3話
忘れてなんか居ないわ。忘れてなんか居ないわ(`・ω・´)キリッ。
「ぅゎぁぁぁぁぁああああああああ!!」
俺は今、草原の真ん中を自転車で爆走していた。
地面が舗装されていないためガタガタとして実に走りにくい。
「くそっ!こんな事なら折り畳みじゃなくてマウンテンにでもしておくんだった!」
あまりの意味不明な事態に俺は、全く見当違いな愚痴をこぼしていた。
「グルァ!」
後ろを振り向くと未だに4足歩行で恐ろしい早で追いかけてくる熊の姿。
「ひいいいいいいい!?俺そんな食べるとこないから!あと絶対美味しくないから!だからお願いだから許してぇ!!」
理解の追い付かない突然のデットオアアライブな事態に俺は懇願する様に熊にそう叫ぶが、言葉が通じるはずも無く、むしろ速度をあげて追いかけてくる。
「いやあああああ!!おーたーすーけー!!」
何故こんなことになったんだろう。俺は大学に行きたかっただけなのに。
それは遡る事20分前。
あの謎の現象により闇に包まれた俺だったが、気が付くと周りが明るくなっていた。闇に包まれていたのは少しだった気もするが、長時間だった気もする。
そして次に感じたのがむせ返るような緑の匂い。
突然の明かりに少し眩む視界をゆっくり開くと、そこは緑豊かな草原だった。
様々な植物が生え並び、所々樹木も見受けられる、左側の遠くの方には森らしき風景も見えた。
「ここは・・・。」
もはやパニックになり過ぎて一周まわって放心状態の俺は極力現状認識に努めようとするが、やはり意味が分からない。俺はさっきまで都内のコンクリート街に居たはず。街路樹はあってもこんな膝丈程もある草が生え並ぶようなところは近くにも無かったはずだ。
「いや落ち着け。まだ焦る時じゃない。」
正直落ち着いても居られないし、入学式参加のためにも焦る時だ。
「こういう時は便利で天才、G〇ogle map先生のGPS機能で現在地を把握しよう。」
うん、そうしよう。それがいい。考えついた奴は天才か?いやいやそう褒めるなって。
という事でとりあえずスマホを出してGo〇gle mapを起動させるが、まず地図が表示されない。それにGPSもONにした筈なのだが、反応がない。
「そ、そうだ!こういう時はTwit〇erで拡散希望で聞こがどこなのか聞こう!そうだ、それがいい!」
そう言って今度は青い小鳥のアイコンのアプリを起動させるが「現在、メッセージを取得できません」とか何とか出る。
「くそっ!肝心な時に役に立たない。Twi〇terがダメならLIN〇だ!」
そう思い緑の吹き出しアイコンをタップするが、こっちも「ネットワークに接続していません」と表示される。
「・・・。」
そろそろ現実逃避をやめよう。
地図だのツイートだのの前にそもそも4Gに接続できていない。
突発的な通信の不具合かとも思わなくは無いが、あたり一面の緑を見る限り、電信柱なども無いし、恐らくここには電波が飛んでいない。
「グルルルルル」
「どうすんだよこれ・・・。」
検索出来ないのではここが何処かも分からない。
そして視界に映るのは一面の草原。人っ子ひとりいないし、民家的なもの、町のようなものも見えない。
「グルルルルル」
「って俺とした事が後ろ確認してないじゃん。さて家的なものは・・・。」
そう言って振り向いた俺の視界に映ったものは
「グルァ!」
「こ、こんにちは・・・。」
3m近くありそうな大きな熊さんでした。
なんということでしょう。先ほどから聞こえてた唸り声は、この、大きくて赤い鬣のある、熊さんの声だったのです。熊さんは、その人の頭ほどの大きさのありそうな手のひらを振り上げると、なんと俺に向かって振り下ろしてきたのです。
「ぎゃぁぁぁぁぁああああ!?」
俺は間一髪、倒れ込むようにして避けることが出来たが、あと少し遅ければどうなっていた事か。
「や、やあ、プ〇さんこんにちは。そんな興奮しても俺は蜂蜜は持ってないよ?」
苦し紛れにそんな事を言ってみたが、
「ガルァッ!」
「きゃーーーーーーー!!!?」
許してくれるはずも無く今度は横薙ぎに払って来た。
絹を割くような悲鳴をあげなら、転がりつつ避け、距離をとる。
「いいかい〇ーさん。俺は別に美味しくない。美味しくないから今すぐ考え直して森へおかえり。」
「ガル?」
熊さんは一瞬考える様な素振りを見せたが、その直後また攻撃をしてきた。
「あっぶな!?」
もう1度回避したが、さっきから結構ギリギリだ。俺は熊さんから3m程距離をとってゆっくり熊さんの周り周り始める。目は決して熊さんの目から逸らさずに。
「ガル?」
熊さんは不思議そうな顔をしたあと俺と同じ様にゆっくりと円を書くように歩き始めた。
そうして俺は熊さんに気が付かれないよう、ゆっくりと自転車の倒れているところまで行き、「行くぜ必殺!三十六計逃げるに如かず!!」
突然両腕を振り上げながらそんな事を叫んだ。それを見た熊さんは一瞬怯みその隙をついて俺は急いで自転車に跨り走しだした。
「ははははは。あばよとっつぁん!!」
そう言いながら振り向いた俺が見たのは猛スピードで追い掛けてくる熊さんの姿だった。
「ノーーーーーー!?ノーモアセンキューーーーー!ゴートゥーホーーーーーームッ!!」
あまりに恐怖に意味の分からないことを叫びつつ俺は草原で熊と鬼ごっこを始めることになったのである。
熊が諦めて帰ってくれるか、俺が熊に捕まって食われるのが先か。
それが問題だ。
因みに俺の方が部が悪い。そりゃそうだろう。向こうは野生動物の体力、こっちは一般大学生の体力、しかもこっちは折り畳み自転車な為悪路に向かないが、向こうは悪路とも感じないであろう。
「ひいいいいいいい!誰かおたすけーーーーーーーー!」
俺の悲痛な叫びが雲一つない青空に響き渡ったのであった。
遅れて申し訳ないです_○/|_ 土下座。
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