編入生Tueee!!
「やあ、やっぱりやったみたいだな。」
全てが終わり、鬼神の如く迫力あるクレアさんに震えながら合流。
そこにタイミングよく、父が現れた。
身体中に包帯を巻いて。
「………何があった?」
「まあそれも話そう。馬車の件もだ。集まってくれたまえ。」
Sクラスは親父を中心に円状になると手をつなぐ。
「行くぞ!転移!」
*
うっぷ。ジェットコースターに吐くまで乗せられたみたいな浮遊感と気持ち悪さが混同し、吐き気が酷い。
「情けねえ、やっぱり雑魚だな、テメェは。」
「お前、自分の笑ってる膝をどうにかしてから言え。」
ふらふらと立ち上がり、周りを見渡した先には木造などで出来た平屋が立ち並ぶ中を和服を着た人達がちらほらと見える。
「ここがグラマソーサリー?」
「ようこそ、グラマソーサリーへ。まーくんが住んでた世界と似てるかしら?」
クレアさんが差し出した手に捕まり、立ち上がる。それと同時に肌が汗ばむほどの暑さを感じた。
「割と似てますよ。時代が少し違いますけど。」
「まあそれは仕方ないわねえ。まだまだ発展途上だもの。」
グラマソーサリーの里。
ここがクレアさんの出身地である。
「おい、お前たち。そこの旅館が宿泊先の宿だ。入るといい。」
指差した先には平たい木造建築に、木戸は引き戸でガラス張り。
生垣があれば、門前から入口までの道には砂利が敷き詰められ、屋根には瓦が使用されているとなれば、それはもはや見間違える余地もない。
「日本旅館だなぁって流せたらいいけどね。」
こちらの世界と地球の文化が似ているのも如何なものかと思ったりもする。
ファンタジーっぽさが皆無だからだ。
「マコト君!リリムをおんぶして!」
「いきなり何を言ってるんですか!?ロゼさん!?」
ロゼさんがない力を振り絞ってリリムさんをこちらまで持ってくるとリリムさんの容体もはっきり分かる。
「私の国………と、は違…う。あ、暑すぎる。」
尋常じゃない汗をかきながら夏の暑さに負けた動物のようにうなだれたリリムさんを背負って俺たちは旅館に入るのだった。
*
「マジで日本旅館だな。けど、久しぶりの畳だぁ〜」
ビバ、日本。異世界来てまで日本の文化に触れるとは思わなかったがまあたまには良いだろう。
俺たちはSクラスの各パートナーずつ部屋を分けられて持ち込んだ荷物を部屋に置く。
そして俺は久しぶりすぎる和の魂を感じるように部屋の中をゴロゴロと転がっている。
「マコト君、床にねっ転がっちゃだめでしょ。汚いわよ。」
「ロゼちゃん、違うわ。この畳はねっ転がてもいいのよ。それと椅子もないから床にこのクッション敷いて座ってね。」
山積みの座布団らしきものを引っ張り出し、ロゼさんの前に滑らせる。
ロゼさんはどうやら床に直接座るスタイルに戸惑っているようだ。
「それにベッドもないからどこで寝るの?」
「俺が知ってる通りなら床に布団を敷くと思うんだけど合ってる?」
「合ってるわ。まーくんは分かってるみたいだからロゼちゃんとリリムちゃんにはお姉さんがやってあげる。」
どこか流れるまったりとした空気に先程までの戦いが嘘のように感じられる………が、
「2人とも校長が呼んでる。」
簡易医務室にて手当を受けていたリリムさんが帰ってくると俺とクレアさんに対してそう告げた。
「ロゼさんはここでリリムさんと寛いでいて下さい。」
「お姉さん達はさっきの件に関して問い詰めたいことがあるからね。」
「分かった、気をつけてね。」
襖を開き、床張りの廊下に出た先には父が腕を組んで立っていた。
「行くぞ、彼らは城にいる。」
俺たちは父の腕をつかみ、城へと飛ぶのだった。
*
「全く酷い話だ。大丈夫だったか?」
「いえいえこんなこと慣れてますから。」
謎の男に城まで連行された僕達は連れてきた男が英雄であること。
そして僕の嫁を傷つけた男女2人が英雄の子たちであると知った。
全く、英雄と持ち上げられるから傲慢なんだよ。僕みたいにもっと謙虚じゃないと。
現在僕達8人はグラマソーサリーの里の長、ディアンと茶を飲んでいた。
ちなみに縛っていた鎖はディアンさんが解いてくれた。
「ディアン様!シェンデーレ様がお会いになりたいと!」
「そうか、通せ。」
それと同時に襖を開き、入ってきたのは3人組。
1人は金髪に嫌らしい翠の目、不機嫌さを隠そうともしない。
1人は金髪に青の目、さっきの男と似ているから親子か何かだろう。
そして最後はとっても魅力ある黒髪のお姉さんだった。
「イグニス!何、鼻の下、伸ばしとるんや!」
「ごめん!痛い痛い!」
ターユに脇腹をつねられて痛みに悶絶していると3人が僕達の前に正座した。
「お久しぶりです。ディアン陛下。いくつか、聞きたいことがあるのですが宜しいですか?」
「良いだろう。申してみろ。」
「その者たちは何者ですか?」
頭を下げて、礼儀を尽くす3人組を睨む嫁達を宥めながら僕が口を開く。
「初めまして、皆さん。僕はプレイアデス傭兵団の団長をやっています。イグニス・プロキオンです。」
「クオーレアカデミアの校長、シェンデーレだ。」
「クレアシオンよ。」
「マコト・カラスマだ。」
ちゃんと自己紹介を終えるがまだ彼らの眉間からシワが消えない。
「謝罪は無しですか?」
「謝罪?ああ!すいません!先程はついうっかり…」
「うっかりで済む問題じゃないのだけど?1つ間違っていたら学生の誰か死んでいたところよ。」
妖艶なお姉さんが先程対峙した時と同じような怖い顔で睨んでくるので笑って誤魔化す。
「ディアン様、失礼ですが席を外して下さいますか?」
「クレアシオンか。いいだろう、私はほかにやらなきゃいけないこともあるのでな。」
そうそう、クレアって言ってたな。
そのクレアって名乗るお姉さんは長であるディアンさんに生意気にも命令する。
いくら歴戦の傭兵でもそれはいかがなものだろう。
「さてイグニス君。君は事の重大さを理解しているのかね?」
「失礼ですが何処かでお会いしましたか?」
「昨日辺りに君に殺されかけた筈だが?」
昨日?ああ、あれか!
カップルに絡んでるおっさんがいたから助けてあげようと思って銃でゴム弾を撃ち込んだんだ!
「でもゴム弾で死ぬとは大袈裟な。」
「普通に考えて、注意して聞かなかったら助けを呼ぶとか暴力に訴える前に色々あったと思うが?」
金髪、翠の目の男が忌ま忌ましそうにこちらを射抜く。
「マコト、それはひとまず置いておく。それで?そちらの誠意を見せて貰いたいのだが?」
誠意ってどうせお金だろ?
やっぱり英雄とか言っても欲望にまみれているらしい。
「イグニス!こんな奴らに払う金なんてないよ!こんなつまらない事をちまちまつついてくるような奴らに!」
「その通りやわぁ。実際、そこにいる坊主に蹴られたりした事も水に流したるから、それでええやろ?」
「何だと?まさか僕の嫁を傷つけたのか!!」
こいつ殴ってもいいよな。僕、殴ってもいいよな? くそっ、あとで見てろよ。
「だから?あの時、お前の仲間たちは俺を殺そうとしただろ?正当防衛だ。」
「正当防衛………まて、何故そんな言葉を知っている!」
「お前と同郷だからだ。イグニス・プロキオン。いや?緋山春樹。」
こいつ何者だ!
何故僕を知っている!
「私たちはこの世界にいる魔眼の持ち主から魔眼を回収するもの。貴方が転生者である事は分かってるわ、大人しく貴方の目に宿る魔眼を寄越しなさい。」
「それを君からの誠意としてこの話は手打ちとしてあげよう。どうする?」
ここは誤魔化すしかないな。
だって証拠も何もないのだから。
「言っておくけど誤魔化すのは無理だぞ。所持している魔眼は千里眼。武器は鎧。パートナーは合わせて7人。その中で最も好感度が高いのはマイアという少女だな?」
「言い忘れていたが俺の息子も魔眼持ちだ。大人しく渡しなさい。命も視力もなくなる事はないのだから。安心するといい。」
つまりこいつも僕と同じ転生者なのか。
だけど僕の力を奪おうってのは見え見えなんだよ。
「悪いけど無理です。これは僕の力だ。君達が気安く扱えるようなものじゃない。」
「僕の力って…俺の魔眼ですらリリムさんに『貸し与えてるだけ』っ口酸っぱく言われてるのによくもまあいけしゃあしゃあと言えるな。」
リリム、それが僕から『オールレンジ』(注:千里眼です)を奪おうとしている名前か。
「それよりも君の魔眼の方が危険だ。それは君には身の丈に余る。僕が管理しよう。」
僕は得たくもない魔眼を得た青年に優しく手を差し伸べる。
その手はペシッと弾かれた。
「ちょっとアンタ!さっきから失礼やない!?」
「そうです!私の旦那様にタメ口聞くなんて無礼です!」
「気にしなくていいよ。彼はあまり、礼儀を知らなそうし、きっと頭も体も弱いんだろう。」
ターユとマイアの怒りを抑えながら皮肉を言うと怒りに顔を歪ませ始めた。
「全く話にならないわ。お姉さんに負けた癖によくもまあ偉そうに言えるわね。」
「それはお前が不意打ちしたからだ!マスターはそんなに弱いやつじゃない!」
当然だ。あの時の僕は戦う気は無かった。
だからそれで強さを勘違いしても困る。
「お姉さんからすれば三流もいいところよ?無論、貴方もよ。メロ?貴方、いつの間にそんなに弱くなったの?かつては真槍と並ぶ剣姫の名を持つ貴方がこんな冴えない男に骨抜きにされたなんて思いたくないのだけど?」
「あ?」
メロは目に涙をためてじっと耐えているが僕は我慢が出来なかった。
クレアと名乗る女性へ向けて銃を撃つ。
「いやァァァァァァァァ!私の足がァァァァァァ!!」
「五月蝿い、これがメロが味わった痛みだ!」
直ぐにクレアへおっさんが治癒魔法をかける。
これで懲りてくれたらいいがこの手の者は
「表に出なさい!格の違いを教えてあげるわ!」
激昂するに決まってる。
「いいよ。ただし、僕が勝ったら魔眼は渡さない。それでいいね?」
「やってやるわよ!」
今にも殴りかかりそうな彼女を後に僕は嫁達を連れて訓練場所へ向かうのだった。
*
「ちょろいわあ、あんな挑発と演技で簡単に乗ってくれるなんて。」
頬に手を当て険しい顔をした表情筋をほぐすクレアさん。
「何で転生者ってこう…どいつもこいつも話が通じないんですかね。」
「自分が異世界の覇者とでも思ってるんじゃない?魔眼回収しに来たって言ってるのに自分が預かるとか何を言ってるのやら。」
今回は相手を激昂させてクレアさんが戦いを挑み、わざと負けて彼女がイグニスの強さに惚れたとして潜入するのが目的である。
実際、本気でやっだ場合はクレアさん曰く、負けはしないとの事。
「………どうしたの?そんな納得いかない顔して?」
「いや、演技とはいえ好きでもない相手に惚れるってのはいかがなものかと。」
「マコト、割り切れ。せっかくうまく話がまとまったんだ。余計な邪魔はするなよ。」
「しないよ。そこは流石に弁えてる。」
難しい顔をしてた方がイグニス側からしても勘違いさせるには丁度良いだろう。
だが、うーん、なんかモヤモヤする。
そこまで考えていた先に頬に柔らかな感触。
反射的に横を見た先には艶やかな黒髪と綺麗な瞳が俺を覗きこんでいた。
「やーん、可愛いっ!まーくんがお姉さんに嫉妬してくれてるう!」
「し、嫉妬!?まさか、いや、そうなのか?」
なるほどこのモヤモヤはクレアさんを誰かに取られるかもしれな………待て待て、俺は婚約者がいるだろ!
「あら?もしかしてロゼちゃんの事考えてる?心配ないわ、お姉さんは正妻の位置なんて狙ってないから。狙うとしたら愛人よ。」
「さらっとそんな事言わないで!心臓に悪い!」
頬をスリスリしてくるクレアさんに照れて顔を背けた先には親父が愉快そうに笑っていた。
「何が可笑しいんだよ。」
「いや?妾の子のお前が愛人作ったら中々に面白いと思ってな。」
「絶対、いつか痛い目に合わせたる。」
クレアさんを引き離し、俺は心臓を落ち着かせて俺はクレアさんに向き直る。
「頑張って下さい。頼りないかもしれないけど俺は一応、貴方のパートナーですから。困ったらすぐに呼んで下さい。」
クレアさんは俺の言葉を聞いて凛々しくそれでいて優しく微笑んだ。
「私も貴方に誓いましょう。身体全てを許しても心だけは貴方に預けるわ。私の心は貴方のものよ、マコト。」
その言葉はどんな果実よりも甘く、
その表情はどんな人よりも魅力的であった。
少なくとも俺はクレアさんから目を離せなかった。
「あら?餞別の口づけくらい、欲しいのだけど?」
「えっ!?で、でもほら、父がいるし………」
「あー、俺は先にディアン様を連れて行ってるから早く来いよ!」
空気を読んだのか父が部屋から出て行き、俺はまた早くなった心臓を抑えながら目を瞑る背の高い彼女へ背伸びする。
彼女の唇にそっと触れるだけのバードキスを済ませて俺たち2人は互いに恥ずかしさを誤魔化すように笑い合った。
*
「遅かったな。どんだけ熱中してたんだ。」
「5分も経ってねえよ。で?クレアさんがわざと負けてる間に詳しい話を聞かせてくれよ。」
おそらく騎士団か何かの訓練施設に着いた俺は怒りを爆発させた演技のクレアさんを父と一緒に遠巻きに眺める。
「仮にも英雄のアンタがカップルを襲うなんて阿呆な事しないだろ?」
「まあ………な。パートナー同士のいざこざで男が暴力を振るおうとしていたから止めただけだ。」
「そしたらイグニスがやってきてやられたと。」
しかし、一応英雄たる父をここまで痛々しい傷を負わせる事が出来るのか?
俺はクレアさんがいつもの半分以下の出力で雷を使ってるのを魔眼で観察しながらイグニスの戦い方を眺めていた。
イグニスの戦い方は全属性の魔法を使い、更に何処からか持って来たであろうロボット?に乗り込み、戦っている。
魔導騎士とか何とか言っていたな。
「あ、そういや馬車がなかったのは何でだ?」
「イグニスが任務を遂行するためにディアブレリーからグラマソーサリー行きの馬車を貸し切っていたらしい。余ったのを慌てて借りたのはいいがSクラス分は用意出来なかった。」
あの編入生………勘違いで殺そうとするわ。話は聞かないわ、なんなんだ。
あっ、クレアさんが吹き飛ばされた。
そのまま動かない。
でも魔眼には軽傷と読み取れる。
上手く衝撃を緩和したようだ。
「勝者!イグニス!」
胸の部分が開き、コクピット部分から勝って当然とばかりにイグニスが降りて来て、クレアさんの元に歩み寄る。
「癒しをーーヒール!」
わーすごーい。短い詠唱でクレアさんの傷が治っていくぞー
ぶっちゃけ、アクセルさんやシルビアさんの光属性の回復魔法や悪魔化リリムさんの簡易的な水属性の治癒魔法やらロゼさんの無属性治療魔法を見ているのでなんかしょぼく感じる。
「貴方、なぜ私の傷を治すの………?」
「戦いが終わったらもう敵じゃないからね。」
「ふふっ、貴方優しいのね。」
クレアさんの笑顔に鼻の下を伸ばすイグニスに彼の嫁たちがイグニスが勝ったことを喜びながら近づいていく。
「後はクレアに任せよう。帰るぞ、マコト。」
「………りょーかい。」
これ以上いたらイグニスに勘付かれそうだ。
俺は後ろで甘い声を上げるクレアさんを後にし、転移した。
胸の中のモヤモヤは一層陰りを増した。
*
「初めまして、今日からお世話になるわぁ。」
「うん、よろしく頼むよ。クレア。」
現在、私はイグニスに惚れた演技をして仲間にして下さいと頼んだところ断られたので胸を押し付けたりなどの誘惑で彼に頷かせた。
「いい!?イグニスはうちらの共同財産や!勝手に抜け駆けしたりしたらあかんで!」
「イグニス様は心優しい方ですから誘惑に乗ってしまうかもしれませんからほどほどにですよ?」
ターユとステロペの言葉を偽りの笑顔で答えながら胸を寄せて谷間を見せて態とらしく挑発。
貧乳らしき2人はむすっとした。
「ではこれをどうぞ。」
「これでお主も拙者達、イグニスの嫁仲間でござる。これからよろしく頼むでござるよ。しかし、なかなかお主の拳は効いたでござる。」
私が殴った箇所をさすりながらそういって笑うエレクトに言葉だけの謝罪をし、マイアが差し出した手の平サイズの長方形の物体を受け取る。
触ったり、眺めたりを繰り返しているとイグニスが得意げに説明してくれた。
「これは?」
「ラインって言うんだ。僕が作った………多機能通話道具。側頭部についてる所を押すと電源が付きますよ。」
「へえ…面白いわね。」
「その小さな形で通話に優れた写生が出来たりするんだ!中でもボクはこのすたんぷってのが気に入っててね!」
あれこれ説明を受けながら、私はバレないように指先から雷を軽く迸らせる。
微弱な電流を流し、素材、作りを把握する。
本来なら姫様の方が得意なのだが私も出来ないことはない。
そしてわかったのはかなり複雑なもので精密。
この世界では絶対に思いつかないであろう技術の結晶。
間違いないこれは異世界の道具だ。
「そういえばマスターにあの金髪、何か言っていましたね?ヒヤマハルキーとは?」
「ああ、あれは………もう貴方には逆らいませんって言う意味の地方の言葉さ。」
嘘つき、ヒヤマハルキは貴方の真なる名前でしょう?
魔眼持ちで傭兵団を率いる若き団長。
そして編入生。
私は貴方を赦さない。
私が罪を裁くとか偉そうな事は言えないけれど
『傭兵のお姉ちゃん!』
訓練を終えてタツ婆にまーくんを預けて一息ついていた時に出会ったあの村の生き残りの子。
『お願い!お姉ちゃん!あの人をやっつけて!私のパパを殺したあの悪い人を!』
彼女は泣いていた。
つぶらな瞳から大粒の涙を流して。
今にも壊れそうな彼女を優しく抱きしめるしか私には出来なかった。
まーくんに私はかつて言った。
何かを壊して何かを守るなと。
それは私のように道を誤って欲しくなかったから。
何かを壊して何かを守った私に。
私の生き方は酷く歪で不器用だ。
強くなる為に辿って来た道を振り返った先には守りたかったはずの無辜の人々の死体の山。
歩んだ道が鮮明に焼き付き、今でも時々夢に出るような最悪な人生だ。
だけどーー
(その人達が流した涙を忘れたら彼らの魂は一体何処へいくというの?)
私は未来永劫、自身の得るはずの幸せを切り崩しながら自分の罪を引きずり続けていくしかないのだ。
それを理解しろとまでは言わない。
けれど躊躇いなく人を殺せる貴方を許すわけにはいかないのよ。
私がイグニスを見ると彼は笑いかけてくれた。
私もからかうような笑いかたで彼に応えるのだった。
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