2日目開始
ようやくここからチートでハーレムな学園生活の始まりです。
大きな窓から差し込む目に痛い朝の光を受けて私は目を開く。
飛び込んでくるのはとびっきり愛おしいパートナーの顔。
整った顔立ちは寝ている姿すらも一種の芸術にしてしまうらしい。
彼の腕によって抱きすくめられている状態、二度寝をするには少しもったいないかも知れない。
いつも朝、起こしてあげてるとはいえ、ここまで彼の寝顔を眺めたことはないのだ。
昨日、帰って来た後は私達3人でお酒を飲みながら他愛ない話をした。
マコト君には昔、好きだった後輩の女の子がいたとかの話にはつい嫉妬してしまったが今では疎遠になっていると聞いて少し安心したのだ。
私としては彼がハーレムを築くことには………あまりしてほしくない。
少なくともそこにクレアさんやリリムが入ると私が捨てられるかもしれないからだ。
相性で言えば私は3番。
クレアさんもリリムも私に譲ってくれたからこそ得られたものなのだ。
それに2人が彼を好きになってしまった場合は私は蔑ろにされるんじゃないかと不安で仕方なくなる。
リリムはきっと大丈夫だろう。
手帳を見る限り、好感度は一番低いからだ。
問題はクレアさんだ。
クレアさんの好感度は私の次に高い。
しかも彼女はマコト君にとって最も相性が良く、自分から迫る肉食獣のような女性だ。
もし、クレアさんがマコト君を無理矢理、私から奪ったりしたらどうしようかと考えてしまう。
だがもし彼女が私を正妻としてたてて彼女が第2夫人を名乗るならばイノセンティア家は最高の騎士を懐に入れることが出来る。
そうすればイノセンティア家に喧嘩を売るような他の貴族はいなくなるだろう。
その点を踏まえるとクレアさんだけはマコト君の側に居させてもいいのかもしれない。
「あっ………浴衣がはだけてる」
彼の浴衣の帯が緩んでいるのか、浴衣の下の体が少し見えてしまっている。
「………すごい」
浴衣の下に見えたのは引き締まった肉体だった
「えっ?触ってもいいのかな………うん、大丈夫、大丈夫、私、婚約者。うん、問題なし。」
言葉がおかしい?
放っておいて、今は彼が鍛え上げたであろう肉体を調べるのに忙しいの。
べ、別にあくまでこれは彼がどれだけ鍛えられたのかをパートナーして確認する義務があるだけなんだから!
ただ大好きな人の体を堪能したいとか、そんな変態みたいな考えは一切持っていないんだから!
ゆっくり、ゆーっくり、手を伸ばし、彼の胸元に手を添える。
「なるほど………なるほど………ふふふ」
硬い胸筋からゆっくりと降りて行き、6つに別れたお腹の筋肉もさすると彼が少し、身じろぎをして小さく声をもらした。
「………行っちゃう?こっから先、行っちゃう?待ちなさい、ロゼ。私は真面目な生徒会長。そんな人が朝からパートナーの体を弄っていいの?」
自問自答開始!
「良いわ!だって私、婚約者だもの!」
自問自答終了!
私はするするとさする手つきをゆっくりと大事な部分へ向けて手を下ろした所で嫌な気配を感じ、思わずマコト君の顔を見る。
「お、起きてないわね?」
ふぅ、こんな所が見られたら私が積み上げて来た完璧な印象が崩れてしまう所だったわ。
「朝から楽しそうね、ロゼ。」
「………………」
後ろからの声に私は古びた歯車のようにゆっくりと振り返る。
そこにいたのは眼鏡を外し、寝惚け眼だが意識は覚醒し始めているリリムがいた。
「………違うの、今ら貴方と私の間には誤解が生まれてる。」
「………私と貴方の間に意識的差異は何もないと思う。」
「待って、待って、お願い、この件は内密に………」
「あー私、特産の甘いものが食べたいなー、けど一研究者には高いんだよなー、どうしようかなー」
「わかったから!奢るから!だからお願い!みんなには!マコト君には黙っていてぇぇぇぇぇぇ!!」
*
「寝起きの体に和食はいいなぁ。」
宴会場にて右に何故か無言で黙々と食べ続けるロゼさんと左にちょっと嬉しそうなリリムさんが魚の身をほぐしている。
「おいこら、マコト。お前の向かいに座る俺の有り様にも触れろよ。」
「昨日はお楽しみでしたね。」
「よし殴る。ぜってえ殴る、清々しい笑顔を浮かべやがって!女2人と酒盛りしたこいつと男たちで鍛錬した俺に何の違いがあるんだ!」
ご飯粒を飛ばしながら叫ぶエルデ。
「それで男達で暑い中、激しく汗をかいた肉体をぶつけ合いながらみんなで1つになるまで解放されなかったんだろう?どうだった?」
「語弊があるわ!見えねえ悪意を感じるんだけど!?その言葉の選び方!」
「エ、エルデ君、男色家になっちゃったの?」
「なってねえよ!女の子大好きだわ!男の胸板よりもガルディのおっぱいをぐにゅぐにゅした方がいいィィィィィィィあっつぁぁぁぁ!」
「あら失礼手が滑りましたわ。」
エルデの後ろからやってきたガルディが持っていた急須から緑茶が彼に降り注ぐ。
「今日のご予定はどうなさっていますか?」
「今日は宝石採掘体験が主な目的よ。主は男だけで女の子達は近くにある露天風呂や按摩とか色々出来ることになってるわ。」
「あそこの火山近くはいい場所ですから。いい選択ですわ。」
「2人ともーエルデに触れてやれー、関係が深い2人よりも関係が浅い俺とリリムさんが心配してるのはおかしいだろー」
エルデはやけど状態になった!
リリムさんはやけどなおし(氷の塊)を使った!
エルデの体からやけどは消えた!
エルデはこおり状態になった!
さて冗談はこの辺にしてクレアさんから聞いたがここの宝石に伝わる噂がある。
この宝石を自力でとった人が大事なパートナーに渡すと結ばれるという、よくある噂話だ。
けれどちらほらと朝食を食べる女子たちから期待してそうな声が聞こえることからパートナーの男子たちは張り切っているのだ。
俺も頑張っていかなきゃな!
*
「大変な事が起きた。」
朝から私とイグニス達はディアン様の前へと集められた。
けれど、イグニス、貴方少しは頭下げたり、へり下りなさいよ。
嫁達もよ!なんでメロと私以外、そんな偉そうなの!
「これを見てくれ。」
イグニスが紙を雑に受け取り、読むといつもの阿保面のまま首をかしげる。
「どれどれって………これ!義賊王の予告状じゃないか!ボク初めて見たよ!」
義賊王…ですって?
「義賊王って誰?」
「ええっ!イグニス!義賊王を知らないの!」
「義賊王といえば天下の大泥棒でござるよ!しかし、悪徳貴族からしか盗まず、貧民たちに分け与える事から与えられた2つ名こそ義賊王!」
「へえ〜僕、初めて知ったよ。それでディアン様、僕たちは彼女を捕まえればいいんですか?」
「やってくれるか?」
「ご安心ください!必ず私たちが捕まえてみましょう!」
ターユがそうやって言って皆が賛同するが正直な話、多分無理でしょう。
「すまないが騎士団関連で話がある。メロとクレアシオン、残ってくれるか?」
「「承りました。ディアン様。」」
「じゃあ僕たちは先に行って準備しとくから。後から来てね!」
イグニスは部屋から出て行くとメロは黙って懐からラインを取り出し、雷の魔力を纏わせた。
彼女は私を見ると身振りで同じようにしてと伝えられて同じようにする。
「さてメロ、報告を聞きたい。」
「はい、ディアン陛下。彼らの傭兵団は総勢30人弱。見たことない通信手段を持ちますが我らの雷の魔力を使えば上手く誤魔化せます。」
「あら、もしかしてメロ、貴方………」
「はい、私は騎士団から潜入任務を受けているのです。これを知っているのはこの里の長、ディアン様だけです。」
「その通りだ、まさかクレアシオン?私があのようなまだ年経ていない未熟者を信用するとでも?なら、むしろ騎士団を私は信用する。」
あらあらなら、イグニスは最初から袋のねずみなんじゃない。
「そしてこのラインと呼ばれるアーティファクトは盗聴の機能が入っているようです。ですが我らなら雷の魔力を使えば阻害が可能なので覚えておいて下さい、クレア様。」
「ええ、ありがとう。それでディアン様?私を残したということはあの予告状、正確じゃありませんね?」
「如何にも、これが本物だ。彼らは信用ならんからな。」
「一応偽物も置いて起きますね。」
手渡された紙にはこう書かれていた。
『本日、宝石をいただきに行く。義賊王より』
『本日、宝石よりも価値あるものをいただきに行く。義賊王より』
「宝石よりも価値あるもの?心当たりはございますか?ディアン様。」
私の問いかけに横に首を振るディアン様。
「我が国の英雄にはご相談を?」
「したが話半分で叩き返された。だから君に頼んでいるのだ。クレアシオン。」
はあ…あの馬鹿親父は本当に英雄としての心構えとかあるのかしら、こんなんだから英雄より英雄らしいとかで私が頼りにされるのよ。
「その為に今朝、朝早くに人族の英雄たるシェンデーレを呼び出して伝えたんだがそこで彼の様子が一瞬変わった。もしかしたら彼に関係するものかもしれない。」
シェンデーレ校長に関係する………マコト君も何か知っていたりするのかしら?
「君達は彼らと共に先に宝石採掘場まで行って貰おう。そこで彼らとは別れてもらい、騎士団と共に今日予定に入っているクオーレアカデミアの生徒の護衛をお願いしたい。神竜が活動を開始しはじめているようだからな。」
「それと一応、シェンデーレに意識を割いておけと。」
「その通りだ。頼むぞ、メロ、クレアシオン。」
「「承りました。」」
*
グラマソーサリーの国から火山地帯までは暑さで馬で行く事は不可能なので魔物であるサラマンダーがひく車に乗って火山地帯へ進むことに。
火山地帯までは魔物が出る為、護衛として騎士団がつくようだ。
「はじめまして私はリリだ。騎士団副団長を務めている。今日は宜しく頼む。」
確か、クレアさんと合流した時に近くにいた女騎士だったはずだ。
桜色の淡い髪を姫カットにして柔和な印象を与えるが切れ長の目が芯が通った女性だと感じさせてくれる。
この車は火に強い魔物の皮で外側を覆った6人乗りなので俺、ロゼさん、リリムさん、リリさんにあと同い年くらいの男2名が車に乗り込む。
「うわっ!凄く可愛いね!君、名前なんて言うの!?
「ロゼ・イノセンティアですけど………」
「じゃあロゼちゃんって呼ぶね!」
「おい、そこの小さな女。俺はあのリヴェット家の次男だ!だから俺のものになれ!」
「意味がわからない。」
おい待て、オレンジの髪を短く刈り込んだ男、何さらっと人の婚約者口説いてんだ。
それと紅色の髪をひとまとめにしたやつ、何、馴れ馴れしくリリムさんを自分のものにしようとしてんだ。
俺は黙って隣の彼女達の肩を抱き寄せてリリさんに対して訴えるような視線を送る。
ロゼさんは俺の服をきゅっと握って震えている。
リリムさんは俺の肉をぎゅっと掴んで堪えている。
「おい、ラウト、シェロ、彼女達が迷惑がってるだろう。やめろ。」
「はあ?アンタには関係ねえじゃん。」
「黙ってろ、腑抜けやろう。貴様が俺たち貴族に舐めた口を開くな!」
「おい、アンタらその態度はないだろ。仮にも副団長の立場の人に対して聞く口じゃないはずだ。」
まあこいつらに対する俺の口調も敬意すらないがそこは見逃してくれ。
「は?つか、お前何様なんだよ。お前みたいな冴えない奴にはそこの2人は勿体ねえよ。」
「同感だ!貴様如き、我が家の権力を使えばすぐに潰せるのだぞ!」
「何様はこっちのセリフだ。騎士ってのは誰かを守る者たちじゃないのか?俺の知ってる騎士はそんな人だぞ?」
途端に2人は笑い出す。
ロゼさんにリリムさんから笑みが消えかけている。
「そんな古い考えの騎士がいてたまるかってんだ!馬鹿じゃね?」
「今は騎士をやれば箔がつくからやっているだけだ!そこの副団長や元団長やらみたいな死に急ぎ野郎だけだぞ?そんな偏屈がいたら俺たちに悪影響が出る。」
「おい、お前たちいい加減にーー」
口論を続けようとする俺たちにリリさんが止めようと立ち上がったと同時に車が急に止まった。
「すみません!魔物が出やした!退治をお願いしやす!」
サラマンダーの手綱を握っていたおっさんがそういって声をかけてきた。
「よし、君達はここで待っていろ!ラウト!シェロ!行くぞ!」
リリさんは真っ先に車から飛び出して言ったが男2人は出て行くどころかロゼさんとリリムさんを見てニヤニヤしている。
「おい、邪魔な奴がいなくなったぜ?ヤラね?」
「そうだな、相手は平民の学生、潰すのはたやすい。」
こいつら………本気で言ってんのか!?
文句を言おうと睨みつけた矢先、拳が腹に突き刺さった。
「おい、これ以上、痛い目にあいたくなかったら外にいろよ?二時間くらいは帰ってくんなよ?」
「まあ寂しく1人で遊ぶのは止めないがな!」
俺は黙ってロゼさんの方を見る。
彼女は真っ青になって震えていた。
開けたくない記憶の蓋が開きかけたのかもしれない。
なら、すぐに閉じなくてはいけないだろう。
「おい、アンタら。今すぐ、リリさんの後を追って魔物退治に行ったほうがいい。」
は?とばかりに威圧する2人の前で制服の上着を脱ぎ、ロゼさんの頭からかける。
心身的に危険な彼女に悲惨なものを見せないためにだ。
「何故かって?教えてやるよ。」
下衆じみた笑顔を吹き飛ばすように拳を叩きこみ、唖然としている間にもう1人の男の足を踏み砕く。
踏み砕いた足に悶絶している間に、吹き飛ばされて座り込んだラウトを車の外に蹴りだす。
悶絶したシェロが襲ってくるがいなして背中に回り、前蹴りで外にはじき出した。
「リリムさん!」
「任せて。」
短い言葉でロゼさんを任せて俺は外に躍り出る。
「学生風情がぁ!」
「騎士の強さを味あわせてやるうぐえ!?」
「シェロ!?」
クレアさん直伝のハイキックが的確に顎にヒットしたところでラウトの肩を掴み、膝蹴りをねじ込む。
そしてラウトを拘束したままシェロの腕を掴み、2人の頭を衝突させてラウトが倒れるところを狙ってかかと落としをお見舞いした。
たたらを踏んだシェロにはそのまま回し蹴りを首に叩きつけて、さらにもう一段階しなるように回転し、つま先が首に突き刺す。
「クレアさんに比べたらはるかに弱すぎだ!」
意識を失った2人をまとめておき、リリさんの応援にでもいこうと魔眼を開いた時、恐ろしい速さでリリさんが飛んできた。
「はあっ!?」
旅行中は自己防衛のため心武器を出していい事になっているお陰で無視の力を使って彼女に飛んで行く先に回り込み、物理法則無視で衝撃を消した。
「くっ!………すまない、私は………」
泣いているのか、震えている声を聞きながら魔眼で彼女の怪我を観察、そこまで重症じゃないと安心するや否や赤き閃光が俺の横をすり抜け、爆発した。
「えっ!?何!?グラビーム!?」
某火山モンスターを思い浮かべた先にいたのは………
貝だった。
二枚貝だった。
「いやかっこ悪!」
ホタテ貝のでっかいバージョンがカタカタと上下に動いている姿にちょっと笑ってしまっているとリリさんが俺の腕を握りしめていた。
「あれは火山のマグマ付近にしかいないヴァルカイアだ!何故、あんな危険な魔物がこんなところに!悪いことは言わない!早く逃げるんだ!」
「無理ですぜ!サラマンダー達が怯えて動きもしねえ!歩いて逃げてたらさっきの光に撃たれんのが関の山ですぜ!」
つまり退路はない。
俺は黙って右手に黒の銃を握りしめ、左に握る白の銃を前に出した態勢で馬車の前に躍り出て貝を睨む。
「まさか戦う気か!?あれは学生が倒せるような相手ではないんだぞ!」
たしかに俺は学生で平穏な日々を望む男だ。
戦いなんて嫌で仕方ないがーー
「大切な人を守る為なら俺は何だってやるさ。」
ーー俺はその為に強くなったんだからな。
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