神竜顕現
またもやトラブルに巻き込まれる攫われる系ヒロイン ロゼです。
「よし………行くぞ!」
彼は風より早く、ヴァルカイアに近づくとその巨体を蹴り飛ばし、注意を彼に惹きつけた。
彼は距離を取りながらおそらく銃だと思われる武器を構えた為に私は痛む身体を押して叫ぶ。
「駄目だ!ヴァルカイアの殻は生半可な物理は効かないんだ!」
あの殻にはそんな攻撃など通用しないことを知らない。
あれを倒す為には少なくとも三重魔法使いが10人は必要だ。
だが彼は目に止まらぬほどの速さで移動しながら弾丸を射出。
その弾丸全てが堅固な殻を貫き、固く閉じていたヴァルカイアの貝殻が縦に開いた。
白い中身は青紫の液体で溢れており、おそらく血塗れだった。
「まさか効いているのか………!?」
私の龍化した攻撃を受けても開かなかった貝殻をいとも容易く開けるとは思わなかった。
ましてや中身にまで傷を与えるとは!
しかし、開いたからといって油断はできない。
柔らかい中身を晒す事は弱点を隠さなくなったと同じだがヴァルカイアの怒りが頂点まで来たことも表しているのだ!
ヴァルカイアは蒸気を噴出させると吐き出すように火炎弾を自らに傷をつけた敵へとぶちまけるが、彼は分かっているかのように紙一重でかわしていく。
「お、おい、あいつ何者なんだよ!何で1人でヴァルカイアと戦えてんだ!?」
「ひいっ!火炎弾がこっちに飛んできた!?」
ヴァルカイアは当たらない彼に嫌気でも刺したのか、こちらへと矛先を変えてきたようだ。
私は未熟な2人の前に立ち、傷だらけの身体を押して龍化して彼らを守ろうとした。
だがその前に飛来した2つの弾丸が火炎弾を貫き、魔力が霧散した。
私が振り返った先には銃を構えてこちらを射抜く双眼。
「まさかあの距離から正確に射抜いたのか!?」
「な、なんて奴だ!」
私も彼の技術に舌を巻く。
「………全く、周りを少しは考えなさい。」
すると車の中から1人の美女が現れ、彼女が詠唱を行なうと氷の城壁が馬車を守護するように出来上がる。
「我ら遥か彼方の壁。氷だから火には弱いけどないよりまし。」
「君は魔族だったのか…?」
「何か問題が?」
2人が殺気立ち、拳を構えるのを片手で制し、先程よりも成長している彼女の前に立つ。
「私たちを守ってくれて感謝する。」
「勘違いしないで、貴方達を守る義理はない。私の友達が怪我しないように配慮してるだけ。」
「やはり憎いのか?私たちが。」
「当然。大抵はくたばればいいと思ってる。」
底冷えするような露骨な敵意を表しながら彼女の背が縮み、元に戻ると黙って車の中へと戻っていく。
「なんだよ………何であんなやつをあの男はパートナーにしてんだよ!」
ラウトが嘆く。
正直、私の体も鳥肌が立つほど怯えている。
あれは生半可な奴が対峙してはいけない相手だ。
私は氷の壁の先にいるあの男に思いを馳せる。
あの男はただの学生などではなかったのだと。
*
「このホタテ、友哉先輩とか霞ならうまいバター焼きとかに出来んのかなあ。」
あちらの世界のお世話になった先輩と初恋の後輩を思いながら鍛え上げた力全てを無視の能力で底上げした俺は貝を着実に弱らせていた。
幸い、リリムさんが城壁を貼ってくれたおかげであちらにいる皆んなには攻撃が届かない。
さらに魔物だからためらう必要もない。
全力出させてもらう。
貝が開き、発射されたレーザービームを横っ飛びで回避。
その真横を走りながら銃弾を撃ち、柔らかな中身へとダメージを積み重ねていく。
種族名 ヴァルカイア
体力 10/300
魔力 50/100
これは魔眼で見抜いた情報である。
クレアさんとの特訓の中で火山地帯にいる魔物全てを作成銃だけで倒した成果だ。
魔物相手ならこの目は相手の体力、魔力、名前を見抜けるようになった。
因みに人の場合、大体100固定なのであまり意味をなさない。
ともかくこのレーザービームを撃ち続けていれば魔力がガンガン減っていく上に柔らかな中身を晒したままなので攻撃の大チャンスなのだ。
「そろそろ終わりとしようぜ!」
俺はレーザービームを放ち終わり、残り魔力を火の拡散弾に変えた貝へ向けて物理法則無視で高く飛び上がり、解除。
「いっけえ!」
そのまま垂直落下し、勢いをつけたまま貝に拳を叩き込んだ。
ピシリと貝の殻が砕ける音がし、破壊した俺は中身まで突き抜けて身体中を青の血で汚す。
貝の体力はゼロになり、死亡と変わったところで俺は貝から飛び降りた。
「ゲームオーバーだ………生臭いな。」
体に染み付いた血の匂いを嗅いで憂鬱になりながら俺は元の場所に帰っていく。
*
「さ、先程の件は謝るので………」
「ど、どうかご勘弁を!」
俺は帰って来ると2人の男が頭を下げて来た。
まあ確かにロゼさんにあの時の記憶を思い出させた事には怒りを抱いていたのでとりあえず頭に拳骨落とすだけで終わらせた。
「君はすごいな………私なんかよりもよっぽど…」
リリさんは浮かない顔をしていたがリリムさんに呼ばれたので車の裏側に行くと大量の水をぶっかけられた。
「くさい」
目からハイライトが消えた彼女の言葉はヴァルカイアから1つも傷をおわなかった俺に的確なダメージを与え、俺はその場に膝をつく。
服は行者のおっさんが予備として持っていた民族服の和服を借り、制服は車の外でリリムさんが火を焚いて乾かしてくれている。
騎士団の人達はヴァルカイアの件を報告するために色々とやるようで俺はその間にロゼさんに逢いに行った。
「ロゼさん。」
「マコト君?………わぁ」
上着を取り、少し真っ青だった顔色は戻ったようだ。
だがすぐに彼女は頬を赤く染めるとはにかむ。
「似合ってる………うん、好き。」
因みに今着てる和服は赤を基調として黒の柄が描かれたものだが、よほどロゼさんの好みに合ったのだろう。
「ありがとうございます、ロゼさん。大丈夫でしたか?」
「平気。だって、マコト君が守ってくれたもの。」
俺は隣に座って彼女を抱きしめる。
ロゼさんも気持ちよさそうに身を委ねてくれた。
そうなると自然に2人は近づきーー
「そろそろ行くーーあっ」
「「あっ」」
この後魔法が飛び交って俺が被害にあったのは言うまでもない。
*
「大変だったなぁ」
「でも凄いじゃないか!僕は君に倒されてから君は凄い奴だと思っていたよ!」
「温泉まんじゅう食べながら言うんじゃねえ、エルデ。調子いい事言わないでください、イワンさん。」
紆曲あったが………ラウトとシェロが俺を兄貴と呼んだり、リリさんがちらちらと俺を意味ありげに見るなどあったがともかく無事に服も乾き、学園の皆と合流した。
ここ宝石採掘場は火山地帯の中にある。
もちろん火山からは離れているし、魔物がたまにうろついているがこの付近には弱い奴しかいない。
でも俺たちの件もあるし、気を引き締めていこうと騎士団達は話し合っていた。
「オイ。テメェ、ヴァルカイアをひとりで倒したって?」
現在俺たちは火山地帯にある5つの採掘場に分かれるために班を編成している中、フェルムが話しかけて来た。
「そうだが?何か?」
「ハッ!別に何も………あァ、ちげえなぁ。」
何となく歯切れが悪い。
まるでクレアさんと相対した時みたいだ。
「認める。」
「え?」
「テメェを見くびってた。お前はすげえよ。」
何と彼が俺を称賛したのだ。
「テメェのパートナーに関しては謝る。すまねえ。これだけ言いたかった。それだけだ。」
「おい!待てよ!」
フェルムは俺の制止の声すら無視して生徒たちの中へと立ち去っていく。
「はあい、まーくん。元気ー?」
「えっ!!クレアさん!?」
入れ替わるようにやって来たのは潜入捜査中のクレアさんと俺が腹パンした女剣士。確かメロ?だったかな。
「クレア。貴方がここに来ていいの?」
「朝からディアン様に頼まれてねえ、騎士団を支援してくれって。」
リリムさんが暑さに耐えながらそう聞く。
クレアさんがいれば並大抵の相手はどうにでもなるだろう。
問題はもう1人の彼女だ。
「私はクレア様の付き添いです。名はメロ。イグニスの嫁であり………彼の情報を国に流す内通者です。」
「へえ………マジですか!?」
まさかの裏切り者。
いや、俺たち的には全然いいんだけどね?
手早く魔眼回収。戦わずに済むなら1番いい。
「さてこの話はここまでにして班編成も終わったようだし、採掘場に向かいましょうか。」
班の分け方は5つのうち1人はSクラスを入れて分かれることになっている。
さらに俺たちの班には騎士団としてクレアさんとメロさんがつくようだ。
いよいよ新歓旅行っぽくなって来たな。
*
「掘っても掘っても鉄鉱石しか出ねえ………」
「こちらはマ◯ライト鉱石しか出ないよ………」
宝石採掘場に着いた俺たちの班は最初はわくわくしながらピッケルを振っていたが流石に1時間も経つと皆の顔から笑顔が消え、匠のような表情で掘る。
「うおっ!来たぜ!」
「本当かい!エルデ!」
エルデが掘り当てたものをちらっと魔眼で見抜く。
名前 石英
俺は彼にどう伝えればいいのだろう。
あんなに苦労したのに当たったのはガラスの元の石英だと………
仕方ない。
そろそろ楽して宝石採掘を始めますか。
俺は魔眼であたりの採掘場を一通り眺めて密集地点にピッケルを突き立てる。
すると宝石が小山になるほどたくさん取れた。
しかもどれも質の良いものだ。
俺はそれを両手に抱えて2人の元へ帰っていく。
「さあ安いよ安いよ!今ならここの宝石を金貨1枚で買えるよー!さあ誰が買うかい!」
俺は2人が欲しがっていた桜色と藍色の宝石とオレンジの宝石を与えて残りはお小遣い稼ぎに売っぱらう。
学園の生徒たちは大抵が貴族、しかもこんな汗かくことを嫌う者たちだ。
だから飛ぶように売れる売れる。
もちろん、普通の人にはかなり安い金額で売ってあげた。
余ったものは後で売ろう。
もちろん、俺も白、黒、青の3つの宝石とあと緑、黄の2つを予備としてもっている。
「お前がいて助かったよ!」
「ハーレム築いてるから嫌なやつかと思ったけど案外いいやつだな、お前!」
「英雄の子の上にハーレム築いてるからって夜中に殺しにかかったことは謝るよ!」
貴族の皆さんからはこんなありがたい言葉をいただき………待て最後。
「よし戻ろうぜ〜」
「ああ、汗を流したい。」
戻るのは火山地帯の中にある唯一の癒しの場所。
ロッジのような場所に温泉あり、マッサージ付き、美味しいスイーツもあり、更に取って来た宝石をその場で加工して売っているのだ。
女子たちはそこで各々癒しを受けながら男子たちが持ってくる宝石を今か今かと待っている。
「クレアさーん!俺たち宝石を取り終えたんで帰っていいですかー!」
「わかったわ。メロちゃん、付き添って彼らを送り届けましょうか」
「はい。クレア様。」
俺たちの班は全員が宝石を手に入れたので全員で女子たちが待つ場所へと歩き始めようとしたその時、
メーデー!メーデー!
メロさんがもつスマホみたいなものから警告音が鳴り響く。
「………メロちゃん?」
「ええ!クレア様がリリに渡していたラインからの非常通知です!何かあったようです!」
リリさん?確かリリさん達は女子達がいる場所を守護していたはずじゃあ………
「メロちゃん、皆んなをお願い。後、イグニス達を呼びなさい。阿呆でも力はあるから使い物にはなるでしょう。」
「それが………彼らは火山地帯にいないようです!」
「えっ?どういうことかしら?打ち合わせだと彼らは火山地帯で捜索のはずよ」
「それが………どうやら国内の宝石店にて義賊王を見つけたらしくそちらに全員行ってしまったようで………」
「ああもう、仕方ないわね。なら私だけ行くから、メロちゃんは皆をお願い。」
クレアさんは雷を身体にまとって神速で移動する。
残された俺たちをメロさんは1つに纏めて待機させ、彼女はどこかに連絡しているようだ。
「おい、マコト。どうする?」
「決まってる、どうにかしてロゼさんを助けに行かなきゃ。」
「奇遇だな。僕もアルルを助けに行きたいんだ。」
「なら簡単だな。ちょっと注意引き付けろ。」
その言葉にイワンさんが槌を握り、小さな岩を引き寄せて崖から落とす。
非常事態に気が張っていた皆は落石の音に引き寄せられ、その僅かな隙間にエルデは3人分の人形を作る。
そしてすぐに2人は俺の肩に手を置いて俺は皆から無視される能力を使ってその場から黙って立ち去るのだった。
*
「皆んな無事かしら!?」
たどり着いた先から光が飛び交い、炎が舞う酷い有様だった。
だがそれよりも目を奪われたのは血の色より更に濃い紅い鱗を持った龍の姿。
その龍は大体7メートル前後の巨体を震わせて建物を抱えていた。
「クレア元団長!」
「リリ!状況を説明なさい!」
こちらに駆け寄って来た血だらけの彼女がなんとか言葉を絞り出す。
「あの龍はーー神竜です!」
「神竜って初代騎士団長が倒したあの!?まだ生きていたの!?」
神竜とはかつて私の前の団長が命をかけて倒した龍だ。初代団長の命と引き換えに。
「それで建物内に人はいないのよね!?」
「それが………姫様と白髪の子がまだ中に!!」
姫様とロゼちゃんがまだ中にいるというの!?
全力の雷で撃ち抜くと建物ごと破壊してしまう。
磁力で引っ張るか?いや姫様が出られないということは彼女に何かあったということ。
「弱きものよ!我は神竜!グラムバーン!」
「貴方、話せるの?龍人………じゃないわね?」
神竜とは龍人でありながら龍人を殺し、同胞の血に染まった罪ありき龍人が人の心を失った存在だ。
初代団長が倒した神竜はここまで話すことは出来なかった。
ならば名を騙った別物?
「我は目覚めたばかりだ。そのため贄を欲する。」
神竜は両手に持つ建物を私たちによく見えるように掲げると岩肌を剥がすほどの咆哮をあげた。
「実にいい!この中にいるのは優秀な血統の龍人に潤沢な魔力を持つ此奴らは我の最初の馳走にする!終わったら、貴様らも食ってやる。その時までおとなしく待っているんだな!」
「待ちなさい!」
雷を撃とうと構えるが建物を掲げ、私が一瞬躊躇った間に火山の火口目掛けて飛んでいってしまった。
「リリ!無事な騎士団を2つに分けなさい!1つは学生を無事に国まで返して!もうひとつは私について姫様を取り戻しに行くわよ!」
「………出来ません!」
リリの声に私は思わず彼女の肩を掴む。
「どうしてかしら?怖気づいたの?」
「クレア元団長!今の時期は活性期です!辺りからマグマが噴き出し、我らの鱗すら焼くこの時期に火山に向かうのは無謀でしかありません!」
「そうか………今はその時期だったわね………ごめん、頭に血が上ってたわ。」
不味い、よりにもよって姫様と他国の公爵令嬢。こんなの失敗したら大問題よ。
「クレアさん!」
「………まーくん?どうしてここに来たのかしら?」
何処からか現れた後ろ2人とまーくんの顔がひきつる。
悪いけど今の私に余裕はないの、怖い顔してごめんなさいね。
「大方ロゼちゃんの事が心配なんだろうけど、まーくん、危険だから駄目よ?」
「だけど!」
「おい待て、ガルディまで連れていかれてるんだろ?それなのに俺たち2人にはじっとしてろと?」
「お願いだから言うことを聞いて。確かに2人は強いけど今から行くのは活性化している火山よ?私達ですら自分の身を守るので精一杯。安全な道すら作られていない道を通すわけにはーー」
「あるぞ!妾に任せよ!」
え?誰?
私が振り返った先にはリリムを連れて近づく獣人の女性。
柔らかな黄色の髪を腰まで伸ばして少しつり目だが十分魅力的。
背丈は私と同じくらいだが全体的に細い。
「ど、どちら様ですか?」
リリの質問にその女は高笑いして名乗りをあげた。
「妾の名はルナール。又の名を義賊王ルナールだぞ!!」
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