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新歓旅行1日目①

今日は2話投稿しています。

よければ前回のも合わせてごらんください。


5話にしてようやく新歓旅行には遅かったので幕間として区切らせて貰いました。

Sクラスと戦って実力の差を思い知ってしまったマコト君が居なくなってから1週間


「まだ帰って来ないってどういうこと!!」


「落ち着いて、ロゼ。」


まだ太陽が昇り始めた頃、私たちSクラスは自分たち温泉が有名なグラマソーサリーへの新歓旅行の集合時間に着いたのだが………マコト君がまだ帰って来ていない。


その上、私たちの馬車がない。


「しかもほかの人達は昨日のうちからあっちに行ってるのよ!何なの、ほんと!」


グラマソーサリーまで火の方角に進んで馬車でも丸3日かかるようだ。

なのに私たちの馬車は無いのだ。

泣きたくなる。


「イノセンティアさん。君の気持ちも分かるがあまり騒ぐと落ちてしまうから、気をつけてくれ。」


「そうだ!オイ!結構飛ばしてるから振り落とされないようにしっかり掴まってやがれ!」


「この調子だと着くのは明日の朝になるわね〜」


「それでいいと思うよっ!あんまり飛ばしすぎると皆んなが吹き飛んじゃうからっ!」


途方にくれた私たちが導き出した結論は龍となったフェルム君の背中にのり、グラマソーサリーまで行く事だった。


漆黒の鱗をもつフィルム君の真の姿はお伽話などでよく出てくるような龍であり、とてつもない威厳を感じる。


そんな彼に乗り、私達は強風が叩きつける中でシルビアさんが張った結界内部で暫し雑談をしていた。


なお、今のマックスの姿は皮の腰巻一張羅であり、シルビアさんが結界を張るまで強風によってはためき、彼の象徴が晒されるというチン事も発生した。


シルビアさんはそんな彼の服を枕にして高価な毛布を被って眠っている。


「服着たらどうですか?マックス君?」


「ダメだ、イノセンティアさん。僕が服を着てしまえばこの放置されるという微弱ながらも永遠に感じられる崇高な快感がーー」


「わかった、私が悪かったわ。貴方は何も間違っていない。」


流石に業が深い性癖に口を出すことなどできずにリリムさんが簡易的に氷によって作り上げたトライアルなどをして時間を潰す。


その間、マックスは腰巻のみであった。


「………何でそんな感じ?」


「この性癖の事かい?」


「………うん。」


「ちょっとリリム、失礼よ。」


「いいですよ。皆、初見ではそう聞いてきますから。じゃあちょっと語るとしよう。」







かつて僕は英雄の息子として厳しい特訓の日々を送っていた。

子供の頃にはナイフ一本持たされ、砂漠に放り出されて1年間生き延びろと言われたくらいです。


そんな厳しい訓練に耐え切れる事なく、泣き出す夜もありました。


しかし父から泣いているところを見られると殴られます。


だからそのうち僕は泣かなくなりました。

代わりに殴られるたびに自分は愛されていると才能があるから厳しいんだと考えるようになったのです。


鋭い拳が頬を切り裂いたら

自分のために殴ってくれている!


内部から破壊するような蹴撃には

自分を認めてるから蹴っている!


こんな考え方を何年も何十年も続けた結果


僕は人に傷つけられるたびに気持ちよくなれる体質になりました!


炎や氷の魔法を受けても


「ああっん!ありがとうこざいます!!」


鈍器や刃物で体に傷をつけられても


「もっと!もっと下さい!」


能力を受けても


「この僕に最高の快!感!を!」


身体中から登る刺激が僕を認めてくれる!

他者に与えられた傷が僕を愛してくれる!


そして気がつけば僕は『傷だらけの獣ブレシュール』という2つ名を得て英雄の息子として国中から認められるようになったのです。









「女王様と出会ったのはその後になりますが……これは彼女の悩みにも関係するものなのであまり語りたくはないんだ。すまない。」


「大丈夫。」


性癖の話だからとたかをくくっていた私は意外と大変な人生の果てに得てしまったことを知って恥ずかしくなった。


しかし、英雄の子も大変だね。


あれ?待って………この調子だとマコト君は平穏な日々なんて不可能じゃない?

英雄の血を継ぐ男なんて…爆弾を抱えてるようなものじゃない。


「彼の理想は………潰えたというの!?」


「どうしたの、ロゼ?」


今思えば、問題しか起きない原因を抱えている以上は絶対に平穏な日々なんて来ないわよ!


「諦めも肝心」


「何で悟った顔でそんな事を言うのよ!?」


色々と修羅場をくぐり抜けてきたであろうリリムが今まで見たことない晴れ晴れとした表情で語りかけて来る。


「もしかして、リリム?………論文の締め切りのゴタゴタのせいでちょーっと頭がふわふわしてない?」


「ふふふ、論文を書き終えたかと思えば真っ白な用紙が出てきたり、書き上げた論文の上にインクが溢れたり………ははははははははは!」


「リリム!もう寝ましょう!まだまだ先は長いから!」


狂った人形のように虚ろな瞳で抑揚のない笑い声を上げられてはこちらの精神が持たなくなる。


ぐったりしたリリムさんの頭の下に持参した体を拭く用の乾いたタオルをしき、枕がわりにさせるとすぐに眠り始めた。


修羅場を超えてよっぽど眠かったんだろう。


「リリムね、この新歓旅行たのしみにしてたみたいなの。」


「ウィチェリーさんが?」


どちらかといえばリリムは寮内で本や論文を読んでいるようなイメージが強い。

論文の研究以外に自分から外に出ることはあまりなかった筈だ。


「実は締め切りは5日後までだったんだけど新歓旅行中まで論文に追われたくないから早めに終わらせたらしいのよ。」


これ内緒ね?と細い人差し指を桜色の唇の前に持って来て微笑む私に皆が笑顔で頷く。


「そういえば彼がいないですがお2人は婚約者なんでしたね。学園を卒業してからはどうなさるおつもりで?」


「この間、話した結果、彼は卒業後数年間、私達からイノセンティア家の領地経営についての知識を叩き込まれてから婿養子に入る形になります。私が卒業したら結婚式をあげて学園に残るマコト君に悪い虫がつかないようにする事になっています。」


初夏のはじめくらいにお父様に領地まで呼び出され、校長先生やマコト君と共に話し合ってそこに行きついた。


学園を卒業してから結婚するパートナーは多い。

例えば王族、平民ペアだと平民の家は無理にでも王族の家に嫁がせようとする。


そこには平民の家がのし上がりたい為や優雅な生活をしたいなども含まれる。


だが貧しい生活の中で頑張って来た子供達がしあわせな未来を掴めるようにと強引に送り出す親の愛情もある。


まあエルデ君曰く、王族の嫁に平民?よほど胆力ないと王宮のいざこざに体が耐えられねえよ。らしいが。


実際、エルデの正妻は龍人の姫様であるガルディエーヌさんだしね。


「仲良く話しているところ申し訳ねえけどそろそろ日も落ちて来たから野宿するぞ。」


フェルム君が翼をはためかせて開けた大地へめがけて着陸の体勢に入った。


下はだだっ広い草原であたりに民家はない。

まだグラマソーサリー迄先だということか。


私たちは着陸時の衝撃に備えた





「今だ!『図書館接続!古代魔法!テンペスター』!!」





下から聞こえたその声と同時に迫る幾万の風の刃がフェルム君の鱗を切り裂き、引き裂いていく。


「フェルムの鱗を切り裂くっ!?そんな魔法を使える人がいるのっ!?」


黒曜の磁辰たる彼に生半可な攻撃は効かない。

ましてやロゼさんレベルの五重魔法使いレベルでないと魔法で傷なんてつけられない筈だ!


「大丈夫っ!?フェルムっ!?」


「………大丈夫だ、かすり傷だからな!!」


声から滲み出る苦痛の感情に私は歯噛みする。


「とりあえず逃げよう!フェルム!まだいけるか!?」


「もちろんだ、アクセル!俺はそんなやわな鍛え方してねえ!」


傷だらけの体ではあるがまだ飛べるフェルムは危険から逃げるために翼を震わせたその時


「待って!アレ!」


私が見たのはこちらに向けて降り注ぐ巨大な火炎弾の雨であった。


「範囲が広すぎる!避けられねえ!」


「ちょっと…不味いわね〜」


そんな中で私が見たのは火炎弾でもなく、真下に潜む7つの影。


私はそこからアルフレッドと同じ寒気を感じ、迫る火炎に魔法を使う間も無く………


「再会早々、何があったんだ?」


少女が生を諦めたとき聞こえる声があった。

彼女を庇うようにして立つ男の背中を彼女は知っていた。


「後は任せてくれ、ロゼさん。みんなも守る。貴方にも傷ひとつ負わせない。」


こんな時に何よりいて欲しい時に彼がいない筈が無いのだ。


皆んなが目を見開き、黒龍の背に降り立った男の変貌ぶりに堂々たるその印象に理解が追いつかない。


だから、私は言ってやった。

少しの恐怖を塗りつぶした安心に少しの恥じらいを混ぜて


「遅すぎるのよ!マコト君の馬鹿ぁ!!」


私のパートナーは最悪な時に最高にかっこいい瞬間に現れたのだ。






嵐の刃と炎の雨によって焼かれた龍達が地に堕ちるのを見計らって後ろに控えさせていた仲間の傭兵隊を突撃させる。


「行くぞ!プレイアデス傭兵団突撃ぃぃ!!」


地を震わすほどの雄叫びと共に僕の傭兵団の嫁であり、幹部達が突撃していく。


「しかし、危ないところだったね。このままだとグラマソーサリーに多大な被害が出るところだった。」


「ええ!そうね、イグニス!」


まさか依頼を達成した帰り道にまさかグラマソーサリーに向かう龍をみるとは。


あんな色をした龍は見たことない、となるとあれは敵で間違いない。


あんな嫌らしく煌びやかな漆黒の龍など敵だろう。早めに潰せて良かった。


「ウチも行って来るわ!カッコいいウチの姿に惚れたらダメやで!」


「ボクも行って来るよ!帰ったらご褒美ちょうだい!」


「帰ったらね?」


目を向けると僕の仲間たちが地に伏した龍へと切り掛かっていく姿が見えた。

仲間達には僕が作った武器や魔法で強化されているから負けはしないだろう。


しかし、黒龍なんてきっといい素材になりそうだ。爆発系は控えた方がいいかもしれない。


「イグニス殿ぉぉ!!ご無事ですか!」


「あっ、ニックさん。どうなさいました?」


後ろから馬に乗ってやって来たのはグラマソーサリーの騎士団とその団長。


「ええっ!邪龍が出たと聞いて急いで駆けつけましたぞ!」


「ならもう大丈夫です。片付いたんで。あ、後黒龍が売れる場所を教えてくれるといいんですが。」


呆れた表情で砂煙が舞う戦場を見ていたが急に顔が怪訝なものに変わった。


「ちょっと待ってください!邪龍ってまさか黒龍じゃあ………」


「ええ、あんな龍なんて見たことないんできっと邪龍だと思いまして。」


その時、騎士団全員の顔から血の気の引く音と共にニックの部下である女性が僕の肩を掴んだ。


「じゃあ、今、あそこにいるのがその黒龍なのか!?」


「そうですけど………あれ?なんかやっちゃいましたか?」


すると途端にぎゃあぎゃあうるさくなる。

焦りとかはわかるが僕からすると騒音にしか聞こえない。


「馬鹿者!あれは、あれは!」


すると背後で何が爆発するような音と焦げた匂いが纏わりつく。


咄嗟に『想像』した銃を取り出すがその右手を取られて、足を払われたかと思うと天地がひっくり返った。


「いてっ!」


どうやら一本背負いされたようだが支援魔法によって強化された体に痛みはほとんど無い。


地面に転がされて見上げた先には黒い髪の女性が体から光を発して僕の銃を持つ手の方を足で押さえつけていた。







「ねえ、貴方、なんのつもりかしら?」


「君こそ、何者だ!」


イグニスは全力で起き上がろうとするが彼女の力が予想以上に強く、起き上がれない。


「だ、団長………」


「ああやっぱり………彼は団長の弟子の!や、やめてください!クレア元団長!!我らに免じて雷撃を収めください!」


「………久しぶりね、ニックにリリ。で?これはどういう事かしらぁ?久しぶりに知り合い連れて国に帰ろうとしたら攻撃されて、それがまさか私の国の紋章を掲げてる。いつから私はお尋ね者になったの?」


バチバチとより烈しく雷鳴を轟かせるクレアを前にして騎士団の一員達はリリを除いて口を動かせなかった。


「ご無礼を!彼は知らなかったのです!クレア元団長の事を!」


「知らなかった………そんなわけないでしょう?グラマソーサリーは言わずもがな、他の国ですら私の知名度は高いはずよ。英雄と同じくらいはあるわよねえ?」


「ぶふっ!」


ギロリと縦に裂かれた爬虫類のような目がこちらを向くが仕方ないだろう。

まさかそんな三下みたいなセリフを吐くとは思わなかったからだ。


「何がおかしいのかしら?」


「いや、君が本当に凄いのなら話を僕達も聞いてるはずだ。だが話を聞かないところからすると君はそこまで名が知れた女の筈がない!」


すると、彼女が右手を上げた。


「私のイグニスから離れて!!」


「イグニス殿から手を離せ!」


「マイア、エレクト!!」


マイアにエレクトがどうやら助けに来てくれたようだ。

この隙をついて逃げ出そうとイグニスは体を捻るが


「………お姉さんね、今凄く怒ってるわ。守られるべき学生すら巻き込んで攻撃した事をね!」


エレクトが刀に手をかけた神速の居合切り、しかし彼女はイグニスの腕を踏みつけ、彼の利き腕をへし折り、そのまま刀の柄に掌底を撃ち込む。


「何!まさか拙者の居合が………」


「龍闘流法"雷霆万釣"」


刀をそのまま吹き飛ばし、エレクトの懐に入ったクレアは双掌底を彼女の急所に叩き込むと迫って来ていたマイアめがけて蹴りつける。


「えっ!エレクト!?」


「龍闘流法"雷電回天」


受け止めた彼女ごと光り輝く黄金の右がマイアの顔面に深々と突き刺さる。


「出直しなさい。弱すぎよ。未通女達?」


「マイア!キャロン!」


イグニスが2人に駆け寄るのを尻目にクレアはガタガタと甲冑ごと震える騎士団の中の1人、切れ長の目をした女性に詰め寄る。


「ねぇ?リリ?私が貴方達の所から去った時にさ、団長の指示とかを与えたわよねぇ。なのになんでニックが団長の証である腕輪をつけているのかしら?」


「いえ、それは………」


「大丈夫よ、リリ?私は怒ってないわ。ただ聞いているだけよ。」


どもるリリに彼女はそういう。


例えその顔から表情と呼ばれるものが溶け落ちていても彼女はただ聞いているだけなのだ。


「じゃあリリ?彼は何?軍を率いてたみたいだけど新手の盗賊か何か?」


「か、彼らは『プレイアデス傭兵団』と呼ばれるわ、我ら騎士団に変わって国を守る軍でございます!」


その時、かちゃりとクレアの後頭部に硬い何かが押し付けられた。


「あら?腕は折ったはずだけど?回復早いのね、お姉さんこんな硬いのを押しつけられたら興奮しちゃう。」


「黙れ、君を犯罪者として逮捕する。」


銃口を押し付けられた彼女はいつもの軽口を叩く彼女だったがその表情を見ることが出来たリリさんはその場に卒倒した。


「ねぇ、お姉さんが魅力的過ぎるのがいけないのかもしれないけどぉーー」


イグニスは甘ったるいその声に一緒気をとられた。そしていつのまにか体に鳥肌が立っている事に気付いた。


「ーーあっちの乱痴気騒ぎが終わった事に気付いてる?」


はっとしてイグニスは懐から小型のトランシーバーを取り出すと耳に充てる。

聞こえるのは砂嵐、だが微かに遠くから声が聞こえる。


『終わったぁぁ!全員、生かして無力化成功!いや〜クレアさんとの厳しい訓練が身を結んだわ〜』


『お前っ!あの師匠の厳しい訓練に耐え抜いたのか!ただの人間の癖にか!?』


2人の男の声はどんどん遠ざかり、砂煙が舞う方を見るとそちらから2人の男が先陣を切り、ちらほらと様々な人種が歩いてきた。


四つん這いの男に座る女に洒落たスーツの上着を肩にかけて煙草を吸う姿がやけに似合う男装の令嬢と乙女男子。


そして青のドレスに身を包んだ目も眩むような美女とアルビノの美少女。

そしてふらふらしながらも歩いてくる文化系女子。


そしてその先陣を切るのは威風堂々を体で表す金髪の男。


訳が分からない。

幹部達も居たはずだ。なのにどうして全滅している!?


「貴方が相手にしたのは軍を相手に取る事ができる英雄達の子供達。生半可な相手じゃないわよ?」


クレアは振り返り、銃口を掴んだ手で力ずくで押し返す。

イグニスもどうにか抑えようとするがそれよりも力が強い。


「さて覚悟は出来たかしら?お遊び傭兵さん?貴方が相手する者はかつて神竜騎士団の団長であり、各国の重鎮達が騎士として抱え込みたい傭兵よ。」


放たれた夜の闇のような殺気に意識が染められる中、反射的に撃たれた弾丸は虚空を通り過ぎる。


「まだやる?お姉さんはいくらでも付き合うわよ?貴方の精魂尽き果てるまで。」


「当たり前だ!」


「そう………なら。」


銃を持つ腕をはたき落とし、みぞにひざを脇腹に彼の体が沈んだと同時に伸びた膝蹴りが彼の顔面を弾きあげた。


「もう1度聞くわよ?ーーまだやる?」


「………わかった、降参する。皆を解放してくれ。」


曲がった鼻から鼻血を出しながらイグニスは銃をしまってそういうのだった。







時はちょいと遡り、


「遅すぎるのよ、マコト君の馬鹿ぁ!」


天からの火炎弾を天眼で見抜き、演算銃で最適な場所に最高のタイミングで撃ち込む。

魔法の核を消された魔法は霧散し、地面に落ちた衝撃はフェルムの体に俺が触れて物理法則無視を発動して衝撃を消した。



「フェルム!傷をみせてくれ!今、治す!」


「俺は後でいい!マックス先に見てやれ!!」


アクセルさんが光属性の回復魔法を唱えている間に俺とフェルムは自分たちのパートナーの安否を確認する。


「ロゼさん!怪我は!?」


「大丈夫よ、マコト君!リリムちゃんも無事!寝起き叩き起こされて若干不機嫌だけど!」


「こっちも大丈夫だ!ライアの目がぐるぐるしてるだけで何も問題はねえ!」


「お星様がいっぱい見えるぅ〜」


「僕たちも大丈夫です!2人とも!」


「おう!全裸の男が女をお姫様抱っこしているのに触れたくなかっただけで認識はしてたから大丈夫だ!」


アニメ化などしたら真っ先に謎の光が入るであろう血を流したマックスはシルビアをお姫様抱っこしながら治療を受けている。


「一体、どこのバカがこんなことしやがった!見つけたらタダじゃおかねえ!」


「落ち着くんだ、フェルム君。」


かなりの傷を負っていたマックスさんが治療を終えたようで手首や体をさすりながらこちらへと来るのだが………


顔は笑っているが目の奥が笑ってない。

というか魔力が漏れ出している。


「と、とりあえず師匠はどうした?テメェがいるなら、師匠もいるだろうが。」


「クレアさんなら………」


『まーくん?私、ちょーっとしたい事あるからこの場を任せるわね?何か困ったらフェルムに聞きなさい。彼も優れた勇士なんだから』


「あ?じゃあ師匠はテメェに任せたっていうのか?雑魚のテメェに?」


その言葉と同時に前方から5人の人影が見えた。


「行くで!ウチに任せとき!」


「ボクも負けないよ!」


「しっかしまあ………旦那はんも愉快な事言うわぁ」


「イグニス様の為に!」


「マスターは我らに光を与えてくれた!その光を絶やすわけにはいかない!」


現れたのは揃いの軍服に龍の紋章が描かれた美少女達。

しかし、その手には不似合いな鉄の塊が握られており、その矛先は俺たち全員を狙っていた。


「あれ、何だ!?」


「銃だよ!俺もあんな変態銃見た事ねえけど!!」


「冗談じゃない何故、僕たちが狙われる」


「君が邪龍だね!ボク達プレイアデス傭兵団を前にしてグラマソーサリーに攻め入ろうとはいい度胸じゃないか。」


「邪龍だと!?馬鹿野郎が!俺はどちらかといえば正義の味方だ!!」


「正義の味方は弱者をフルボッコにはしません。」


「うるせえ!黙ってろ!」


事実を述べたのにキレられた。解せぬ。


「黙りなさい!侵略者ども!イグニス様の国に指一本触れさせませんわ!」


「話を聞けよ!」


「イグニス殿は優しい方だ!今すぐ投降すれば命までは奪わない!」


噛み付くフェルムを歯牙にかけない女達に俺は自分達の身分を明らかにする。


「待て待て!俺たちはただの学園の生徒だ!新歓旅行でグラマソーサリーまで行くだけだ!」


「そのような話など聞いてないわ!ウチらを騙そうたってそうは行かないんだから!」


「ああっ!こいつらぶん殴りてぇ!良いだろ!殴っても!!」


「馬鹿!暴力の解決は一番最後だ!基本は話し合いで解決したいんだよ!」


「私たちは話を聞く必要はありません!皆さま私たちの力、見せましょう!!」


「見ろよ、どうやってこいつらと分かりあおうとしたんだ。」


「話くらいは耳を傾けてくれよ………」


慣れた手つきで銃口をこちらに向ける5人の少女達。

魔眼で見抜く限り、かなりの実力者達だ。


名前 ターユ

所属 プレイアデス傭兵団

能力 強化

種族 人

追記 独特の口調はある人物に教わった。


名前 アルキュ

所属 プレイアデス傭兵団

能力 伝達

種族 獣人

追記 ボクっ子


名前 ケライノ

所属 プレイアデス傭兵団

能力 自動

種族 精霊

追記 独特の口調はある人物に教わった。


名前 ステロペ

所属 プレイアデス傭兵団

能力 追跡

種族 魔族

追記 罪の1人『虚飾』


名前 メロ

所属 プレイアデス傭兵団

能力 炸裂

種族 龍人

追記 ガルディの元近衛騎士


ガルディの近衛騎士までいやがる。

よし、ここは身内だと信じてもらって穏便に話を進めよう。


「おい待ってくれ!俺はガルディさんの友達だ!頼むから話を聞いてくれ!」


「よし!撃てぇぇ!!」


「だから聞けよ!」


俺の声をかき消すような轟音と共に死をもたらす嵐が吹き荒れた。

容赦なく、空を切り、飛んでくる弾丸は目標へと的確に到達する。


だがその弾丸は俺たちに届くことはなく、俺たちの目には信じられない光景が映っていた。


「いい!いい!さあもっとだ!もっと僕を愛してくれ!!」


轟音の中に響くのはマックスの歓喜の叫び。

あろうことかこの男、圧倒的暴力を前にしても糸の切れた操り人形のごとくおかしな挙動をしながら笑っているのだ。


疑問の余地もない、欠片も存在しない。

それでもその男は数多の弾丸を前にして血の1つすら流さずに君臨したのだ。


「ハッ!相変わらずの変態野郎が!だが、並大抵の攻撃じゃああいつを倒せないのも当たり前だ!」


「ええ、ウチのイヌは肉壁として役に立ったでしょう?わたくしの自慢のイヌであり、ありとあらゆる攻撃を『吸収』し、『放出』するのが私たちの心武器」


射撃が終わる。

およそ3.5メートル程の大剣を持った青年は実に晴れやかな笑顔で両手を広げた。


「あれこそが傷だらけの獣、マックス。どんな攻撃を受けても倒れず、傷を負っても死なない男。そして私の大事なパートナー(イヌ)ですわ。」


「さあ!カラスマ君!防御は任せてくれ!君は彼らを止めるんだ!」


「ああもう!先に仕掛けたのはお前らだからな!後で恨むのはお門違いだぞ!!」


マズルラッシュがやんだと同時にも自身の身を顧みずに盾となってくれたマックスさんの背中から飛び出る。


敵は5人。それが心武器じゃない以上、弾丸装填時の隙を突かせてもらう!


「ウチをなめるな!」


まずは1人目、似非関西弁を使うオレンジ髪の色をした少女の銃を物理法則無視した回し蹴りで弾き飛ばす。


だが袖に仕込んでいた小型の銃を手首の動きだけで弾くと俺に向けて発射する。


普通ならその弾丸に貫かれて人生終了だが、こっちには全てを見抜く目がある!弾丸予測なんて軽い、軽い!


「まさか視認してるの!?」


「そのまさかだ、よっ!」


弾丸を置き去りにする早さで懐に潜り込み、死なない程度で顎へ打撃を加える。


だがそれでも彼女をロケットのように宙高く飛ばし、叩きつけられる前に作成した土のスライダーでキャッチする。


彼女は意識を失っていた。


「………手加減間違えた。」


1週間前とは違う。割と手を抜いてこの威力だ。全力を使えばどうなるかすら自分にも予測できない。


しかし、考えてばかりもいられない。

再び豪雨のような弾丸が四方八方から襲いかかってくる。


「作成!!」


演算と天眼を使ってくる場所が分かっても避けられない以上は立てこもるしかない。


自身の足元に4発弾丸を撃ち込み、そこを起点として厚みのある土壁を作り上げる。


「グレネード!」


んなもんまであんのかよ!

さすがにグレネードは防ぎようが無いため、飛んで来た3個のグレネードを右手の演算銃で撃ち抜きながら爆破。


「しまった、煙で!」


「気づくのが遅い!」


舞い上がった土煙に乗じて僕っ子の背中にまわりこみ、地面に作成の弾丸を撃ち、そこめがけて彼女を投げ飛ばす。


信念の大外刈りを受け、地面に膝をついた彼女の足元から頑丈な鎖が飛び出てくる。


「砂中の鉱物を砕いて作った即興の鎖だ。非力な女の子じゃあ抜けられないよ!」


口には泥が張り付き、僕っ子の詠唱を不可能にしたところで俺を中心に三角形の形を取っていた3人が一斉に引き金を引いた。


「万有引力の法則無視」


体が軽くなったと同時にオリンピック受賞間違いなしの綺麗なバク宙でケライノの背後に回り、引力無視を解除。


彼女銃を持つ腕を膝に落とし、彼女が苦痛に顔を歪めたところで彼女の首に手を回し、彼女を銃弾の壁にする。


「汚いわよ!正々堂々と戦いなさい!」


「1人に対して5人は卑怯じゃないのかよ!」


俺は物理法則無視のかなり手加減した前蹴りでケライノごと文句を言ってきた女へ向けて射出。


相手が受け取るために銃を手放したのを見て足元に弾丸を撃ち込み、2人ごと縛るように鎖を作成した。


「さて、残るは後1人だが?降参するか?」


「マスターは言っていました。最後まで諦めないものが勝つのだと!!」


腰から剣を抜き、激情を露わにした剣筋。

天眼で読み取れる確かな技の研鑽を積み、至った一振りだ。


(だけど現在進行形で()()()()()()?)


彼女の心境の変化か、又は別の要因か。

今は理解してはいられないとばかりに鈍と化したその剣技を巧みにかわし、臓腑を撃ち抜く勢いの拳を叩き込む。


「ま、マスター」


そこまで言って気を失った彼女も鎖で拘束。

汗をぬぐい、成長の実感を得た俺は


「終わったぁぁ!全員、生かして無力化成功!いや〜クレアさんとの厳しい訓練が身を結んだ!!」


「お前っ!あの師匠の厳しい訓練に耐え抜いたのか!ただの人間の癖にか!?」


空にまで届く声を上げて俺は声を上げたのだった。

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