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6話

説明長いですごめんなさい_○/|_ 土下座

「――――と自分は思うんですよ!そこら辺わかってるんですか?」


イビーが突然同意を求めてくる。

正直物思いにふけっていて全く聞いていなかった。

そもそもこいつは瞼と目玉しかないのにどうやって話しているのか。

そんな事を思いつつ私はとりあえずとして


「ああ、そうだな。留意しておこう。」


とだけ答えておいた。


「全く、あるじは毎回それじゃないですか!毎度留意するとは言っていますが、1度もその留意したことが反映されてないじゃないですか!実は聞いてないとかないですよね?」


イビーがジト目をして詰め寄って来る。なかなかに勘の鋭い奴だ。こいつの危惧する通り、私は何も聞いていないし、理解していない。

しかしその通りだと肯定するのも、あるじとしての威厳に関わる。ここはうまく誤魔化すか。


「ふむ。そうだな。ではいつまでもここで無駄話をしていても仕方あるまい。各階層の様子チェックでもするか。」


私はそう言って玉座を立とうとしたが、先んじてイビーが


「それならここに報告をまとめたものがあります。目を通しながらで構わないので話を続けさせてもらいますよ。先程の繰り返しになりますが、そもそも普段、人の――――。」


どこからともなく報告書の様なものを取り出し私に押し付け、小言を再開させるイビー。

この俺がイビーと呼ぶ魔物、地球のゲームなどに出てくるもので近いモンスターの呼び名としてはイービルアイと呼ばれるのがこれに近いだろう。ちなみにこの世界の呼び名は〈羽根目玉〉。そのままである。まあその中でもこいつは特殊個体なのだがそこら辺はおいおいでいいだろう。

こいつとの付き合いは長いため、私のあしらい方になれている節がある。

そんなイビーに手渡された報告書に目を向けると、『五階以上の現状と六階以下の進捗状況』

とのタイトルが読める。表紙をめくり、中を読んでいく。

ここ1、2ヶ月特に何も起こってないし、今回も概ねいつも通りだろうと高を括っていた私の目に驚きの1文が目に飛び込んできた。


『――――。尚、東方騎士王国ビュームにおいて、勇者召喚の儀の成功を確認。それに伴い、勇者及び、従者育成の目的で迷宮探索を検討している模様。当迷宮も、選択肢に挙がっている可能性あり。これにつき、迷宮開発を早急に行う必要性あり。』


私は一瞬目を疑ったが、どうやら錯覚などでは無さそうだ。


「なんと・・・。」


「――――のお姿のあの美しくも禍々しいところなどもう最k、へ?って、ああなんだ。そこですか。」


思わず呟いてしまった私に、イビーがなんとも無い風に言ってくる。


「これが発覚したのはいつだ?」


文面から察するに、既に召喚の儀とやらが行われてからある程度時間が経っていそうだ。

私の問にイビーは頭(躰)を捻りながら、


「そうですねぇ。かの国で勇者とか言う輩の存在が確認されたのは確か・・・、二十日前でしたかな?」


「二十日も前なのか!?」


予想以上の日数に私が驚いていると、イビーは何をそんなに驚くことがあるのかわからないと言った感じの顔をしながら、


「え、ええ。しかしあの国もとうとう焼きが回ってきましたね。一昔前に偽勇者が流行った時にも決してあの国は言わなかったのに、今になって言い出すとは。」


この世界には勇者という存在が居たらしい。その力は絶大で、あまねく敵を打ち倒し、当時世界をおのが手中に入れようとした『魔王』なる者を打ち倒した救世の英雄である。しかし今ではもはや童話、寝物語に話される程度で、空想の類と同じ部類に入っている。しかし50年程前、その勇者に倒された魔王の子孫を名乗る魔族の一派が、魔王が討伐されて以来、虐げられ続けていた自分たちの地位改善を求め奮起した。そしてその一派のトップを魔王と呼び、魔族を虐げていた者達を襲い、一つの村を占拠したのを皮切りに瞬く間に領土を広げ、私の迷宮や、先の東方騎士王国のある大陸の東半分を占領したのである。

それにより、当時中央騎士王国を名乗っていた現東方騎士王国を筆頭にいくつかに国が、東方西方を分けるように、〈聖壁〉と呼ばれる巨大な壁を30年前に建設し、大陸を大きく二分したのである。

この聖壁建設により、魔族軍の勢いは弱まったが、未だに時折、魔族軍が散発的に聖壁を攻撃して来ているようだ。

また、最初は一部の魔族だけの活動だったが、今では、人間社会において地位の低い、見下されている種族の多くを味方につけ、大群となっている。また、これは西方諸国には知らされていないが、今魔族は「東方を手に入れたのだからもうこれでいいだろう」と言う穏健派と、「私達を虐げていた者達に同じ思いを味合わせなければ気が済まない」と言う過激派に別れている様だ。

今のところ、戦闘行為に及んでいるのは過激派だけだが、穏健派までも過激派と同じ方向を向くようになったらどうなることか。


聖壁が出来た事により、心身的に余裕が出来た西方諸国は、東方騎士王国に聖壁の監視を任せ、どうやって東方の土地を奪い返すか、と言う話し合いを行った。

そこでこの世界の宗教国家の神聖教皇国ブムロッサが、『この苦難には必ず神が救いの御手を遣わしてくれるでしょう。』と言う予言を行った。

そして、その会議では神の使いとされていた勇者を召喚しようと言う結論が出た。過去の勇者の伝説では勇者とは召喚の儀に応じた神が遣わしてくれた存在とされていたからである。

世界を救った国の王として名を残したいと考えた多くの国の王が召喚の儀の方法を探し求めたが、その結果は芳しいものではなかった。

しかしそんなある日、一つの国が「我が国は勇者召喚に成功した!」と声高に唱え、勇者であるとされてる者とその一行が聖壁の向こうの土地へ打って出たのである。しかしその結果は惨敗。勇者とされていた男は物言わぬ首となって帰ってきた。また、勇者一行として共に言った者達の中で帰ってきた者はいなかった。

そんな 散々な結果であったにも関わらず、多くの国がその国に続いて「我が国こそは本物の勇者を召喚した」と偽り、自国の戦士や騎士、果ては奴隷などを聖壁の向こうに送り出したが、すべてはじめと同じ結果。勇者の肩書きの人物の首だけ帰ってきた。

それが10年ほど続いたが、ここ10年はそれすら起きなくなり、各国は、いつ聖壁を越え魔族が攻めてくるのかと怯えて暮らすようになっていた。


そんな中、今回の事態である。

他が偽勇者騒ぎで盛り上がってる中でも決して同調せず、ひたすらに聖壁にて散発的に攻めてくるの魔族を押し返し、人々を守り続けていたかの騎士王国が、勇者召喚の儀に成功したという。


「いや、イビーよ。今回こそは本当かもしれんぞ。」


「はい?」


真剣な顔で本当かもしれないと言う私に、イビーは疑問顔だ。


「いやいや、あるじよ。流石にないと思いますがね?だって勇者ですよ?実在していたとしても遥か昔の人間、今召喚してもよぼよぼの今にも死にそうな爺さんでは?」


そう言えばイビーは偽勇者事件の時の話を知った時も「仮に勇者だとしても普人族なのだから歳をとっていないはずがないのに若者を勇者と呼ぶとは」とか言ってたが、まさか、


「イビーよ。この度召喚された勇者は前回の勇者とは違う、新しい勇者の事を指していると思うのだが?」


「え?勇者の新しいのですか?」


イビーは予想だにしていなかったこと言われた様な、鳩が豆鉄砲食らったような顔をしている。目だけだが。


「いやいや、まさか。勇者と言えばあのお伽話の存在が勇者でしょう?それ以外は紛い物では?」


どうやらイビーは勇者と言うのがただ一人に与えられる称号だと思っている様だ。


「いや、おそらく勇者はその時々に新しいものが召喚されるのだと思うぞ?此度の魔王が前回の魔王とは別の個体であるように、勇者も別の個体であろう。そもそも神の遣わしたとは言え普人族の前勇者は、どこかに墓がなかったか?」


「え、ええ。確か《ブムロッサ》に墓はあったはずです。」


「ならばこそ、その《ブムロッサ》が言い始めた勇者召喚だ。墓から蘇るならそういうはずだと考えると、新しい勇者が呼ばれるものと考えた方が妥当だろう。」


あくまで憶測に憶測を重ねたに過ぎず、また新しい勇者であると言うのはあくまで私の勘でしかない為やや強引な理論だが、いつまでも勇者の事を話していても仕方があるまい。

私は立ち上がるといまいち納得の言っていない様子のイビーに声をかけた。


「ではイビーよ。迷宮に赴くぞ。」


「え?あ、はい?」


私の突然の物言いにイビーが混乱している。


「いいか?先の報告書には勇者がこの迷宮に来るかもしれないという文面があった。ならば、現在まだ完成に至っていない階層を一日も早く完成させねば、我が迷宮の品位に関わる。早急に完成させるぞ。」


「は、はあ。」


いまいち納得して無さそうな顔のイビーを尻目に私は歩き出す。

そんな私を追いかけながらイビーが、


「別に急がなくても、偽勇者は五階層で十分追い返せると思いますけどね。」


「イビーよ。無理に信じろとは言わんが、最悪の可能性を・・・。」


考慮しろ、そう言いかけた私の耳になにか聞こえた。


「ん?イビー、なにか聞こえないか?」


「へ?なんですか?特には・・・。」


「りっちゃーーーーーーーん!」



尻すぼみになっていった理由はおそらくその声がイビーも聞き取れたからであろう。


「この声は・・・。」


「りっちゃーーーーーーーん!!」


その声は玉座の間の入口が繋がっている廊下の奥から響いてくる。と、同時に、バタバタと走る音も響いてくる。


「りっちゃーーーーーーーーん!大変だよーーーーー!!」


「あるじ、この声って・・・。」


「ああそうだな。」


イビーの言葉に私がうなずいているあいだにも、声は近づいてくる。


「りっちゃーーーーーーーーん!助けてーーーーーー!」


ちなみに先程から声の主が呼んでいる「りっちゃん」とは私、「リツェームド《ゴルゴダ》ヴァレンディウス」のことである。


今度はどんな厄介事か、と私が考えを巡らせていると、ついに声の主が姿を現した。


それはすらっと長い手足を持ち、薄い、黄緑色の衣を幾重にも重ねたドレスのような服を纏った、新緑色の長い髪をした、美しい女性だった。


「りっちゃん!大変だよ!《樹人族》の人達を助けて!」


その美しい女性は、開口一番にそう言うのであった。

誤字脱字意味不明な点などございましたらお気軽にお願いします。

感想などなど募集中です。

タメがなくなり始めてるので早く続き書かねば・・・。

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