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原木陽太

今回、自身の他の作品のキャラが出て来ます。知ってる人はああ…いたな。と思ってくれればいいし、知らないなら新キャラとして読んでいただければ有難いです。



 アルフレッド・ファルスチャンは転生者である。


 本名は原木陽太。

 テカテカな脂肌にぽっちゃりした肉を腹に抱えた外資系の企業の重役を父に持つひとりっ子であった。


 そんな彼の1日を見てみよう。


 まず朝は起きずに昼過ぎまで寝て、夕方になるくらいから起き始める。


 次に母親から1日の小遣い5万円を貰うと作ってもらった飯を酷評しながら胃に収め、夜の街へ消えて行く。


 夜の繁華街で上司に頭を下げたり、酒に酔った後輩を介抱する先輩を鼻で笑いながらパチンコやソープに入り浸り、金がなくなったら家へと帰る。


 帰った後は眠ってる親を叩き起こし、夜食を作らせて朝まで溜めていたゲームに勤しむ。


 原木の部屋は、壁が見えなくなるほどに美少女のポスターで埋め尽くされており、壁の一面にあるガラス製のラックには、お気に入りの美少女フュギュアがあられもない姿で所狭しと並べられている。


 本棚は、漫画やライトノベル、薄い本やエロゲーの類で埋め尽くされていて、入りきらない分が部屋のあちこちにタワーを築いていた。


 そんな生活を20年。気づけば彼は40に差し掛かっていた。


 流石に親も焦り、様々な職場を斡旋するも


「上司の目が気に入らない。」


「優れた俺に雑用を押し付ける。」


「女に迫っただけでセクハラ扱い」


 などとごねるだけごねて仕事を辞めてしまう。


 その内に親も亡くなり、親戚からも見捨てられた彼は遺された自立用の遺産を使って


「クソがぁ!何で外れんだ!万馬券まで後少しだったんだぞ!!」


 競馬に全てつぎ込み、大敗した。


 残された僅かな金を前にしてやっと働く気になった彼は一念発起しておしゃれなカフェでバイトをし始める。


「あの〜原木さん?この料理をお願いしますね?」


「いいよいいよ、未来ちゃん。任せとけっ!」


 カフェでの仕事は吐き気がする程下らないものだった。

 この歳で定職につかずにふらふらし、性格も誰かに当たり散らすような原木陽太に他の店員は冷遇する中で1人だけは違った。


 彼女の名は守谷未来。

 知っている人は知っている美少女だ。


 原木陽太は年甲斐もなく一目惚れをした。

 明るく笑い、世話焼きの彼女にカッコいい所を見せようと仕事を頑張った。


 そして2週間後、閉店作業を行い、2人同時に上がるときに原木は遂に行動を起こした。


「未来ちゃん、俺と付き合って下さい!!」


「え?無理です。私、好きな人がいるので…」


 バッサリと切られた。


 しかし、彼は諦めない。


「じゃあ好きな人の為の練習ってことでいいだろ!?こう見えても風俗とかで下の経験は豊富なんだ!だから君とやって男が喜ぶような奉仕を教えてやるから!」


 いつもにこやかな笑顔が未来から消えた。


「申し訳ないですが……原木さんって鏡を見たことがあるか?」


 遠回しに馬鹿にされた原木はすぐに激昂し、近くにあった料理用のナイフを持って未来へ迫る。


 原木に犯罪を犯しているなどの自覚はなく、単に頭に来た仕返しをしようと企んでいた。

 ここが彼の頭の足りない部分である。


「いいからいう通りにしろよ!俺に逆らうとどうなるか分かってんのか!?」


「どうなるんだ?」


 包丁を向けられているにもかかわらず、彼女は普通に歩いて近づくと包丁を持った腕を膝蹴りで砕き、落とした包丁を足で蹴飛ばす。


「何だよ!何だよテメェは!!」


「いずれ世界を救う者だ」


 天まで高く上げたハイキックが彼の顎を狙い撃ち、脳が揺れた彼はそのまま床に崩れ落ちた。


「警察、警察」


 彼女はそのまま携帯を取り出し、電話をかける。深夜にもかかわらずに直ぐに向かってくれる事を聞いて電話を仕舞う。


「あっ!逃げられた!!」


 だがそこに原木の姿はどこにもなかった。




 *




 思えば学生の頃から誰も俺の指示に従わなかった。

 優れた俺がだぞ?有難いと敬えよ!素敵だと讃えろよ!


『お前さ、何様なの?』


『優れたって……平均より下の奴が何言ってんだ?』


『運動も出来ない、勉強も出来ない。なのに偉そう、お前って人間の屑だな。』


 黙れ黙れ!有象無象ども!

 所詮、お前らは社会の歯車にしかなれねえよ!

 だがな、俺は違う!お前らにはない行動力がある!


「あーちょっと君、いいかな?」


 ふらふらと帰る中で声をかけられた先には青の制服に身を包んだ警官が立っていた。


「さっき婦女暴行未遂が起きてね。悪いけどさっきまでどこにいたかなどを教えてもらって構わないかな?」


 不味い!ここで捕まったら俺の優れた人生がパーだ!


 俺はその場から逃げ出した。


「待ちなさい!君!危ないぞ!」


 待てと言って待つ奴なんていねえよ!

 ざまあみやがれ!!


 警官を馬鹿にしようと後ろを振り返ると警察が焦った顔をしながら指をさして何か叫んでいる。


 何故か、その指を追った。

 その先には大型のトラックが迫って来ていた。




 *




 原木陽太とはどんな人間か?と質問をすると彼と関わりのある人はこう答える。


「我儘な自己中心的な男」と。


 気に入らないことがあれば当たり散らす。

 気にくわないことがあれば駄々を捏ねる。


 そして自分の都合のいいことしか考えない人間だと。


 そのせいで高校のクラスから孤立し、ニートになっても悪いのは自分ではなく、他者だと信じて疑わなかった。


 それは異世界に行っても何も変わらなかった。



 *




「さてここからどうしようか。」


 アルフレッドは資材などが置いてある倉庫の中でそう呟いた。


 目の前には鎖で繋がれた白髪の女性。

 かつてのアルフレッドのパートナー、ロゼである。


「先ずは契約の更新だな。」


 端正な顔を近づけて気を失ったままの彼女への唇を貪る。


 混じり、蕩け、溢れ、零れる粘着質な音が静止した部屋の中で響き合い、水飴を絡めるように一方的に堪能する。


「んっ!?んーっ!!」


 だがそんな激しさを伴えば彼女が起きるのは確実、実際目を覚ましたロゼは目の前の現状を理解できないままただ蹂躙された。


「ぷはっ!いや中々に良かったぞ、ロゼ。」


「……何でこんなことをするの!」


 唇を繋げる銀の橋が落ちたと同時に叫ぶロゼにアルフレッドは近づくと彼女の右頰を握り拳で殴りつける。


 頬が切れ、口内に鋭い痛みが走る中、涙目でアルフレッドを見るロゼ。


 そんなロゼを見てアルフレッドは非常に昂ぶっていた。


「俺だってこんなことはしたくないさ。俺が優しく言ってる間に俺とやり直せば良かったのにな。」


「ふざけないで!私を学園に!マコト君の元に返しなさい!」


「五月蝿えよ!あいつの名前なんざ出すんじゃねえ!」


 ヤクザキックが彼女の顔面を捉えて後ろの壁に後頭部を強く打ちつける。


「大体お前は何様なんだ!?俺に偉そうに命令してよ!お前みたいな女は黙って俺の指示に従っていればいいんだよ!!」


 鼻から血が流れる彼女に対して横顔を思い切り殴りつける。

 勢いに従って吹き飛んだ彼女からは嗚咽の声とともに詠唱が聞こえる。


「あらよっと」


 だがそれは想定していたアルフレッドは彼女の喉につま先を勢いよくめり込ませると彼女から声を奪う。


「アッ………ァ」


「これはお仕置きだ。魔法を唱えようとしたな。」


 霞んだ声しか出せない彼女の胸をつかみ、好き放題に揉む。


 悔しそうに唇を噛みしめる彼女の顔を寄せて彼女の涙を舐めながら下衆じみた笑顔を浮かべる。


「今日はここまでにしといてやるよ。じゃあな。」


 しばらくしてアルフレッドは泣いたままの彼女を放置し、学園に戻っていく。




 *




 俺がトラックにひかれ、次に目を覚ましたらまさかの異世界だった。


 オタクにとって異世界転生は夢であり、憧れだ。

 これから世界を救い、女の子達とイチャイチャしたりする夢を描いてた俺にとって現実は厳しかった。


 この世界は至って平和で魔王もいなければ国同士で戦争が起きている訳でもない。


 更にはこの世界でハーレムをしている人間はかなり少なく、大体が生涯ひとりの女性を愛した方が美徳とされていた。


 そして極め付けは転生した家が貧乏貴族だったこと。そんな貧乏貴族に婚約の話などまい降りてくる訳がなく、俺は頭を抱えた。


 だが優れた俺はすぐに考えた。


 領地政策をして家柄を上げればいいんだと。

 そこから俺は頭にあったweb小説の領地政策を思い出しながら領地を開拓していき、気づけば国の貴族でもかなり優秀な部類に入っていた。


 そして公爵家の地位を得た俺はまだ見ぬ、ハーレムキャラを探すために学園に入学する。


「初めまして、私が貴方のパートナー、ロゼ。よろしくね!」


 そこで出会ったのがうちが高利貸しで金を貸してるイノセンティア家の令嬢だった。


 このロゼと呼ばれる女は真面目で誠実な女性ではあったが


「アルフレッド君!起きなさーい!授業遅れるわよ!」


 朝から中々起きない俺の毛布を剥ぎ取るは


「アルフレッド君!また無駄遣いしたでしょ!しかも私の分まで持っていって!」


 金銭管理に口を出してくるは


「アルフレッド君!流石に部屋が汚すぎよ!もう少し綺麗にしましょ!」


 部屋の掃除についてしつこいわとお前は俺の母親か何かか?


 最初は美人だし、ちょっとツンデレっぽい感じだったのにデレる素ぶりは見せない上に生活を管理してくる。


 何でこんなやつが俺と相性がいいって判断されたんだ?


 実際、誰かに面倒を見てもらわないといけないアルフレッドと真面目に注意して面倒見がいいロゼの相性は悪くないのだがアルフレッドは気づかない。


 まあ、まだ我慢してやる。

 だがな1番我慢できないのは、


「お前さ、本当に使えねえな!この無能が!!」


 お前の役立たずさだ!!


 何だよ、最初は全属性魔法を扱えるからすげぇと思ったのに蓋を開けてみれば体力がないから逃げ回れないわ、能力は使えないわでお荷物にしかなりゃしねえ!


 それなのにあんな偉そうに言われてたまるかってんだ!

 この世界の主人公たる俺に対して相応しくない。

 俺に相応しいのは性格も良くて強くて可愛い女の子だ!


 そういえば噂で最強の龍を名乗る女性がいるって聞いたな。じゃあ会いにいくか!!




 *




「こうして私とアルフレッドは運命の出会いを果たし、ちょっとした事件の後に魔眼が開眼したんだよ?ねえ聞いてる?」


 ロゼが拉致られてから3日が経過した。

 アルフレッドは様々な下準備とハーレム形成のために姿を消している。


 その為にアルフレッドの新しいパートナーであるフィリアが彼女を死なせないように見張っているのだ。


「しかし、汚いね。汚物はそのまま、食べものは腐ったパン。体を洗うことすら許されないから垢だらけ。ねえ今、どんな気持ち?」


 何の返答もないロゼに苛立ち、フィリアは死なせないレベルの電撃を彼女めがけて放つ。


 声を出せない彼女は肌が焼けるような苦しみに顔を歪ませながらのたうち回る。


「君は最後までアルフレッドの寵愛を受けなかったね。まぁ正しい判断だよ。愛しのアルフレッドにこんな汚い女を抱かせる訳にはいかないもの。」


 僅かに煙を上げながらピクリとも動かない彼女へと向けてギリギリ生き延びれるくらいの治癒を施す。


「マコト君だっけ?」


 一瞬、ほんのすこしだけ彼女の目に光が戻った。

 それを見てフィリアは歪な笑みを浮かべた。


「貴方の心を折れかけ寸前で支えているのは彼のおかげか。じゃあ彼の首でも持って来れば貴方の心は折れちゃうのかな?」


 無邪気な子供のような笑顔でそう宣言した彼女はなにかを訴えるような彼女に落雷を撃ち、部屋を後にした。


(彼の首を取る前に私は絶対に超えなきゃならない壁がある……待ってなさい、クレアシオン!)


 アルフレッドの為に行動する彼女は新たに決意を固めるのだった。





 *




 いやあ、良いものだな。

 可愛い彼女を手に入れて異世界転生特典らしき魔眼を手に入れた俺は有頂天だった。


 仕返しに彼女が孤立するように仕向けたし、Sクラスになった俺に歯向かう奴らからは魔眼のお仕置きをしたしな。


 しかしこうなるとハーレム形成をしたい。

 だがパートナー契約して心武器を作れるのは1人だけ。

 別の能力を付与した心武器を作るにはいちいちキスで再契約しなきゃいけないのはきついよな。


 なんかねえかなあ、そういう都合のいいもの。



 まさかロゼがそんな力を持っていたとは……


 イワンにロゼを乏せと命令した結果、イワンが半殺しにされ、挙句にはロゼの家の借金がゼロになったとは誰が予想できるだろう?


「マコト・カラスマねえ……」


 日本人っぽい名前だがまさかそんなことはあるまい。

 それよりもムカつくのは


「なんでハーレム作ってんだよぉぉぉ!!」


 5人ぐらいなら平気で暮らせる部屋の一角でそう叫ぶ俺にフィリアはビクッとして惰眠から跳ね起きた。


 髪はオレンジにメリハリある体つきをしているからすごく震えるのだがそれはとりあえず置いておく。


「神秘的な少女に妖艶なお姉さんとか超羨ましい!!俺も欲しい!!」


 ああいう奴らを屈服させたいなあ

 調教して豚みたいになかせたいなあ。


 あっ、簡単な話じゃんか。


「ロゼとよりを戻せばあの力でハーレムを築くことも可能、最高だね!夢が広がるわ!」


 そしたらあの2人も俺を選ぶだろう!


 こうしちゃいられない作戦を練らなきゃな!!




 *




「かくして彼は僕たち取り巻きを使って彼の戦い方を必死に調べたのでした。」


 暇つぶしにサンドバッグにしたロゼの前に立つ軟派な少年は彼女の破れかけた服から覗く肌に舌舐めずりする。


「やっぱいい体してんなぁ、こいつ。」


「アッ!?アッ……!」


 高ぶる衝動に身を任せて彼女の体に覆いかぶさろうとする。しかし、意識が朧なロゼも暴れるが衰弱しきった体では跳ね返すことが出来ない。


「味見ってことでいただきまーす!」


「アッアァァァァァァァァァァァ!!」


 彼が自身のモノを出した瞬間、ロゼの目から光は消え、同時に突風が発生し、地面を転がされる。


「な、何だ!?」


 顔を上げた先から拳大の岩が彼の頭に炸裂し、開いていた扉から転がり出る。


「どうした!スレイ!?」


 スレイの頭からはだくだくと血が流れ、外で待機していたアルフレッドとフィリアに治療をしてもらう。


「で、何があったんだ?」


「いや〜最近ご無沙汰でして、せっかくだからロゼに相手して貰おうと服を破いたんすよ。そしたら……」


「無詠唱魔法で吹き飛ばされたと?フィリア、あいつにもう意識なんてなかったよな?そんな真似が出来んのか?」


「まだ心はギリギリ踏み止まってるね。幼い頃から辛い思いをして来たからか以外と忍耐強いみたいだよ?だから無意識に迎撃してるのかもしれない。きっかけはスレイだと思う。」


「………めんごめんご。」


 殴りたくなるような舌出し笑顔にアルフレッドは軽くはたき、急いで閉めた扉の向こうから腹を空かした獣のような唸り声が聞こえる。


「とりあえず食事だけ放り込んどけばいいだろ。スレイ、見張り頼んだぞ。3日たったとはいえまだ安心できないからな。あと、もう襲うなよ?」


「心配ご無用、任せとけ。」


 彼らは犯罪を起こしているという自覚がない。

 ロゼは仮にも王家の血筋の者。こんなことがバレたりしたら彼らは極刑は免れない。


 そして今、彼らを追い詰める為に動く奴らがいた。


 決戦の時は近い。

今回はここまでです。

また明日の18時から後編を投稿します。


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