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異世界での出会い

今日だけで半分程投下致します。

残りはまた後日ということで行きたいと思います。

「着いたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ビバ異世界!!」


 イェーイ!異世界へやって来たぜ!

 皆さん聞いてください!まず地球の排気ガスによって汚染された空気を感じない。


 むしろ山中の澄んだ空気を感じます!


 更には見渡す限りの草原、暖かく照らす太陽、雲ひとつない綺麗な青空!


 もうね!なんかね!テンション上がる!

 上がらざるを得ないっ!!


「はっはっは!喜んでもらえて何よりだ!少し歩くぞついて来い。」


 緑の絨毯のような柔らかい草原を歩きながら辺りを見回す。


「学校に行くんじゃないのか?」


「学校よりもまず初めに買い物だ。授業に必要な道具に制服を買いに行く。」


 なんかあれだな……本当に学校に通えるんだな。

 少し憧れた学園生活を送れるんだな。


「ほら見ろ、彼処に町があるだろ?彼処が学園近くの王国『ディアブレリー』の城下町だ。」


 指差した先には堅牢な壁に囲まれたものが見えた。高い壁に囲まれている為に中まで見ることが出来ない。


 歩いて近くまでたどり着くとその大きさがわかる。


「やあ門番君。門を開けて貰っていいかい?」


「これはこれは……英雄様じゃないですか。後ろの少年はあれですか?隠し子とか。」


 おい……おい。バレてるじゃねえか。

 アンタもなんか誤魔化せよ、なんで冷や汗ダラダラ流してんだ。


「いえ自分は留学生でして英雄様とは親が知り合いだったものですから案内をして貰っていたんです。」


 仕方ないから助け船を出す。これ貸し1な。


「おお、確かに言葉のニュアンスが少し違う。なんだ英雄様、留学生ならそうと言ってくれれば良かったのに。あれ程焦るからこちらがびっくりしましたよ。」


「ああ、まあな……」


 目を合わせろ、しっかり話せ。

 怪し過ぎるだろうが。


「それで門を開けてほしいのですね。少々お待ちを。」


 門番は近くの石造りの塔に引っ込むと俺が親父をゲシゲシと蹴っている間に豪快な音を立てて扉が開く。


「さあ行くぞ、だからもう蹴るのはやめてくれ。これ下ろしたてのローブなんだ。」


「そうだな」


 開いた門を超えて街に踏み入れた俺が見たのは活気湧く街の風景。


 如何にもな顔に傷がついたおっさんが無骨な武器を売り、小さな幼女が怪しげな薬を売っている。


 古めかしい石畳の街には馬車が走る道があり、その両側にある市場では皆が金貨や銅貨などを使って買い物をしていた。


「マジで異世界きたんだな……」


「よし感極まるのはそこまでにしておこう。では早速買い物に行こうじゃないか。」


 歩き出した父の背中を追って俺もその後ろをついていくのだった。




 *


「まずは金を下ろそう」


 そう言われてやってきましたのは真っ白な3つの塔。

 その内の真ん中くらいの高さがある塔の中に入るとそこには壁や床が銀で塗られた空間であった。


 前には小さな受付があり、壁の中には小さな番号が記された引き出しが塔の壁全てに埋まっていた。


「シェンデーレ様、いつも我が『アルトゥーン銀行』をご利用いただきありがとうございます。本日はどのようなご用件で?」


「あの金庫を開けてくれ。」


「承知しました。」


 中の装飾全てを観察していると父の前に出てきたのはやけに背の低いずんぐりむっくりな男。簡単に言えばドワーフのようなものと言った方がいいか。


 ドワーフの男は受付にいた同じような背の男性に話を通すと受付の人はなにかを唱えた。


 すると引き出しの1つが引き抜かれ、ゆっくりとこちらへ向けて落ちてくる。


「こちらで間違いありませんか?」


「ああ。問題ない。」


 父はその引き出しを取ると中から3つに分けられた袋を取り出した。


「この袋には金貨が20枚ずつ入っている。1つ目で教科書などを買うといい。2つ目はお前のこちら側でのお小遣いだ。無駄にするなよ?3つ目はなにかあった時用の袋だから、持っておけ。」


 3つの袋を手渡されて扱いに困りながらも父は銀行から足早く出て行く。


 俺は袋をポッケにしまいこんでその後を追いかけたのだった。



 *



「さて必要なものを随時買い足していこう。大人の署名が必要なものはこちらで買っておくからお前は渡したメモに書かれたものを買ってこい。」


 そう言われて父と別れた俺は貨幣の価値の勉強も兼ねて市場を少しうろつくことに。


「必要なのは教科書に魔道具の素材…あだっ!」


 しかし、メモを見ながら歩いていたせいで人にぶつかってしまったらしく、顔を上げた先には素晴らしい光沢持つ服を着た小太りの男と同じくらいの体格の女性がいた。


「あ、ごめんなさい。」


 礼儀をきちんとしている日本人の俺はしっかり頭を下げる。すぐに謝る事は大事だからな。


「おいおい待てよ?まさか謝るだけで済むと思っているのかい?」


「ねえあなたぁ、私、今の衝撃で骨が折れちゃったかも〜」


 だが男たちはそれだけじゃ許してくれないらしい。 生臭い匂いがする程、顔を近づけられ俺はある事を考えた。


(逃げよう)


 すぐさま背中を向けて振り向きざまのダッシュをかますが急に盛り上がった地面に躓き、顔面を強打した、


「あのさぁ、君、平民だよね?下等な人種が貴族にぶつかっておいて詫びの1つも貰えないのはどういうことかなぁ?」


 俺の背中を踏みつけながら貴族の男は言う。

 女の方は転んだ拍子に飛び出た金貨の袋をネコババしていやがる。


「返してください!それは俺の金です! いくら貴族でも人の金を取っていいわけないでしょ!」


「ふん!平民がこんな大金を持つ理由がない。大方薄汚い稼ぎ方で稼いだお金だろ?なら僕たちが綺麗に使ってやるよ。感謝するといい!」


「あなたぁ、私、新しい服が欲しいのぉ。」


「よし買いに行こうじゃないか。この金を使ってね。」


 あんにゃろう!俺を足蹴にしながら、女の子に媚びた真似をしないでくれますか!?


 怒りのまま、全身の力で跳ね起きようとした俺の目に移ったのは2人の女性。


「彼から盗んだお金を返してあげて」


「そうよ! 人から物を盗む事はいけないって教わらなかったの!?」


 現れたのは雪のような輝きをもつゆるふわな白髪を腰まで靡かせて、赤の目に凛々しい顔つきをした女性。古着だがきちっとした服を身につけている。


 背丈は俺より少し低いくらいだがゆったりめの服の上からでも分かる発育の良い体つきだ。


 もう1人の中学生くらいの少女は空のような澄んだ色の髪を後ろで纏め、知的な青の瞳で相手を眼鏡越しに射抜く。


 服はフリフリの少女趣味満載の服にくたびれた白衣を纏い、下は太ももの真ん中までのスカートと黒のストッキングを着用し、脚線美を惜しげもなく見せつけている


 彼女達は俺を一瞥し、再び泥棒カップルに目を向けた。


「ふう、やれやれ君のような正義感のある平民ほど見苦しいものはない。ほら金をやるから立ち去りたまえ。」


 彼は俺の袋とは別の袋を取り出し、俺と彼女の真ん中らへんに投げ捨てた。


「銀貨が30枚ほど入ってる、これで引くといい。」


「……………………そんな誘惑に乗るとでも?」


「いや、今めっちゃ間があったよ?すっごい悩んだよね?ねえ?」


 白髪の女の子にキッと睨まれたのでこれ以上の口を閉ざす俺の上では男が手から火を出していた。


 おおっ!魔法だ!映画とかで見たような光景が今、目の前に!!


「僕はこう見えて火の魔法が得意でね。君のような平民なら丸焼きにすることすら容易い。それでも引かないかね?」


「引かない、貴方は貴族として貴方は間違っている。だから私が間違いを正す」


「手を貸すわ、リリム!」


「ほう?男爵の僕に平民が楯突いたことを後悔するといい!!」


 気づけば周りは野次馬に囲まれ、ちゃっかり相手側の女性も紛れ込んでいる。


 そんな中飛んで行くボウリングの玉ほどの火球は佇む青髪の彼女を焼き尽くさんと迫る。


「レインホール」


 しかし、彼女が何かを言ったと同時に現れるのは水の壁、地面から吹き出すように出てきたそれは火の玉を包むように消化する。


「ハリケーンブラスト!」


 相手の男が起きた現象に驚いている間に白髪の彼女が唱えた竜巻状の風が俺を踏みつけていた男を空高く飛ばす。


「グラウンドファング!」


 落ちて来る男の着地点に食らいつくかのように地面が裂け、そこに落ちた彼は上から砂で埋められた。


「あ、貴方!私の婚約者に何するの!喰らえっ!フレイムストーム!!」


 唸る豪炎が空気を焼き、熱を散らし、女性へと飛んで行く。

 しかし、彼女は右手を前に出すと


「アクアブラスト」


 青髪の女性が迫る炎を超える流水を持って消す。

 更に白髪の女性が風により熱の指向性も操っているようで近くで倒れていた俺は熱いとは感じなかった。


「貴方達?これに懲りたら貴族の名を無闇に語るのはやめなさい。後、彼にお金を返してあげて」


「はいい!?」


 炎は当たらなかったようだが膨大な水に服は濡れたらしく、ぼろぼろの薄汚い格好で俺の金を差し出した。


「それと………こう見えて、私は皇女よ。貴方達からすれば手の届かない存在だけど?」


「言っておくけど私もこんな格好だけど一応子爵の貴族よ!これを機に人を見た目で判断しないこと!。」


 彼女は倒れた俺の手を取り、立ち上がらせる煤で汚れた体をはたき、何かしらの魔法を唱えてくれた。


 体から痛みが消えたから多分治癒魔法だと思う。


「大丈夫?怪我はない?」


「でも珍しいわね、リリムが人助けするなんて」


「煩い、ロゼ」


「大丈夫です。助けてくれてありがとうございました!」


「どういたしまして。それじゃあ気をつけてね。」


 袋を渡すと彼女達は埋まった男を引きずり出し、野次馬の中に消えていったのだった



 *



「いや〜疲れた〜」


 買い物を終えた俺は近くにあった喫茶店の外のテーブルで異世界のスイーツを頂いていた。


 見た目はパフェのようだがクリームの中には味が様々に変わる果実がふんだんに使われており、飽きがこない。


 父と話していた店長曰く、俺よりも年上の人が作り上げた新感覚のスイーツらしい。尚、彼女も学園に通うらしいので縁があったら会いたいものだ。


 今、父は連絡が来たらしく席を外している。

 なので暇な俺は買った教科書から授業のカリキュラムを抜き出して読むことに。


 と言っても基本的に魔法の知識や武器の技術などの座学と男女に分かれて行う実技が書かれ、それを5日間行い、2日休むというスケジュールであった。


「ここらへんは高校と変わらねえなあ」


「おい、そこの独り言呟いている少年。」


 独り言を言った少年って俺か?

 俺なんかしたか?はっ!まさかこれが異世界転移の洗礼か!?


「悪いけど相席いいか?どこも席が空いてねえんだ。」


「あっ……なんだそんなことか。どうぞどうぞ」


 相席を申し出たのは茶髪の少年、俺より一個上みたいだが装飾がふんだんにつけられた服装や佇まいがやけに高貴な感じがする。


「おーいガルディ!親切な人が相席してくれるってよ!!」


「あらとても親切な方ですわね!」


 どうやら2人組らしく、彼の後ろからの桃髪の女性がトレーを持ってやってきた。


 2人は席に着き、買ってきたであろうスイーツやドリンクを飲み始めるがここで俺が持っていたカリキュラムに目が止まる。


「あれっ?それって俺たちのカリキュラム表じゃねえか?」


「あら?…たしかにそうですわね。じゃあこの殿方は転校生かしら?」


「チッチッ、情報が遅えな、留学生がくるって話が今出てるらしいぜ。つまりこいつは留学生だ!」


 ババーン!みたいな効果音とともに突きつけられた指を俺ははたき落とす。


「ったく幾ら痛い目見ても学びませんわね。貴方の頭は鳥ですの?三歩歩いたら全て忘れんますの?人に指突きつけてはいけませんよ?」」


「ハッハッハッ冗談きついぜ、鳥みたいな貧相な身体してんのはてめえだろ?三歩歩いたらポキッていきそうな。」


 両者の間に沈黙が流れる。

 俺の体が冷や汗を滝のようにかきはじめた。


「「上っっ等じゃねェかァァァァァ(ですのォォォォォォォ!!!!ぶっ殺してやらァァァァァァァァァァ(やりますわァァァァァァァァ)!!!!」」


「やっぱりかよ!暴れてないで、2人とも!ここ往来のど真ん中ですから!ほら親切な人の迷惑になってますよ!!」


「「迷惑なのはお前(貴方)の顔だぁぁぁぁぁぁ!!!」」


「何でそこだけ一致すんの!?そりゃあんたら美形に比べたらそうだけどさぁぁぁ!!!」


 互いに胸ぐらを掴んで席から立ち上がる茶髪と桃髪、俺はそんな彼らを止めようとするが顔面をなじられた。


 だがそんな騒ぎを起こしている彼らに周りの人達は止めようとしない。むしろ、やれやれまたかみたいな感じで笑われている。


「決闘だ!元Aランク エルデは決闘を申し込む!」


「はっ!パートナー元Aランク ガルディはそれを受けて立つ!!」


「馬鹿か、アンタら!?こんなとこで暴れ始めたらいけないでしょ!巻き込まれている俺の気持ちも汲んでもらえますか!?」


「「黙ってろ!!」」


「だから何でぴったり合うの!?俺を馬鹿にしてんの!?ねえ!?実はあんたら仲いいだろ!!」


 とりあえず俺にはこの場を治めるのは無理と判断した為にとりあえず場の流れに任せることにした。


 しかし、火がついた彼らはなかなか止まらない。そろそろ責任から逃げようかと俺は席を外そうとした所で




「何やってるの貴方達は!ここは大通りよ!!学園が誇る生徒がみっともないマネをしないで!!」




 1つの希望が舞い降りた。




 *




「げっ……会長」


「げっ…とはどういう意味?私は何かいけないことでもした?」


 現れたのはさっき、絡まれた際に助けてもらった白髪の女性。彼女は暴れそうになった2人を叱りつける。


「……なんでテメェがここにいんだよ。」


「エルデ君?目上には敬語と汚い言葉使いはやめなさい。みっともないでしょ?」


「待ってください!ロゼ会長!私は悪くありませんわ!悪いのはこいつだけです!」


「ガルディさんはこう言ってるけど彼女は本当に悪くないの?」


「こいつが発端です。」


「恋人売ってんじゃないわよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?しかも冤罪ですわよォォォォォォォ!!」


「もうっ!貴方達はいつもいつも馬鹿な真似をして!」


 いきなり現れた綺麗なお姉さんに叱られ、正座させられて説教を受ける2人組。俺はずれた机や椅子を元に戻しながら彼らの説教に耳を傾けていた。


「そんなんだから停学になってクラスを落とされるんでしょ!そんなことやってたらいずれフリーにまで落とされるわよ!」


「「はーいすいません。」」


「もっとはっきり誠意を込めて!」


「「すいませんでしたぁぁ!!」」


 これは公開処刑だろう。誰が好き好んで昼間っから大通りで正座させられて説教を食らうのだ。そんなドM野郎居たら見てみたいわ。


「分かればよろしい。まだ学校が始まって居ないから罰は無しですがまた学園内で暴れた場合は厳しく罰するなのでそのつもりで。」


「くっそぉ……フリーなのは会長じゃねえか。学園が誇る優等生のくせに独り身の野郎が……」


「と思いましたけど気が変わりました。貴方達には学校が始まったらすぐに生徒会室の掃除を任命する!いいわね!」


「やったわ、免れた!」


「会長!ガルディ君がロゼ会長は能力が役に立たない能無しと言ってました!」


「連帯責任決定!」


「貴方ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「ヒャッハー!!地獄に落ちるときは一緒だぜ!!俺たち……パートナーじゃねえか。」


「このぉぉぉぉ!」


 テンション高いエルデはとてつもなくいい笑顔で肩に手を置くと巻き込まれたガルディはがっくりと肩を落とす。


「さてと……おや?貴方はさっきの?」


 説教が終わったらしく立ち去ろうとしたロゼの目が俺に留まる。


「あ、初めまして学園に留学する事になりました……真といいます。」


「マコト君ね。ご丁寧にどうも。私はクオーレアカデミアの生徒会長を務めているロゼ・イノセンティアよ。規則を破るようなら厳しく罰して行くつもりなのでそのつもりで学園生活を送ってください。」


 襟元を整え、礼儀正しく挨拶したロゼさんと固い握手を交わし、彼女はその場から立ち去った。


 しかし綺麗なお姉さんだったな……

 ああいう真面目で几帳面なしっかり者の女性が俺的にはタイプである。


 というか、基本的に年上の女性がタイプである。


「ほほう……彼女に一目惚れしたようだね!でもやめとけ、あいつはパートナーを結ぶこの世界じゃ無能と言っても過言じゃない。」


 無能?学園が誇る優等生なら魔法とかしっかり使えるんじゃないのか?


「何でって顔してやがんな、理由は2つ。1つは魔法の腕前が1番である代わりに体力は最下位だ。2つ目はあいつの能力魔法が役に立たないからだ。」


「役に立たない?どんな能力なんだ?」


 それと同時に困ったような顔をする彼らだったがガルディが重々しく口を開く。


「他人から『無視』される能力ですわ。」


 え?…………えっ!?何その能力!!しょぼい!


「他人が気付かなくなるだけで実際そこにいる訳だから拡散攻撃系の魔法をつかわれると一発でダメな上に、暗殺特化しすぎて戦闘に持ち込まれると使えねえんだよ。」


「それに加えてイノセンティア家は借金まみれの没落寸前貴族、彼女と結ばれた以上付いてくるのは雪だるま式に膨れた借金の山。そんな地雷と誰がパートナーを結ぶんですの?」


 うーん。それはたしかに無能とか呼ばれる理由も分かる気がする。


「けど彼女も入学した時には相手が居たんだろ?そいつはどうしたんだ?」


「実家の権力を使って無理矢理変えた。」


「女を別に持っといて乗り換えた。」


 ……悲惨すぎる。パートナーになった以上は最後まで付き合ってやるとか漢気はないのか?


「そもそもなぁ……イノセンティア家が借金をしているファルスチャン家の跡取りが相性が良いわけねえんだ。」


「借金をさせた側としている側の人間に愛なんて存在する筈がありませんからね。」


「だから……乗り換えたのか。」


 だったら借金の利息とかを軽くして協力して会長の家から借金が消えるまで待ってやれば良かったんじゃないのか?


 でもそんなことは既にやったんだろうなぁ……


「まぁとにかくだ、マコトだったな。学園にはああいう外れがいるから気を付けとけ。お前とパートナーを結ぶ相手が悪い奴じゃないことを願うぜ。」


「何を言ってらっしゃるんですの!私からすれば女遊びをしてる貴方は悪い奴でしょうが。」


「やめなさい。これ以上暴れるのはよすんだ。俺が酷い目にあう確率が高くなる。」


 俺らはそんな言い合いをしながらも「縁があったらまた会おう」と再会の約束をして何処かに消えていった。


「おう……おまたせ、あれなんか嬉しそうだな。」


 父が帰ってきてそうそう俺に向けてそんなことを言う。


「そりゃそうだろう、友達になれるかもしれない奴らと出会えたんだから。」


 新たな世界で出会った奴らは賑やかで騒がしそうだが退屈はしなさそうだ。


「そうか。よし!じゃあ今から学園に向かうぞ!ついてこい!」


 俺は荷物を持って立ち上がり、意気揚々と歩いていく。


 俺が待ち望んだ学園生活は面白くなりそうだ。



 *



 真が馬鹿2人組と話している間、学園の校長であり、真の父はある1人の女性と出会っていた。


「リリム……君を呼んだのは他でもない。君を真のパートナーにしたいんだ。」


「……正気?」


 彼女は顔色を変えずに壁に寄りかかってそう答える。


「まだ何も起きてはいないが間違いなく、()()()()()()()()()()その力が暴走しないように抑えるのは君の力が必要不可欠だと判断した。」


 彼女は無表情だが僅かに目の色が変わったことをこの男は見逃さなかった。


「頼む、()()()()()()()()()()()()の君にしか頼めない事だ。」


 彼は頭を下げる。

 リリムはそれを見て少し考えると頭を上げるようにと口にした。


「受けてくれるのか?」


「貴方がそう言う以上、私と彼の相性は悪くないのね?けど確か彼はクレアとじゃなかった?」


「ああ、それは決まってしまっているから無理だが()()()()()()()突発的な事故のせいでペアを解消すれば問題ない。」


「汚い大人……私の父もその汚さにやられたものね。」


 痛いところをつかれて言葉を詰まらせた彼を剣呑な目で見つめながら深く息を吐いた。


「いいわ、私も私以外の魔眼の持ち主に興味がある。」


「本当か!ありがとう!」


「別に……これは貴方と結んだ協定だから破るわけにはいかないだけ。」


 無気力さを感じる声に若干の不安がよぎるが彼女は約束だけは守る女だ。今回もきっと約束を守ってくれるだろう。


「それにしても……魔眼の持ち主とは……なかなか数奇な運命を持っているようね。」


 彼女は歓喜に満ち溢れた男に聞こえない声でそう呟くのだった。

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