡れた刀を払い、鞘にしまいなおすと懐からラインを取り出す。


「ああ、マスターか?こちらは今からやる所だ。他の皆んなも配置についたか?なら行動開始と行こうじゃないか。」


そして彼女の背後に現れる無数の魔導騎士。

これら全てがイグニスによって作られた生きた兵器。

それが里を包囲するように展開する。


そして門の前に彼女は1人構えて立つのだった。









朝食を食べ終えた俺たちはお土産などを見て回っていた。

そこでロゼさんがグラマソーサリーでしか売られていない囲碁のようなものを欲しがっていたので買ってあげたり、リリムさんにみたらし団子を奢ったり、ルナールさんがはしゃぐのを抑えたりしていた。


そして今、俺は皆をクレアさんに任せてディアン様お墨付きの宝石加工場から品を受け取っていた。


そう、採掘場で入手した宝石達だ。

それら全て、別々のアクセサリーにした方がいいと思ったがエルデや加工場のおっさんにパートナーになら指輪がいいと説得されたので全部指輪にした。


銀で出来た指輪には小さな台座があり、そこに彼女達の髪色に合わせた宝石を埋め込んで貰った。

だが緑の指輪は余ってしまったので保存しておこう。


そして俺の指にはまっているのは彼女達にあげる指輪と同じデザインの指輪。

しかし、素材は神竜の紅玉を使っている。


加工場のおっちゃんに見せたら同じように指輪にしてくれた。

炎魔法が放てるアーティファクトになっているらしいが魔眼で見た限り、別の代物になってしまっている。


名前 神竜の指輪

効果 所持しているものに追加属性として炎が追加される。


どうやら付けている限り、俺の肉体と心武器に炎属性が付加されたらしい。

中の下くらいの魔力はあるが適正がないため魔法は一切使えない俺にはぴったりである。


皆が喜んでくれると良いなと思いながら皆が餡蜜もどきを食べている場所へと歩いていく。


だが俺の足はそこで止まる。

指輪入りの袋を懐にしまい、一気に走り出すと後ろからほぼ同時に駆ける音がする。


つけられていたらしい。


曲がり角を曲がってカウンターを合わせるように角を曲がって来た奴に炎属性の拳を叩き込むが受け止められた。


「あっつ!?馬鹿!俺だ!エルデだ!」


「は?何でお前、こんなとこいんだ!?城にガルディと一緒じゃなかったのか!?」


「そこだよ!問題は!城が制圧された!」


「制圧だって?」


火傷した手を振りながらただならぬ声色のエルデに俺は話を伺う。


「俺はお前より一足先に指輪を貰っていてな、取り寄せもできたが手渡しで渡してやりたかったからわざわざここまで来たんだ。一応、人形を残してな。」


「それで人形がやられたのか?」


「ああ………ちょうど覗きに使っていた写生機を人形につけてたから光景は俺がかけてた眼鏡を通じて見てたんだ。犯人達はプレイアデス傭兵団の野郎達だ。」


「あいつら国を出たんじゃなかったのか!?」


「知るか!それよりもやべえ!ガルディとディアン様がまだ城内だし、更にガルムから厄介な連絡が来やがった。」


「ガルム?そういえば新歓旅行中は見かけなかったな。」


「俺が条件付きで休暇を与えてたんだよ。で、あいつには覗きのために試作の写生機を持たせてたんだ、見ろよ、今眼鏡作ってやる。」


エルデに渡された眼鏡を装着すると光景が変わり、赤色に輝く魔導騎士の集団が里を囲っていた。


画面左端にはエルデがつけくわえたのか、カウンターまでついている。

その数9800…信じられない思いであった。


『僕はどうすればいいんだ!エルデ!?』


「お前はそのまま見つからないように観察してろ!」


『了解した!』


ガルムとの会話をエルデに任せ、眼鏡を懐にしまう。夢であってほしいがそうはいかない。これは現実で絶賛、ピンチなんだから。


「十中八九、魔導騎士はイグニスのパートナー、マイアの想像によるものだ。」


そうでもしなきゃ何もない虚空からいきなり現れでもしない限り、ここまで誰の目にも触れずに侵攻してこれるはずがない。


しかも中世的な甲冑の騎士団はそれぞれ刀剣のみならず、銃器などの近代兵器まで携えている。


世界観ぶち壊すなよ、イグニス!


奴らの足並みは軍勢である事を差し引いても一糸乱れず、統率された操り人形、頭を潰しても撤退はない。助かるには全て破壊するしかない。


「とにかくエルデ、クレアさんのところに行くぞ。あと、親父の所に。指示を仰ごう。」


「おうよ!その為にお前を追いかけて来たんだからな!」


俺は昨夜、ルナールさんと契約した事による能力『移動』。

これもやはりチート能力であった。


能力を簡潔に言えば()()()()()()()()()()()


つまり異世界ものによくある転移能力という事だ。

この点に関しては父に感謝すべきか?


とにかく銃さえ持っていれば頭に浮かべた光景へ移動できる力を使って、俺たちは皆の元に飛ぶのだった。







「………ここは?」


ガルディは目を覚ました。

あたりを見回せば見たことない建造法をされた内装。窓らしき部分には防火用なのか、逃走防止なのか、鉄格子が嵌められている。


「そうですわ!お父様!ご無事ですか!?」


鎖が擦り合うような音とともに自分の右腕がパイプを通して鎖で縛られているのを確認すると雷撃の手刀で鎖を断ち切る。


「我が雷よ、這え。『地を這う白雷(ダウンドンナー)』」


彼女は片手を地面につけると自身の体を伝わる白雷が片手を通じて床を、壁を張っていく。

そこから彼女は僅かな手掛かりを集めて把握する。


(二階建ての建物ですわね。訳の分からないものが多すぎて詳しくは把握できませんわ。)


それもそのはず、この建物は街の郊外、山の奥に数年前不景気の煽りで潰れた大きな工場なのだから。


結構有名な場所で、前の市長が大々的に誘致したまでは良かったが工場の建設途中で誘致した工場の取引先が倒産してしまい、その煽りを受けて誘致した企業まで倒産してしまったのだった。

 

普通ならばその施設は土地ごと競売にかけられるのだけれど、誘致に伴なう土地の売買や“自称”地権者の怪しい人物にまつわる市長の不正が発覚し、その問題が片付くまでそのまま放置されている場所だ。


地元の人間ならば誰でも知っている。

そして、その立地条件により走り屋や街のチンピラなどが、不法に利用するたまり場になっていることも。


だがここ数年はある男2人によって少しだけ治安が良くなっていることも。


「お目覚めかい?ガルディ?」


「様をつけなさい、様を。」


「何を言う?君はもう姫様などでは無いんだから。」


暗闇の中、現れたのは黒のファーがついたロングコート。腰には二丁のガンホルダー。

細身の鍛えられた肉体に甘いマスクを持つその男、イグニスは後ろにマイアを連れている。


「貴方、一体何をするつもりなのですわ?」


「政権交替さ。僕も本来ならこんなことはしたく無いけど仕方ないよね?君達が悪いんだから。」


「暴れない方がいいよ、ガルディ。貴方1人なら直ぐに殺せるから。」


少し、困ったような呆れたような口にさすがのガルディも怒りを抱かずにはいられない。

だが戦っても勝てないことはわかっている。

なら大人しく助けを待つしか無いことも。


「たかだか図書館の司書が私に舐めた口を聞いたことを後悔なさいな。」


だから彼女は啖呵を切って大人しく座り込むのだった。









「えーとこ、これでいいかな?」


「もう変わって!ウチがやる!グラマソーサリーの皆!悪いけど貴方達の里を治めるディアンは私たちが捕まえたわ!あっ!コラ!アルキュ!」


「返して欲しかったらボク達の言うことを聞いてもらうよ〜!まずは1つ目!ガルディのパートナー、エルデバランは門まで1人で来なさい!あ!やめろよ〜」


「それで次はクレアシオン。あなたは城に来ないといけません。城に来ないとあなたの学園の生徒たちから可愛い可愛い悲鳴が飛びますよ?」


「そして最後にブラッドだったか?君の父と妹を返す代わりに君の継承権を僕に譲れ。そうすれば誰も死なないけど………もし歯向かったりしたら、ただじゃおかない。僕はやれる時にやる男だ。制限時間は1時間。じゃあね。」


クレアさん達と合流し、事態を伝えた俺たちはこの事態に慌てふためく街の皆を見ながら移動した。


そして、安全かつ、身を隠せる場所としてタツ婆の道場に身を寄せたのだ。


現在、今の放送からどうすればいいかを俺たちは話し合っていた。


「あいつらは一体何が目的なんだ?そもそも国を乗っ取って、何がしたいんだろう。」


「彼らの計画は多分、ブラッド様から継承権を引き継ぎ、それを他国に認めさせる。それには他国の王の承認が必要だからエルデを使って、ディアブレリーにイグニスが王になる事を認めさせるってとこ。クレアを読んだのは邪魔をさせない為。」


「でもリリム?それって上手くいくの?」


「普通無理。継承権の引き継ぎは本来なら王家の直系がいなくなり、ロゼみたいな公爵家に与える時のみ作用する。」


「普通はそこまで簡単じゃねえけどな。」


「問題は学園の生徒たちと里を囲ってる魔法騎士達よね?逃がさないようにしている事はよく分かるわ。」


イグニスの言う事を聞いた場合、懲罰的な奴の事だ。

もしかしたら誰か死ぬかもしれない。


「心配はいらん。あの馬鹿ならさっき会って来た。」


「お父さん!?こんな非常時にどこ行ってたのよ!!」


「ふん、頭に血が上って特攻仕掛けようとしていた馬鹿を連れ返しに行っていただけだ。」


どさりと俵抱きにされていた青年を地面に平然と転がすドラゴーラさん。

転がされた彼は徐に立ち上がるとドラゴーラに掴みかかった。


「何故止めた!彼処には我が父と妹がおるのだ!助けに行かせろ!」


ドラゴーラはそれをたやすく跳ね除け、クレアさんの方に蹴り飛ばす。

彼女は苦痛に顔を歪める彼を受け止めたまま、暴れる彼を抑えにかかる。


「離すのだ!クレアシオン!我は助けに行かなくてはいけないのだ!」


「駄目よ、ブラッド様。貴方までも敵の手に落ちれば彼方の思う壺。」


「だが落ち着いていられるか!!」


クレアさんは拉致があかないと踏んだのか本格的に固めにかかる。

コブラツイストの派生みたいな感じになっているがあれも龍闘流法の1つなのだろうか。


「失礼、ブラッド殿下。俺も同じ気持ちです。ですがここは落ち着かなければ勝てません。彼らは強い。甘く見てはいけないのです。」


「お主エルデバランか!何故ここに!?」


珍しく王子っぽい動きをしているエルデを見た気がする。それに王子としての矜持かブラッドも少し、頭から血が下がったようだ。


「さてと話し合いを始めましょうか。みんなが持ち合った情報を開示して。」


長机を挟んで席に座る関係者達は自分達が集めた情報を開示していく。


「市民と学園の生徒とやらは今、里内にいる傭兵団の半数と3人の魔導騎士に追われている。一か所に集めさえすればシェンデーレが転移するそうだ。その為に英雄の子たちが動いてるようだがな。」


「ガルムからは門に1人の女剣士が待ち構えていると聞いた。あれはメロだ。あいつ裏切り者だったみたいだ。」


現在、ガルムは身を隠しながらも写生機を通じてエルデに外の状況を伝えていた。

魔法騎士の数は既に1万を超えたらしい。


「ただいまなのだ!全く妾を頼るのは構わぬが褒美はあるのだろうな?」


ここで城内に潜入していたルナールさんが屋根の上から降りて帰って来た。彼女は褒めて褒めてと透き通った目でこちらによってくる。


「情報と引き換えに俺に出来る事ならしてあげますよ。」


「うむ!なら良い!城内には傭兵団の半数とターユ、アルキュ、ステロペがおったぞ!イグニスとマイアは姿が見えぬ。彼女らもおそらく専用の魔導騎士を装着していたな。」


「つまり町内にいる2人もその余りという訳じゃな」


今までのを整理すると門には剣姫メロと想像で作り出された兵士達。

城内には傭兵団の半数とターユ、ステロペ、アルキュ。

里内にはエレクトとケライノ。


「里の者達は全員が龍人。彼らは直ぐに飛んで逃げようとしたけど周りの魔法騎士に撃たれたようじゃ。」


「我らは長く生きすぎているからな。今更、里に執着はもたん。そんな中で騎士団達はその市民たちと学園の生徒達をある一か所に集める為に奔走しているようだ。」


「じ、じゃあディアン様を助ける人がいないじゃない!?」


「だけどロゼ、これはある意味余計な被害を減らせる。彼らが無駄に命を散らす必要はないから。」


「詰まる所、心配すべきは貴様ら学園の生徒達だ。1時間以内に国を逃げ出さんと大変な事になる。」


「他国のゴタゴタで多数の貴族の子たちが死んだら不味いからな。」


ロゼさんであそこまでいったなら他の貴族まで巻き添えになったら全部の国に火種を放り込む事になる。


「頼りになるのはSクラスね。彼らがどこまでやれるかが重要よ。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ