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目を覚ました男達

そろそろ章タイトルの新歓旅行までやりたい………後、1話ほどかかる気がする。

新しい朝が来た!

希望の朝が!


とか言っている場合じゃありません。


オーケー、現状を把握しよう。


今、俺は病室内のベッドにて寝ています。

ここまではいい。問題はここからだ。


「………んっ、マコトくぅん。」


俺の隣にロゼさんが寝ています。

どうしてこうなった?


ロゼさんには背中を向けているので大事な部分とかは触れてはいないのだが………彼女が華奢な両腕をまわしているのだ。


当たる。

ぐにゅりと柔らかな膨らみが自分の背中で潰れる感触を覚える。


ってか、もう全体的に柔らかい!

なんなのこれ!?女の子ってこんな感じなの!?


もうこれは新手の拷問ではないだろうか?

手を出すのは真面目なロゼさんの事だ。絶対、怒られる。

つまり、こんな生殺し状態をあとどれだけ続ければいいのだろう。


時折漏れる、俺を呼ぶ甘い声にいちいち心臓が高鳴る。

抱き寄せて彼女の髪を撫でてあげたい、安心させてあげたい。


………それくらいならいいよな?


理性の塀が崩れそうになる中で背中で布ずれの音がした。


「マコト君………?」


どうやらロゼさんが起きたようだ。

よかった、あと少し遅かったら色々と不味かった。


俺も起きようと体を動かす前にロゼさんが俺の頭を撫で始めた。


「無事で良かった………本当に。」


優しく髪を梳かれて破裂しそうな心臓を抑えながら彼女の言葉に起きるタイミングを見失う。


「頑張ったね、お疲れ様。」


慈しむように

愛しむように

その言葉は俺の体を包んだ。


「大変だったけど、貴方が生きていて良かった。」


無様な姿を見せても彼女は俺の側に寄り添ってくれた。

それがみっともなく、情けない姿でも彼女は俺を見放したりはしなかったのだ。


短い間、1人で生きてきた俺にそれはとても心に沁みた。

俺は………こんな彼女を幸せにして上げられるだろうか。


少なくとも今の俺じゃ無理だ。

だったら今の俺から更に成長しないといけない。


「大好きだよ、マコト君。」


だけど………もう無理。


俺は衝動的に体を起こして、目を見開く彼女を抱き締めたまま、滾る思いを伝えるように熱く唇を交わす。


ロゼさんは少し身じろぎをしたがすぐに俺に委ねてくれた。

それがまた愛しくて恋しくて俺はそのまま彼女の体をベッドに押し倒して………


「あらあらお盛んねぇ、まーくん?」


「場所考えて。」


頭の上から降る声と青褪めた表情でその辺りを見るロゼさんに一気に血の気が引く。


「く、クレアさん?」


「ま、待って、違うの、これは、その…?」


「どう見ても合体前の恋人同士にしか見えない。」


「若いっていいわねえ〜。」


俺はゆっくりとロゼさんの上から降りて、ロゼさんも少し乱れた服を整えて上気した頬を冷ましながらも何事もなかったように振る舞う。


「さて授業に行くわよ!」


「変わり身早い。」


「私は何もしてないわ。朝起きて、マコト君を起こしただけ、そうよね?」


「どうみても発情…」


「そ・う・よ・ね?」


「……ええ。」


リリムさんが薄っぺらな理論武装で論破されたぁぁ!

頑張って、リリムさん!


「あ、クレアさん。決闘の勝敗って…」


俺のおずおずとした発言に彼女はいつもの笑顔で


「ええ、つけあがった馬鹿弟子は常人ならもう2度外を歩けないくらいの傷を負わせたから心配はないわよぉ。」


「笑顔と発言の温度差が酷い!」


暖かな笑顔から漏れた冷ややかな言葉が作り出す温度差に身震いしているとクレアさんがリリムさんとロゼさんを部屋から出す。


「それで?足りないものはわかった?」


「………はい。」


嫌でもわかった。

再確認できた。


「俺自身に戦う力はない………ことです。」


ロゼさんのように優れた魔法の才覚はない。

クレアさんのように鍛え上げた武闘もない。

リリムさんのように戦闘形態がある訳でもない。


「………強くなりたければまずは己の弱さを知ること。かつて、私の師に当たる人がよく言っていたわ。」


クレアさんの雰囲気が変わり、ピリッとした緊張感が走る。


「弱いことは恥ずべきことではない。何より恥ずべきなのはそれを克服しようとしないこと。」


耳が痛い。

たしかにアルフレッドを倒したのだってロゼさんの能力があったおかげだし、銃がばかすか当たるのだって魔眼の恩恵だもんなぁ。


今思えば、全くと言っていいほど自分磨きとかしてないわ。


「それで貴方はここからどうする?」


その答えならとうに決まってる。


「クレアさん…俺に戦い方を教えてください。大事な人達を守れるくらいに!!」


弱いままじゃきっとまたロゼさんを悲しませてしまう。

それはダメだ。ロゼさんには笑っていて欲しい。

その笑顔を守れるのなら俺は何でもやる。

そう決めたんだ。


「ええ、いいわよ。ただし、1度でも投げ出したりしたら私は2度と貴方に戦い方を教えない。」


彼女はそこで言葉を途切らせ、目を瞑る。

そして目を見開いた彼女の瞳は縦に割かれていた。


「守るというのは簡単でいて難しい。何処までかを線引きして貴方は守るのかを良く考えなさい。そしてーー守ると決めたならどんな汚い手段でも貪欲に、自分の身を犠牲にしてでも守りなさい。」


体が硬直する。

息が上手く出来なかった。

変貌したクレアさんの空気が切れ味鋭く俺の身を削ったようだった。


「それが守るということ。」


クレアさんの瞳が元に戻る。

正直、彼女の何時もの感じが演技などではないかと思ってしまうほど守護者として騎士として生きてきたクレアさんの覇気は心胆に来るものがあった。


「指導は明日の朝からしてあげるわ。今日はひとまず、授業に行きましょう?」


彼女の腕に引っ張られ、俺は立ち上がり、手続きを済まして病室を後にするのだった。









「昨日は大丈夫だったかい?カラスマ君?」


「見ていたが酷いものだった。君の体に後遺症はないか?」


「大丈夫です。ご迷惑をおかけしました、マックスさん。アクセルさん。」


教室に入るやいなや2人の男女が俺を心配してくれた。素直に嬉しかった。


片方が何故か身につけているのが腰巻だけで片方が何故か執事服を身につけていてもだ。


「そしてこれはどういう状況ですか?」


「新たな行為の一環ですよ!」


「上背が高い私のためにエリスが編んでくれた服だ。似合うだろ?」


もうどうしたらいいのだろう。

笑えばいいのか?


「お兄ちゃん!!」


「げふうっ!?」


乾いた笑いを上げながら明後日の方向を向いていた俺へと小さな金の人間砲弾が病み上がりの内蔵へ追撃。

俺はそのまま床に背中から倒れる。


「ああっ!マコト君!?」


「死んだわ。」


「まだ………生きてるよ、リリムさん。」


俺の腹に馬乗りになるライアをどかし、鈍痛に苛まれる腹を撫でながら泣声をあげる彼女の頭を撫でる。


「ごめんなさいっ!まさかあそこまですると思わなくてっ!!」


「ライアが気にすることじゃないよ。やったのはあいつでライアは止めたじゃないか。」


「でもっ!私は彼のパートナーで…」


未だに泣くのをやめない彼女に困ったような顔を浮かべる中でクレアさんがしゃがみ、ライアに視線を合わせる。


「それを言うなら私は貴方のパートナーを外に歩くのが怖くなるほどの怪我を負わせたわ。だからこの話は互いに痛み分け、貸し借りは無しで良いんじゃない?」


「………で、でも」


その時、教室の扉が開いた。

音に反応して見た俺は昨日の記憶を思い出し、顔を歪める。


「あらぁ?フェルムちゃん。傷だらけだけど?大丈夫?」


「チッ!黙ってろ、男女。オイッ!」


頬にでかいガーゼを貼り、制服の着崩した部分から微かに見える包帯姿が痛々しいフェルムは足音を鳴らしながらクレアさんの元に近づいていく。


「何かしら?フェルム?」


「そのォ、アレだ。アレ。あァ………」


何かしらごにょごにょと口ごもるフェルムにクレアさんは黙って構えている。


「目、覚めました、俺が………悪かったです。す、すいませんでしたァ!!」


低く、絞り出したような声が最後には叫びに変わりながらもかつて師事を仰いだ女性を前にして彼は頭を下げたのだ。


周りが驚きを隠せない中でクレアさんはそれに静かに瞑目し、噛みしめるように受け止め、


「私も非礼を詫びるわ。師匠として貴方を叩きのめしたことは私は間違ったと思っていない。けれどそこに私情が入っていた事には心から謝罪しましょう。我が弟子、フェルムよ。」


「うす………師匠。」


その言葉を真摯に受け止めてクレアさんはあいつを再び弟子と呼んだ。

そしてそれに答えるように誠実さを表した態度で彼女に膝をついたのだった。


「でも俺はアイツなんかには謝らねえからなァ!!」


「それでいいわよ。」


「………納得できるが腑に落ちない俺がいる。」


ビシッと指を指されて指をさすなと言ってやりたいがなんかもう言い返すような空気でもないので俺はただ隣にいるロゼさんの手を握りしめるのだった。









「さてSクラス皆が揃ったところで聞きたいことがあります。」


昼休み、食事を終えた後、椅子を並べて円状にすると互いに向かい合うように座る。


あの野郎が俺をフルボッコにしたせいで出来なかった、Sクラスの交流会である。


「アルフレッドはどんな奴でしたか?」


「自己中心的な性格でしたね。」


「豚未満ですわ。」


「雑魚」


「うーん、好ましいとは思わなかったかなっ!」


「私のことを馬鹿にしたのよ。もう〜エリスちゃんはプンプンよぉ!」


「彼は空回りする道化だ」


「聞いた俺がなんですけど皆さん、辛辣ですね!」


かつて所属していたアルフレッドについて聞くと皆さん、中々に彼を嫌っていたようだ。


「それはそうです。何せ、かつていた魔族の英雄の息子と決闘を行い、決闘に負けたにもかかわらず、策にはめて彼を監獄送りにしたんですから。」


「それって………ベルゼ?」


「知ってるんですか?リリムさん。」


裸のマックスが人間椅子になりながら掲示した言葉にリリムさんは反応する。


「ベルゼは私がここに来ると同時期に入れ替わりで出ていった私の親友。」


「だから学園唯一の魔族だったのか。」


アルフレッドが入学すると同時にベルゼと言う彼はいなくなったのだ………あれ?じゃあパートナーは?


「彼のパートナーは獣人で、優れた錬金術師だよっ!名前はダイアナ!」


「今の彼女は学園に休学届けを出して彼を献身的に支えているらしいですわ。足りない脳で分かりました?」


「シルビアさんが意外と毒を吐くことも分かりました!」


やはり真性のドSかこの人。

ってそんなことはどうでもいい。


「アルフレッドと俺だとどちらが強いですか?」


聞きたかったのはこれ。

少なくともクレアさんに指導をつけてもらう以上は自分の実力を把握しておきたい。


「素体だけなら君だ、マコトくん。アルフレッドと違って割と鍛えていただろう?」


「ええ、見れば分かります。ですが、それだけじゃあ僕たちの足元にも及びません。」


「お兄ちゃんが仮に私と属性魔法だけで戦っても私は勝つ自信があるよっ!」


「わあい、皆さん。厳しい!けどありがとう!現実を確認出来ましたよ!」


英雄達曰く

アルフレッドよりかは肉体だけなら強い。

だがSクラス所属の自分らよりは遥かに弱い。

能力ありなら分からないがそれでも俺が負ける可能性が高い。


「因みに俺のパートナー達と心武器なしで闘う場合は…」


「ロゼさんには近づければ勝てるがそこまでが大変だ。何せ、彼女は無詠唱で強大な混合魔法を息をするように撃って来るからな。」


「少なくとも僕はクレアシオンさんに勝てるとは思わないです。油断なしで最高に仕上がった体調でも近遠距離をバランス良く対応できる彼女に勝つ自信がありません。」


「私もリリムさんは無理っ!魔眼と魔法の波状攻撃に悪魔の力も使われたら心武器なしじゃあ勝てないよっ!」


「俺とは真反対の評価ですね!!」


「それだけテメェが雑魚なだけだろ?」


「はい、そこ黙って!それは俺が1番よく知ってるから!」


パートナー達の実力評価が高いよう

自信なくすよお。


「えっ…と、だ、大丈夫!ま、マコト君は私よりも強いから!体とか………心とか!」


「精一杯の励ましをありがとう、ロゼさん。何とか絞り出した感が否めない訳でないけど。」


「時に優しさは人を傷つける。」


「実感こもった言葉を言わないでください!反応に困るので!」


自分の実力の低さに頭を抱える中、クレアさんが手を上げた。


「だったら彼のパートナーだったフィリアは?」


「英雄の子だけあり、才能はありました。」


「ただそれを磨くことを怠り、恋にうつつを抜かし過ぎていたな。」


「分かりやすく言うと盲信してたよねっ!」


終わった後でクレアさんからフィリアについて詳しい話を聞いた。

俺はそんな事を知らずにクレアさんに戦いを任せていた事を申し訳なく感じていたが


『気にしなくていいわよ?彼女はお姉さんの守りたい人を傷つけた。私はそんな相手に容赦はしないわ。』


とのこと。


でも、フィリアを生かしてる時点でクレアさんは優しいということも知っている。


「ありがとう、英雄の子たち。あ…そうだ、聞きたいことがあったわ。フェルム。」


「な、何すか?師匠?」


「貴方、私と別れてから誰に会った?」


クレアさんの言葉に虚をつかれたように息を飲む。

それを見て、クレアさんは何か核心に触れたと判断する。


「あァ、師匠?今から話す話は…」


「聞いてから判断するわ。」


「………うっす。」


予防線を張ろうとしたがクレアさんの強目の言葉に渋々語り始める。


「師匠と別れてから、武者修行で世界を回ってたんすよ。んで、たまに義理やら世話の礼に魔物やら盗賊やら倒してたんす。それで………」


「そう、それで?」


「………師匠、本当にこっからは落ち着いて聞いてくださいね?暴れないと約束してください。」


「ええ、約束するわ。」


クレアさんは静かに顎をひく。


「………そんな時、師匠が魔族の軍勢から守った村があったじゃないっすか。」


「あら、彼らは元気だった?」


クレアさんは途端に嬉しそうに笑うが真面目な面差しにそれも一瞬でおさまる。


「………滅びました。」


「え?」


「師匠が守った村は何人かの村人を残して滅ぼされました。」


刹那、鬼気が教室を満たす。

水の中にいるような圧迫感に俺やロゼさんが何とか耐える中で周りにいる英雄達の子たちは涼しい顔をして2人の話をおとなしく聞いている。


「………どういうこと?」


「………俺がそれを聞いたのは村の生き残りからだ。」


語り始めた話によると

久々にグラマソーサリーに帰った彼に泣いている子供と母親がおり、彼女達がクレアさんがいればと言っていたらしい。


そこでクレアさんの弟子である彼が詳しく聞いたところ、ある3人組が村を訪れたらしく、見知らぬ者を入れることに村は戸惑った。


しかし、村長の娘が助けられたとなれば話は別だ。すぐに彼らは村に歓迎し、クレアさんが好きだったお酒などを振る舞った。


そして悲劇は起きた。


彼らは若い男と2人の麗しい女性の3人組だったらしく、お酒が入った村の若い衆は彼女らにセクハラ紛いの発言をしたらしい。


胸が大きいとか足が綺麗だとか。

触ったりなどはしなかったし、周りも咎めたのでおさまったかのように見えたが


『僕の嫁を泣かせたな!』


どうやら男の嫁だったらしく、激昂した。

ここまでならまあまあ、ある話だが。

問題はここからだ。


彼はその男を宙に生み出した拳銃で撃ち抜いた。

頭と心臓に1発ずつ。誰が見ても即死だったらしい。


『僕の嫁を泣かせた奴に容赦はしない!』


そう言って亡骸を蹴り飛ばしたようだ。

そこまですることは無い、何故殺した!と死んだ男の仲間たちは掴みかかったが全員が殺された。


『何て酷い村なんだ。こんなところ、消しとかなくちゃ他の人が危ない。』


そして生き残った女子供を避難させて目の前で見たことない兵器を使って村を焼いたようだ。


『いやぁ、いい事すると気持ちがいいなぁ!』


彼はそう言って立ち去った。



「俺はその話を聞いて会いに言ったんだがそいつに撃たれてからの記憶が曖昧で…目、覚ました時にはよ、病室の天井だったんだ。」


「他に何かない?」


「ああ?あーアレだアレ、何だっけな、確かプレイアデス傭兵団団長って呼ばれてやがった。」


「プレイアデス?詳しく」


「ああ、なんか団長、イグニスって名前なんだけどよ、星がなんたらとか言ってた、あんま覚えてねえ」


「使えない頭。」


「リリム!駄目でしょ!マコト君もリリムに何か………マコト君?」


プレイアデス?星?

おい待て待て、これってまさか。


「なぁ、そいつの周りにさ、7人の女の子いなかった?」


「あ?いたけど関係ねえだろ?」


ああやっぱりそういうことかよ!

察しがついたぜ、くそっ!


「………もうそろそろ昼休みも終わるわ。授業の準備をしましょ?ね?」


クレアさんは頭を抱えた俺に近づくと肩を叩き、目で知ってることを話せと告げられたのだった。







授業を終え、リリムさんの研究室に移動した俺に待っていたのはクレアさんとリリムさんによる尋問であった。


因みにロゼさんは生徒会で席を外している。

つまり、ストッパーがいない!!


「で?まーくん?何に気づいたのかしら?」


「吐いて、今すぐ。」


「言います!言いますから離れて!」


鬼気迫る表情のクレアさんに無表情ながらも凍てつくような視線に晒されてたら誰だって直ぐに喋るわ。


「俺たちの世界で星の話があるんです。つまり星座なんですけどそこにプレイアデス7姉妹ってのがあるんです。多分、嫁が7人いる事からプレイアデス傭兵団と名をつけたと考えると…」


「『編入生』!!」


クレアさんは拳を机に叩きつけて粉砕。

死んだ目をしたリリムさんが俺に直せと訴えるので作成銃で覚えてる限り、机を再現する。


「リリムさん、魔眼の中に洗脳系ってありますか?」


「ある、『邪眼』って呼ばれるもの。」


「それって1分間悪夢を見せるとかですか?」


「そんな訳ない。」


おう、まさかリアルにジャスト1分だ、とかな訳ないよな。


「好きな相手に好きなだけ幻覚を見せられる。」


「もっとタチが悪かった!!」


わーお、どちらかといえばツクヨミとかそっちじゃないですか、やだあ。


「2人ともふざけるのはよして」


「は、はい。」


おふざけはここまでにしておこう。

おかえり、シリアス。さよなら、コメディ。


「イグニスと名乗る彼は編入生でいいのかしら?」


「多分、プレイアデス7姉妹なんて2人とも聞いたことありますか?」


2人は首を横に振る。

この世界に星座という概念がない以上、それは知らなくて当たり前だろう。

けどそれが表すのは前世における知識を持つこと。

結果、イグニスは編入生だ。


「傭兵団ねえ、お姉さん、聞いたことないわぁ」


「右に同じ。」


「もちろん、俺も知りません。」


3人で頭を抱えるが情報が足りなさすぎる。

これではどうしようもない。


「ともかく一旦、あの校長に報告しておきましょう。後は彼が何とかしてくれるはずよ。」


俺もクレアさんに賛成だ。

情報収集は父親に任せるとしてひとまず俺がやらなきゃいけないのは強くなることだ。


「クレアさん、明日からお願いします。」


「ええ、いつ何が起きてもおかしくないのだからやっておくことに悪いことはないわ。」


再び始まるかもしれない編入生との戦いの為にも俺は大事な人を守れるくらいの力を手に入れる。


そう…心に決めたのだが、翌朝から始まる地獄を俺はまだ知らない。

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